━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ __ /P▲ ◆ JPNIC News & Views vol.2159【臨時号】2025.5.19 ◆ _/NIC ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ News & Views vol.2159 です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2025年3月に、米国のシアトルにて第82回ICANN報告会が開催されました。今 回の会合でも、引き続き新gTLDの次期ラウンドに向けた準備が進められ、現 在のところ、申請者ガイドブック(AGB)全体の意見聴取開始が近々予定されて おり、AGBの完成と理事会承認を2025年末までに終えた上で、2026年第2四半 期に受付開始が見込まれています。 なお、この第82回シアトル会合の報告会を、2025年4月18日に開催しておりま す。報告会当日の資料はWebで公開しておりますので、ぜひ本稿と併せてご覧 になってください。この報告会のレポートも、本メールマガジンで別途お届 けする予定です。 第72回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20250418-ICANN/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 第82回ICANNシアトル会議報告 JPNIC 政策主幹 前村昌紀 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第82回ICANN会議(以下、ICANN82)は2025年3月8日(土)から13日(木)まで、米 国のシアトルで開催されました。 事務総長のKurtis Lindqvist氏が閉会後に公開した会議振り返りブログ記事 (*1)によると、ICANN82には2019年以降最多となる、1,300名以上が現地参加 しました。一方、遠隔参加は500名以上、参加国・地域数は129ヶ国というこ とで、これらは前回トルコ・イスタンブール開催のICANN81より少なくなって いて、コミュニティメンバーが多く在住する北米開催の特徴と言えそうです。 地域別の参加者は、北米が53%と過半数を占め、アジア太平洋地域は14%でし た。 (*1) A Look Back at ICANN82 https://www.icann.org/en/blogs/details/a-look-back-at-icann82-25-03-2025-en ICANN82は、前回に引き続き新gTLDプログラム次回ラウンド実施準備の堅調さ が印象的な会議でしたが、いろいろなタイプのセッションに参加しましたの で、以下にご報告します。 ■ オープニングセレモニー 前回ICANN81では着任前の次期CEOとしての挨拶でしたが、今回は着任して90 日あまりが経過した正式な事務総長兼CEOとして、Kurtis Lindqvist氏が挨拶 に立ちました。他のセッションでも発言を聞きましたが、コミュニティメン バーの声に耳を傾け、必要に応じてICANNの立ち位置やご自身の考えを力説す る姿は堂々としたもので、職員や理事、コミュニティメンバーからも歓迎さ れている様子が伺えました。 そのLindqvist氏から、一つの訃報への言及がありました。それは2025年2月 に亡くなったZita Wenzel氏に関するものでした。Wenzel氏はICANN創設直前 にJon Postel氏の下、南カリフォルニア大学情報科学研究所(USC ISI)に勤 め、ICANNの設立に尽力したとともに、ICANN設立後まもなく惜しくも亡くなっ たPostel氏に代わって、設立直後の事務局体制確立に尽力なさったとのこと です。最初の理事会では、暫定副社長、CFO、書記に任命されたというエピ ソードが紹介されました。Wenzel氏は株式会社インターネットイニシアティ ブ(IIJ)社のRandy Bush氏のご伴侶としても知られていて、私も彼女に何度と なくお会いしていましたが、ICANN創設当初に関われていたことは寡聞にして 知りませんでした。このオープニングセレモニーには、Bush氏も列席してい ました。ICANN会議に参加するのは初めてだとおっしゃっていましたが、この 追悼のために招待されたようです。Lindqvist氏からは、インターネット分野 に留まらないWenzel氏の多種多様な功績が紹介されました。Wenzel氏のご冥 福をお祈りします。 その他定番である、理事会議長Tripti Sinha氏、NRO議長Hans-Petter Holen 氏などの挨拶の後、IANAを統括するKim Davies氏が演台に立ちました。 Davies氏からは、IANAの中でも雰囲気の異なる業務として、全世界のタイム ゾーンデータベースの管理が紹介されました。ちょうどオープニングセレモ ニーの前日、3月9日が、米国は夏時間に切り替わるタイミングだったのが理 由でしょうか。