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    /P▲         ◆ JPNIC News & Views vol.971【臨時号】2012.5.21 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.971 です
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2012年4月下旬に、北米地域を中心としたRIRであるARINのミーティングが、
カナダのバンクーバーで開催されました。ARINはいまだにIPv4アドレスの在
庫を抱えていることから、JPNICとしてもその分配ポリシーの動向には大きな
関心を寄せており、本ミーティングに参加しました。

本号では、そのミーティングのレポートをお届けします。

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◆ ARIN XXIXミーティングレポート
                                                 JPNIC IP事業部 奥谷泉
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ARIN XXIX(ARIN 29)は2012年4月23日(月)~25日(水)、カナダのブリティッ
シュコロンビア州にある都市、バンクーバーで開催されました。

会場であったフォーシーズンズバンクーバーホテルは、ダウンタウンエリア
の目抜き通りであるRobson Streetから徒歩圏内で街の中心地にあり、参加者
が街の雰囲気を味わいながらもカンファレンスに参加できるよい立地でした。
ちょうど季節柄、街のあちこちには桜が咲いていましたが、この桜は神戸市
と横浜市から寄贈されたものだそうです。

春のARINミーティングは単独開催のイベントであり、基本的にアドレスポリ
シーの議論が中心です。テクニカルなセッションは、ほとんどプログラムに
は含まれていません。そのためか、オペレーターの参加はほとんどなく、参
加者は約100名前後と、APNICやRIPE NCCなど古くからある3RIRのカンファレ
ンスの中では割と小規模なものとなっています。


◆今回のミーティングの特徴

ARIN XXIXは、「自分たちが持つIPv4アドレス在庫を、他のRIR地域とどの程
度分け合うべきか」、ARIN地域の姿勢を確認したミーティングだったと言え
そうです。

実際、ARINにはまだ4.87×/8ブロックもの未割り振りなIPv4アドレスブロッ
クが残っており、五つのRIRの中で最も多くの在庫を管理しています。歴史的
PIアドレスも含めると、流動化する可能性のあるアドレス量はさらに多いと
考えられています。

一方、既に昨年2011年4月に在庫が枯渇したAPNIC地域とは、利用可能なIPv4
アドレス空間の大きさに格差が生じており、また、RIPE地域も2012年の6月に
は在庫が枯渇することが予測されています。

インターネット全体を機能させるために、IPv4のアドレス在庫がARIN地域の
みに偏よってしまうことなく、他のRIR地域にも必要とされるIPv4アドレスを
行き渡らせることを、ARIN地域がどの程度認めるのか、その姿勢が注目され
ていました。

このように、ARIN地域はIPv4アドレス在庫の枯渇予測時期(2013年6月)が少し
先であることから、全体としては、IPv4アドレス管理に関する議論もまだま
だ活発です。APNIC地域にも影響を及ぼす具体的な議論は、次にご紹介しま
す。


◆APNIC地域の立場から着目していた議論

ARIN地域は、未割り振りなIPv4アドレスだけではなく、分配済みのIPv4アド
レスについても、五つのRIRにおいて最も多くのアドレスを管理しています。
これはpotaroo (*1)(APNICのChief Scientist、Geoff Huston氏が公開してい
る統計情報)によると、合計で約84×/8ブロックに相当し、APNIC地域よりも
30×/8ブロックほど多い計算になります。

(*1) http://www.potaroo.net/tools/ipv4/

今回のミーティングで、APNIC地域の立場から最も着目していた議論は、ARIN
地域が他のRIRとの間で、IPアドレスの移転を認めることになるのか、という
ものでした。

また、あらかじめ議題には上がっていませんでしたが、オープンマイクの中
で、「ARINに返却されたアドレスをIANAに返却するべきか、返却せずARINの
在庫として保有すべきか」という議論も行われました。

1点目は「事業者自身による再配分」、2点目は「IANAへの返却を経て、IANA
を介した再配分」という対応の違いはあります。しかし、どちらも、ARIN地
域における余剰IPv4アドレス空間を他のRIR地域に配分するという点では共通
しています。


◆RIR間におけるIPv4アドレスの移転ポリシー

この提案については、APNICからは事務局長のPaul Wilson氏もミーティング
に参加し、ARIN地域がどのような姿勢を取るのか着目していました。

APNIC地域では既に在庫が枯渇していながらも、歴史的経緯を持つPIアドレス
が限られているため、分配済みのIPアドレスからの余剰分を、必要としてい
る事業者に再配分することが難しい状況です。

そこで、IPv4アドレスの在庫枯渇後に、地域内の事業者がまとまった単位の
IPv4アドレスを確保する手段として、ARIN地域との移転が大きな供給源にな
ることが期待されています。

