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ニュースレターNo.31/2005年11月発行

巻頭言:自転車とモジュール化

JPNIC理事長/後藤滋樹

自転車と自動車の大きな違い

最近は、オフィス街で自転車通勤と思われる光景を良く見かける。私も自転車に乗るのが好きで、都内の移動に自転車を使うことがある。自転車には乗る楽しみの他に、部品を交換する面白さがある。自転車の部品はかなりの部分が標準化されていて、ほとんどの部品は共通に使える。これは経済学の教科書でいうモジュール化の好例である。

車、つまり現在の自動車はモジュール化の対極にある。車の部品の中で共通化されているものは少ない。ただし将来の車は電気自動車になり、部品の標準化が進むと予想されている。現在の車でも電気関係の部品の中には各社共通になっているものがある。

ここで問題なのは、現在の日本の技術立国を象徴しているのが自動車産業であるということだ。その自動車がモジュール化されていく将来には、他の国でも自動車が作れるようになる。これは自転車の例を見ると良く分かる。ブランドに欧州や米国の名前が出ていても、フレームはアジア製の自転車がある。その激しい競争の中で日本製の部品が健闘しているのは嬉しいが、全部の部品を日本製にして自転車を組み立てると、相当に高価になる。

インターネットはモジュール化

モジュール化の例題として良く取りあげられるのがパソコンである(青木昌彦「比較制度分析に向けて」MIT出版)。現実のパソコンでは、デスクトップ型はモジュール化の典型であり、ラップトップ型では各社固有の部品もある。実はインターネットの全体がモジュール化されている。A社のサーバとB社のパソコンを連動するために、C社のルータで接続することができる。そもそもオープンという標語は、モジュール化と同義である。

モジュール化を推進するためにはプロトコルの標準化が不可欠である。インターネットの発展の歴史の中でIETF(Internet Engineering Task Force)が果たしてきた役割は大きい。標準化の活動は、ボランティアの個人的な熱意に支えられただけではなく、業界全体の産業構造を支えるという経済的な合理性があった。

米国は、国というには少し特殊なところがある。米国を除外して各国の比較をすると、日本のインターネットは最初から今に至るまで国際的に先頭グループをリードしてきた。IETFにおいても国別の貢献を比較すれば英国と日本が先頭グループである。

モジュール化の落とし穴

モジュール化された産業はニッチ市場とも呼ばれる。ニッチとは隙間で、参入障壁が低いことを意味する。逆に言えば巨大な総合電機メーカーが必ずしも強いとは限らない。米国ではインターネットの商用利用が認められる以前1980年代にも多くの中小企業が標準化活動に参加をしていた。これに対して日本で1980年代のインターネットを推進したのは大企業に属する人々や大学の若手の研究者である。

製品の製造の分野でモジュール化が進展すると、競争が激化して企業の利益が薄くなる。それ以上に問題なのは「土俵」が設定されてしまうという現象である。つまり個々のモジュールを製造するだけの企業には、全体を変革するだけの力がない。その市場の中に閉じ込められてしまう。

現実には、モジュール化されているインターネットの世界でも、技術の進化が見られる。むしろ他の分野よりも技術革新が激しい。それを先導している企業を見ると、個々のモジュールの製造だけを行っているのではない。研究開発に独自の工夫を凝らしている。

日本の未来

オープンな業界は、製品の相互接続を可能にする。つまりお互いに他社(他者)に依存する構造である。ただし研究開発については、各企業の作戦が自己完結的(前出の青木昌彦教授)であるほど業界の革新能力が高まる。時には新奇なアイデアが一世を風靡する。

このような競争は激しいものであり、成功の確率が低い。それを支えているのがシリコンバレーの社会である。日本にシリコンバレーを持ち込もうというスローガンを聞いたことがある。それ以上に全米の各地で、ご当地版のシリコンバレーの試みがあった。このようなプロジェクトは、ほとんど失敗してしまう。

私は単純に米国、特にシリコンバレーモデルが良いと主張しているわけではない。ただし日本の現在の産業構造のままでは、モジュール化の時代に生き残れない。失敗が多発する激しい研究開発を支える構造を実現しなければモジュール製品の安売りに終始する。この問題は恐らく個々の企業の工夫だけでは解決できない。日本が新しいモデルを創発するべき時期である。本誌の読者諸兄が、その創意をリードしていただけるものと期待している。


ごとうしげき

プロフィール●ごとうしげき
早稲田大学理工学部教授。工学博士。東京大学大学院修士(数学)修了後、電電公社電気通信研究所に勤務。1984年から1985年にスタンフォード大学の客員研究員となり、当時のARPAネットの利用者となる。JUNETが日米間で接続された時には米国に滞在。帰国後にjunet-adminの一員となり、その活動がJPNICにつながる。JPNIC理事を経て2005年6月16日にJPNIC理事長に就任。現在アジア太平洋の研究ネットワーク連合であるAPANの議長。総務省情報通信審議会委員などをつとめている。

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