メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.23/2003年3月発行

JPNIC会員と語る●NTTコミュニケーションズ株式会社
世の中が変わってもJPNICの本質は変わらない

今回の対談相手は、OCNによって日本のインターネットの裾野を広げた、NTTコミュニケーションズ株式会社です。その中でも新しいIPサービスの開発に向けて邁進する、先端IPアーキテクチャセンタ所長の飯塚久夫氏に、NTTコミュニケーションズおよびIPサービスの今後、JPNICに望むことなどをJPNIC会員企業の立場から語っていただきました。

対談者紹介:
NTTコミュニケーションズ株式会社 取締役 先端IPアーキテクチャセンタ所長◎飯塚久夫
JPNIC副理事長◎松本敏文
JPNICインターネット基盤事業担当理事◎坪 俊宏

新しいIPサービスの創出を目指して

NTTコミュニケーションズのビジョン・事業内容

松本 NTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)の事業の方向性と先端IPアーキテクチャセンタの事業内容を簡単に教えていただけますか?

飯塚 まず背景には、今インターネットの質的大転換期を迎えているということがあります。インターネットはそのオープン性、自由な拡張性により、爆発的に普及してきました。しかしその一方で、いわゆるIT関連のサービスから社会基盤を支えるサービスへと生活に浸透するに従い、従来では許容されていたレベルでは不十分となり、インターネットの信頼性、安全性への不安が増大しているという状況も発生しています。そのような中でインターネットそのものをよりよいサービスにしていくことをキャリアとしてチャレンジしていきたいと考えており、もう1回インターネットの中核であるレイヤ3※1だけでなく、垂直方向、水平方向全体の構図の中で、ネットワークの設計やサービスのありかた、いわゆるアーキテクチャ全体の立場に立った見直しをしたいと思っています。

NTTグループとしても「レゾナント※2コミュニケーションビジョン」(資料1)ということを昨年末から言い始めています。通信の世界は、電話という集中管理的な形で信頼性を保ちながら発展を遂げてきましたが、一方でそれは多様化するユーザー要望への柔軟な対応が困難というデメリットにもなりました。その後、通信の主流はインターネットの自律・分散方向へ移行し、低コストによる発展をベースにインターネットのメリットが大きく発揮されましたが、同時にその発展に伴い、セキュリティや品質の不安というデメリットが生じてきています。よって、今後は電話の信頼性、インターネットの低コストによる発展性という、2つの方向性の特徴を生かした幅のある発展が大事になる、というのがレゾナントコミュニケーションビジョンの基本的考え方です。

photo
資料1:レゾナントコミュニケーション環境に向けたNTTグループの取り組み(出典:NTT)

この基本的考え方に立って、先端IPアーキテクチャセンタはIPサービスの創出に取り組んでいます(資料2)。具体的には、アクセス系では、ユビキタスや端末組み込み型のIPv6サービス、これらを支えるためのネットワークの高度化などです。レイヤ3周辺では、ポータルサービスである「Personal Contact Portal Platform」、VPN, IPsecをより軽いソフトでセキュリティを保つような「Secure Business Platform」、いわゆるマルチメディアと呼ばれる「Media Collaboration Platform」、放送と通信の融合といった「Media Asset Management Platform」があります。

photo
資料2:アーキテクチャの全体像(出典:NTTコミュニケーションズ)

NTTコムは、IPサービスを基本的ミッションと考え、4年前のNTT再編成時にグループ内で唯一この分野に進出しました。実際にはIPサービスは過当競争ということもあって事業上はつらい部分もありますが、IPサービスの創出に向けたビジョンをもって活動しています。

松本 ご紹介ありがとうございます。たくさんあって覚えきれないくらいですね(笑)。ところで飯塚さんのいらっしゃる先端IPアーキテクチャセンタというのは、NTTグループの中でどのような位置づけにあるのでしょうか?

飯塚 NTTグループとしてみると、持ち株会社に所属する研究所があって、この研究所はNTTグループ各社がその成果を利用できます。また、持株会社は研究成果をオープンにするという義務がありますので、世の中全般の人が研究成果を享受できるようになっています。ただし研究所の研究開発がビジネスにすぐ役に立つとは限らないので、現場と直結したR&D(Research & Development)をやるためには、誰かがお客様と研究所の間に立って、技術の叩き直しや、お客様サイドに立った技術の活用を考える必要がある。それが私たちセンタの使命となります。

要素技術のような、共通的に様々なところで使える技術も開発しています。要素技術を単品で生かすのではなく、いろいろ組み合わせたり、事業側からみてモディファイしたりすれば、他の分野にも有効に活かすことができます。アーキテクチャとは一品一品の狭い見方ではなく、世の中全体・お客様の各分野・事業のフェーズをより広く見て研究成果を生かす、あるいは研究所にないものは自ら開発する、更にはどこにもないものは世界とパートナーシップを組んでコラボレーションして実現するという3つの側面があり、我々はその3つをバランスよくいかに生かすかという使命を持っています。

松本 先端IPアーキテクチャセンタは、フィージビリティスタディも行い、また事業化のレベルまで噛み砕いて現場に落とすという使命ももっていらっしゃるということですか?

