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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1278【臨時号】2015.2.9 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1278 です
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インターネットガバナンスをめぐる議論のうち、2014年後半から世界中のイ
ンターネットコミュニティで活発に検討されているのが、米国商務省電気通
信情報局(NTIA)がIANA機能監督権限を移管した後の監督体制についてです。

番号資源(IPアドレス/AS番号)のコミュニティにおける提案の策定は、JPNIC
の奥谷泉がチェアを務める「CRISPチーム」で行われました。そこで今回は、
CRISPチームによるこれまでの取り組みを、奥谷よりご報告いたします。

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◆ CRISPチーム活動レポート
   ~番号資源におけるIANA機能監督権限移管提案の策定に向けて~
                            JPNIC インターネット推進部/IP事業部 奥谷泉
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米国商務省電気通信情報局(NTIA)によるIANA機能監督権限移管の発表(*1)に
伴い、IANAが管理する三つの資源(番号資源(IPアドレス/AS番号)、プロトコ
ルパラメーター、ドメイン名)の管理方針を検討する各コミュニティが、2015
年1月15日までにそれぞれの資源に関する移管後体制の提案提出が求められて
いたことは(注:その後、ドメイン名については提出期限を延期)、これまで
もNews & Viewsでもご紹介してきました。

本号では、三つの資源のうち、「番号資源」のコミュニティにおける提案策
定に向けた対応を、その策定に関わった当事者として、お伝えしたいと思い
ます。

(*1) 米国商務省電気通信情報局がインターネットDNS機能の管理権限を移管
     する意向を表明
     https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20140317-02.html


◇ CRISPチームについて

番号資源のコミュニティにおける提案の策定は、移管後の体制を検討し、提
案することに責任を持つICG (IANA Stewardship Transition Coordination
Group)が行った2014年9月の発表により、地域インターネットレジストリ(RIR)
コミュニティに委ねられました。RIRコミュニティはご存じの通り、五つの地
域に存在し、日本はAPNICコミュニティの一員と見なされます。アドレスポリ
シーの策定と同じく、IANA機能監督権限移管の提案はまず各RIRコミュニティ
単位でそれぞれ五つの案をまとめ、ICGに提出する上で、それらをグローバル
に一つの提案としてまとめることになりました。

グローバルに一つの提案にまとめることを任されたのが、各RIRコミュニティ
からの代表者により構成され、私がチェアを務めているCRISP (クリスプ、
Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal)チームです。メンバーの一覧
も含めたCRISPチームのWebサイトは、以下をご覧ください。これまでの提案
のドラフト、電話会議の録音、議事録、メーリングリストのアーカイブスな
どがすべて公開されています。

  Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal Team (CRISP Team)
  https://www.nro.net/nro-and-internet-governance/iana-oversight/consolidated-rir-iana-stewardship-proposal-team-crisp-team


◇ 番号資源におけるIANA機能監督権限移管の位置づけ

CRISPチームがどのように提案をまとめたのかをご紹介する前に、まずは番号
資源の観点から、IANA機能の現状を再確認してみたいと思います。番号資源
に限って言えば、日々運用し利用する上で、IANA機能を意識することはほと
んどありません。また、現状通りNTIAが監督を続けたとしても、または今後
NTIAとは異なる組織により監督が行われたとしても、実質的な影響や支障は
なさそうに思えます。

しかし、グローバルで誰もが利用するインターネットの重要な資源において、
核となる機能の監督を、米国政府のみが担っている状態は、インターネット
のあり方と比較するといびつであると、多くの関係者が懸念を示しています。
そこでCRISPチームでは、NTIAの発表した監督権限移管の提案に前向きに対応
していくことを前提に、検討を進めました。

また、「NTIAが提示する条件の通り、政府主導ではなく、さまざまな立場の
関係者の参加によって、NTIAへの提案に向けた意見がまとめられるか=ボト
ムアッププロセスが機能するか」が着目されてもいました。そのため番号資
源コミュニティとしても、提案を適切なプロセスでまとめあげることも重要
でした。

これまでの経緯の簡単なおさらいは、以下の資料もご覧ください。

  第27回JPNICオープンポリシーミーティング(2014/11/18)資料
  番号資源におけるIANA機能の監督権限移管の状況アップデート
  http://jpopf.net/JPOPM27Program?action=AttachFile&do=view&target=11_IANA-JPOPM27.pdf


