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/P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.2065【臨時号】2024.3.12 ◆
_/NIC
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◆ News & Views vol.2065 です
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第118回IETFミーティングは、2023年11月上旬にチェコ・プラハで開催されま
した。先日発行したvol.2053から、この第118回IETFミーティングの話題を連
載にてお届けしています。第4弾となる本号では、Hackathonの様子やResearch
Group (RG)における次世代ネットワーク・ルーティングプロトコルの議論に
ついてご紹介します。
本号の内容は、JPNICブログでもお読みいただけます。発表資料などへのリン
クも辿りやすくなっておりますので、ぜひブログでご覧ください。
JPNICブログ:IETFアップデート - 第118回IETF [第4弾]
IETF 118での次世代ネットワーク・ルーティングプロトコルの動向
https://blog.nic.ad.jp/2024/9611/
なお、これまでに発行した第118回IETF関連の記事については、下記のURLか
らバックナンバーをご覧ください。
□第118回IETF報告
○[第1弾] 全体概要、BOF、tigress WG
https://blog.nic.ad.jp/2024/9459/
○[第2弾] WLS/SML/MLS/sidrops WG、HotRFC
https://blog.nic.ad.jp/2024/9462/
○[第3弾] ハイブリッド公開鍵暗号スキーム HPKE とその応用技術動向
https://blog.nic.ad.jp/2024/9476/
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◆ IETFアップデート - 第118回IETF [第4弾] IETF 118での次世代ネット
ワーク・ルーティングプロトコルの動向
グラスゴー大学 柳田涼
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現在イギリス・スコットランドにあるグラスゴー大学で博士研究員(Post
Doctoral Research Associate)をしている筆者が、今回のIETF 118で見聞き
した次世代ネットワークプロトコルやルーティングプロトコルについての動
向を簡潔にお伝えしたいと思います。
IETFでは主にワーキンググループ(WG)が標準化に向けて議論を進めていきま
すが、IETF会合では姉妹団体であるInternet Research Task Force (IRTF)も
会議を行っています。IRTFでは長期的な研究に関する議論が主に行われます。
IRTFはいくつかのResearch Group (RG)に分かれており、WGと同じようにチェ
アがいて、メーリングリストやIETF会合中のRG会議などで議論が進められま
す。
今回のIETF 118では、筆者は現在の研究プロジェクトに関連したIRTFのセッ
ションを中心に参加しました。また、会合開始前の週末に同会場で行われて
いたHackathonにも参加していました。ここではIETF Hackathonの様子、筆者
が参加したHackathon活動、そしていくつかのRGをセッションの様子を通じ
て、次世代ネットワーク・ルーティングプロトコルについての動向を紹介し
ます。
■IETF Hackathon - ILNPv6 デモ
2019年のIETF 104以来のプラハでのIETFでしたが、当時のHackathonと変わり
のない賑わいでした。筆者は2019年当初は博士課程に在籍しており、ILNPv6
(*1)というネットワークプロトコルの開発・実装に携わっていました。IETF
104では研究成果の一部をデモするために、指導教官のSaleem Bhatti教授と
共に参加していました(*2)。
今回のIETF Hackathonには、後輩の博士学生がFreeBSDで実装したILNPv6コー
ドを載せたホストを持参していたSaleem氏が参加しており、デモ・検証を手
伝うこととなりました。
今回のデモではIETF側が用意したIPv6サブネットにILNPv6を実装したホスト
を接続し、そこからインターネットを経由しセントアンドリュース大学にあ
るILNPv6を実装したFreeBSDホストにiperfやsshなどで接続することで、
ILNPv6のパケットが一般のIPv6インターネットを経由しても問題なく通信で
きることを示すものでした。
IETF 104で筆者が行ったILNPv6デモはクローズドなネットワーク上における
Linux実装のILNPv6でしたが、今回はFreeBSDに実装したILNPv6で、なおかつ
パブリックなインターネット越しに通信をするデモを行うことに成功しまし
た(*3)。ILNPv6はIPv6 Destination Option Extension Headerを利用するた
め、複数のネットワークを越える際にそれがどうなるかなど、いくつか懸念
がありましたが、このデモを通じてILNPv6のプロトコルとしての発展・実用
化への道が少し見えた気がしました。
(*1) https://ilnp.cs.st-andrews.ac.uk
(*2) https://blogs.cisco.com/developer/prague-ietf-hackathon
(*3) https://ilnp.cs.st-andrews.ac.uk/freebsd/20231105-ietf118_hackathon/