  ARIN-2011-1: ARIN Inter-RIR Transfers
  https://www.arin.net/policy/proposals/2011_1.html

   - ARINは、ARINポリシーに相当する、アドレスの需要確認を行うポリシー
     を適用しているRIRとの移転を認める
   - 最小単位は/24とし、移転元は移転元RIR、移転先は移転先RIRの移転ポ
     リシーに従う

ARIN XXIXではこれまでの流れを踏まえて(詳しくは文末の「◆RIR間における
IPv4アドレス移転ポリシーの経緯」を参照)、施行判断前の最終確認として、
Consultation Timeという形を取り、施行に伴う懸念がないか、コミュニティ
の意見を聴く時間を設けました。挙手によるコンセンサス確認は前回実施済
みとして、今回は行いませんでした。ここで懸念が表明されなければ、前回
得られたコンセンサスがそのまま有効となりますが、強い懸念が表明された
場合は、コンセンサスの結果が見直しとなる可能性も残されていました。

結果としては「ARIN地域のIPv4アドレス在庫を他の地域にも配分できるよう
にするべき」との意見が中心であり、反対意見は表明されませんでしたので、
ARIN Boardが本提案を否決する材料はなかったと考えてよさそうです。

APNICでは、ARINも含めた他のRIR地域との移転を2011年8月から認めているの
で、ARINで決議されればAPNICでの施行が決定します。


◆ARINへ返却されたIPv4アドレスのIANAへの返却

この議論は、グローバルポリシー(2011-01)が施行されたことを受け、オープ
ンマイクで始まりました。

このグローバルポリシーは、RIRからIANAに返却されたIPv4アドレスを、各
RIRに再度分配する方法を定義したものです。したがって、ARINへ返却された
歴史的PIアドレスをIANAに返却することは、ARINのIPv4アドレス在庫を他の
RIR地域に再配分することにつながります。

今回は、ARINに返却されたアドレスをARINで管理するのではなく、IANAへ返
却することが、ARIN地域にとって適切であるのかということが争点となりま
した。

歴史的PIアドレス空間を中心としたIPv4アドレスの多くはARIN地域にあるこ
とから、ARINも他のRIRと足並みを揃えることは、本グローバルポリシーが適
切に機能する上で重要な要素となってきます。

なお、APNIC地域では、APNICへ返却された歴史的PIアドレスはIANAへ返却す
ることを、APNIC EC(理事会)で決議しています。

IANAへの返却については、各RIRの任意の判断に委ねられるべきであり、もう
少し対応を吟味した方がよいとの意見もある一方、APNICの事務局長からは、
歴史的経緯を持つPIアドレスは、RIR管理下のものではなくIANA管理下に属す
るとの整理を、RIR間で行ったはずであるという補足もあり、これを踏まえて
の議論となりました。

全体としては、IANAへの返却を支持する意見が多くあり、返却しない場合に
は他のRIRを納得させるだけの理由は必要となると考えられますが、一部参加
者からは返却に対して懸念を示す意見も引き続きあり、今後の判断はARIN 
Boardに委ねられています。


◆ポリシー提案の結果

上記で紹介した2点の議論は、参加者へのコンセンサスの確認はありませんで
したが、対応の判断はポリシー提案同様、ARIN Boardに委ねられます。

一方、コンセンサスの確認を実施し、議論された提案6点のうち、コンセンサ
スが得られた提案は以下の2点です。IPv4アドレスの移転に関する提案に加
え、AS番号の移転についてもコンセンサスが得られました。

いずれの提案も、APNIC地域に直接の影響はありません。AS番号の移転はARIN
地域に閉じた話であり、APNIC地域では提案されていない状況です。

・ARIN-2012-1: Clarifying requirements for IPv4 transfers
  ARIN地域における移転要件の明確化。
  24ヶ月分の需要までの移転が認められる。(参考:APNICでは12ヶ月分)

・ARIN-2012-3: ASN Transfers
  ARINがAS番号の移転も認めることを求める提案。上流が4バイトASに対応で
  きない場合に備えたいとの意見が支持の主な理由。一方、AS番号はネット
  ワークの顔であり、簡単に移転できるべきではない、4バイトへの移行を促
  進するべきとの反対意見も表明されていた。


◆その他のトピック

ここまでで取り上げたもの以外の、今回のミーティングで目立ったトピック
をご紹介します。

・Shared Address
  "100.64.0.0/10"のShared AddressがRFC化され(*2)、IANAでリザーブされ
  たことがIETF Updateの中で発表されました(RFC6598)。このアドレスの用
  途としては、CGN (Carrier Grade NAT)が挙げられます。

