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ニュースレターNo.26/2004年3月発行

ARIN XII

ARINとは、北米、カリブ海周辺の一部地域、サハラ以南のアフリカ大陸を受け持つ地域インターネットレジストリ(以下、RIR)です。2003年10月22日~24日に、米国・シカゴで開催された「ARIN XII」ミーティングにおける、IPアドレス関連の動向をお届けします。

2003年10月22日~24日までシカゴにてARIN XIIが開催されました。このミーティングの特徴を表すと「議論が非常に活発である」の一言につきます。本当に議論好きなコミュニティらしく、APNICミーティングの倍の数のスタンドマイクが設置されていました。そして、誰かの発言に共感を覚えるとすぐに拍手でそれを表明するため、ちょっとしたことで結構盛り上がってしまいます。また、参加者同士で気軽に会話を交わす雰囲気があり、ミーティングに出席しているだけで近くに座っている人からなにかと話しかけられました。

ミーティングの内容としてはIPv6割り振り基準の変更、IPv4アドレスにおけるマルチホームネットワーク用アドレス、そしてHD-ratio※1の適用についての提案が、アジア太平洋(以下、AP)地域でも検討に値するトピックスとして挙げられます。以下にミーティングの特徴、およびこれらのトピックスについてご紹介します。

ARIN地域におけるポリシー策定プロセス

APNICのミーティングでは、提案に対する参加者による挙手の後、チェアがその場でコンセンサス※2の確認を行います。しかし、ARIN地域ではミーティングの場ではコンセサスの確認は行わず、チェアが挙手数を数えることにとどめています。そしてAdvisory Council(AC)がこの挙手数と、メーリングリスト(以下、ML)での意見をあわせてコンセンサスの判断を行い、後日ML上で正式に発表します。その内容がコミュニティのコンセンサスとしてARINの理事会(Board of Trustees)により承認された場合に、提案はポリシーに反映されます。

ARINコミュニティ

他のRIRと大きく異なる点としてはコンセンサスの形成にあたり、ACの役割が大きいことが挙げられます。ACはコミュニティの代表者として、コミュニティの意図を汲んだポリシー提案をARINの理事に対して行い、承認を求める役割を担っています。また、単純に決定事項を文書化するだけではなく、ポリシーの全体的なバランスを考えたり、ポリシーへの具体的な実装案の提示も行っているようです。

このように資源管理の知識を持っている代表者が議論をまとめることは、充分な検討を行わずにその場の勢いで決定したことがそのままポリシーに反映されるという暴走を防ぐ、バランスメカニズムの役割を果たしているのかもしれません。

IPv6アドレスポリシーについて

AP地域でも検討に値するトピックスの一つとして、まずIPv6アドレスポリシーの変更が挙げられます。ARIN地域では、IPv6ネットワークの運用面はまだまだこれからのようですが、IPv6アドレスポリシーについてはコミュニティとして大きな関心を持っていることが感じられました。そして、割り振り件数を全RIR地域における国別で見た場合、実はアメリカ合衆国が日本を越して1位にランクインしています(2003年秋時点)。

IPv6割り振り基準の緩和については多いに議論が盛り上がりました。これは前回のARINミーティングで、ARIN地域におけるIPv6普及のために割り振り基準の緩和等を提案したことがきっかけとなっています。今回のミーティングでは、IPv6ポリシーはグローバルに調整が必要なため、まずはグローバルIPv6 MLで議論を行うことが提案されました。

割り振り要件の緩和推奨派からは、現在の割り振り基準がハードルが高すぎるため、IPv6ネットワークの運用と普及の妨げになっているという意見がありました。具体的には、割り振りを受けるにあたり、2年間で200の/48の割当てを行う計画があることを必要要件としている点です。

ミーティング後に参加者の一人と別途話し合ったところ、いくら計画を提出すればよく、実行の有無に対して罰則はないと言われても、2年間で200の/48 の割り当てを実際に行えることが現実味を帯びていない状態で申請を行うことに罪悪感を感じるということです。そして、この要件が割り振り申請を行ううえでの心理的なバリアになっているとの意見でした。

また、ARIN地域では他の地域と比較するとIPv6の運用が進んでいないため、この基準を満たすことがより難しく、また逆にIPv6アドレスを取得することができないために運用が進んでいないとの考えを表明する参加者もいました。一部ではARIN地域のみでも要件を緩和するべきとの声もありましたが、ACが持ち帰って検討を行うとの結論に落ち着きました。

