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【 2 】News & Views Column
「かなり私的なインターネット利用シーン(小児糖尿病とのかかわり)」
JPNIC IPアドレス検討委員
日本電気株式会社
桑原精一
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子供が1型糖尿病を発症したのは今から3年前の1歳4ヶ月の時でした。発症率が
約10万人に1人と非常に低く発症原因も未解明な部分が多い病気の為、親も病
気に対する知識が全くなく、また病院側も低年齢での発症患児の治療に対する
経験が浅かったこともあり、お互いに試行錯誤の中治療や教育が進められ、そ
の情報の少なさが、これから日常生活の中で病気のケアを行うことについて大
きな不安原因となりました。
そのような状態の中でとても役に立ったのがインターネットでした。妻もイン
ターネットユーザーだった為、交代で入院中の子供に付き添う中片っ端から病
気に関する「キーワード」を検索しました。「糖尿病」で検索すると非常に多
くの検索結果が出てくるのですが、目的にあった内容のWebサイトを見つける
ことはとても困難でした。2型糖尿病、いわゆる成人病の糖尿病についてのWeb
サイトは数多くあるものの、1型糖尿病についてのWebサイトは少なく、その中
でも乳幼児期から発症した事例やそのような患児についての病院のWebサイト
は更に少ないという状況でした。その中で幸運にも比較的同時期に発症した子
供をもつ親が患児の成長記録をつづったWebサイトを発見することができ、そ
れからはそのWebサイトが私達夫婦の教科書的な存在となりました。子供が難
病に冒されそのケアだけでも大変な中、更にそれをインターネットで公開して
誰かの役にたてようとされている人がいた事の驚きとともにインターネットの
普及の広さに感嘆したものです。
最近の1型糖尿病を取り巻く環境は変化が激しく、この3年間で超即効型・超遅
効型のインスリンが実用化されたり、膵島(すいとう)細胞の移植でも成功例が
発表されたりQOL(*1)の向上や将来完全治癒の可能性もでてきました。そのよ
うな情報収集にインターネットは、もはや不可欠なツールであり、糖尿病に限
らず、身近に相談できる相手の少ない患児の親同士のコミュニケーションにも
非常に有効であると思えます。
このように発症例の低い病気の子供を持つ親にとって、インターネットはとて
も有効な情報源であり情報発信ツールですが、個人情報掲載の安全性の問題な
ど不安材料がまだまだあることも事実です。一部で実施されている病院と患者
とのインターネットによる相互情報交換も個人情報の機密確保が重要ではない
かと考えられます。
インターネットの普及が難病の患児や家族にとって希望を与えてくれることを
願ってやみません。
(*1)QOL: quality of life
人々の生活を物質的な面から量的にのみとらえるのではなく、精神的な豊
かさや満足度も含めて、質的にとらえる考え方。医療や福祉の分野で重視
されている。