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【 2 】News & Views Column
       「次世代トランスポートプロトコル: SCTP」
                  株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所  西田佳史
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皆さんも普段から電子メールやウェブブラウジングなど様々な形で、インター
ネットを利用していることと思います。この電子メールの送受信やウェブブラ
ウジングには、TCP/IPという通信技術が用いられています。

TCP/IPの通信規格の中でも特にTCPと呼ばれる技術は、現在のインターネット
上の通信の8割以上で利用されており重要な役割を果たしています。実はこの
TCPの通信規格は、1980年代の後半に確立されたもので、実に20年近くもほぼ
同じ仕様のまま、現在でも利用され続けています。しかしながら、20年の間に
ネットワーク技術が大きく発展したために、当時の設計思想に基づいたTCPで
は対応できない問題が生じており、最近ではそれが無視できないレベルになっ
てきてしまいました。

このようなことから、現在インターネット上の技術の標準化を行うIETFなどで 
TCPに代わる技術としてSCTP(Stream Control Transmission Protocol)という
新しい通信技術の研究開発が行われています。SCTPの目標は、TCPでは対応で
きない新しい形の通信をサポートすることです。

SCTPの大きな特徴の1つは、1つの通信に複数のIPアドレスを用いることができ
ることです。TCPは、1つの通信に1つのIPアドレスを用いることしかできませ
ん。これはTCPが1台のPCは、1つだけIPアドレスを持っているという前提のも
とに設計されたためですが、これは現在のネットワーク機器の実態に合ったも
のではありません。

例えば今のノートPCやPDAでは、モデム用の電話回線、無線LAN、イーサネット
などを標準的に装備しています。これらの通信デバイスを利用する場合は、そ
れぞれの通信デバイスにIPアドレスが設定されます。しかしTCPでは1つの通信
で1つのアドレスしか扱えないために、同時にこれらの通信デバイスを利用し
て通信することができません。一方、SCTPでは同時に複数の通信デバイスを利
用してデータ転送を行うことも可能です。

また、最近の携帯電話の中には無線LAN機能をサポートした機種がいくつかあ
ります。このような種類の携帯電話を利用する際に、無線LANが利用できるエ
リアに入れば自動的に通信を無線LANに切り替え、エリアから出ると再び携帯
電話網を利用した通信に移行するような機能があれば、通信の効率を向上させ
ることや通信料金を軽減することができます。しかし、TCPでこのような機能
を実現しようとすると、一旦通信を切断して、再接続するなどの手間がかか
り、スムーズな切り替えができません。 これに対し、SCTPでは通信を切断す
ることなくスムーズに通信を切り替えることが可能です。

この他にも、SCTPには部分信頼性という機能もあります。TCPはすべてのデー
タを完全な形で相手に送信するように設計されているため、転送中にデータが
1バイトでも欠損した場合、欠損した部分が相手に届くまで、繰り返し再送を
行います。このため、映像や音声などのように、データの一部が欠損しても影
響の少ないものの転送にTCPは不向きとされてきました。一方、SCTPは転送す
るデータの中に、再送が必要なものと必要でないものを指定することができま
す。この機能を用いることによりSCTPでは、例えばMPEGのIフレームの転送だ
け再送を行い、他のフレームは再送をしないといった特殊なデータ転送を行う
ことができます。

以上簡単ですが、次世代トランスポートプロトコルの概略について解説しまし
た。

SCTPのコードはまだ実験段階ではありますが、既に最新のLinuxカーネルでサ
ポートされています。(*1) またBSD系ではKAMEプロジェクトなどからリリース
されているコードを利用することができます。(*2) 
ネットワークプログラミングに興味のある方は是非一度新しいプロトコルを試
してみてください。

*1 http://www.kernel.org/ から最新の Linuxのカーネルコードを入手できま
   す。 
*2 http://www.kame.net/ から最新のKAME実装を入手できます。


■ 著者略歴

西田佳史

1999年、慶應義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程終了。博士(政策・
メディア)

1999年より株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所にて、トランスポー
トプロトコル、輻輳制御技術などの研究に従事。WIDEプロジェクトにて Area 
Director、SCTPワーキンググループチェアを務める。


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