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                                                   2003/9/11 評議委員会
                                                   資料 2-2-2


司法制度改革推進本部事務局 御中

                総合的なADRの制度基盤の整備について

                       (社)日本ネットワークインフォメーションセンター
                                                     理事長   村井 純
                                                         2003年9月1日

  司法制度改革推進本部事務局より出されました「総合的なADRの制度基盤の
整備についての意見募集」に対し、JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)に関わ
る団体として、(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)
は、ADRの有効活用と社会的な認知度の向上を望む立場から、下記の意見を取
りまとめました。

  JP-DRP 及びそのモデルとなった統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)は、イ
ンターネットの急速な発展に適応する形でドメイン名の登録に関する紛争を扱
う手続きとして作られたものであり、迅速・安価な紛争解決手段として、既に
多くの実績を残しております。これはインターネットという新しいグローバル
な情報社会空間を対象としていること、判断に不服がある場合には裁判所の判
断を求めることができること、さらに裁定文をインターネットで公開するなど
によって透明性の確保を計っていることなど、従来の紛争解決の仕組みにはな
い特徴を持っております。また、紛争解決のための判断基準を作成する機関と、
基準に従って実際の判断を下す機関を分離するという点でも、他に類例を見な
い優れた点を持ったADRであると考えております。このような ADR が、社会の
仕組みとして有効に利用され、発展していくべきという観点から、ご提示の文
書のいくつかの論点に対して意見を述べさせて頂きました。

よろしくご査収頂きたく存じます。


                                記

                「総合的なADRの制度基盤の整備」に対する意見


   【論点1】に対する意見

    「総合的なADRの制度基盤の整備について」においては全体を通じて、以
   下で説明するような仕組みのADRを提供している(社)日本ネットワークイ
   ンフォメーションセンター(以下「JPNIC」と略記)のような団体、特に、
   紛争解決に関する規則の制定主体と運用主体が分離しているという点にお
   いて特徴を有する団体の存在が想定されていないようにみえる(なお、
   JPNICに関して詳しくは、http://www.nic.ad.jp/ja/profile/jpnic.htmlを
   参照)。

    これでは、例えば、将来的に「ADR基本法」といった法律が制定された場
   合に、そこにおける個々の条項の対象にJPNIC、あるいは、同じく以下で説
   明するInternet Corporation for Assigned Names and Numbers(以下
   「ICANN」と略記)のような団体が該当するのか、それとも、実際の運用を
   任せている機関の方が該当するのか、それとも、その双方が該当するのか
   といった点に、混乱が生じる可能性がある(なお、ICANNに関して詳しくは
   、http://www.nic.ad.jp/ja/icann/about/organization.htmlを参照)。

    今後の検討においてJPNICやICANNのような団体の存在が考慮に入れられ、
   さらに、「ADR基本法」の各条項におけるこうした団体の位置付けが明確に
   なるように配慮がなされるよう強く要望する。


    以下、JPNIC、及び、ICANNが提供しているADRに関して簡単に説明する。

    JPNICが提供するADRは、JPドメイン名紛争処理方針(以下「JP-DRP」と
   略記)と呼ばれるものであり、日本を表す国別トップレベルドメイン名で
   あるJPドメイン名(***.co.jp や ***.ne.jp など)の登録に関し、登録者
   と登録ドメイン名の文字列に関して権利を有する者との間に生じる紛争を
   解決する仕組みである。これは、ICANNが提供している国際的な分野別トッ
   プレベルドメイン名(***.com や ***.net などであり、「gTLDs」と呼ば
   れる)に関する紛争解決のための仕組みであるUniform Domain Name
   Dispute Resolution Policy(以下「UDRP」と略記)をモデルにしたもので
   ある。こうした手続は、この種の紛争の解決において大いに威力を発揮し
   ており、世界的にみてもグローバル・スタンダードとなっている。また、
   裁判所には提供できない機能を社会にもたらしているという点で、ADRの代
   表的な成功例の一つであるといえる(なお、それぞれにつき、
   http://www.nic.ad.jp/ja/drp/index.htmlを参照)。

    そうした成功は、以下のような、JP-DRPやUDRPの特徴によって支えられ
   ている。

   1)安価で迅速な紛争解決手段であること

    インターネット利用者にとってドメイン名が適切に登録されることは極
   めて重要であり、ドメイン名に関してこの種の紛争が生じることは、イン
   ターネットの利用・普及そのものの阻害につながりかねない。他方で、登
   録の段階で登録事業者がドメイン名の適切性を事前に審査することは、コ
   ストやインターネット利用の利便性という観点から現実的ではなく、その
   ために、事後的な紛争解決手段としてJP-DRPやUDRPが必要となったという
   経緯がある。そうした経緯もあって、かかる紛争解決手続は、安価に利用
   できるもので、かつ、迅速に解決が図られるものとして設計されている。

