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ニュースレターNo.27/2004年7月発行

第7回Next Generation Task Force研究会

Next Generation Task Force(以下ng-tf)は2004年4月10日に第7回研究会を開催しました。第一部ではこの1年のng-tfの活動報告を行い、第二部では「日本のインターネット、これまでの20年とこれから」と題して、以下の4名のパネリストをお迎えして、パネルディスカッションを開催しました。

高橋徹氏 IAjapan副理事長/RIIS代表取締役会長
滝田誠一郎氏 ノンフィクション・ライター
中村修氏 慶應義塾大学環境情報学部助教授/WIDE Project
前村昌紀氏 JPNIC理事/JANOG運営委員

今回、以下のようなことを目指し、このテーマの研究会を行いました。

1.若い人やこれまでインターネットとの関わりが少なかった人が、昔のことを知り、どういう経緯で現状があるかを認識することで、いろいろなことを考える上で参考にしてもらいたい

2.「インターネットの歴史を編纂する」という取り組みのコンテンツを引き出すとともに、このような取り組みに関心を持つ人の輪を広げたい

まずコーディネーターの遠藤が話の前提となる組織名や事象を事前に把握するという目的で「日本のインターネットの発展を理解するためのキーワード」と題した基調報告を行った後に、パネルディスカッションがスタートしました。最初のパートでは、パネリストの皆様から、自分とインターネットとの関わり合いを交えながら自己紹介が行われました。

二つ目のパートでは、「さまざまな組織の立ち上げ」「商用プロバイダの誕生」「日本のインターネットコミュニティの課題」などのテーマで、日本のインターネットのこれまでの20年を振り返りながらディスカッションを行いました。以下、ディスカッションの模様を一部ご紹介します。

『日本のインターネットのこれまでの20年を振り返る』

●さまざまな組織の立ち上げ

WIDE※1プロジェクトに発足時から関わり、現在はボードメンバーである中村氏から「インターネットの組織を作るとはどういうことか」という観点で発言がありました。

なぜ組織を作るのかと言えば、きちんとしたサービスを提供するためです。例えば、JPNICはIPアドレスのマネジメントをやるためで、性質上、国にもある程度関わってもらった方がよいということで、4省庁共管の社団法人になりました。INETクラブ※2は、当時KDD研究所の国際回線にJUNET※3が乗っかっている形では法律に抵触するので、その問題を解決するため任意団体として組織化されました。また、IIJ※4は商用のサービスを提供するために作られました。だから株式会社という形態を取っています。

(編集注:現在は3省庁共管です。会員が会費を支払うに際してJPNICが法人格を持たないと経理上の困難を生じるという点や、JPNICの業務が社会的な認知を得るという観点から、JPNICは社団法人化されました)

また、JANOG※5の立ち上げに関わり、現在も運営委員として活動を牽引する前村氏に、JANOGが始まったきっかけや組織運営の難しさなどをお話いただきました。

NANOG※6のような場が日本にはないので作ろうというのがきっかけで1997年にスタートしました。ボランティア、非営利で運営しています。例えば、古いマシンをチューニングしてサーバにしたり、ドメイン名維持料を飲み会のおつりから捻出するなどしています。最初のメーリングリスト登録者は10人くらいでしたが、現在、4,000人が参加するコミュニティになっており、「JANOGって誰なの?」など、いろいろと課題が出てきています。そのような中、運営委員の中でもJANOGに対しての思いに差があるのが現状で、いろいろと議論を重ねています。

●商用プロバイダの誕生

日本では1993年にインターネットの接続を行う商用サービスがスタートしました。当時の雰囲気について、東京インターネット※7で社長としてプロバイダ事業に携わった高橋氏に発言いただきました。

神戸で開かれたINET92※8で「これからのインターネットで何が面白い?」とロータスの創業者のMitchell Kaporに尋ねたところ、「商用インターネットのプロバイダは20世紀に残された最大のビジネス。絶対間違いない」と言われました。さらに、この発言にInteropの創始者であるDan Lynchも同意したのです。1992年頃、新日鉄と電力中央研究所から「マルチクライアント調査」を委託されました。テーマは商用インターネット(プロバイダ事業)です。アメリカ中を回り、Vint Cerf、Rick Adamsらインターネットを作ってきた方々と会い、プロバイダ事業の可能性についての調査をし、報告を行いました。

