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ニュースレターNo.33/2006年7月発行

IPv6アドレスポリシーをめぐる最新の状況

◎JPNIC IP事業部 奥谷泉

効率的な利用に重点が置かれているIPv4アドレス(以下、IPv4)に対して「その数は無限で効率的な利用など基本的に意識する必要はない」と言われてきたIPv6アドレス(以下、IPv6)ですが、海外のインターネットコミュニティでは2005年の秋からこのようなスタンスに少し変化が現れてきました。

また、このような議論が行われている一方で、現在IPv4では認められてはいながらもIPv6では一般的なエンドサイトに対して認められていない、プロバイダに依存しないIPアドレスの新設を求める声も強くなってきています。

本稿では、これら二つのテーマについてのどのような議論がされてきているかご紹介します。

IPv6における効率的なアドレスの分配ルール

これまでIPv6においては、ADSLサービスの顧客など、接続のみを提供しているユーザーに対しても基本的に/48の割り当てが認められていましたが、これを見直そうという動きが2005年9月頃からRIRコミュニティで出てきています。

具体的には、現在のようにネットワークサイズに関わらず、/48の割り当てを認めるのではなく、個人ユーザーやSOHOに対してはもう少し小さな割り当てサイズを用意するべきとの提案が2005年9月のAPNICミーティングをはじめ、全RIR地域で行われました。 /48というアドレスサイズは、/64が65,536個に該当するプレフィックスであることから、単純にインターネット接続のみを必要とする顧客に対して/48はおそらく必要ないという提案者の主張も一理あると言えそうです。

ARIN地域ではこの提案をさらに一歩進め、例えば/48と/56といった複数の固定的な割り当てサイズを認めるのではなく、IPv4のように、ネットワークの規模に応じて適切なサイズを付与する可変的な割り当てに変えた方が合理的で無駄がないとの意見があり、強い支持が得られていました。

これを受け、APNIC地域を含めた全RIRコミュニティでは、サイズの判断はLIRが行うとの前提で、IPv6においても割り当てサイズを可変とする提案が行われ、ARINコミュニティでは2006年4月に既にコンセンサスが得られています。

国内の状況としては、現時点で積極的な賛成の声は多くなく、2005年秋にJPNICが実施したアンケートの結果では、2、3の事業者においては1,000万円以上の損失を予測しており、 また、可変的な割り当てによる固定コストの増加を懸念する声もいくつか表明されています。(図1、図2参照)

解説図表
IP指定事業者を対象に行ったアンケート結果(2005年実施)

こういった国内の状況はJPNICからAPNICミーティング、ARINミーティングでも紹介していますが、提案支持者の中では日本の状況を短期的な影響と捉え、それよりも長い目で見たインターネットのためを考えるべきとの意見を持っている人も少なくないようです。

いずれにしても本提案は一地域だけで適用しても十分な効果が得られないため、全RIRコミュニティでコンセンサスが得られた上で適用するように進められることになり、JPNICとしては、2006年9月のAPNIC地域でのミーティング前に国内で議論を進め、調整を行っていきたいと考えています。

参考:提案原文
“prop-033-v001:End site allocation policy for IPv6”(Geoff Huston, Randy Bush)
http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-033-v001.html

IPv6におけるPIアドレスの新設

現在、IPアドレスは基本的に直接エンドサイトへ分配を行うのではなく「LIR」と呼ばれるインターネットレジストリの資格を持つISPを経由して実際のネットワークに分配を行っています。そして、国内においてはIPアドレス指定事業者がこの「LIR」に該当する役割を担っています。(図3参照)

解説図表

一方、一部の特殊なケースにおいては上記図4のようにLIRを介さず、直接RIRやNIRからエンドサイトが割り当てを受けることのできる「PIアドレス」と呼ばれるアドレスも存在します。

IPv4においてはマルチホーム接続を行っているネットワークに対しては、技術的な必要性からPIアドレスの割り当てが認められていますが、IPv6においてはまだそのようなアドレスが認められていないのが現状です。その場合の最も大きな問題としては、インターネットコミュニティの中では望ましくないとされている「パンチングホール※1」を行うことでしか、マルチホーム接続を行うネットワークをIPv6で運用する手段がないということです。

このようなことから2005年12月のJPNICオープンポリシー ミーティングで、IPv6のPIアドレス新設の提案が行われ、アジア太平洋地域のポリシーとして日本から提案を行うことでコンセンサスが得られました。

その後、提案者である外山勝也氏をチェアとしたWGを設立して、アジア太平洋地域全体に向けての提案を作成し、2006年9月のAPNICミーティングでのコンセンサスを目指して活動を進めています。

また、世界的にもARIN地域では2005年秋よりIPv6におけるPIアドレスの必要性について議論が進められており、2006年4月のARINミーティングでコンセンサスが得られました。これをきっかけに他の地域でも提案に対する注目が集まり、全RIR地域で提案が提出される運びとなりました。アジア太平洋地域においては日本のIPv6 WGとは別に、ヨーロッパのIPv6協議会の方からも同様の趣旨で提案が行われています。

このようにIPv6におけるPIアドレスの新設は、ある程度の ニーズが認識されています。その一方で、shim6の検討を進めているIETF関係者や、古くからのインターネットコミュニティのメンバーからはインターネット全体の安定に影響を及ぼす規模での経路表の増加につながるのではないかとの懸念の声が根強く、これに対する効果的な反論をいかに行えるかが大きなポイントとなりそうです。

参考:
“prop-035-v001:IPv6 portable assignment for multihoming”(国内のIPv6 WG)
http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-035-v001.html

※1 パンチングホール
ISPは通常、経路数増加防止のために個々のネットワークに分配を行ったIPアドレスブロックを集約し、まとまった単位でグローバルインターネットへの経路広告を行っています。
パンチングホールとは、ISPがまとめて経路広告を行っているアドレスブ ロックの一部をより小さく区切り、自ISPあるいは他ISPから別途経路広告を行う手法で、主に冗長的なネットワーク構成を実現するために用いられています。本来一つに集約して広告されていた経路がまた別の経路として広告されるため、パンチングホールはインターネット全体の経路数の増大につながると言われています。
解説図表

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