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【 2 】News & Views Column
「インターネット時代における「通信の秘密」の在り方」
社団法人日本インターネットプロバイダー協会 会長補佐/
ニフティ株式会社 木村孝
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「通信の秘密」は日本国憲法第21条2項に由来し、電気通信事業法でも電気事
業者の義務として定められています。インターネットの接続サービスを提供す
るISPやメールのサービスを提供するASPなどの電気通信事業者は厳格にこれを
守っています。
しかし通信の秘密の内容に関する現場の解釈は、インターネットにおける迷惑
メールやフィッシング対策、ウイルスや不正侵入などのセキュリティ対策、違
法有害コンテンツなどをめぐって揺れ動いているのが現状です。通信の秘密は
内容のみならず、通信の存在そのものまでが対象となりますので、メールで言
いますと本文やヘッダー部はもちろん、SMTPのHELOからMAIL FROMも対象です。
迷惑メール対策について今年5月13日に特定電子メールの送信の適正化等に関
する法律の改正が成立しました。この法律では「送信者情報を偽った送信の禁
止」という規定が新たに設けられました。迷惑メールを送信する人間はほとん
どの場合送信者情報を詐称するため、送信者が特定できず迷惑メール送信者に
対する処置命令の実効性がないことが背景にあります。
送信者情報の詐称の判定方法は、送信者ドメイン認証などの様々な技術が近年
アメリカで開発されました。しかしこれを適用して詐称かどうか調べるために
はMAIL FROMなどメールの通信内容を受信側のサーバーで確認する必要があり
ます。
伝統的な解釈では通信内容に関するものはすべて通信の秘密で保護されますか
ら、これをやる電気通信事業者は通信の秘密を侵すことになります。受信者か
ら事前に個別の同意をとった場合のみ可能と言われています。
現在の法体系はテレフォニー時代に作られたものなので、インターネットの通
信に十分対応しきれていないため、解釈でこれを解決してきているのが現状で
す。「インターネット時代における通信の秘密とは何か」というテーマについ
て日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)では最近研究会を始めました。