飯塚 その通りです。もう一段階お客様寄りのところに営業がいて、彼らが料理の最終仕上げをやりますが、基本的にはおっしゃる通りです。

 NTTグループとしては、アーキテクチャはこちらで開発して、製品は別のレイヤで開発ということになるんですか?

飯塚 両方あります。基本はアーキテクチャですが、個々のプロダクトもこちらでやらないとお客様の反応が得られないサービス、例えば端末関係などは、ある程度までこちらで作りこんでしまいます。ただしその際には自分達で作れないことが多いですから、メーカー、パートナーと一緒に作ります。

 IPサービスといいながらも、結構アプリケーションまで踏み込んでいますよね。例えばポータルなんかは各種ベンダも取組んでいますが、NTTコムの場合は基盤よりのポータルということですか?

飯塚 まったくおっしゃる通りです。特定のものに片寄った開発はしないようにしていて、どのプロバイダにも使ってもらえるようなポータルを強く意識しています。「Media Asset Management Platform」などは最たる例で、完全にプロバイダフリーで、基盤プラットフォームの開発に徹するようにしています。

photo
NTTコミュニケーションズ株式会社 飯塚久夫氏

OCNがもたらしたもの

松本 キャリアの中でいち早くOCNというインターネット事業を始められ、またOCNが始まってインターネットが加速度的に普及したわけですが、振り返ってみて期待通りの成果はありましたか?

飯塚 正直いって期待通りの成果があった面となかった面と両方ありました。なかった面は、利益面。IP事業というものは平坦な道ではなく、収益としてはいばらの道でなかなかつらいものがありました。成果があった面は、NTTコムは再編時から今後は電話ではなくIPの時代だと決断し、OCNのような狭い意味でのIPサービスのみならず、IP VPNや広域LANなど、広い意味でのパケット通信を会社の主軸に据えたことによって、時代の波には間違いなくのれたということ。会社の収益構造を見ると、この4年の間に電話よりデータ系の収入が多くなったので、万一これをやっていなかったら……と考えると、やっておいてよかったと言えると思います。

また、良くも悪くもある点は、OCN初期の頃はNTT再編前でしたが、NTTのような会社が今更なんでISPに乗りだすのかと言う人がいたり、当時電話で十分やっていけた会社がインターネット事業に乗りだすことの意義や意味を、社内ですらも理解できない人がいたりと、対外的にも社内的にも厳しいものがありました。結果としてはいい方向に結び付いたことは先ほど申し上げた通りですが、何より社内のカルチャー変革に結果として役立ちました。いわゆる電話カルチャーとIPカルチャーが存在し、IPカルチャーを身につけた人間の方が、この世の中で顧客サービスや事業遂行をする上では、よりダイナミックな適応ができる。そのことがOCNを通してじわじわと社内に培われていったというメリットがありますね。

松本 それはNTTグループ全体、それともNTTコムだけに言えることですか?

飯塚 OCNを始めたのが6年前で、NTTの再編が4年前ですから、今の話はNTTコムにより強く言えます。NTTが一体でOCNを続けていれば全社としてより強く反映されたでしょうね。

photo
左/JPNIC松本副理事長 右/JPNIC坪理事

IPサービスの将来

 OCNは他のISPに比べると非常に低価格で、それによって一気にインターネットが広がったと感じるのですが、そのような低価格のインパクトがあった上で、今後のレゾナントコミュニケーション環境を考えるとき、低価格を維持しながらインターネット基盤を安全にもっていくのか、それともインターネット基盤が安全になる分だけコストに跳ね返ってくるのか、そのあたりはいかがでしょうか?

