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ニュースレターNo.29/2005年3月発行

巻頭言:暴走しないインターネット

JPNIC理事/歌代和正

多湖輝先生の「頭の体操」シリーズの1冊に、こんな問題があります。

2人の男が荷車を前後にはさんで運んでいる。前の男は進行方向と逆向きに押し返し、後ろの男も同じ方向に引っ張っている。それでも車は前に進んでいる。なぜか。

読んだのは30年以上前のことなので、細かい部分は違っているかもしれません。とにかく、2人の男 (女でもいいのですが) は荷車が前に進まないように後方に向かって押しているのに、前に進んでいるのはなぜかという問題です。

答えは「2人の男は下り坂を荷車が転げ落ちないように押し上げながら下っている」というもの。知らない人のために解説しておくと、「頭の体操」というのは、こういう風に、答えを見れば「なーんだ」という問題が満載したシリーズ本です。第1集の発売は1966年。まだ販売しています。
日本のインターネットの黎明期の話については、JPNIC理事長でもある村井さんの著書などが詳しいと思いますが、決して順風満帆だったわけではありません。JUNETからWIDEプロジェクト、それから商用インターネットサービスと、常に何らかの抵抗勢力と闘いながらのことだったように思います。JUNETが始まったのが1984年で、そのころ僕は大学を出たての新入社員、村井さんもまだ20代で、当時の口ぐせは "Don't Trust Over Thirty" でした(数年後には最後がFortyになり、最近は聞きません)。この頃のことを考えると、なぜか必ず冒頭の「頭の体操」の問題のことが思い出されます。

荷車、というかリヤカーみたいなオンボロの車に大将の村井を筆頭とするガキ共が乗り込んで、TCPだのIPだの叫びながら下り坂を猛スピードで駆け下りようとしている。大人達はなんとか、それを押し戻そうとする。しかし、時代の流れ、つまり坂道は明らかにインターネットに味方をしていた。やがて、荷車は周囲を巻き込みながら、もっと大きくて安定した乗り物へと成長し、より多くの乗客を運べるようになり、ゴージャスな本革のシートまで装備されるようになる。

このシーンを想う時、2つの疑問が頭に浮かびます。1つは、押し戻してくれる力がなかったら、どうなっていたかということ。ブレーキも付いていないリヤカーは、坂道を暴走して木っ端みじんになっていたのではないでしょうか。そもそも、あの時行く手を阻もうとしているように見えた力は、本当に我々を押し返すことを目的としたものだったのか。もう1つは、闘う相手がいなかったとしたら、自分達はあれ程までに何かに執着できたのかということ。障害を乗り越えること自体が目標になってはいなかったか。だからこそ、大きな成果をあげることもできたのではないか。

この2つの疑問には、多少なりとも真実が含まれている思っています。それよりも問題は、今がどうかということです。いつのまにかインターネットはすっかり市民権を得てしまい、闘うべき相手がいなくなってしまいました。こうなると、暴走しようとするのを止めてくれる人がいないので、自分で自分の行動にブレーキをかけなければなりません。力一杯踏んでいればよかったアクセルを自分の意志で戻さなければならないのです。昔のガキ共も今は皆40歳を越えて少しは分別もつき、それほどひどいことにはなりませんが、思いきり突っ走ることができないフラストレーションが少しずつ蓄積しているのではないでしょうか。

抑制した力に爆発的な成果を期待することはできません。向こう見ずで無鉄砲で反骨心を持った力こそが、誰もが思ってもみなかったような結果を出す可能性を秘めています。さて、我々は今どちらへ向かうべきなのか。もう一度、本来の反体制的な性向を満足する新しい分野を開拓していくべきか。それとも、若い新しい力に立ちはだかる反対勢力としての役割を演じていくべきなのか。(制限時間 183日)

うたしろかずまさ

プロフィール●うたしろかずまさ
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)取締役。1983年よりシステム管理、ソフトウェア開発環境、オペレーティングシステムの開発等に従事した後、IIJの設立に参加し1994年より同社勤務。主としてセキュリティ関連サービスを担当。JPCERT/CC代表理事、JPNIC理事、Telecom-ISAC理事、IPv6普及・高度化推進協議会理事等を務める傍ら、技術翻訳、コンサルティング等の個人活動の比率も高めつつある。

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