   2)紛争解決合意の包括性と裁定に不服がある場合の裁判所への提訴を認
   めていること

     成功のもう一つの要因としては、ドメイン名登録の際にかかる紛争解決
   手続による解決に応ずることが義務付けられていることによって、紛争解
   決合意があまねく得られているという点を挙げることができる。例えば、
   JPドメイン名については、JPドメイン名の登録者が登録機関である(株)日
   本レジストリサービスとの間で締結する契約の中に、JP-DRPによる紛争解
   決手続に応ずる旨の条項が必ず挿入されている。

     もっとも、JP-DRPやUDRPは、裁定型(裁断型)の手続であるにもかかわ
   らず、裁定が下された後にも裁定に不服な当事者は裁判所への提訴が可能
   であるというシステムを採用している。そのため、そのように紛争解決合
   意があまねく得られているとはいえども、一つの紛争解決手段が当事者に
   排他的に押付けられているわけではないという点には注意を要する。また、
   そのような非拘束的な裁定という仕組みが、事実、実効的な紛争解決とい
   う観点からも威力を発揮しているということも、注目されるべき点である
   といえる。

   3)紛争解決に関する規則の制定主体と運用主体が分離されていること

     さらなる特徴としては、JPNICやICANNは紛争解決に関する規則を制定す
   るのみで、実際の紛争解決手続の運用を、サービスの質を競わせるような
   形で、JPNICやICANNが認定した紛争解決機関に任せているという点を挙げ
   ることができる。かかる紛争解決機関の中には、既存の機関も新設された
   機関もあるが、どちらについても、紛争解決機関として認定するに際して
   は、その適切性が厳しく審査されている。

     より具体的には、JPNICはJP-DRPの運営機関(JP-DRP上の用語では「紛争
   処理機関」と呼ばれている)として日本知的財産仲裁センターを認定し、
   契約を締結して業務を任せており、今後さらに別の紛争処理機関を追加的
   に認定して業務を任せることも可能な仕組みを採用している。また、ICANN
   については、国連の専門機関の一つである世界知的財産機関(WIPO)を含
   めた四つの機関が現在認定されており、現実にサービスの質を競わせる形
   で運営業務を行わせ、国際的に既に多くの実績を残している。


   【論点29】に対する意見

    ADRに関する基本的な法制を整備する際、弁護士法第72条の特例を設ける
   ことそれ自体については、以下の理由により、賛成する。

   1)例えば、JP-DRPやUDRPが扱っているような専門性の高い特殊な紛争の
   解決においては、主宰者としての適切性が、弁護士資格を有しているか否
   かという問題とは直結しない。こうした特殊性を有する紛争を対象とする
   ADR機関にとっては、主宰者たる資格を弁護士に制限することが、むしろ円
   滑な紛争解決のための支障になる可能性が高い。

   2)少なくともJP-DRPやUDRPに関していえば、紛争解決に際して準拠すべ
   き実体要件・手続要件の双方が共に規則の中に明確に定められ、弁護士資
   格を有しない者によっても十分に適正な紛争解決手続が主宰できるように
   なっており、その意味でも弁護士でなければ主宰者になれないとする必要
   性がない。

   3)また、JP-DRPやUDRPにおいては、事実として、弁護士以外の主宰者に
   よる紛争解決が実際に行われ、高い評価を受けており、それによる弊害も
   特段に存在しない。

   4)さらに国際的な潮流からいっても、弁護士資格がなければADRの主宰者
   になり得ないとされている例はほとんどない。

   5)弁護士の関与がなされない場合には、ADRを悪用する勢力が現れる可能
   性があるといった懸念があるかもしれない。だが、仮にそのような悪用事
   例があった場合には、その都度、当該悪用行為を現行の刑事法その他によっ
   て処罰していけば足りるといえよう。そもそも、刑事法その他のような事
   後的解決手段によって制御が可能であるにもかかわらず、ADRが悪用される
   可能性があるということのみを理由に事前規制を導入することは、自由な
   ADRの発展を阻害するという弊害を生む懸念がある。また、そのような事前
   規制がそうした悪用行為の防止策に本当になるかがそもそも疑問である。


   【論点30】[1](原資料では数字1の丸囲み)に対する意見

    (日本の弁護士資格を有しない)専門的知見を有する者にADR主宰業務を
   行わせることができるための要件として、弁護士の関与・助言が確保され
   た組織的基礎が求められることには、以下の理由により、反対する。

   1)例えば、JP-DRPやUDRPが扱っているような専門性の高い特殊な紛争の
   解決においては、日本の弁護士資格を有している者であるからといって、
   適切な助言ができるというわけではない。こうした特殊性を有する紛争を
   対象とするADR機関にとっては、そのような形で弁護士の関与を義務付ける
   ことが、むしろ円滑な紛争解決のための支障になる可能性が高い。

   2)少なくともJP-DRPやUDRPに関していえば、紛争解決に際して準拠すべ
   き実体要件・手続要件の双方が共に規則の中に明確に定められ、弁護士資
   格を有しない者によっても十分に適正な紛争解決手続が主宰できるように
   なっており、その意味でも弁護士の関与を義務付ける必要性がない。