■Internet Research Task Force (IRTF)における動向
ここからは、いくつかのIRTFセッションとそこでの動向を軽く紹介したいと
思います。IETF/IRTF会合のセッションの様子は録画されており、YouTubeに
アップロードされているほか、簡易的な議事録やアジェンダも公開されてい
るので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。
▼IRTF Information Centric Networking Research Group (ICNRG)
ICNとはInformation Centric Networking の略で、他にもContent Centric
Networkingと呼ばれているほか、日本語では情報指向ネットワークと呼ばれ
たりしています。ICNRGではこの情報指向ネットワークの研究に関する議論が
行われます。ICNRGは前回のIETF 117ではセッションがなく、IETF 116以来の
会合でした。今回のセッションでは、まずチェアからドラフトに関するアッ
プデートがありました。
まず、Reflexive Forwardingドラフト(*4)について説明がありました。これ
はICNにおける単純なデータ取得にうまく当てはまらない通信を、よりよく行
うためのプロトコル拡張です。Reflexive forwardingでは、Consumerからの
データ転送に利用するreflexive interest packetなどを用います。また、他
にもFile-Like ICN (FLIC)ドラフト(*5)についてのアップデートがありまし
た。FLICはその名の通り、ファイルをICN上にてやり取りするプロトコルで
す。ファイルの分割、そして分割したセグメントの命名規則などの定義があ
ります。質疑応答では、プロトコルの柔軟さがプロトコルを煩雑にしている
といった指摘や、他の似たようなアプローチについてのやり取りがありまし
た。
セッション後半ではICNプロトコルの一つ、NDNの開発研究をしているUCLAの
研究チーム主導で構築されている、ワイドエリアNDNテストベッドのトラ
フィック解析についての発表がありました。四つのフォワーダにて320GiB、
1億800万パケットの収集を、2023年第2四半期に行った結果についての発表で
した。
IETF/IRTFでは、サイドミーティングの告知のような形の発表などもたびたび
あります。今回は、Collective Communication Optimizations (CCO)につい
ての発表がありました。CCOはIETF 118ではサイドミーティングが週の後半に
予定されていたため、ICNRGでも発表を行っていました。
CCOは分散AIなどでのデータの共有、そして分散処理などを行う上での問題に
取り組むものです。分散AIモデルトレーニングにおいて必要なデータや処理
があちこちに分散してしまう中処理結果や、元のデータをうまく必要なとこ
ろにやり取りする仕組みを構築するための問題についての発表が主な内容で
した。質疑応答では、問題点の指摘やRGとの関連性についてのやり取りがあ
りました。
最後に、中国電信によるDistributed Architecture for Microservices
Communication (DAMC)の発表がありました。マイクロサービス間の通信アー
キテクチャにおいて、ICNをうまく利用できないか?といった趣旨の発表でし
た。IPベースのIstio service meshなどのソリューションでは、柔軟性やス
ケーラビリティに欠けるとしてDAMCの開発をしているというもので、ICNを実
際に起用しようという動きの一つです。
(*4) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-oran-icnrg-reflexive-forwarding/05/
(*5) https://datatracker.ietf.org/doc/draft-irtf-icnrg-flic/
▼IRTF Path Aware Networking Research Group (PANRG)
Path Aware Networking Research Group (PANRG)では経路を『認識』し、そ
の経路の情報に応じた通信を行うプロトコルやアーキテクチャに関する研究
の議論が行われています。過去にはホストマルチホーミング・マルチパス関
連の発表などもあり、基本的には広義の経路を操作して通信する研究をする
グループです。
PANRGでは、近年次世代ルーティングプロトコルSCION (*6)についての議論・
発表が続いています。今回のセッションは、すべてのアジェンダがSCIONにつ
いての発表・議論でした。
SCIONは耐障害性を高め、経路の操作性を向上させることで、AS間でのルー
ティングを改善することを目標として開発・研究が進められています。今回
のセッションでは、SCIONに関する解説やRFCについてのアップデートがあっ
たほか、スイスの金融ネットワークSSFNがSCIONをデプロイした際の経緯・体
験について発表がありました。
最後には、SCIONが今後IETF/IRTFでどのように活動を続けるのかについての
議論がありました。デプロイメントが存在するということから、一部はIETF
での標準化、研究に関する部分の活動はIRTFに分かれるのではないか、とい
う意見などもあり、研究・プロトコルが発展・成熟していくにあたって活動
する形も変わっていく様子が見られました。
(*6) https://scion-architecture.net
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