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ニュースレターNo.32/2006年3月発行

WIPO Workshop“Advanced Domain Name Dispute Resolution”レポート

2005年10月20日および21日、スイス・ジュネーブにて、WIPO仲裁センター主催のWorkshop、“Advanced Domain Name Dispute Resolution” が開催されました。ジュネーブはヨーロッパ最大の淡水湖であるレマン湖に面し、国連の欧州本部をはじめとする多くの国際機関を抱える静かな落ち着いた街です。WIPO本部は国連欧州本部のすぐ隣にあり、Workshopは、このWIPO本部の1階会議室で行われました。今回、日本からはJPNIC丸山直昌理事および私が昨年に続き参加し、また、今年はJPNICドメイン名検討委員会委員長の早川吉尚氏(立教大学教授)も参加しました。以下、Workshopの主なプログラムをかいつまんでご説明します。


WIPO仲裁センター(以下、センター)は、1999年12月以来、これまで8000件を超えるUDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy:統一ドメイン名紛争処理方針)※1に基づく申立を受け付け、裁定を下してきました。Workshopは、これらの裁定に関連して同センターに蓄積された情報を参加者に提供することを主な目的として開催されたもので、毎年CLE※2の対象にもなっています。Workshopでは、センタースタッフおよび著名なパネリスト※3経験者David Bernstein氏とパネリスト経験者のAnna Carabelli氏らが主な講師を務め、センターやUDRPの法的枠組みの解説、UDRP重要条文の解説、最近の重要裁定の紹介、UDRPに基づくドメイン名紛争で裁判にも至った事例の紹介等がありました。参加者にはドメイン名紛争の仮想事例(Case Scenario) が事前に送付され、参加者は予め目を通し、考えをまとめておくことが求められます。

参加者の多くは今回が初めての参加であることを考慮して、Workshopでは、まずセンターやUDRPの法的枠組みの解説がセンタースタッフより行われました。

その後のBernstein氏およびCarabelli氏によるUDRPの条文についての解説は、特にUDRP第4節a.の(i) から(iii) を中心に行われました。第4節a.の(i) から(iii) は、申立人側が申立の中で立証しなければならない3項目を定めるものです。両パネリスト経験者による解説は、条文の一般的解説にとどまらず、実際の事例の中で上記3項目の立証の成否を左右し得るような具体的な状況例、例えば「商標権の成立のタイミングとドメイン名の登録」「批判サイト(の正当性)」等、微妙な典型的状況例が列挙され、さらに典型的な各状況例について、「Majority View(パネリスト間の多数意見)」「Consensus View(パネリスト間の統一的な意見)」が明確に表示された上で解説がなされました。

UDRPに基づくドメイン名紛争で裁判にも至った事例に関しては、センタースタッフEun-Joo Min氏より、スペインやアメリカ、韓国で裁判に至ったケースの紹介がありました。裁判に至った場合でもその情報がセンターに自動的に入ってくるわけではありません。そのため、センターは、昨年のWorkshopでは、ほとんど裁判事例を把握していないと言っていましたが、その後かなり時間をかけて情報を収集したようでした。

また、上記解説の合間に何度かグループに分かれてディスカッションが行われました。ある状況例の解説の後、その状況例を反映したCase Scenarioについてディスカッションが行われ、参加者はディスカッションを通じて各状況例におけるポイントに対する自身の理解度を確認することができます。

ちなみに、今年のCase Scenarioは、センターへの過去の実際の申立を参考にして作成されたものだということで、昨年のものと比べて現実に参考になる事例だったと思います。

今年のプログラムの中には昨年とは全く違う趣旨のものが一つありました。それは、センターのパネリストを務めたことのない人(ドイツのBMW社、SeniorLegal CounselのAimee Gessner氏)がインストラクターを務めたプログラムです。

Gessner氏からは、BMW社の商標保護方針や同社のドメイン名紛争事例についての解説がありました。同社は過去にUDRPに基づく申立を800件以上も行ったということで、多くの事例紹介がありました。こうした話は、企業から派遣されていた人達にとっては現実的で参考になるものだったのではないかと思います。センターは来年以降のWorkshopにも同様の内容を含める予定だということでした。

Workshopには今年は19ヶ国から予定定員(50 名)を超える参加者があり、Workshop初日の夜にはWIPOの最上階の部屋でカクテル・レセプションが行われました。同レセプションや2日間の昼食会等では他の参加者から各国のDRP制度やドメイン名紛争の現状について話を聞くことができました。参加者の多くは各国弁護士で、顧客の要望に応えるために知識を得たいという人が多いようでしたが、イタリアのGucci社やドイツのMerck社といった一般企業の法務部門から派遣されていた人もおり、パネリスト経験者も数名参加していました。

前述の早川氏は、レセプションや昼食会でセンタースタッフやパネリストと積極的に情報交換をしていましたが、Workshopの中でも挙手し、予め用意した資料を配布してUDRPとJP-DRPの比較について紹介する等して他の参加者の関心を集めていました。

WIPO仲裁センターは、UDRPに基づく申立を過去最も多く処理してきた紛争機関です。しかし、申立の処理はセンターおよびセンター指名のパネリストにより処理され、当事者の審問や公開の審理等は行われません。また、センターの下す裁定は公表はされているものの、裁定の傾向の分析等に関する情報等はあまり蓄積されていないのが現状です。また、こうしたWorkshop等を開催している機関も他にはないため、センターのWorkshopはドメイン名紛争のトレンドや情報を得ることができる年1回の貴重な機会だと思います。

なお、同様のWorkshopは、来年も同時期に開催される予定になっています。

写真:WIPO Workshopの様子
WIPO Workshopの様子

(JPNIC インターネット政策部 小久保明日香)


※1 UDRP:
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/udrp.html
http://www.nic.ad.jp/ja/tech/glos-kz.html#03-uDRP
・UDRP紛争処理方針(翻訳文)
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-policy-j.html
・UDRP手続規則(翻訳文)
http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-rules-j.html
※2 CLE:
Continuing Legal Education(研修受講義務)の略。日本の弁護士資格と異なり、海外特に米国の弁護士資格の中には資格取得後、CLEとして認定された講座の受講が義務付けられているものがあります。受講を怠ると資格の継続は認められません。
※3 パネリスト:
UDRPに基づくドメイン名紛争において、紛争機関(センター)からの指名により審理を行い、裁定を下す人

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