メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.29/2005年3月発行

インターネットガバナンスに関する議論の国際的動向

昨今、WSISとWGIGにおいて活発化しているインターネットガバナンスをめぐる議論の動向について紹介するとともに、そうした動きに日本からの提言を行ってきているIGTFの活動についてお届けします。

JPNIC Newsletter28号でインターネットガバナンス・タスクフォースの活動と併せてインターネットガバナンスの動向、特にWSIS※1とWGIG※2の動きをお伝えしましたが、この記事ではその後の動きをお伝えします。

2004年9月20日からジュネーブで開催されたWGIGコンサルテーション会合を経て、11月11日には国連からWGIGのメンバーが発表され、11月23日から25日まで第1回の会合がジュネーブで開かれました。メンバーは40名で、内訳は政府系が18人、非営利組織・市民社会系14名、民間産業界7名、それに国連事務総長WSIS特別補佐のニティン・デサイ氏が議長として加わっています。地域別に見ると発展途上国20名、先進国19名というバランスとなっています。日本からは総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 課長 坂巻政明氏が選ばれました。政府系のメンバーが半数を越えなかったことに関しては、一部のインターネット関係者からは安堵の声も聞こえてきました。ただしWGIGでは、メンバーは個人の資質で参加するとされており、所属組織の利益代表としての発言が期待されているわけではありません。

WGIG第1回会合では、途中に一般参加が許された公開のセッションも設けられた上で今後の作業手順が話し合われ、終了後に報道資料と事務局による非公式の要約が発表されました。報道資料ではWGIGの取り組むべき仕事として、1.インターネットガバナンスの作業上の定義の確立、2.インターネットガバナンスに関係する公共政策事項の特定、3.政府、国際機関、民間団体、市民組織などのそれぞれの役割と責任についての共通の理解の確立、を挙げています。また非公式の要約では、合意された報告書の構造案と、当面の作業としていくつかの検討課題別の"Issue Paper"の作成、それに作業日程などが書かれています。

その後、作業日程から1週間ほど遅れて2005年2月3日までには、課題別の21のIssue Paperの草案が発表され、意見募集が始まりました。この意見募集を経て2月14日から16日にジュネーブで第2回会合を開き、2005年11月にチュニジアで開かれる第2回WSIS会合に提出する報告書の完成に向けて作業をすすめていくことが予定されています。2月17日から25日にはやはりジュネーブで第2回WSIS会合の準備委員会が開かれるため、WGIGとWSIS準備委員との間でこの件に関して交流も可能となるものと考えられます。

さて、一連の出来事の背景を理解していただくために、このインターネットガバナンスの問題とITU(国際電気通信連合)の関係を説明しておきたいと思います。ITUは国連の専門機関の一つであり、100年以上にわたって電気通信分野での国際的な調整や規格作りに大きな役割を果たしてきました。しかし、インターネットの技術開発や規格作りはITUとは全く別のところで発展してきたため、電気通信の総本山を自負してきたITUはインターネットガバナンスの問題に完全に乗り遅れてしまった感があります。政府間会合として開催されたWSIS は、ITUが事務局機能を担っていますが、このWSISでインターネットガバナンスの問題が取り上げられるに至った経緯を見ると、そこにはITUの強い意向が働いていることが感じられます。それは言い方を変えれば、ITUによる「巻き返し作戦」にも見えるわけです。WSISの作業部会として国連事務総長が任命したWGIGは、ITUの直接的な影響力が及ばない形となりましたが、それでもITUはWGIGに向けて自身の主張を発信し続けています。実際2004年11月のWGIG第1回会合では、WSISの事務局長という立場で出席したITU事務局長内海善雄氏が、「ICANNの一部の機能はITUに移管されるべきであると考える人もいる」と発言していますし、ITUのザオ氏は、IPv6のアドレス割り当ての一部はITUの管轄とすべきである、と主張する論文を2004年秋に発表し、多くの議論を呼んでいます。

このような事情があるので、現在のインターネットガバナンスの国際的な議論は、一つ間違うと組織間の権力争いの話にすり変わりかねない要素を持っており、そのような方向に向いた場合の負の影響を多くの人々が懸念していると言えるでしょう。WGIGの議長デサイ氏は「WGIGは交渉のためのフォーラムではない」と述べていますが、これはWGIGを権力争いの場にせず、実質的な中身のある議論の場にしたい、という意味にも解釈できる一方、「WGIGで何が決まろうとも、政治決着はWGIG外で付ける」という形で逆手に取られる可能性もある発言とも言えます。

JPNICは、インターネットの健全な発展を願う立場から、このように流動的な国際情勢の中でも有効な発言をしていくために、前号で紹介したインターネットガバンス・タスクフォース(IGTF)を他の3団体とともに結成しました。2004年11月のWGIG第1回会合には、IGTF事務局長会津泉氏を派遣して、公開セッションで上記ザオ氏の論文に対する意見を述べました。また、2005年2月3日までに発表された一連のIssue Paperのうち、3つについては意見書をWGIGに送り、WGIGのWebサイトに掲載されています。

インターネットガバナンス・タスクフォース(IGTF)は、2005年1月26日(水)にICANN報告会終了後、同会場で第1回の報告会を行いました。内容はIGTF事務局長会津泉氏による国際情勢の説明とIGTF活動報告、IGTF代表幹事を務める筆者丸山直昌によるIGTFの組織概要の紹介、WGIGメンバーに選出された総務省坂巻政明氏によるWGIGの活動状況の報告などでした。ICANN報告会の参加者の多くが引き続きご参加くださいましたが、これまでのICANN報告会には参加したことのない方やIGTF報告会だけのために足を運んでくださった方もあり、主催側としてインターネットガバナンスに対する関心の高さを感じました。

この報告会の概略は、いずれIGTFのWebページで紹介する予定です。また、WGIGのその後の動きもIGTFのWebページで紹介していく予定です。興味がある方は、ご参照ください。

(JPNIC インターネットガバナンス/DRP分野担当理事 丸山直昌)


参考URL

IGTFホームページ
http://igtf.jp/
WGIGホームページ
http://www.wgig.org/
WSISホームページ
http://www.itu.int/wsis/

【WSIS・WGIGの日程表】

2003
12/10~12 第1回WSIS会合(ジュネーブ)
2004
8/20 IGTF発足
9/20 WGIGコンサルテーション会合(ジュネーブ)
11/11 WGIGメンバー発表
11/23~25 第1回WGIG会合(ジュネーブ)
2005
2/3 WGIG Issue Paper発表
2/11 IGTFがWGIG Issue Paperに対する意見書提出
2/14~16 第2回WGIG会合(ジュネーブ)
2/17~25 WSIS準備委員会(ジュネーブ)
11/16~18 第2回WSIS会合(チュニジア)
※1 WSIS: World Summit on the Information Society(世界情報社会サミット)
情報社会をテーマとした国連サミットであり、第1回目は2003年12月にスイス・ジュネーブにて開催。第2回目は2005年にチュニジア・チュニスにて開催される予定。
※2 WGIG: Working Group on Internet Governance
2003年12月にスイス・ジュネーブで開催された第1回目の世界情報社会サミット(WSIS)を受けて、国連事務総長の下に設置されたワーキンググループ。WGIGでは、インターネットガバナンスの問題を、WSISとは別の枠組みで幅広い関係者が参加した上で検討することを目的としており、2005年のチュニスサミットに向けて、インターネットガバナンスに関する調査および(必要な場合には) 行動提案を行うことになっている。

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.