◇ 提案策定において重視されたこと

ここでは、何を重視して提案がまとめられたのかを確認したいと思います。

番号資源のコミュニティにおける提案策定に向けて最も重視されたことは、
IANA機能がNTIAによる監督権限移管後も安定的に運用され、番号資源におい
て必要な機能が提供され続けることです。これに基づき、現状のIANA機能の
運用に番号資源コミュニティとして満足していることを踏まえると、この点
の変更は求めない、すなわち、今後のIANA機能の運営はICANNに任せること
が、第一の提案要素として挙げられました。

従って、番号資源のコミュニティにおける提案は、極力現状を維持する内容
となっています。そして、IANA機能の運用には直結しないものの、IANA機能
の運用を外部(現在はICANN)へ委託契約するとともに、サービスレベルの維持
を確認するための定期的な検証を行うという、現在NTIAが担っている役割は、
RIRが実施することを前提に、次項の四つの要素から構成される提案が策定さ
れました。


◇ 提案要素

CRISPチームが提案した四つの要素は、以下の通りです。

  IANA機能の安定性のために現状の運用を維持:
  (1)ICANNがIANA番号資源に関するIANA機能の運営者を続行すること

  知的財産関連の権利の整理:
  (2)IANAサービスに関する知的財産関連の権利はコミュニティに属すること
     (商標「IANA」、ドメイン名「iana.org」、データベースの利用権)

  NTIAが担っている役割を、RIRを軸にしたものに置き換える:
  (3)各RIRとIANA番号サービス運営者との間のサービスレベル合意(SLA)を締
     結すること
  (4)各RIRからの代表者による「レビュー委員会」が設立され、NRO (Number
     Resource Organization) ECに対して、IANA機能運営者の業務履行状況
     とSLA合致状況が助言されること

  提案原文「Response to the IANA Stewardship Transition Coordination
  Group Request for Proposals on the IANA from the Internet Number
  Community」
  https://www.nro.net/nro-and-internet-governance/iana-oversight/consolidated-rir-iana-stewardship-proposal-team-crisp-team

提案要素の四つ目に「レビュー委員会の設立」が挙げられていますが、これ
についても、現状にないものを新たに提案しているのではなく、現在、NTIA
が定期的にIANA機能に関するサービスレベルの報告をIANAから受けていたこ
とが、RIRに対して置き換える形で対応したものです。基本的にはNTIAに代わ
り、RIRが定期的にIANA機能のサービスレベルの検証を行いますが、コミュニ
ティからの視点も取り入れるよう、五つある各RIRコミュニティの代表者が、
RIRがサービスレベルの検証を行う上で助言を行う機能として提案されていま
す。これについては別に組織を立ち上げるのではなく、一例としては、グロー
バルポリシーについてICANN理事会に対して提言を行っている、ICANN内の支
持組織の一つであるアドレス支持組織(ASO; Address Supporting
Organization)に近いものが、検討の過程で挙げられています。


◇ 提案に関する議論

特に活発な議論が行われたポイントとしては、知的財産関連の権利(提案ドラ
フト第1版では明記しておらず、議論を取り入れてその後の提案に反映)、SLA
に含める内容、レビュー委員会の選定方法などでした。いずれも、提案の各
要素に対する詳細の確認であり、提案要素に対する懸念は確認されませんで
した。

一方、グローバルな議論の場であるianaxfer@nro.netメーリングリストでは、
IANA機能の運営組織(現在ICANN)とRIRが実際に取り交わすSLA文書を提出しな
いと、正式な提案として認められないとの意見もありました。しかし実際の
SLAの実装は、IANA機能の直接の利害関係者であるRIRがすべき性質のもので
あるため他のコミュニティメンバーからは支持が得られず、本メーリングリ
ストではそれ以上の議論には発展しませんでした。ianaxfer@nro.netメーリ
ングリストでのすべてのコメントと、それに対するCRISPチームによる検討と
対応については、一覧にまとめて以下に公開されています。

  Summary of Discussions and Its Status
  https://www.nro.net/wp-content/uploads/NRODiscussionList_20150116.pdf

◇ 提案策定に向けた番号資源コミュニティの関わり

こういった議論を経て、期限までに提案策定が完了したことはもちろん大き
なことですが、このプロセスを通して、RIR、ひいては番号資源のコミュニ
ティが五つの地域をベースにそれぞれの地域性を尊重しながらも、基本的に
は同じ目的を共有し、強く結束していることを強く感じました。

