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ニュースレターNo.31/2005年11月発行

インターネット10分講座:ICANN

今回の10分講座では、インターネット資源の世界的な調整を行ってきたICANNについて解説し、昨今のインターネットガバナンスの議論の中でICANNをめぐる議論の動向について紹介します。

ICANNとは・その役割

ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は、1998年10月に米国カリフォルニア州を本拠として設立された民間の非営利法人で、その定款では次のような役割が規定されています。

  1. ドメイン名やIPアドレス、AS番号、ポート番号といったインターネット上の識別子の割り振り、割り当ての調整
  2. DNSルートネームサーバシステムの運用および展開の調整
  3. これらの技術的役割に合理的かつ適切に関連するポリシー策定の調整

どのようなことを決めているのかイメージしていただくため、具体例を最近のICANN理事会決議からいくつか引いてみます。

  • AfriNICを世界で5番目のRIR(地域インターネットレジストリ)として承認(2005年4月)
  • 「.jobs」および「.travel」を新gTLDとして承認(2005年4月)
  • IANAからRIRへのIPv4アドレス割り振りポリシーを承認(2005年4月)
  • 「.mobi」を新gTLDとして承認(2005年6月)

現在では続々と新gTLD(sTLD)導入が決定されている状況ということもあり、どちらというとIPアドレスよりはドメイン名関係の決議が多いと言えるでしょう。

ICANNの成り立ち

ICANNが設立される以前は、南カリフォルニア大学のジョン・ポステル氏を中心に、米国政府の援助も受けつつも基本的に技術者や研究者のボランティアで運営されていたIANA(Internet Assigned Numbers Authority)がインターネット資源管理の責任を担っていました。1993年からは米国政府機関である全米科学財団(NSF)がIANAの活動の一部に対して資金援助を行い、拡大し続けるインターネットに対応しようとしました。この資金援助は、インターネットレジストリ機能などの登録管理と情報提供業務を請け負う業者をNSFが公募し、選定された業者に対してNSFが委託料を支払うという形態を取り、レジストリ機能についてはネットワークソリューションズ社(NSI)が選定されました。

.JPなどの国別ドメイン名(ccTLD: Country Code Top Level Domain)については、IANAが各国・地域のTLD運用者に管理を委任していました。.JPの委任を受けたのはJPNIC理事 村井純(JPNIC前理事長)です。また、IPアドレスについては、IANA機能・権限を代理していたInterNICが管理を行っていました。当初はIPアドレスを必要とするエンドユーザー組織が直接InterNICからIPアドレスの委任を受けていましたが、その後地域インターネットレジストリ(RIR:Regional Internet Registry)が設立されると、RIRがInterNICからブロック単位で委任を受ける、という方法に変わっていきました。

1990年代後半になると、.comドメイン名の登録数の爆発的増加に象徴的に見られるようにインターネットが社会へ急速に浸透したこと、当時NSFからの委託を受けて.comドメイン等の管理を行っていたNSIに対し、独占だとの批判が高まったこと、gTLDをもっと増やすべきだとの意見が強まったこと、サイバースクワッティングへの対策が強く求められていたことなどの複合的な要因から、今後、インターネット資源の世界規模での調整をどのように行えばよいかが問題となりました。これを受け、当時インターネットに深い関心を持ちその運営にも深くかかわっていた各界の識者へISOCが依頼して結成したIAHC(International Ad Hoc Committee)での議論をはじめ、関係者による活発な議論が行われました。そして、IAHCはそれらの意見を参考にした上で最終報告書をまとめます。この報告書の中には新gTLD承認のプロセス等を規定したgTLD-MoUの提案が含まれており、ISPやレジストリ等へこのgTLD-MoUへの署名が呼びかけられ、実際に100団体を超える多数の賛同を得て、提案された組織の設立への具体的な動きも始まります。

しかしこの動きは、1998年1月に米国政府が発表した「インターネットの名前およびアドレスの技術的管理の改善についての提案」(通称グリーンペーパー)によって、一旦ストップがかけられます。この文書は、インターネットの重要部分は米国政府機関との契約に基づいて運営されていると強調するもので、当時のインターネット関係者からは相当な反発がありました。

この後、このグリーンペーパーに対する様々なコメントを反映させ、米政府が1998年6月に「インターネットの名前およびアドレスの管理」(通称ホワイトペーパー)を発表します。この文書では、インターネットが米政府による投資の下成立したという主張は曲げなかったものの、それまでのインターネットの伝統であった民間主導、ボトムアップのプロセスは評価、尊重する内容となっていました。これにより議論は新しい非営利法人を設立する方針へと収束し、結果1998年10月のICANN設立につながっていきます。

冒頭に述べたICANNの役割は、ICANNと米国商務省がDNSの技術的管理の権限を米国政府から民間セクター(ICANN)へ移行させるため、その方法や手順を両者が共同で策定することを目的として締結された覚書がその根拠となっています。1998年11月に締結されたこの覚書では、当初2000年9月末には管理権限をICANNに完全に移行するとし、それにあたって両者が果たすべき責務や目標が定められていました。その後数回にわたり覚書は改訂、更新され、現在有効な覚書では、管理権限の移行期限が2006年9月末にまで延長されています。ICANN はこの覚書に基づいてインターネットの各種資源に関する分配システムの調整、および関連ポリシーの策定といった活動を行っています。