   3)また、JP-DRPやUDRPにおいては、事実として、弁護士以外の主宰者に
   よる紛争解決が実際に行われ、高い評価を受けており、それによる弊害も
   特段に存在しない。

   4)さらに国際的な潮流からいっても、弁護士の関与・助言が確保された
   機関でなければ、弁護士資格を有しない専門家にADR主宰業務をさせ得ない
   とされている例はない。

   5)具体的な弊害として、例えば、ICANNやWIPOといった日本の弁護士を組
   織的に関与させようとすることがおよそ想定され得ない世界的な機関の下
   で、gTLDsに関してUDRPの下で日本人同士の紛争を日本人パネリストによっ
   て解決することが、今後できなくなる恐れがある。

   6)確かに、特例措置により弁護士以外の者のADR主宰業務を認めることに
   より、現行の弁護士法72条との齟齬は生じる。しかし、むしろ、ADRという
   問題にすら弁護士の独占を認めてきた同条の方こそが問題であったのであ
   り、これを機に、同条の方こそ改正されるべきである。

   7)弁護士の関与がなされない場合には、ADRを悪用する勢力が現れる可能
   性があるといった懸念があるかもしれない。だが、仮にそのような悪用事
   例があった場合には、その都度、当該悪用行為を現行の刑事法その他によっ
   て処罰していけば足りるといえよう。そもそも、刑事法その他のような事
   後的解決手段によって制御が可能であるにもかかわらず、ADRが悪用される
   可能性があるということのみを理由に事前規制を導入することは、自由な
   ADRの発展を阻害するという弊害を生む懸念がある。また、そのような事前
   規制がそうした悪用行為の防止策に本当になるかがそもそも疑問である。


   【論点32】に対する意見

     相談業務について弁護士法第72条の特例を設けることについては【論点
   29】に対する意見において述べた理由と同様の理由により賛成であるが、
   その要件として弁護士の関与・助言が確保された組織的基礎が求められる
   ことについては【論点30】に対する意見において述べた理由と同様の理
   由により反対する。


   【論点35】及び【論点40】に対する意見

     「一定の適格性を有するADRでなければ」弁護士法72条の特例として認め
   られないことそれ自体に反対であることは【論点30】に対する意見にお
   いて述べたとおりであるが、さらに、そのことを事前に審査するためにADR
   機関の国家認定制度といったものを設置する、すなわち、そのような国家
   認定がないADR機関はおよそADRに関する活動を行うことができないといっ
   た事態を招くことにも反対する。その理由としては、【論点30】に対す
   る意見において述べた理由と同様である。特に、例えば、ICANNやWIPOといっ
   た日本の国家認定制度を得ようとすることがおよそ想定され得ない世界的
   な機関の下で、gTLDsに関してUDRPの下で日本人同士の紛争を日本人パネリ
   ストによって解決することが、今後できなくなる恐れがあるという具体的
   な弊害を生じさせないことは重要であり、その意味でかかる国家認定制度
   には強く反対する。


   【論点35】~【論点39】、及び、【論点24】~【論点26】に対す
   る意見

     一定の法的効果を得るためだけの国家認定制度については、少なくとも
   JPNICに関しては、時効中断効や民事執行法上の執行力、調停前置主義の不
   適用に関する特例については、対象とする紛争の性質や手続の特徴との関
   係で、そのような効果を付与してもらう必要がそもそもない。また、裁判
   所によるADR機関・手続の利用の勧奨や訴訟手続の中止に関する特例につい
   ても、以下の理由により、そのような効果を付与してもらう必要がない。
   したがって、少なくともJPNICにとっては、かかる意味での国家認定制度も
   不要であるということになる。もちろん、そうした法的効果を必要とする
   ADR機関の存在の可能性までは否定しないが、認定・非認定の機関が並存し
   た場合に一般的な国民感情として前者は一流で後者は二流といった誤解が
   生じ、あえて認定を取得しようとしないADR機関に悪影響が生ずるのではな
   いかとの懸念があることについては、特に、一般の注意を喚起したい。

   1)まず、裁判所によるADRの勧奨や手続の中止が、裁判所の裁量の下でな
   されるものである以上、ADR機関にとってどこまで意味のあるものになるか
   が疑問である。

   2)JP-DRPはかかる勧奨がなくとも実際に利用されている。また、今後の
   利用の拡大については、裁判所の勧奨といった形ではなく、自らの広報活
   動、さらには、国その他によるADR機関に関する一般的な情報提供活動の中
   で、図られるべきである。

   3)例えば、JP-DRPの下では当事者はドメイン名の移転という効果まで得
   ることができるが、損害賠償請求はできない。これに対し、裁判所による
   ドメイン名紛争の解決においては、ドメイン名の使用差止という効果まで
   しか得ることができないと解されている反面、損害賠償請求を求めること
   ができる。すなわち、両者の機能は異なっているのであり、そうした現状
   の下では、仮に裁判所との連携を認める制度があったとしても、かかる制
   度が実際に機能できる場面は必ずしも多くはない。


                                                               以 上
            

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