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    /P▲        ◆ JPNIC News & Views vol.1418【臨時号】2016.7.22 ◆
  _/NIC
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◆ News & Views vol.1418 です
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2016年7月6日から8日にかけて、沖縄・那覇でJANOG38ミーティングが開催さ
れ、多くのネットワークオペレーターが沖縄の地に集いました。

本ミーティングでは、JPNIC職員がコーディネーターを務め、通信の秘密との
絡みでも昨今注目を集めつつある、ゼロレーティングとネット中立性に関す
るセッションもありました。

本稿ではこのセッションの話題を中心に、ミーティングに参加したJPNIC職員
による、JANOG38の模様をご紹介します。

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◆ JANOG38ミーティングレポート
   ~ゼロレーティングとネット中立性を考える~
                                                 JPNIC 技術部 佐藤秀樹
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■ はじめに

2016年7月6日(水)~7月8日(金)に、沖縄県那覇市でJANOG38ミーティングが開
催されました。私は一参加者として参加しましたが、本ミーティングでは同
じくJPNICの岡田雅之、奥谷泉がコーディネーターを務め、「ゼロレーティン
グを支える技術とローカルレギュレーション」と題して、日本ネットワーク
イネーブラー株式会社の石田慶樹氏、ノキアソリューションズ&ネットワーク
ス株式会社の幡谷一哲氏、株式会社企のクロサカタツヤ氏によるセッション
を行いました。

本稿では、このゼロレーティングに関するセッションについて詳しく取り上
げると同時に、一参加者として注目したJANOG38ミーティングの模様をご紹介
します。


■ JANOG38ミーティングについて

JANOG38ミーティングは、株式会社オキットをホストとし、「"斬"新なプログ
ラム」や「"斬"れ味鋭いディスカッション」の実現をめざして、「斬」をミー
ティングテーマとして掲げ開催されていました。ミーティングは大変盛況で、
本会議の参加者は586名と最終日に発表がありました。非常に多様なセッショ
ンに加え、併設された34の企業展示ブースをスタンプラリーの形式で回る催
しや、個々のセッションの結果を5段階で評価して投票するチケットが配布さ
れるなど、趣向の凝らされた運営となっていました。今回は、これらの多彩
なセッションから一部をピックアップして、簡単にご紹介します。

JANOGのWebサイトでは、ここに挙げたセッション以外にも、大変多くのセッ
ションのアーカイブ、資料が公開されています。このセッションのアーカイ
ブは期間限定となっていますので、気になるセッションについてはぜひ下記
のWebページよりご参照ください。

  JANOG38 プログラム
  https://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/program


■ ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーション

ゼロレーティングとは、モバイルなどの事業者で実施されていた、特定のア
プリやサービスについては課金の対象としないという、サービス提供形態を
指していましたが、転じて、インターネットアクセスサービスが提供される
際に、通常の利用には課金が行われるが、一部のアプリ、サービスはアクセ
ス料金が無料で提供されるといった、提供形態について用いられるようにな
りました。

● ゼロレーティングを取り巻くもの

新興国などで、このような一部のサービスが無料という形態でインターネッ
トが提供されることについて、その構築や利用の拡大が進むよい施策だとい
う主張があります。一方反対派からは、利用コンテンツの偏りが起こり得る
ことから、インターネットが一部の利用に限定された形で提供されてしまう
といった主張があります。ネットワークの中立性といった観点や、特に日本
においては、これを実現する上で利用されうるDPI (Deep Packet Inspection)
技術と、その利用に対する「通信の秘密」をどう保護するのかといった観点
が、議論にて重視されるポイントと考えられると紹介されました。通信の秘
密については非常に長い議論が行われており、「当事者の個別かつ明確な同
意があるか」「オプトアウトの用意があるか」「法令にも基づく行為である
か」「正当業務行為であるか」などの要件を満たすかどうかが、重要なポイ
ントとして挙げられました。

● DPI技術と通信の秘密について

DPI技術の概要と、どのようなケースでゼロレーティングと関係するかという
紹介がありました。DPI技術には、通信の秘密と絡めた否定的なイメージがあ
ります。しかしながら、DPIは元々セキュリティの技術として開発されたもの
で、どの通信が安全なのか、セキュリティ的に危険なものかという判断を可
能とする技術です。現在最も多いDPIの使われ方はマーケティングであり、ト
レンドをビッグデータと絡めて分析することにも利用されているという紹介
がありました。

ゼロレーティングに類するエンドユーザーへの料金施策を実施する際に、何
をトリガーとするのかを考えると、例えば電話では、0120から始まる番号に
より無料であると判断します。この場合、DPIは不要です。また、使うアプリ
ケーションによって値段を変えるといった対応を取る場合、DPIでは経路上で
通信には不要な領域のデータを見ています。しかしながら、これは通信内容
そのものは見なくても実現可能ですので、これだけで通信の内容を見ている
ということになるわけではありません。DPIが通信の内容を見る必要がある例
としては、会社の携帯電話で連絡を取る際、業務の連絡であれば無料、私用
の連絡であれば有料、といった場合が挙げられます。