  (*2) http://www.ietf.org/rfc/rfc6598.txt

・ITRとインターネットガバナンス
  政府間の国際法となる"International Telecommucations Treaty(ITR)"に
  ついて、世界的なITUのイベントにて協議されることが報告されました。

  不適切な決議がされると現在のインターネットのあり方に悪影響を及ぼす
  懸念があるとして、ARINがコミュニティにその影響を十分に周知し、コミュ
  ニティとしても動向を把握しておくことを求める意見が参加者から表明さ
  れました。

  このITRは、成立した場合はARIN地域に限らず、世界的に適用されるもので
  す。ITRが対象とするものの中には、アドレス管理などが含まれる可能性も
  あることから、その場に参加していたAPNICスタッフも、レジストリが主導
  的な対応を取る必要性を強調していました。国内においても、情報発信を
  行うことが重要なテーマであると思います。

・IPv4アドレスブローカーの参加
  今回のミーティングではIPv4アドレスのブローカーの参加も目立ち、私が
  認識していただけでも少なくとも4社が参加していました。このうちの半数
  はパテントビジネスにも関わっている法律事務所で、ミーティングの参加
  者やRIRスタッフと意見交換を行いながら、ポリシー議論の動向をとてもよ
  く把握しているようでした。

  テーマごとに別れ「IPv4移転ポリシーのあり方」について議論したランチ
  テーブルには、こういったブローカーも参加し、ARIN地域の他の参加者と、
  適切な移転要件について議論を行っていたことは興味深い状況でした。

  なお、APNICの事務局長はこれらのブローカーと個別に話をし、APNICのア
  ドレスポリシーに従うことに同意する前提で、ブローカーの情報をAPNICの
  Webサイトで紹介する対応を進めていることを今回発表していました。これ
  は分配済みアドレスを必要な人に行き渡らせるためには、移転元と移転先
  を仲介する役割の必要性を認めた上での対応ということです。


◆まとめ

今回のミーティングでは、ARIN地域がそのIPv4アドレス在庫をどう他の地域
に配分していくのかという点において、一部根強い懸念も継続しており課題
は残っているものの、ARIN地域でRIR間におけるIPv4アドレス移転ポリシーが
コンセンサスを得られたという観点からは、全体としては他の地域に配分す
る姿勢は示されたと言えそうです。

前述した通り、ここでご紹介した議論およびコンセンサスの得られた提案の
施行については、今後ARIN Boardが判断することになります。本提案の施行
が決定した場合、APNIC管理下の事業者は、ARIN管理下の事業者とIPv4アドレ
スの移転を行うことが可能となります。

なお日本においては、こういった流れを踏まえて、現在は国内に閉じている
IPv4アドレスの移転の範囲を海外にも拡張する必要性や、JPNICへ返却された
アドレスの管理方法について、2012年6月19日(火)に開催する次回のJPNICオー
プンポリシーミーティング(JPOPM)で議論する予定です。興味を持たれた方は
ぜひご参加ください。

第22回JPNICオープンポリシーミーティング開催のご案内
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2012/20120507-01.html

[参考情報]
ARIN XXIX Meeting
https://www.arin.net/participate/meetings/reports/ARIN_XXIX/


◆補足:RIR間におけるIPv4アドレス移転ポリシーの経緯

RIR間におけるIPv4アドレスの移転については、ARIN地域内で必要性を感じる
フォーラムのメンバーもおり、2011年の初めから提案として議論されていま
した。その後、他のRIR地域との移転を認めることへの懸念も根強く、継続し
て議論が行われている状況でした。

特にAPNICとの移転については、APNIC地域では移転時のアドレスの利用確認
を行うポリシーがないことから、ARIN地域のアドレスの流動化が進むことに
ついて懸念が示されてきました。APNICではその後、2011年11月に移転時のア
ドレスの利用確認を行うポリシーを施行した結果、同年秋のARINミーティン
グでは、RIR間の移転を認めることでコンセンサスが得られました。

しかし、オンサイトのミーティングで議論された内容に大幅な見直しが加え
られた提案が、メーリングリストでの最終確認に諮られていることを理由と
した懸念が、一部のコミュニティメンバーから示されました。これに対して
ARIN Boardとしては、コンセンサスの得られた本ポリシーの施行判断は保留
とし、ARIN XXIXにて、コミュニティの意見をオンサイトで最終確認をする判
断を下しました。

このような状況から、APNIC事務局としては、懸念を示し続ける一部のフォー
ラムメンバーの根底には、他の地域にARIN地域のIPv4アドレスを譲りたくな
いという心理も働いており、議論の状況によってはどのような結論に転ぶか
わからないとの心配もあったようです。


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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