まず、それぞれ五つの地域の提案を一つにまとめあげる作業が、思いのほか
円滑に進んだことが、理由の一つとして挙げられます。締結する契約の形態
や、サービスレベルの検証を行う上で、コミュニティによる諮問が必要なの
か、といった観点では地域ごとに違いはありましたが、地域間の違いと譲れ
ない部分を尊重した上ですり合わせた結果、前述の通り、番号資源における
提案は極力現状を維持し、NTIAの担っている役割をRIRに置き換えるとの目的
に沿って、提案の第1版を比較的スムーズにまとめることができました。

次に、CRISPチームの高い出席率が挙げられます。2014年11月にCRISPチーム
が結成され、12月より活動を開始してからICGへの2015年1月15日の提案提出
に至るまで、年末年始の休暇期間、そして最終週には連日電話会議を実施し
たため、参加できるメンバーが非常に限られることも個人的には予想してい
ました。しかしながら、実際にはほとんどのメンバーがほぼ8割以上の会議に
参加するという高い出席率であったことからも、メンバーの高いコミットメ
ントが見て取れます。

さらに、CRISPチームでまとめた提案に対して、NROの運営するグローバルな
メーリングリストで議論を進める中、誰でも議論に参加できることから、番
号資源コミュニティに普段参加していない方からも多くのコメントをいただ
きました。そういった意見の中には、取り入れられるものもあれば、前述の
通り、実際のSLAもつけてICGに提出して欲しいという要請など、「提案はコ
ミュニティで策定して実装はRIRに委ねる」という、従来の番号資源コミュニ
ティにおける運用のあり方とは異なるコメントも含まれていました。

後者に該当するコメントは、CRISPチームとして取り入れることが難しいとの
判断を伝えても、コメントされている方にはすぐに納得していただけない状
況もありましたが、RIPE地域のコミュニティメンバーを中心として、番号資
源のコミュニティになじみのあるメンバーたちが、応援しようとの意志を持っ
て議論に参加し、次々にCRISPの判断と対応を支持する理由を挙げてくれた局
面が何度かありました。このような姿勢に感謝するとともに、地域をまたい
だ番号資源コミュニティとしての連帯を強く感じました。


◇ 今後の課題・進め方

次のステップとしては、番号資源のコミュニティだけではなく、幅広くさま
ざまな関係者グループから提案へのインプットを受けることになります。既
に2件、ICGに対して、番号資源コミュニティによる提案内容に紛争処理を含
めた詳細が不十分であること、および、提案策定プロセスがボトムアップで
はないなどの懸念が表明されており、提案提出が完了しても引き続き全体の
議論を注視し、こういった懸念に対応していくことも必要となります。

全体のスケジュールは、以下に公開されている通りですが、ドメイン名のコ
ミュニティにおける提案の提出が遅れていることから、全体スケジュール自
体は見直されるとの話もあり、今後の予定と対応は、また変更されることも
ありそうです。

  IANA Stewardship Transition Coordination Group Process Timeline
  https://www.icann.org/en/system/files/files/icg-process-timeline-07jan15-en.pdf

CRISPチームによる、提案に関する最近のアクションとしては、2015年2月8日
(日)よりシンガポールにて開催の第52回ICANN会議において、各コミュニティ
から提案の策定状況を紹介するセッションが開催されました。セッションの
動画と資料が公開されていますので、包括的に提案の最新検討状況を確認さ
れたい方はご覧ください。

  2015年2月9日(月) 11:15-14:00(シンガポール現地時間10:15-13:00)
  Responses to the ICG RFP regarding the IANA Stewardship Transition
  http://singapore52.icann.org/en/schedule/mon-icg-rfp-iana-stewardship

また、国内の場でも定期的に状況報告は行っており、1月29日(木)に開催され
た日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)第5回会合においても、JPNICか
ら発表をしています。

  IANA監督権限の移管に関するアップデート
  https://www.nic.ad.jp/ja/materials/igconf/20150129/1-maemura.pdf

今後も引き続き、IGCJなどで状況を共有するとともに、各コミュニティから
の提案が出そろった段階で、日本のコミュニティとしてみなさんと一緒に議
論ができればと思います。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.1278 【臨時号】

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