2003/05/09 理事会
資料 4
IDN-adminガイドラインに関するJPNICのポジションについての
評議委員会からの提案
1. IDN-adminガイドラインとは
1.1 IDN(国際化ドメイン名)の標準化動向
1.2 標準化を経た今、何が問題なのか
1.3 漢字圏からの提案としての「IDN-adminガイドライン」
1.3.1 IDN-adminガイドラインの原則
1.3.2 IDN-adminガイドラインの位置づけ
1.3.3 IDN-adminガイドライン策定におけるJPNICの位置づけ
2. JPNIC評議委員会からの提案:JPNICのポジション
付録. 標準化後のIDNに関する動向
(1) IESG :IDN運用に関する声明
(2) ICANN:契約レジストリにIDN登録を認めるにあたっての基準の提案
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1. IDN-adminガイドラインとは
1.1 IDN(国際化ドメイン名)の標準化動向
2000年、IETFに設置されたIDN WGを中心に進められてきたIDN(Internation-
alized Domain Name; 国際化ドメイン名)の標準化作業は、本年3月7日に出さ
れた3本のRFCで一定の結論に達しました。
■RFC3490:IDNA(Internationalizing Domain Names in Applications)
国際化ドメイン名のアーキテクチャと処理手順を規定。国際化ドメイン名
で使用できる文字はUnicodeで規定された文字(一部禁止文字を除く)と
し、ユーザ側のアプリケーションで国際化ドメイン名の解釈を行うことや、
入力された文字列をNAMEPREPという仕組みで正規化すること、既存のDNS
との互換性を保つために国際化ドメイン名をPunycodeと呼ばれるアルゴリ
ズムでASCII文字列に変換することなどが定められています。
■RFC3491:NAMEPREP(A Stringprep Profile for Internationalized Domain
Names)
「文字コードとしては異なる文字だが、インターネットのプロトコルにお
いては同 じ文字として扱いたい文字」について、あらかじめ設定してお
いた基準に従って標準形へと変換(文字列の正規化)するための枠組みを
規定。
■RFC3492:Punycode(A Bootstring encoding of Unicode for
Internationalized Domain Names in Applications)
国際化ドメイン名で使用されるUnicodeによる文字列を、ASCII文字のみか
らなる文字列に変換するためのアルゴリズムです。
┌【例】──────────────────────────────┐
│ │
│ ユーザが文字列を入力 │
│ │
│ 「日本語ドメイン名EXAMPLE。jp」 │
│ │
│ ↓ NAMEPREPによる正規化 │
│ │
│ 「日本語ドメイン名EXAMPLE.jp」 │
│ │
│ ↓ Punycodeによる変換 │
│ │
│ 「xn--example-6q4fyliikhk162btq3b2zd4y2o.jp」 │
│ │
└─────────────────────────────────┘
1.2 標準化を経た今、何が問題なのか
上記3本のRFCは、「文字」の持つ性質にのみ基づいた技術標準であり、「言語」
の概念に対する配慮はなされていません。(ドメイン名は本来「言語」の概念
を含まない「識別子」として設計されています。)
言語の中には、等価または等価に近い意味を持つ文字が存在する場合がありま
す。このような中でIDNの登録に特段の制約も設けない場合には、サイバース
クワッティング、あるいは、誤解や混乱を招くような文字の組み合わせで登録
がなされるとの懸念があります。
特に、中国、台湾においては、繁体字(e.g. 國)と簡体字(e.g. 国)の問題
があり、どの文字とどの文字を等価とすべきか議論が進められています。また、
ccTLDと異なり「国」との関係を持たないgTLDにおいて「言語」概念をどのよ
うに扱うべきかについても大きな問題とされています。
例1:「ab.COM」 =「AB.COM」 =「aB.COM」 =「AB.COM」 これらは等価
例2:「国沢.COM」=「國澤.COM」=「国澤.COM」=「國沢.COM」これらは?
例3:「AOL.COM(AはLATIN A)」=「AOL.COM(AはGREEK A)」これらは?
1.3 漢字圏からの提案としての「IDN-adminガイドライン」
上記のような懸念をふまえ、JET(Joint Engineering Team; JP, KR, CN, TW
の各NICで構成される技術検討グループ)を中心に検討され、インターネット・
ドラフトとしてIETFに提案されているのが、「Internationalized Domain
Names Registration and Administration Guideline for Chinese, Japanese
and Korean」(以下、「IDN-adminガイドライン」と言います)です。
これは、文字通り、中国語、日本語、韓国語(これらを総称して「CJK」と言
います)のためのIDN登録管理のためのガイドラインであり、その主な内容は
次のようになっております。
1.3.1 IDN-adminガイドラインの原則
(a) IDNラベルは1つまたは複数の「言語」と関連づけて登録されるべき
IDNラベルは技術的にはUnicode文字列であり、あらゆる「言語の文
字」の組み合わせが可能な単なる識別子です。ラベルには何らかの
「意味」が求められるものではありませんが、IDNラベルは、特定の
言語を使った「名前」や「フレーズ」である場合が多いのも事実です。
IDNラベルを1つまたは複数の「言語」と関連づけて登録することによ
り、ユーザーの混乱回避に役立つ可能性があります。
例えば、「国沢」というIDNラベルを登録する場合、それが「日本語」
なのか「中国語」なのかを指定することになります。(これに伴い、
使用する等価文字表が決まります。)
(b) あるIDNラベルが登録された場合、そこに含まれるすべての「等価文字」
は、その登録者のために予約されるべき
予約された文字列は、名前解決されない状態となりますが、登録者が
希望すれば「別名」として使用することが可能となります。なお、
「等価文字」は言語毎に決められることになります。
例えば、「国」と「國」が等価文字、「沢」と「澤」が等価文字と定
められている場合、「国沢」を登録すると「國澤」「国澤」「國沢」
が予約されることになります。
(c) 等価文字が存在する言語においては、推奨文字を決めて、それをIDNラベ
ルで使用すべき
これにより、エンドユーザーが、名前解決できるIDNを正しく予測で
きる可能性が高まります。
(d) ゾーン管理者は、予約された等価文字列の使用についてさらなる制限を
加えても良い
(ゾーンレベルのポリシーは、IDN-adminガイドラインの範疇外)
(e) あるIDNラベルとその予約された等価文字列は指定された言語において
一つのパッケージとみなすべき
ドメイン名の移転や削除もこのパッケージ単位で行われることになり
ます。
例えば、『「国沢」「國澤」「国澤」「國沢」』というパッケージが
あった場合、このうちの一つだけをとって移転や削除をすることはで
きないことになります。
1.3.2 IDN-adminガイドラインの位置づけ
+-----+ +-----+ +--+ +--+
Layer3 |zh-cn| |zh-tw| |ja| |ko| .....