IPv6アドレスポリシーに関する決定は、日本を含め他の地域にも大きな影響を及ぼすものであるため、今後も動向を把握し、日本のコミュニティの皆様と共有していきたいと考えています。JPNICとしては、現時点では、割り振り要件のハードルが高いと感じられる問題は、ポリシーの意図が十分に理解されていないことが大きな要因であると考えています。よって、IPv6アドレスポリシーに関するガイドライン文書の策定を通してこういったポリシーの正確な理解を促進して参ります。

そして、日本のコミュニティのニーズをグローバルコミュニティと調整を行いながらポリシーに反映させていきたいと考えておりますので、JPNICの進め方を含め、IPv6ポリシーについてご意見がありましたらぜひお聞かせください。

その他ミーティングでの主な議論

その他、AP地域でも検討に値すると思われるトピックスについてご紹介します。

  • マルチホームネットワークへの割り振り/割り当て
    (Micro-assignments for Multi-homed Networks)
    マルチホームネットワークであれば、/22のアドレス空間をPI※3の割り当て、または割り振りとして受けることができる、とする提案。
  【挙手結果】
賛成53名、反対5名
  【その後のML状況】
ACによりコンセンサスと判断されました。
  【AP地域への影響】
APNICはこの決定を重く受け止めており、APNICでも最小割り振りサイズの変更を検討していると聞いています。
  • IPv4アドレスの割り振りにおけるHD-ratioの適用
    (Apply the HD Ratio to all Future IPv4 Allocations)
    前回のAPNICミーティングでAPNICより紹介されたものと同じ内容を提案。IPv6同様、追加割り振りに必要な利用率を一律とせず、割り振りを受けているサイズが大きければ、追加申請に必要な利用率がより小さくなるモデル。ただし、具体的なratioの値(利用率の算出に必要)は提示されていません。
  【挙手結果】
賛成43名 、反対19名
  【その後のML状況】
ACによりコンセンサスとは判断されませんでした。
  【AP地域への影響】
ARIN地域でも関心を呼んでいるということで次回のAPNICミーティングでAPNICより提案される可能性が高いと思われます。
  • クローズドネットワークへの割り振りについて
    フリーディスカッションの時間に、JPNICより、IPv6におけるクローズドネットワーク(グローバルインターネットへ接続していない)への割り振りも認めるべきかなのか、この場で意見交換を行いたいと発言しました。
 【挙手結果】
賛成70名、反対2名
 【その他】
IPv4アドレスも含めて、クローズドネットワークへの割り振りは今後定義していく必要があるという意見が会場から出ました。
 【AP地域への影響】
APNICは一部の事例においてはクローズドネットワークへの割り振りを既に認めているので直接の影響はありません。ただし、ポリシーが実装された場合、APとARIN地域での運用の統一につながります。

これらの検討事項について、ACによるコンセンサスの判断は2003年11月19日にppml@arin.netのMLで発表されました。これらがコミュニティのコンセンサスとしてARINの理事会(Board of Trustees)により承認された場合、ポリシーに反映されます。

ミーティングでは上記を含めて、14点のポリシーに関する提案/発表が行われました。詳細はこちらから参照可能です。

ARIN XII Public Policy Meeting Minutes
http://www.arin.net/library/minutes/ARIN_XII/ppm.html

所感

ARINコミュニティの主要な方々との交流、議事録上では読み取りきれない参加者の発言の背後にある考えに触れる機会があったことは当然大きな収穫でしたが、RIPE NCC※4やLACNIC※5等、他のRIRのスタッフとも交流を持てたことも予想外の収穫でした。これはミーティング全体が気さくな雰囲気なため参加者同士が話しやすいとことが大きな理由であった気がします。

今後もこのようなネットワーキングを通じてグローバルなポリシー提案が必要になった場合に備えた地盤固めを進めていきたいと考えていますのでよろしくお願いいたします。

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)


※1 HD-ratio
IPv6アドレスの追加割り振りに必要とする利用率を算出するための計算式。この算出方法では、割り振りを受けたサイズが大きいほど、追加割り振りに必要とする利用率が低くなる
※2 コンセンサス
ポリシー提案に対するコミュニティによる賛同
※3 PI
Provider Independent Address
プロバイダ非依存アドレス。LIRを介さず、アドレス利用者が直接RIR/NIRより委譲されるアドレスをさす
※4 RIPE NCC
Reseaux IP Europeens Network Information Centre
主にヨーロッパ地域でIPアドレス等の割り当て業務等を行っている地域インターネットレジストリ
※5 LACNIC
The Latin American and Caribbean IP address Regional Registry
ラテンアメリカとカリブ海地域でIPアドレス等の割り当て業務等を行っている地域インターネットレジストリ

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