飯塚 それは非常に重要な質問ですね。現実、コンシューマー向けもビジネス向けのサービスも共にデフレ現象が起こっており、これは非常に好ましくないと思っています。当然プライスそのものが今のままだとIP産業が健全な発展に結び付かないのではという懸念はありますが、プライスの元になるコストという点では、まだまだ下がる可能性はあるわけです。しかし、コストダウンを追求しながら、ただ単にそれに連動したプライシングを行っているだけではよくない。ではどうすればいいかというと、コストダウンした基盤をベースにその上に新たな付加価値をつけてセットにしてお客様にみせるという複合サービスや、お客様の課題を解決してくれるIPソリューションという立場のサービスを提供する。それによって、我々企業の収益も伸ばしたいし、それ以上にお客様の方はそれだけのお金を喜んで払ってくれるような方向になんとか持っていきたいと思っていますね。これは現状なかなか大変なことですが……。

 あとコストを下げるという観点からいうと、スケールメリットも大事だと思いますが、そういう意味では世界展開もあるわけですよね?

飯塚 はい。スケールメリットを発揮するためには、残念ながら日本のマーケットだけでは狭すぎます。ただ世界マーケットに出ていったからといって解決できるとは限らず、むしろ苦難にあう場合もある。例えば携帯電話がいい例で、日本国内でiモードなどに目がいっている間に、携帯の台数はあっという間に他のアジア諸国に追い越された。ましてやIPになったら携帯以上にグローバル性をもっているわけですから。坪さんがおっしゃったような見方が必須だろうと思っていますが、厳しい状況であることは確かですね。

松本 今後一歩進んだ形でインターネットもしくはIPを飛躍的に普及させる一番重要な要素は何だと思われますか?

飯塚 まず至近距離では、ビジネスユースとしてのIPの拡大です。信頼性、安全性の面でもう少し改善されれば、ビジネスユースとしてのIP利用がますます広がることは間違いない。これが最も重要で、まず一番最初に取り組みます。セキュアな環境の中での使いやすいIPサービスや、ミッションクリティカルな業務にも堪えるIPサービスが、一番目の前のテーマです。

次に3年から5年後の中距離では、通信としてのIPという分野だけでなく、放送と通信が新しく連携をとった形というのがあげられます。既にインターネット放送やストリーミングは始まっていますがこれではまだ不十分で、質的に異なる、より放送と通信が連携をとったサービスが3年から5年後位にはでてくると思います。それが何かというと、今のユビキタスの流れ上にある、モバイルと放送と一体化した新しいサービス。我々はその基幹技術をなすのはIPだと考え、先ほど申し上げたような「Media Asset Management」などの開発に取り組んでいます。これはおそらく早くて3年、遅くて5年後位の離陸になるでしょう。というのは、iモードが、新しいコンテンツがプラットフォームの改善を要求し、進化したプラットフォームがさらに新しいコンテンツの登場を可能にするというスパイラル的発展を遂げたように、ブロードバンドのインフラの進展、地上系デジタル放送の開始、といった地上系の新しい世界の成長の中において、新しいサービスは発展していくからです。ブロードバンドの進展とデジタル放送の相まった進展、これが中距離的な柱になるでしょう。

 近々でIPの世界が広がり、数年後にユビキタスが広がっていくと。ユビキタスになればなるほど、一つ一つのモノの識別子も必要になりますよね。それがIPv4、IPv6の延長にあるのか、それともインターネットと別の識別子で、別の世界で動いていくのかという点は、どう思われますか?

飯塚 個人的には、狭い意味でのIPアドレス以外の形も出てくると思います。例えばRFタグ※3とかIDチップ類の普及も間違いないでしょうが、それをハンドルするのにIPv6アドレスでもできなくもないという考え方もあります。しかし「Media Asset Management」をやるための基本である、メタデータのコンテンツIDなどは必ずしもIPアドレスとは限らない。そういう意味ではIDの在り方がIPアドレス+αになると思うんですよ。ただここで大事な本質は、別に新しいIDであろうがIPアドレスであろうが、中立公平にマネージする人が必要ということが極めて大事だと思います。昔の電話番号におけるNTTの役割から始まって、今日のJPNICのIPアドレス割り振りもそうだと思いますが、やはりそのような存在があって初めて、インターネットはここまできている。今後どういうIDがでてきたとしてもそれを間違えると上手くいかない。その基本精神をいかにキープするかが根本的に大事ですよね。

JPNICに望むこと

「公益事業体」としての本質の維持を

松本 さて、JPNICも様変わりしており、世の中の変化も著しい中で、JPNICはどのような方向へ進むべきだと思われますか?加えてJPNICへ期待することや叱責などあればぜひお聞かせください。

