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【 1 】特集 「2007年のインターネットキーワード」
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インターネットとそれを取り巻く環境は、技術だけでなくユーザーの意識や利
用方法、インターネットに対する社会情勢など、ここ数年目まぐるしい速さで
変化しています。
毎年の新しい技術や利用方法が生まれ、日々変化を遂げていくインターネット
ですが、今年はどのような動きが生まれてくるのでしょうか?
2007年はどのような出来事に注目すべきなのか、JPNIC理事でありインター
ネットの最先端で活躍される6名の方に、ポイントとなるキーワードをそれぞ
れ一つずつ挙げていただきました。
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◆氏名:後藤 滋樹(JPNIC理事長/早稲田大学 理工学術院 教授)
◆2007年のInternet Keyword:「ネットワークの『向う側』」
[理由]
情報ネットワークはコスト構造の変化をもたらします。その恩恵を一口
で言えば「他力本願」を容易にすることです。自分で情報を持たなくて
も他者に依存して暮らすことができます。その情報を処理することも他
人に任せることができます。この構図を積極的に捉えると、他人のため
に活動する意義が深くなります。つまり、自分の活動の影響を社会の広
い範囲に及ぼすことができます。人間は社会の中で「手応え」を感じな
がら生きていますから、このような変化が社会全体に変革を起こす筈で
す。既に変化は始まっているのですが、本格的な展開までには、まだ時
間がかかりそうです。
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◆氏名:小林 洋(JPNIC理事/KDDI株式会社)
◆2007年のInternet Keyword:「バーチャル社会」
[理由]
SNSに代表されるWeb2.0のツールの発達が目覚しく、バーチャルの空間
を活用してのコミュニケーション手段がますます発展するものと思われ
る。同時にゲームの「仮想都市」で代表されるようにバーチャルの空間
を現実と混同して犯罪に至るようなトラブルの多発も予想される。
いずれにしてもバーチャル社会の発達を如何に人々が現実社会の中でコ
ントロールし、役立てていくか、それともコントロールできずに振り回
されていくか正念場の年になりそうである
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◆氏名:西郷 英敏(JPNIC理事/エヌ・ティ・ティ・コミュニケーション
ズ株式会社 ブロードバンドIP事業部長)
◆2007年のInternet Keyword:「Google Earth」
[理由]
これまで私達が簡単には得られなかったような深淵な知識が、インター
ネットを介して瞬時に得られるようになりました。その象徴として、こ
のキーワードを選びました。
今も数日単位で成長を繰り返すとともに、NASAの膨大なデータとの結合
さえも視野に入ってきています。今後の進化に注目するとともに、他の
分野でもこれと似た取り組みが広がり、逆にインターネットへの触媒作
用を起こして、次なるステージに発展する日が来るのではないかと期待
したいところです。
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◆氏名:竹村 純(JPNIC理事(非営利団体協議会分野担当)/システムハウ
スCAT 代表)
◆2007年のInternet Keyword:「Steering Literacy」
[理由]
急速に普及してきたインターネットは、さまざまな面で根本的な変化が
求められてきています。インテリジェンスのないインフラは、それを補
う為にルール(常識とか法律とか)が存在していますが、インターネッ
トは技術優先でしかもあまりにも急速に発展してきた為、ほとんどの人
が戸惑い、あるいは紐の切れた凧のごとく好き勝手に振舞っています。
このアナーキーな状態を少しでも早く何とかしなければならない。かと
いって、国などに全てを委ねてしまうことはインターネットの基本的な
コンセプトに反するでしょう。インターネットにかかわる全ての人達が
自ら運用リテラシーを向上させ、自らの意思でルールを定めていかなけ
ればならないと思います。上位層のガバナンスだけでなく、いろいろな
意味での底辺のスキルアップを図っていく必要があるでしょう。今から
でも遅くはない。まだ間に合います。ということで2007年のキーワード、
「Steering Literacy!!」
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◆氏名:前村 昌紀(JPNIC理事(IP分野担当理事)/フランステレコム日本
研究所)
◆2007年のInternet Keyword:「IPv4アドレス枯渇に向けた具体的な動き
が起こる」
[理由]
IPv4アドレスの枯渇に関しては10年ほど前から断続的に話題に上ってい
ますが、JPNICで2006年4月に報告書を出したように、数年後を枯渇時期
とする具体的な予測が出てきています。
IPアドレスポリシーの観点だけでもさまざまな対応が必要ですが、むし
ろIPv4アドレスの割り振りが終了した後の対応に並々ならぬ労力と投資
が必要になるのは事業者の方々です。
2007年はJPNICとしての主要な活動の一つとしてIPv4アドレス枯渇に向
けた対応を行いますが、事業者の皆さんでもIPv4アドレス枯渇を現実感
を持って認識なさって、具体的な議論や動きがあるだろうと思います。
また、JPNICとしてはそのような動きを促すべく推進してまいりたいと
思います。
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◆氏名:丸山 直昌(JPNIC理事(インターネットガバナンス・DRP分野担当
理事)/統計数理研究所 データ科学研究系 助教授)
◆2007年のInternet Keyword:「新しいgTLDの追加」
[理由]
10年前までは、一般の人々が登録できるgTLD(分野別トップレベルドメ
イン名、 Generic Top Level Domain Name)は .com .org .net だけで
あった。ICANNが創設された一つの理由は「gTLDを増やせ」という要望
に答えるためであった。これまで ICANN はいくつかの gTLDを実際に増
やしたが、その手続きは安定しておらず、定常的な作業として確立して
いなかった。今年2007年はようやく gTLD追加が定常的な作業として確
立される展望が開けそうな気配が伺える。
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いかがでしたでしょうか? なるほどと思えるものや、意外と思われるものな
どあったかもしれません。いずれにしても、インターネットと深く関わってい
らっしゃる方の多い読者の皆様にとって、これらのキーワードが何かしらの指
針になれば幸いです。