● ゼロレーティングと中立性

産業構造の変化があり、ネットワークのオペレーターとプラットフォーマー
が、それぞれ相手と連携する、またはその機能を取り込もうとする動きがあ
ります。今回のセッションでは、LINE社が提供を予定している、最近話題の
LINEモバイルをプラットフォーマーの例として取り上げていました。変化の
ポイントとなるプラットフォーマーの特徴として、自身もサービスを行う一
方、サードパーティーのコンテンツ、事業者をどんどんと取り込み、「この
プラットフォームの世界を利用すればどれだけ幸せになれるか」を消費者に
語り、また、顧客接点をプラットフォーマーが持ち、顧客の認知やロイヤリ
ティがプラットフォームにあることを宣言し、もはやただのオペレーターに
はとどまらず、構造化されていると述べられました。ネット中立性というこ
と、垂直統合モデルがよいものであるのか、このようなモデルが消費者の利
益を守ることになるのかということが、主に海外で議論されてきました。

最も活発に議論がされているのは米国で、米国連邦通信委員会(FCC)では、
ネット中立性原則というものが三つ掲げられています。これは「ブロックの
禁止」「差別的扱いの禁止」「透明性の確保」です。透明性の確保は、今ま
さに米国上院で議論がされている状態で、大統領選の行方によっても左右さ
れると考えられています。米国では具体的な手段であるDPIについて、明確な
規制はない状態です。他の国での例としては、新興国ではかなりゼロレーティ
ングに積極的ですが、インドはゼロレーティングを制限し、ネット中立性を
守る方針を打ち出しています。

日本では通信の秘密というポイントはありますが、最近話題となっているLINE
モバイルの例ではその点はクリアされるのではないかということ、また、そ
うなると今後広く他の事業者が追従していくことも考えられることから、ま
さに議論が始まっている状況であるという紹介がなされました。

セッションは、登壇者それぞれの私見の提示から、会場参加者を交えた議論
へと移りました。非常に多くの意見が挙げられていますので、ご興味のある
方はぜひ下記のアーカイブをご参照いただければと思います。

    http://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/program/zr


■ セキュリティオペレーション: みんなどんなの使ってるの?

ここからは、筆者が注目したその他のセッションを二つご紹介します。

セキュリティと一口に言っても、広範な作業、分野がありますので、それぞ
れの分野で多様なツールが利用されています。

このセッションでは、セキュリティオペレーションの要素、人材育成に関連
するトピックスの紹介と、チームメンバーに求められるスキルセットの整理、
そしてセキュリティオペレーションで利用されるツールについて紹介され、
議論を求めていくというものでした。セキュリティの実践的なツールとして、
実行用の隔離環境を整備することや、リバースエンジニアリングなど含めた
マルウェア解析が実施されることもあると紹介がありました。

また、その後に続いたBoF (Birds of a Feather)では、さらなるセキュリティ
関係ツールの話題として、Vulsという注目されている脆弱性チェックツールに
ついて、製作者を招いた紹介がありました。

    http://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/program/sox


■ Root DNS Anycast in South Asia

ルートDNSは、13のルートサーバのIPアドレスが、Anycast技術を利用して世
界中に伝播されることで実現されていて、実際には数百のDNSサーバで構成さ
れています。

そのAnycastのパフォーマンスについて、RIPE Atlas(*)を利用して南アジア、
および日本で実際にどのように動作しているかという調査の、結果報告があ
りました。レポートでは、ルートDNSサーバが存在する国であっても、リー
ジョン内や海外のサーバを利用して通信を行うケースがあること、その割合
の紹介がありました。

    http://www.janog.gr.jp/meeting/janog38/program/ripe

(*) RIPE Atlas
    欧州地域を担当する地域インターネットレジストリ(RIR)であるRIPE NCC
    が、コミュニティの協力を得ながら実施しているインターネットの計測
    プロジェクト

    https://atlas.ripe.net/


■ おわりに

今回取り上げたゼロレーティングにまつわる議論に関しては、さまざまな意
見がありました。

意見の中では、「現実を直視し、抗うというよりもどのように受け止めてい
けばよいのかを考える必要がある」ということや、「今までのビジネスモデ
ルが本当によいのか、トラフィックに対するコストの負担について変えてい
く必要があるのではないか」という意見が挙がりました。また、「ゼロレー
ティングという枠組みですべてを議論するのではなく、通信の秘密とは分け
て整理をした方がよいのではないか」など、多くのコメントがありました。

議論を受け、アクセス回線、バックボーン回線それぞれにキャパシティがあ
る中、一部のトラフィックが優先制御されるということに不安があることが
理解できました。利用者として多くの選択肢があり、また限定された利用目
的向けの回線として用意することも可能である、MVNOなどのモバイルインフ
ラでは問題は少ないかもしれません。しかし、地域や集合住宅の状況によっ
ては選択肢が限定される、固定アクセス回線にもこのような動きが広まる可
能性を考えると、個人として不安もあります。今後、一層動向の情報収集を
行いたいと思いました。

最後になりましたが、ホストをはじめ運営に携わった方々には、沖縄という
絶好のロケーションであることもありましたが、素晴らしいホスピタリティ
のご提供、大変ありがとうございました。少し降雨もありましたが、心配さ
れていた台風の直撃もなく、沖縄のよさを実感する滞在となりました。

次回のJANOG39は、DMM.comラボ社のホストにて、金沢で開催ということで紹
介がありました。冬の金沢ということで魅力の紹介がありましたが、どのよ
うなセッションがなされるのか、今から楽しみです。


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       わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
             https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html
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 JPNIC News & Views vol.1418 【臨時号】

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