+-----+ +-----+ +--+ +--+
+----------------------------------+
Layer2 | IDN-admin for CJK |
+----------------------------------+
+---------------------------------------------------------+
Layer1 | RFC (IDNA, NAMEPREP, Punycode) |
+---------------------------------------------------------+
(L1) IDN技術標準
IDN登録を行うレジストリは、3つのRFCに準拠しなければなりません。
(L2) IDN登録実施のガイドライン
IDN登録を行うレジストリは、その実施にあたり、IDN-adminガイドラ
インを採用することができます。
(L3) 各言語毎の等価文字表
IDN-adminガイドラインを採用するレジストリは、サポートする言語
を決め、その言語の等価文字表を定めて使用する必要があります。
1.3.3 IDN-adminガイドライン策定におけるJPNICの位置づけ
JPNICは、JETの構成メンバーであり、CN, TW, KRの各NICとともにIDN-admin
ガイドラインの策定を推進してきました(インターネット・ドラフトの著者
の一人には小西理事も含まれます)。
IDNの当初の議論においては、IDNの「プロトコル」の中に等価文字の処理を
含めるべきであるとの意見がありましたが、その方向で議論を進めると「プ
ロトコル」の標準化の議論が収束しない可能性が大きかったため、「言語」
概念に関わるポリシーは「プロトコル」の外に切り出した形で解決を図る方
向となりました。その結果が、IDN-adminガイドラインです。
これによりJPNICは、IDNの技術の標準化を引き続き推進するとともに、他方、
漢字圏に属するものとして、他の漢字圏諸国とともに、IDN登録時に予想さ
れる問題の解決策を模索・検討してきました。
JPNIC内においては、DOM-COM(ドメイン名検討委員会)、DRP-COM(DRP検討
委員会)にて同ガイドラインの有効性についての議論がなされ、同ガイドラ
インは有効であるとする結果となっています。
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2. JPNIC評議委員会からの提案:JPNICのポジション
本件は、2月14日~2月18日にかけて、評議委員会のmail voteに付されました。
審議事項と審議結果は次の通りです。
【審議事項】
IDN-adminガイドラインにおける日本語の扱いについて
(以下の2件は、IDN-adminガイドラインは有効であるとの前提に基づいた
審議となっております。)
(1) ドメイン名(IDN)における日本語の扱い(日本語の等価文字表)
◎方針:日本語ドメイン名においては、異なる文字コードを持つ文字
はすべて異なる文字として扱う。(下記、選択肢1)
┌──────────────────────────┐
│ │
│ ■選択肢1 ■選択肢2 │
│ ---- ---------------- ---- ---------------- │
│ 文字 等価とみなす文字 文字 等価とみなす文字 │
│ ---- ---------------- ---- ---------------- │
│ 国 国 国 国、國 │
│ 國 國 國 國、国 │
│ 辺 辺 辺 辺、邊、邉 │
│ 邊 邊 邊 邊、辺、邉 │
│ 邉 邉 邉 邉、辺、邊 │
│ 一 一 一 一、ー │
│ ー ー ー ー、一 │
│ │
└──────────────────────────┘
◎理由:(1) 2001年2月に日本語ドメイン名(汎用JPドメイン名)の
登録を開始するにあたって、JPNICにて十分な検討を行
なった結果として「異なる文字コードを持つ文字は全て
異なる文字として扱う」という方針が決定された。その
後、今日に至るまで、問題は生じていない。
(2) 万が一知的財産権問題が生じた場合は、DRP(ドメイン
名紛争処理)により処理可能であると考える。知的財産
権保護という意味では、等価文字表によって等価文字列
のドメイン名登録が一括してできることは望ましいとの
考えもあるが、それを実現するには、相応の追加的な登
録・維持コストも見込まれる。このような点を考慮に入
れるならば、DRPによる事後的な処理でも十分であり、
これまで通りの対応が適切であると考える。
(2) 日本語の等価文字表の管理責任者
方針:日本語の等価文字表の作成および維持管理の責任は、日本語
JPドメイン名の登録管理ポリシーを持つJPRSが担うのが適切
である。
理由:日本語JPドメイン名の運用責任主体と直結することにより、
日本語ドメイン名利用者に混乱を招かないようにするため。
(日本語の等価文字表とJPRSが決定し登録管理を行う日本語
JPドメイン名における参照テーブルは、同じものとなるよう
にすべきである。)
【審議結果】
賛 成:8名
反 対:1名
未表明:1名
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付録. 標準化後のIDNに関する動向
(1) IESG :IDN運用に関する声明
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2003/20030214-02.html
(2) ICANN:契約レジストリにIDN登録を認めるにあたっての基準の提案
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2003/20030318-01.html