現在の組織形態とそれぞれの役割

ICANNの組織全体像については、以下の組織図をご参照ください。

ICANN組織構成図
ICANN組織構成図

ICANNとしての意思決定は最終的には理事会でなされますが、理事会に対しては3つの支持組織(SO:Supporting Organization)がそれぞれの分野に関連する方針策定について議論を行い、理事会に対して勧告を行う役割を持ちます。これら支持組織には、「分野別ドメイン名支持組織(Generic Names Supporting Organization:GNSO)」、「国コードドメイン名支持組織(Country Code Names Supporting Organization:ccNSO)」、「アドレス支持組織(Address Supporting Organization: ASO)」の3つがあり、さらにGNSOの配下には分野に応じて6つの部会が設けられています。JPNICはこの6つの部会のうちISP部会に参加、活動しています。(2005年9月現在)

これらの支持組織、部会での議論へは、関心のある人なら誰でも自由にパブリックコメントの提出やメーリングリスト等によってプロセスに参加することができます。また、年3回地域持ち回りで開催されているオンサイトの会議でも、オープンマイクセッションという誰でも発言できる時間が設けられており、全体を通じてボトムアップ型のプロセスが確保されるよう配慮していると言えます。

さらに、理事会に対し専門的立場から助言を行う機関として、各種の諮問委員会(Advisory Committee)が存在します。現在は、各国政府関係者等からなる「政府諮問委員会(Governmental Advisory Committee:GAC)」、ルートサーバ運用管理者等からなる「DNSルートサーバ・システム諮問委員会(DNS Root Server System Advisory Committee:RSSAC)」、インターネットのネーミングおよびアドレス割り振りのセキュリティ問題について助言を行う「セキュリティと安定性に関する委員会(Security and Stability Advisory Committee:SSAC)」、個人インターネットユーザーの代表からなる「At-Large諮問委員会(At-Large Advisory Committee:ALAC)」が常設の諮問委員会となっています。諮問委員会に加えて、インターネットの技術標準を作成する組織(IAB等)の代表からなる「技術リエゾングループ(Technical Liaison Group:TLG)」も、理事会に技術面の助言や情報提供を行います。

これらの他に、必要に応じて各種の理事会内委員会や臨時委員会が設置されます。また、ICANNの運営において透明性やアカウンタビリティ(説明責任)を重視するための仕組みとして、オンブズマンや独立審査パネルが存在します。

このように最終意思決定機関である理事会に対しては様々な立場からのインプットがなされます。また、2005年7月の理事会では毎月の電話会議での議論の内容、経緯、個々の理事の賛否表明などまで可能な限り公開するという決議がなされており、公開で透明性を持った、ボトムアップの民主的プロセスを確保しようと腐心しています。

インターネットガバナンスの議論の中で

このような状況の中、2003年12月にジュネーブで開催されたWSIS(世界情報社会サミット)の第1フェーズにおいて、インターネットは誰が管理・運営すべきかという、いわゆるインターネットガバナンスの議論が巻き起こりました。この中で特にICANNの存在とその役割を巡って米国を始めとするインターネット先進国とそうでない国との間で激しい対立が起こりました。

中国、ブラジルなどは、ICANNが米国カリフォルニア州の非営利法人で米政府の影響下にあることは問題であるとし、ルートサーバやIPアドレスの割り振りも米国に集中しているという状況を是正するため、これらインターネットの資源管理はICANNではなく、国連もしくはITU(国際電気通信連合)等の政府間組織に移管すべきであると主張しました。また、当のITUからは各論ベースの話として、IPv6アドレスを国毎に予約、割り振りする方式を現在のRIRによる割り振り方式と併存させてはどうかと提案し、自らその割り振り主体に名乗りをあげました。

これに対し米国や日本などは、現在の割り振りの方式は民間主導でボトムアップに作り上げられたものであり、技術的にも理にかなっていることを主張し、議論は平行線をたどります。結局ジュネーブのWSISでは意見が一致せず、国連事務総長の下、政府関係者、市民社会代表、産業界の各関係者を世界中から集めたワーキンググループ(WGIG)を結成し、次回チュニスサミットまでにインターネットガバナンスに関する報告書を作成することになりました。余談ではありますが、WGIGのメンバーにはICANN関係者も参加しており、他のメンバーに現状のインターネット資源の割り振りの妥当性を理解してもらうのに相当苦労したようです。

2005年7月にはWGIGとしての最終報告書が発表され、注目されていたIPアドレス、ドメイン名、ルートサーバなどの管理・運営については、これをどのような組織構成で行っていくかについて4つの案を示しました。これには現在通りICANNが資源管理機能を持つという案や、国連にひも付いた機関がICANNを直接監督する、という案等が示されています。先に紹介したITUのIPv6割り振りの新方式については、組織構成の方向性が見えた後の各論であるということもあってか、この報告書では触れられていません。

2005年11月のWSISチュニスサミットにおいてはWGIGが出したこの報告書をベースに、再びICANNとそのあり方、またICANNと政府との関係等が議論の対象となるでしょう。これはなかなか難しい問題であり、このサミットで決着がつくのかは予断を許しません。いずれにしろ、チュニス後も議論は続いていくと思われ、今後も引き続き注目すべき問題であると言えます。

(JPNIC インターネット政策部 穂坂俊之)

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