夏時間の採用と取りやめなどの変更は常に起こることのよう で、それをほとんど気にしなくてよいのは、IANAのタイムゾーンデータベー スが世界中のスマートフォンや航空運行システムなどさまざまなシステムに 配布されて自動的に反映されているからで、このタイムゾーンデータベース 管理も、世界中のさまざまな関係者の協力で成り立っていると、Davies氏は 強調していました。 また3月のコミュニティフォーラムで発表されるのは、コミュニティに対する 貢献が著しいメンバーを表彰する、コミュニティエクセレンス賞です。各支 持組織、諮問委員会の代表からなる選考パネルから発表されたのは、国コー ドドメイン名支持組織(ccNSO)から、.AS(アメリカ領サモア)のccTLDマネー ジャである、Stephen Deerhake氏の名前でした。Deerhake氏はccNSO評議員を 長らく務めるとともに、IANA監督権限移管に際してはICANN説明責任に関する コミュニティ横断作業部会(CCWG-Accountability)、移管後には Empowered Community Administrationで新たな業務フローの確立への貢献が顕著だった とのことです。 オープニングセレモニーに関する、録画、速記録などの資料は、こちらから ご覧になれます。 Welcome Ceremony https://icann82.sched.com/event/1vpaZ/welcome-ceremony ■ 新gTLDプログラム次期ラウンドに関して 新gTLDプログラム次期ラウンドは、事務局によるさまざまな実施準備が組織 的に進んでいます。その状況はさまざまなセッションで紹介されているとこ ろですが、ICANN82に向けた進捗状況は一つのドキュメントにまとめられ公開 されています。 New gTLD Program: Next Round - Status Update for ICANN82 https://www.icann.org/en/system/files/files/new-gtld-program-next-round-status-update-icann82-31jan25-en.pdf 前回ICANN81からの大きな進捗としては、2024年11月に申請者支援プログラム (ASP)とレジストリサービスプロバイダ(RSP)事前評価(レジストリに委託運 用を提供する技術サービス事業者の資格認定のためのもの)の申請受付が開 始されたことと、プログラムの詳細仕様を記述した申請者ガイドブック(AGB) に関して、草案全体のうち三分冊の最後が意見聴取に掛かったことです。現 在のところ、今後AGB全体の意見聴取を2025年5月末までに開始、AGBの完成と 理事会承認を2025年末までに終えた上で、2026年第2四半期に受付開始を見込 んでいます。事務局による実施準備が進む中、ICANN会議では次期ラウンドに 関する実施準備レビューチーム (Implimentation Review Team, IRT, 本件の IRTの略称は Subpro IRT) が五つのワーキングセッションにわたって作業を 進めました。IRTは事務局における実施準備の状況について、GNSOを中心とす るコミュニティメンバーによって確認するものです。ICANN会議の会期中は、 五つのセッション以外にも週次のWeb会議が持たれますが、次期ラウンド募集 の数々のテーマ順にレビューされている状況が分かります。 Subpro IRTに関する各種情報、資料、議事録などは、以下のコミュニティ Wikiからご覧いただけます。 Subsequent Procedures Implementation Review Team https://icann-community.atlassian.net/wiki/spaces/SPIR/overview?homepageId=112197640 新gTLD次期ラウンドに関するセッションのもう一つとして、文字列類似性評 価(String Similarity Evaluation, SSE) に関するセッションもありました。 String Similarity Evaluation and New gTLD Program: Next Round https://icann82.sched.com/event/1vpaL/string-similarity-evaluation-and-new-gtld-programnext-round これは国際化ドメイン名(IDN)に関連するもので、新gTLD次期ラウンドのポリ シー策定プロセス(Subpro PDP)の他に、IDNに関する迅速PDP (IDN EPDP)でも 検討がなされ、その結果として次期ラウンドに向けて実施準備されるもので す。IDNでは申請される文字列に対して、混同が予想される文字列をラベル生 成ルールに従って定義し、異体字ラベルとして登録可能(allocatable)にする もの、登録禁止(blocked)にするものを定めますが、これを、次期ラウンドで の申請文字列だけでなく、既存の登録済みTLDや予約語、ccTLDにもわたって 比較することが定められています。セッションでは、ICANNのIDNプログラム 責任者や、IDN EPDPに参加したコミュニティメンバーからSSEの概要が解説さ れました。SSEのプロセスは定義に従ってかなりの部分を自動化しており、自 動化プロセスの結果を最終的にSSEパネルが判断する、というワークフローに なっています。 ■ 新たな理事 ICANN82では、新たな理事が2名誕生しています。ccNSOでは、第12議席を任期 半ばで辞任したKatrina Sataki氏の後任を選ぶ選挙が進み、その結果ICANN82 の直前3月5日に、Byron Holland氏の指名が発表されました。Holland氏は、 カナダのccTLDマネージャであるCIRA (Canadian Internet Registration Authority) のCEOを2008年から務め、ccNSO評議会をはじめとするICANNの会 議体を多数経験しています。Holland氏の任期は発表即日に始まったため、 ICANN82では既に理事として壇上に現れ、公開理事会では監査委員会および財 務委員会への任命も決議されました。 また、GNSOでは、第13議席に座るBecky Burr氏が、年次総会となる次回 ICANN83で任期制限いっぱいの3期9年の満了を迎えます。このため後任となる 理事の選挙が進んでいました。ICANN82までにそのプロセスが終了し、現在 GNSO評議会議長を務めている Greg DiBiase氏が選出されました。会期中3月 12日(水) に開催されたGNSO評議会会合では、DiBiase氏の指名を確認する決 議が可決され、DiBiase氏は指名を祝う拍手に包まれていました。 ■ ASO ACによるICP-2 (新RIR設立要件)改定作業 アドレス支持組織(ASO)アドレス評議会(AC)は、ICANN82では作業セッション を持ちませんでしたが、理事会とASOの合同セッションでは、四つのRIRのCEO が勢ぞろいして、ACメンバーとともに理事会との意見交換を行い、ICP-2、新 RIR設立要件文書改定の進捗や内容の確認を行いました。ASO ACはICANN82の 2週間前となる、マレーシア・プタリンジャヤで開催されたAPRICOT 2025の会 期後に集中作業を行い、改定案の起草作業を終え、最終確認の段階にありま した。改定案は2025年4月14日に公開され、各RIRとICANNにおいて意見聴取の プロセスに入っています。ICANNの意見聴取の締め切りは、2025年5月27日と なっており、RIRではそれぞれの地域で議論用のメーリングリストが作成され るとともに、ウェビナーやRIR会合で意見聴取セッションが持たれます。 ICANNパブリックコメントページ Governance Document for the Recognition, Maintenance, and Derecognition of RIRs https://www.icann.org/en/public-comment/proceeding/governance-document-for-the-recognition-maintenance-and-derecognition-of-rirs-14-04-2025 NRO: Consultation on Draft “Governance Document for the Recognition, Maintenance, and Derecognition of Regional Internet Registries” https://www.nro.net/consultation-on-draft-governance-document-for-the-recognition-maintenance-and-derecognition-of-regional-internet-registries/ ■ 最後に 今回の開催地シアトルは、ICT業界にとっては、MicrosoftとAmazonというビッ グテックの二雄を擁する都市、そしてスターバックスの本拠地という印象が 強いですが、ホテルやレストランのスタッフが、皆さん一様にとてもフレン ドリーで親切だったことが強く心に残りました。 ICANN82のシアトル会議の報告会は、2025年4月18日(金)に実施し、レギュラー 参加者の方から詳細なご報告をいただきました。資料は以下のページからご 覧いただけます。 第72回ICANN報告会 https://www.nic.ad.jp/ja/materials/icann-report/20250418-ICANN/ なお、上記報告会の内容については、本メールマガジンでもレポートをお届 けする予定です。 次回ICANN83・ポリシーフォーラムは、2025年6月9日(月)から12日(木)にかけ て、チェコのプラハで開催されます。遠隔参加も可能で、その場合にも参加 登録が必要です。 ICANN83 Praque Policy Forum https://meetings.icann.org/en/meetings/icann83/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ わからない用語については、【JPNIC用語集】をご参照ください。 https://www.nic.ad.jp/ja/tech/glossary.html ◇ ◇ ◇ メールマガジン以外でも、情報を発信しています! 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