また、中村氏からはIIJ設立に至る経緯についての発言がありました。

WIDEも最初は一生懸命プロモーションを行い「ぜひ、共同研究しましょう」と言って、ボランティアで接続先を増やしていきました。そのうちに「うちでもつなぎたい」と皆が言ってくる事態になり、「研究」という名の元では手に負えなくなってきました。「このままでは自分達がつぶされる」という危機感もあって商用のインターネットを立ち上げようという認識を持つようになりました。郵政省での研究会では大手が商用インターネットに参入する「夢」は描くことができませんでした。仕方がないので、WIDEのメンバーが金を出しあって、IIJを設立するための資本金を集めたのです。

●日本のインターネットコミュニティの課題

2002年に出版された『電網創世記・インターネットにかけた男たちの軌跡』の取材などを通じて、コミュニティを外から見てきた滝田氏に、「インターネットコミュニティの課題」ということで発言いただきました。

日本のインターネットの普及発展は、WIDEに代表されるようなネットワーク型組織の力で広がりを見せてきたと思います。一方で、結果としてみると、ある一つのネットワークの中に関係者が固まってしまっているのではないか、という感じが外から見るとあります。WIDEプロジェクトの功績がそれだけ大きいということですが、裏返しとして、WIDEの中ににいろいろな人が集まって、WIDEの中を見てやっている部分があるのかなと感じを受けることが時々あります。ネットの問題をネットの中だけで考えるのではなく、ネットの外との関係性の中でいろいろ物事を考えていくことが大事で、そういうことの橋渡しをできる人がもっとたくさん出てくるとよいのかなと思っています。

写真:パネルディスカッションの様子
盛り上がりを見せたパネルディスカッションの様子

最後のパートでは、「Next Generation(若い人材)に期待すること。これからインターネットコミュニティで自分が取り組んでいきたいこと」というテーマで、研究会参加者とng-tfのメンバーへのメッセージと抱負をパネリストの皆様に語っていただきました。

「もっと時間があれば」というところでパネルは終了となりました。参加いただいた方にはさまざまなことに携わった方々から直接当時の様子を聞く良い機会になったのではないでしょうか。また、JANOGにおける前村氏の苦労話や中村氏からのng-tfに対する率直な叱咤激励など、ng-tfのメンバにとって、いろいろと自分たちの活動の参考となる話を聞く機会ともなりました。

「日本のインターネットの発展を牽引してきた方々から学ぶ」という取り組みそのものについては、今回のパネルディスカッション一度限りとはぜず、その手法などについて多くの方のご助言をいただきながら、今後も続けていきたいと思っています。

(JPNIC ng-tf Vice-Chair/(株)日本レジストリサービス 遠藤淳)

参照URL

第7回Next Generation Task Force研究会資料
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/ng-tf/200404/

※1 WIDE
オペレーション技術と通信技術を基盤とした新しいコンピュータ環境の確立をめざし、1988年にスタートされた研究プロジェクト
※2 INETクラブ
国際科学技術通信網利用クラブ。日本のネットワークを効率よく国際接続するために1987年に作られた非営利の会員組織。1994年に解散
※3 JUNET:Japan University Network
日本の学術組織間を結んでいた研究用のコンピュータネットワーク
※4  IIJ
(株)インターネットイニシアティブ
1992年12月にインターネットイニシアティブ企画として設立。国内初のプロバイダ事業会社
※5  JANOG:JApan Network Operators' Group
http://www.janog.gr.jp/
※6  NANOG:The North American Network Operators' Group
http://www.nanog.org/
※7  東京インターネット
東京インターネット(株)。1994年12月に設立され、翌年4月にサービス開始
※8 INET92
1991年から始まったインターネットに関する国際学会。ISOC(Internet Society)が主催しています

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