2003/2/13 評議委員会
資料 3-1-1
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ドメイン名検討委員会
2003年2月13日
IDN-adminに関する検討報告書
1.はじめに
国際化ドメイン名(IDN:Internationalized Domain Name)の導入に際し、異なる
複数のドメイン名を等化なものとして扱うという新しい考え方(IDN-adminという)
が提案され、実装される段階になっており、日本語ドメイン名における対応につい
てドメイン名検討委員会で検討した結果を以下報告する。
2.背景
(1)IDNに関する中国語圏からの要請
国際化ドメイン名の導入に際し、
・同一文字の別表現 例)中国本土における繁体/簡体、ex. 國と国
・異体字 例)日本における異体字、 ex. 辺と邊と邉
・形が酷似している文字 例)日本における一(数字の一)とー(長音記号)
をどう扱うべきかという議論が中国語圏のNIC(CN, TW, MO, HK)により提起された。
この議論は、中国本土では、政策的に繁体(ex.國)と簡体(ex.国)は同一のも
のであるとみなす必要があり、例えば、國.net.cnと.国.net.cnは同じドメイン名と
みなす必要があるという要求に端を発している。
これは、「異なるコードポイント(計算機内で文字を表現するための0,1の列)
を持つ文字は、ドメイン名においても異なるものである」という技術上の一般則に
対し、「繁体(ex.國)と簡体(ex.国)は異なるコードポイントを持っていても同
一文字として扱う」という例外的な処理を必要とすることを意味する。
(2)解決への努力
言語概念の導入に伴うこのような課題の解決に向けた検討がJET(Joint Engineering
Team: JP, KR, CN, TWの各NICで構成される技術検討グループ)により行われ、ドメ
イン名において複数の文字を同一の文字とみなすことができるメカニズム(IDN-admin
と呼ぶ)を検討し、IETFに提案されている。
当初の議論では「プロトコル」の中に異体字の処理を入れようという意見があっ
たが、その意見では、「プロトコル」の標準化の議論が収束しない可能性が大きかっ
たため、言語特有のポリシーは、「プロトコル」の外に切り出した形のメカニズム
で今回の収束を迎えている。
(3)日本語ドメイン名におけるポリシーの検討
以上より外に切り出されたIDN-adminにおける日本語のポリシーに関して、ドメイ
ン名検討委員会で検討を行うこととなった。
3.IDN-adminにおける日本語についての検討結果
(1)ドメイン名における日本語の扱い
・方針:日本語ドメイン名においては、異なる文字コードを持つ文字
は全て異なる文字として扱う。
すなわち、IDN-adminにおける日本語の等価文字表は、各文字の等価
文字が全てその文字自身だけから成るように、1:1の対応表として作
成する。
例) 1:1とする場合 1:1としない場合
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文字 等価とみなす文字列 文字 等価とみなす文字列
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国 国 国 国、國
國 國 國 國、国
辺 辺 辺 辺、邊、邉
邊 邊 邊 邊、辺、邉
邉 邉 邉 邉、辺、邊
一 一 一 一、ー
ー ー ー ー、一
理由)
- 2001年2月に日本語JPドメイン名のサービスを開始するにあたって、
JPNICにて十分な検討を行なった結果として「異なる文字コードを持
つ文字は全て異なる文字として扱う」という方針が決定され、また、
その後も問題は生じていない。
- 万が一知的財産問題が生じた場合は、DRPにより処理可能である。
知的財産権保護という意味では、等価文字表によって周辺のドメイ
ン名登録が一括してできる状態は望ましいが、その登録・維持コス
トを考えると、事後的なDRPによる対応手段があるので、これまでど
おりの対応が適切である。
(2)日本語の等価文字表の管理責任者
・方針:日本語の等価文字表の作成および維持管理は、日本語JPドメ
イン名の登録管理ポリシーを持つJPRSが責任者として行う。
理由)
- 日本語JPドメイン名の運用責任主体と直結することにより、日本語
ドメイン名利用者に混乱を招かないため。
日本語の等価文字表とJPRSが決定し登録管理を行う日本語JPド
メイン名における参照テーブルは、同じものとなるように作成
すべきである。
4.IDN-adminに関する意見
(1)IDN-adminに関して
IDNの登録管理ガイドラインとして、実際にIDNを利用する各言語圏において、
その言語毎の考え方が反映されることに関しては賛成である。
従って、各言語毎の考え方を反映する手段として、最適なアルゴリズムが
IDN-adminであれば、そのプロトコルの採用を尊重する。
ただし、ccTLDにおけるIDN-adminの採用は、言語毎の概念が反映される
ため問題はないが、gTLDにおいては、言語概念の導入に伴う課題が同様に
生じる。例えば、国を跨り同一の文字を利用している各言語圏(例:日本語と
中国語の漢字)で混乱を招く懸念がある。
(2)今後の取り組み
IDN-adminにおいては、言語ごとにそれぞれの等価文字表が用意されるので、
例えば、ある漢字のドメイン名を日本語として登録申請するか中国語として登
録申請するかによって、ドメイン名登録の結果が異なるということが起こり得
る。また、等価文字表の採用など、ccTLDとgTLD間で、またgTLD毎にIDN-admin
への対応が異なることによってインターネットの利用者に混乱を招くことも予
想される。
このような状況を踏まえ、JPNICは必要に応じてJPRSと連携して、以下の
各事項を実施すること。
ア)日本のコミュニティに混乱を招かないことを目的として、gTLDにおける国
際化ドメイン名の採用・運用状況の調査を継続的に行い、国内のインター
ネット利用者に影響が及ぶと考えられる事項に対しては、その問題分析お
よび解決に努めること。
ex.課金条件、紛争処理状況など
イ)gTLDにおける日本語と中国語の同一漢字の扱いについて、混乱をきたす場
合が予想されるため、正しい情報の収集と日本語ドメイン名の利用者に対
する広報活動に努めること。
ウ)国際化ドメイン名におけるドメイン名紛争に対する対応方法を、日本語ド
メイン名の利用者に対して明確にしておくこと。
以上
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