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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.1969【臨時号】2022.12.21 ◆
_/NIC
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◆ News & Views vol.1969 です
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2022年11月上旬に、イギリス・ロンドンの会場とオンラインでのハイブリッ
ド形式で開催された第115回IETFミーティングのレポートを、vol.1968より連
載にてお届けしています。連載第2弾となる本号では、IETFミーティングの中
でも、新たな問題提起が行われ、今後の本格的な活動に繋がり得る話題が集ま
るHot RFCについてご紹介します。
なお、本号の内容は、JPNICブログでもご覧いただけます。発表資料などへの
リンクも辿りやすくなっておりますので、ぜひブログでご覧ください。
第115回IETF 参加報告 [第2弾] Hot RFC
https://blog.nic.ad.jp/2022/8316/
また、第1弾についても、下記のURLよりご覧いただけます。
第115回IETF 参加報告 [第1弾] ~全体概要・IABの動向ほか~
https://blog.nic.ad.jp/2022/8295/
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◆ 第115回IETF 参加報告 [第2弾] Hot RFC
JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司
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本稿では、第115回IETFミーティング(IETF 115)について、前回の全体概要・
IABの動向などに関する記事に続いて、IETF 115で行われたHot RFCの話題を
お届けします。Hot RFCのRFCはRequest for Conversationsの略で、一緒に議
論をしてくれる人を募ったり、サイドミーティングへの参加を呼びかけたり
するプレゼンテーションが、ライトニング形式で行われる会合です。正式に
は「Hot RFC Lightning Talk」と呼ばれます。この様子は動画で公開されて
います。
IETF 115 Hybrid, Hot RFC Lightning Talks, YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=j0TLYpvK4NQ
Hot RFCのアジェンダと詳細が掲載されている下記のページには、スライドの
他に概要や活動のWebページについても書かれています。
HotRFC Lightning Talks at IETF-115
https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/agenda-115-hotrfc-sessa-06
Hot RFCでは、IETFミーティングの中でも活動の形式が固まっていない早い段
階の話題が扱われています。新しい動きを知るのに向いているセッションで
すので、参加報告の一環としてそれぞれについて概要を紹介していきます。
興味を持たれた話題については、ぜひ、スライドや上記のHot RFCのページを
ご覧いただければと思います。
■ コンピューターテイストな書き方:I-D記述の五つのレベル
(Computerate Specifying: The Five Levels of I-D Writing - Marc
will not be with us, Marc Petit-Huguenin)
RFCでプロトコルのダイアグラムが記述されることがある。かつてはテキスト
で矢印を使って記述されていたが、I-Dの記述ツールXML2RFC V3を使う時に必
要な書き方や、値の型が異なる時のPolymorphismなどいろいろと紹介。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-computerate-specifying-the-five-levels-of-i-d-writing-00
■ メッシュ:マルチバースとすべて
(The Mesh, the Multiverse and Everything, Phillip Hallam-Baker)
PKIの信頼される第三者のモデルとは異なるモデルを提唱しているPhillip
Hallam-Baker氏のトーク。 End-to-End でセキュアなメッセージ交換や連絡
を行うための仕組み Math Mesh に、共同作業とソーシャルメディアを扱える
ような追加をした。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-2-the-mesh-the-multiverse-and-everything-00.pdf
■ 規模拡張性のあるコントロールプレーンのためのIDベースのルーティン
グ・アーキテクチャ KIRA
(KIRA - A Scalable ID-based Routing Architecture for Control
Planes, Roland Bless)
ルーティングにノードIDを使用。DHT(分散ハッシュテーブル)を使う。論文は
は2022 IFIP Networking Conferenceで採録されている。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-3-kira-a-scalable-id-based-routing-architecture-for-control-planes-00
■ モバイル・ユーザプレーン進化 - ANとUpfの統合
(Maobile User Plane Evolution - Integrating AN and Upf, Jeffrey
Zhang)
5Gのユーザプレーン:Mobile Communication Network (MCN): Radio Access
Network (RAN) + Core Network (CN)において、NR基地局-集約ノード(gNB-CU)
とUPF (User Plane Function)を統合する提案と議論。
インターネットドラフト:draft-zzhang-dmm-mup-evolution-02
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-4-mobile-user-plane-evolution-integrating-an-and-upf
■ Tracerouteをスーパーチャージする
(Supercharging Traceroute, Rolf Winter)
Tracerouteは宛先までの往路のルータにICMPの応答をさせることでIPパケッ
トの経路を調べるツールで、その仕組み上、復路の経路を調べることはでき
ない。YANGモデルやIOAMを使って復路の経路を調べられるようにする提案と
議論。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-5-supercharging-traceroute-00
■ 暗号化されたクライアント・ハローのデプロイメント
(Encrypted Client Hello Deployment Considerations, Andrew Campling)
TLS1.3における暗号化されたクライアント・ハロー・メッセージ(Encrypted
Client Hello - ECH)はサーバの公開鍵で暗号化されている。しかしマルウェ
