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【 3 】News & Views Column 「ライフラインとしてのインターネット」
JPNIC IP検討委員会メンバー
KDDI(株)
丸田徹
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最近のブロードバンドインターネットサービスの普及には目を見張るものがあ
る。日本国内のインターネット常時接続回線数は、ADSL、CATV、FTTHを合わせ
て2003年7月現在、約1,100万回線で、昨年の2倍にのぼる。常時接続回線を使っ
て真っ先に感じるメリットは、メールやウェブを見るときにいちいちダイヤル
アップしなくてもよいということであるが、メリットはそれにとどまらない。
ニュースや映画などの映像コンテンツを見たり、家にサーバを置く、ネットワー
ク対応カメラを家に置いて外から時々様子を見るなど、利用方法も多様化して
いる。常時接続をきっかけに、インターネットが従来の枠を超えた使い方をさ
れ始めている。
国内で誰でも商用インターネットを利用できるようになったのはつい10年ほど
前の話である。それまでは大学や研究機関で使われていたわけであるが、当時
インターネットはIPネットワーク、TCP/IPなど、さまざまな呼び方がされてい
た。「インターネット」という呼び名が定着したのは商用インターネットサー
ビスが開始されてからであり、名前の普及とともに「インターネット」という
サービスの概念が市民権を得たといえる。ただこの時点では、インターネット
=メール・ウェブという形で一般に認知されていたと思う。
では、ブロードバンドはどうか。ブロードバンドは一般にメガビットクラスの
高速インターネット常時接続という意味で用いられているが、あっという間に
定着したように感じる。ブロードバンド接続がこれだけ一般に普及してきてお
り、ブロードバンドならではの映像コンテンツ配信サービスも増えつつある。
また、常時接続という特性からIP電話サービスもブロードバンド接続とセット
で提供されている。ブロードバンドインターネットの登場により、もはやイン
ターネット=メール・ウェブという図式では閉じなくなっていると感じる。で
は、ブロードバンド時代におけるインターネットは、メール・ウェブ・IP電話・
TVコンテンツ・情報家電……どこまでが当たり前として定着していくのか。い
ましばらく見守る必要があろう。
一つ確かなことは、インターネットが電気・電話・ガス・水道とならんで個人
のライフラインとなってしまったということだろう。IP電話、インターネット
ショッピング、ネットバンキングなど、インターネットの利用が個人の生活に
浸透し、欠くことのできないものとなっている。また、使い方が多様になって
きており、通信品質やセキュリティに関するニーズも高まってきている。もう
ベストエフォートだから、といういいわけはできない。
東京に直下型地震がおきたら、というTV特番で、電気が何日も止まり、ビルが
倒壊、火事が広範囲に広がる、というシミュレーションを紹介していた。本当
におきたらインターネットはどうなるか想像すると身震いするものがある。国
内のインターネットを支えるインフラは、まだまだ東京一極集中である。ライ
フラインであるというには脆弱であるといえるかもしれない。ブロードバンド
時代のインターネットが社会インフラとして十分な信頼性を確保するために、
設備の二重化等にとどまらず、東京に集中している国内インターネットの構造
を地域分散していくなど、一歩踏み込んだ信頼性向上を考える必要があるのか
もしれない。