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ニュースレターNo.17/2000年8月発行

1 巻頭言:新理事からのメッセージ(4/4) English Page

1-4 「JPドメイン名紛争処理方針」および「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」の採択に向けて

JPNIC理事 則近憲佑

全世界におけるドメイン名登録件数の圧倒的多数を占める、アメリカNSI社のgTLDs、特に.com空間は、先着順に安価な費用で登録が受けられるオープンなドメイン名空間であるため、他人の商標等をいち早く自らのドメイン名として登録し、これを使用して商標権者の信用(goodwill)にタダ乗り(free ride)したり、希釈化(dilute)したりし、さらには他人の商標等を多数ドメイン名登録しておいて、本来の商標権者にそのドメイン名登録を高額で買い取らせたり第三者に売りつけたりする、いわゆるサイバースクワッター(cybersquatter)が跳梁跋扈する事態となった。このようなドメイン名空間における不法占拠者と商標権者等との間で多発している紛争は、インターネットが電子商取引などの商業的利用によって急速に進展するにともなって、放置できない問題となってきている。

アメリカ政府の要請を受けて、WIPO(世界知的所有権機関)は、ドメイン名と商標の紛争解決等に関する勧告案を作成し、1999年4月、WIPOレポート(the WIPO Internet Domain Name Process)として発表した。

これを受けてICANNでは、1999年10月、WIPOが勧告したドメイン名と商標の紛争処理システムをほぼ全面的に採用し、「統一ドメイン名紛争処理方針(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy, UDRP)」と「同手続規則(UDRP Rules)」を施行した。UDRPの特徴としては、

  1. ドメイン名の「不正の目的を持った(in bad faith)」の登録・使用のケースに限る。ドメイン名は、申立人の商標と同一または混同を引き起こすくらい類似(confusingly similar)していること。
  2. 手続が廉価・迅速であること。ドメイン名1件、裁定人(Panelist)1名の場合の手数料は、WIPOでは1000US$。原則として、手続はオンラインで行われる。(サイバースクワッターによるドメイン名登録の商標権者への移転または登録の取消を求める)申立てから裁定までの全手続期間が55日以内で、裁定人による審理は14日以内に限定されている。
  3. UDRPの手続開始後は、裁定後でも裁判所に出訴できる。いわゆる仲裁合意が必要ないので、仲裁手続とも異なる新しい独自の紛争解決手続である。

ICANNから紛争処理機関として最初に認定を受けたWIPO仲裁調停センターは、既に600件を越える申立てを受付けている。その後認定を受けた三つの紛争処理機関を合わせると合計1200件を越える紛争解決の申立てを受付けて、既に半数以上の事件に対する裁定が下されている。申立人の主張通りにドメイン名の移転または取消を認めた裁定が約8割となっており、UDRPがサイバースクワッターに対する新しい有効な国際的裁判外紛争解決手続として機能し始めていることがうかがえる。

アメリカにおいては、国内で横行しているサイバースクワッターを規制するための立法作業が進められ、反サイバースクワッテイング消費者保護法(the Anticybersquatting Consumer Protection Act, ACPA)が、1999年11月末、発効している。

日本においては、1.一組織一ドメイン名登録、2.ドメイン名の移転登録禁止、3.日本におけるローカル・プレゼンス、の三原則がJNPICにより今日まで堅持されているために、gTLDsにおけるほどサイバースクワッターによる紛争が多発しているわけではない。しかし、かなりの範囲で現実に紛争が起こっていることが報じられており、日本国内でもサイバースクワッターへの対策が必要であると考えられる。

さらに、JPNICが、ユーザー・フレンドリーな新しいJPドメイン名空間のサービスを開始する等の検討を進めるにあたっても、ICANNのUDRPとそのrulesをローカライズした日本版のポリシーとルールを採択しておく必要がある。このような問題意識から、JPNICは、1999年12月、「JPドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(DRP-TF)」を設置し、一部の関係者はゴールデン・ウイークの連休も返上し献身的なドラフト作成作業にあたった。「JPドメイン名紛争処理方針」と「「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」の第一次答申案が、連休明けにJPNICのウエッブサイトに公表され、5月から6月にかけて多数のパブリック・コメントを得た。

それをふまえて鋭意改定作業を進め、7月始めに「最終答申案」を作成し、運営委員会に提出した。さらなるパブリック・コメントを得た上で、2000年10月の採択・施行を目指している。ICANNのUDRPを日本法に適合すべくローカライズするに当っては、原則的としてUDRPを踏襲し国際的整合性を保つようにしたが、興味ある議論もなされた。たとえば、「適用対象となる紛争」は、これまでに公表された紛争の裁定の中に有名な女優や歌手の名前についてもスクワッテイングを認定したケースが報告されていることなどから、「商標その他表示」にまで広げている。その一方、UDRP手続規則(rules)のローカライズに際しては、オンライン以外にも従来の紙による手続の容認、手続言語は日本語が原則等、幾つかの点で日本の実情に合わせて変更している。

その間、認定紛争処理機関として期待される工業所有権仲裁センターとの打合せが開始され、同センターとの意見調整が精力的に行われてきた。関係者の努力によって、立ち上げに必要な準備が着々と進められている。企業経験を有する弁理士の立場で、途中から同センターの運営委員としても、この問題に関与することになった筆者としては是非とも同センターがJPNICの紛争処理機関として第1号の認定を受けられることを祈念し微力を尽くしている。

インターネットのIPアドレスという極めて技術的で無味乾燥の識別子を、人間が記憶し易いドメイン名にして管理するという知恵により、インターネットの利用の大衆化が加速された。そして、ドメイン名は単なる機械的な識別子にとどまらず、営業や商品の出所・品質を表示する機能を獲得し、信用が化体する商標とも成り得る存在となった。このような例は何もドメイン名には限られない。身近な例としては、地名や人名といった極めてありふれた識別子が、特定の企業や商品の商標となっている例は枚挙に暇が無い。ただドメイン名の商標的使用については、国際的に使用される可能性が高く、何処の国の商標法を適用するのかの準拠法の問題・何処の裁判所が管轄権を有するかの国際的裁判管轄権の問題・インターネット上での商標の「使用」についての理論的解明の問題等が法律問題として残されている。サイバースクワッターが商標権者等との間で引き起こす紛争に対する効果的な解決手段として、UDRPとその手続規則を実用的なシステムとして定着させることの意義はきわめて大きい。

[参考文献]

  1. 「紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(RRP-TF)の開始について」
    JPNICニュースレター、No.15、DECEMBER, 1999, p11~14
  2. 「ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(DRP-TF)」活動報告 
    JPNICニュースレター、No.16、APRIL、2000、p28~29
  3. 「ドメイン名と商標に関する紛争処理システムの最新運用状況と日本への導入検討状況」
    久保次三著、雑誌・ジュリスト、2000.7.1(No.1181)号、p34~39
  4. JPNICのアナウンス「JPドメイン名紛争処理方針の新設および登録規則の改訂について」
    http://www.nic.ad.jp/jp/topics/archive/2000/20000719-01.html

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