ア対策やペアレンタルコントロール等のコンテンツフィルタリングのために
はその内容が見えている必要がある。その実現のための議論。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-6-encrypted-client-hello-deployment-considerations-00
■ 会話データのコンテナvConのためのJSONフォーマット
(The JSON format for vCon - Conversation Data Container, Daniel
Petrie)
vConはダイアログ(Dialogs)、分析(Analysis)、識別(Parties)、添付
(Attachments)といった部分で構成される会話データ・フォーマット。認証や
暗号化等を含む適切な関係者にデータを共有するための仕組みの検討活動。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-7-the-json-format-for-vcon-conversation-data-container-00
■ 衛星をまたぐ暗号化トランスポート
(Encrypted Transport over Satellite (EToSat) Side Meeting
Advertisement, John Border)
衛星をまたいだ通信において暗号化を実現するトランスポートの仕組み
EToSATを提案している。そのサイドミーティングの案内。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-8-encrypted-transport-over-satellite
■ 形式的なもしくは等式を使った仕様の記述は(実装者を)助けるか
(Can formal specifications help?, Ken McMillan)
仕様の曖昧さを避けるために、形式的な記述もしくは等式を使った記述が行
われる。式を使った記述によって曖昧さを避けることができると考えられる
が、慣れていない読者がいる可能性も。是非を問う話。QUICの一部が例とし
て記述されている。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-9-can-formal-specifications-help-00
■ 大量のセキュリティスキャンやテストの問題
(The problem of mass unauthorized security scans/tests, Rich
Kulawiec)
インターネットでは大量のセキュリティスキャンやセキュリティテストが、
許可がとられることもなく日々行われている。これを問題とみなして明文化
するかどうかの相談。
ドキュメント:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-10-the-problem-of-mass-unauthorized-security-scanstests-00
■ QUIC上のSIP
(SIP-over-QUIC, Sam Hurst)
HTTP/3にインスパイアされて、Session Initiation Protocol (SIP)をQUIC上
で実現するプロトコルのマッピングについて紹介。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-11-sip-over-quic-00
■ 標準化プロセスの分析と改善
(Analysing and improving standard setting processes, Ignacio
Castro)
IETFにおける議論は複雑化しRFC化が難しくなっているため意思決定について
分析。Researching Internet Standards Processes Research Group (RASP
RG)として活動中。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-12-analysing-and-improving-standard-setting-processes-00
■ 時間変調プロトコル
(TMP: Time Modulation Protocol, Hans-Dieter Hiep)
EUが支援する次世代インターネット研究プロジェクト(Next Generation
Internet research project)の一環。原子時計のような高い分解能の時計を
用いることで、通信路の実効容量を増やしたり、End-to-Endのプライバシー
を高めたりする手法。
従来の送信者-受信者のデータ伝送はシャノンの情報理論(1948年)に基づいて
おり、送信と受信の時刻に前提が置かれない。そのため、通信チャンネルの
容量(通信速度)は送受信されるビット数のみを使いbits/秒で表された。本研
究は時刻をサイドチャネルとして利用するもので伝送容量の効率化を図るこ
とができる、とされる。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-13-tmp-time-modulation-protocol-00
■ プライバシーを保ったWebのフィルタリングは可能か
(Is Privacy Preserving Web Filtering Possible?, Dan Sexton)
Internet Watch Foundation (IWF)では有害情報のURLを提供している。しか
し、暗号化の標準化と普及によってこの手法の有効性が下がっている。解決
策模索の相談。
スライド:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/slides-115-hotrfc-sessa-14-is-privacy-preserving-web-filtering-possible-00
■ メッセージングの相互接続(MIMI)と暗号化対応のメッセージ形式(Matrix)
(Matrix+MIMI, Travis Ralston)
EUのDigital Markets Act (DMA)では、メッセージングの仕組みにおける
"gatekeeper "に対して暗号化で使われる強度の維持を要件としている。メッ
セージングの相互接続について議論するMore Instant Message
Interoperability (MIMI) BoFの案内。
MIMI BoFのページ:https://datatracker.ietf.org/meeting/115/materials/agenda-115-mimi-03
◇ ◇ ◇
IETFミーティングでは、プロトコルや仕様の他に本稿で紹介したような運用
やアーキテクチャに関わる議論が行われています。Hot RFCのようなセッショ
ンもあり、現地参加の場合、その場にいる発言者たちの考察の度合いが感じ
取られたり、議論を通じて技術の向かっている方向が見えてきたりすること
があります。
本稿が、横浜開催のIETF 116へのご参加や動向のウオッチのためにお役に立
ちましたら幸いです。
■ 今後のIETFミーティング
○IETF 116
2023年3月25日(土)~31日(金) 日本・横浜
(参加料金の早期割引は2023年2月6日登録まで)
○IETF 117
2023年7月22日(土)~28日(金) 米国・サンフランシスコ
○IETF 118
2023年11月4日(土)~10日(金) チェコ・プラハ
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わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。
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