飯塚 JPNICは時代によって経営形態の変化はありうると思います。ただ大事なのは、社団法人であろうが民営であろうが「事業の本質が変わらない」ということなのではないでしょうか。例えばNTTは民営化によって「公共事業体」ではなくなりましたが、「公益事業体」であることには変わりないわけです。つまり、我々が行っているサービスは一旦提供したら終わりというものではなく、お客様が使い続ける限りは最後まで責任をもってフォローするということが我々の事業の宿命。これを敢えて「公益事業」といっていますが、似たようなことがJPNICにも言えると思います。JPNICはIPアドレスや、ドメイン名をきちんと扱ってきた。この本質はサービスや世の中の技術が変わっても変わらないはずです。IPアドレスだけを扱っていればいいという状況ではなくなるかもしれませんが、ユビキタスの根幹を支える新しいIDのようなものはきちんとJPNICのような組織が扱った方がいい。その時に戦略が定まっていて、本質的な技術や扱い方のノウハウを維持していればいい。大事なことは扱っている対象というよりは、扱っている姿勢や技術を本質的に維持しているということだと思います。

あと、IPの世界は地域毎の活動が切磋琢磨しあうことによって、今後更に発展するのではないかと思います。例えばIPv6においては、アジアで誰かがいい意味でリーダーシップをとって、プロモーションを行い、ビジネスとして立ち上げていく必要がある。その一方ではビジネスとしてのしたたかな振る舞いをする人が出てくるかもしれない。それとは別に利害関係のない公平中立な立場で、リーダーシップをとっていく人も必要になる。そういう点ではJPNICのような存在が重要だと思います。今もIPv6などはJPNICが力を入れて取組んでいるわけですが、そういう視点と立場がますますきちんと生かされるようには意識していってもらいたいと思いますね。

松本 非常に明確なご指摘だと思います。今、公益法人制度改革の大綱を政府がまとめていて、JPNICはその成り行きを見守っているんですが、今のご意見は、非営利でも営利でも構わない、いわゆる公益であり続けることの方が重要ととらえてもよろしいのでしょうか?

飯塚 はい、そうです。営利であろうが非営利であろうが、会員が会費を払ってくれなかったらJPNICももたないし、JPRSもユーザーが申請してくれないと経営がもたないわけですから。ただその時その時のフェーズでどちらの経営形態の方が世の中のニーズにマッチしているかどうかということだけ考えればいいと思います。また別な見方でいうと、今世の中で公益法人が問題になっていますが、全部が全部だめという議論は行過ぎた議論であって、本来は不労所得をむさぼるような公益法人が多いから、そこを見直すべきということだと思います。JPNICは間違っても不労所得を得ただけのような状態にはなっていないですし、逆に立場上は事業の性格からいえば公益法人の方がやりやすいという状況もあるはずですから。大事なことは、形ではなくて、中身。やっている一人一人のマインド、どのような行動をとっているかということが問われるということではないですかね。

松本 今おっしゃったような意識改革を、JPNICの職員の中にも自然発生的に盛り上げようという努力をしているんですけども、JPNIC理事というお立場からもアドバイスいただけますでしょうか?

飯塚 堕落した公益法人にならないためには、常に職員一人一人がインセンティブをもった仕事をしているかということなんですよね。もともとJPNICの仕事はインセンティブもあり、もちろん目の前の忙しい課題もありますが、将来の大きな展望があるからこそ喜んでこの仕事をやっているんですよね。ですから我々理事も、今と同じことをやっていればいいということではなくて、その時代の要請を踏まえた次なるテーマを着実に取り入れ、ビジョンを描いていかなくてはならない。それが結果として職員のやりがいにもつながるのではないでしょうか。仕事自体にやりがいがあれば、世の中の堕落した公益法人みたいにはならないはずです。

松本 ありがとうございます。そういう激励がJPNICそのものを良くするわけですし、会員の皆様に対しての還元にもつながると思います。JPNICは今まさに転換期にありますので、本日いただいたご意見をしっかりと受け止め、前向きに取り組んでいきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

会員企業紹介
会社名:会社名:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
所在地:(本社)〒100-8019 東京都千代田区内幸町1-1-6
    (先端IPアーキテクチャセンタ)〒163-1421 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー21階
設 立:1999年7月1日
資本金:2,116.5億円
主な事業:電気通信事業等
URL:http://www.ntt.com/iac/(先端IPアーキテクチャセンタ)

※1レイヤ3:
コンピュータの持つべき通信機能を階層構造に分割したOSI参照モデルの第3層のこと。IP(インターネットプロトコル)はこの層に属している。
※2レゾナント(resonant):
共鳴する、反響する。
※3RFタグ:
1mm角よりも小さなIC。無電源で電波を使った問合わせに対してIDを返答する。

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2020 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.