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ニュースレターNo.33/2006年7月発行

SIPの相互接続イベントに寄せて~SIPit18 開催報告~

ロバート・スパークス氏と江崎浩
SIP Forumのロバート・スパークス氏(左)とJPNIC理事の江崎浩(右)

2006年4月17(月)~21日(金)の5日間、東京・秋葉原コンベンションホールにて開催した、SIP機器の相互接続イベント「SIPit18(Session Initiation Protocol Interoperability Tests)」は、盛況のうちに閉幕いたしました。

SIPitは、SIPを実装したネットワーク機器間における相互接続性の確立を目的とする、国際的な相互接続イベントです。このイベントの場で、参加者同士が自社の機器を持ち寄って接続実験をすることにより、参加者はその機器の実装を強化することができます。また、イベント全体で判明した事実や傾向をIETFに持ち寄ることで、SIPの標準化と技術の確立を支援・推進しています。

SIPitは、今までに世界各地で17回開催されています。当初は欧米地域での開催が主でしたが、ここ何度かは、アジア→ アメリカ→ヨーロッパの順になるように、主催のSIP Forum※1が調整しているとのことです。18回目の今回、初めて日本で開催する運びとなりました。70超の組織が参加し、参加者の割合として、アジア地域・アメリカ地域・ヨーロッパ地域がそれぞれ約3割ずつとなり、本当にグローバルな様相を呈していました。登録締め切り後も、席のキャンセル待ちが相次ぎ、SIP機器の実装に対する関心の高さがうかがわれました。

相互接続試験は、SIP Forumが用意したWikiサーバに参加者自身が行いたいテストの内容をあらかじめ載せてアピールし、直接相手と交渉して実施する形態が基本となります。こうしたSIPitならではの特徴により、参加者は実施したいテストを自分の好きなようにアレンジできる反面、このSIPitのバックボーンを運営するネットワークチームには、製品になっていない機器やソフトウェアの通信を維持するために、大きな負担がかかることになりました。

以下に、本イベントの一番の立役者であったSIPitネットワークチームリーダーの大江将史氏と、このSIPitに以前から参加している吉田良雄氏の所感を紹介します。

SIPit18におけるネットワーク運用

VoIP/SIP相互接続検証タスクフォース副主査 国立天文台 大江将史

大江将史氏近影

SIPitにおけるネットワーク運用は、IETFなどの国際会議における運用とは異なり、安定性が最重要視されました。この背景は、参加者間で事前に定められた試験スケジュールに対する障害の影響を最小限とすることが求められているからです。SIPitでは、各参加者が用意する機器に対して、IPv6/v4グローバルアドレスの割り当てが必要とされます。今回は、IPv4として、/22および/27、IPv6として、/48のアドレスブロックを使用し、インターネットへの接続を提供しました。

会期中の運用では、IDSシステム、パケットモニタリングなどを通して監視を行い、IDPシステム、ファイアウォール、FDBフィルタなどによって、内部・外部を問わずテストやパフォーマンスに影響を与える通信に対して、遮断を実施しました。これらの監視と対応によって、テストに持ち込まれた機器の問題点が顕在化する事例が、多数存在しました。例えば、ARP※2パケットのストームを発する機器や、通話切断に失敗し音声パケット(UDP/RTP)を送信し続ける機器など、中にはインフラに影響を与えるものもありました。

このように、SIPitが求める要件を満たす環境を維持することには、多大な労力を必要としましたが、各社の機材や技術協力、NOCクルーの昼夜を問わない献身的な活動により、無事運用を終えたことに多大な感謝をしたいと思います。

国内で初開催のSIPitについての感想

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 吉田良雄

吉田良雄氏近影

今回のSIPitは国内外合わせて73団体が参加しており、多くの団体との相互接続実験を実施することができました。日本での開催であるため、国内団体からのIPv6実装が多く持ち込まれることを期待していましたが、予想に反して少ないのが残念でした。しかし、セキュリティについては非常に高い関心があることが認識できました。現在の商用サービスでは使用されていないTLS※3の実装が徐々に増えてきており、今回のSIPitでは多くの参加機器が実装していたため、TLSを使った相互接続検証を実施できました。さらに、SRTP※4の実装も少しずつ増えてきており、今後取り組まなければならない課題であると認識することができました。

また、アジア企業の勢いが目立ちました。製品化を見据えた多くの実装が持ち込まれており、かなりしっかりした実装も多く見受けられました。SIPitのように実装者の観点で多くの企業との相互接続を実施できることは、実装者の相互接続についての意識、スキルの向上が期待でき、さらには自身の実装を相対的に理解する場としても非常に有効なので、今後も継続的に参加していきたいと考えています。


仕様は、実装され、動作し利用されなければ意味がありません。実運用を通じ、さまざまな技術課題の抽出を行い、実装や標準化へのフィードバックをすることが大変重要になります。日本でのVoIPサービスは世界でもトップクラスと言われていますが、今回のイベントを通じて、まだまだ改善すべき余地があることがわかったベンダーの方も多いのではないでしょうか。また、日本国内のSIP関連サービス・製品の認知度をグローバルに向上させる良い機会になったのではないかと思います。

右ページのスポンサーをはじめとした多くの方々に、このような本イベントの精神をご理解、ご賛同いただけたことに対し、 一同深く感謝すると共に今後もますます、このVoIP/SIPの相互接続の活動に力を入れていこうと決意を新たにしています。

参加者ならびにご協力いただきましたみなさまに、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

接続実験の様子
SIPit18の会場。参加者が会場に機器を持ち寄って相互接続実験を行いました。

開催概要

日時
2006年4月17日(月)~21日(金)
会場
秋葉原コンベンションホール
主催
SIP Forum <http://www.sipforum.org/>
日本での主催
(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
共催
  • WIDEプロジェクト
  • VoIP/SIP相互接続検証タスクフォース
後援
  • 総務省
  • 社団法人情報通信技術委員会
  • 社団法人テレコムサービス協会
  • 情報通信ネットワーク産業協会
  • HATS推進会議
  • 日本VoIPフォーラム
  • IPv6普及・高度化推進協議会
  • ENUMトライアルジャパン
詳細URL
協 賛
  • エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
  • エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
  • 沖電気工業株式会社
  • KDDI株式会社
  • シスコシステムズ株式会社
  • 株式会社ソフトフロント
  • 西日本電信電話株式会社
  • 日本テレコム株式会社/ソフトバンクBB株式会社
  • 日本電気株式会社
  • 日本電信電話株式会社
  • 株式会社ネットマークス
  • 株式会社三菱総合研究所
  • 三菱電機情報ネットワーク株式会社
  • 東日本電信電話株式会社
  • 株式会社フラクタリスト
  • フュージョン・コミュニケーションズ株式会社
  • ラドビジョンジャパン株式会社

(JPNIC インターネット基盤企画部 根津智子)


※1 SIP Forum http://www.sipforum.org/

※2 ARP:Address Resolution Protocol http://www.ietf.org/rfc/rfc826.txt

※3 TLS:Transport Layer Security http://www.ietf.org/rfc/rfc4346.txt

※4 SRTP:Secure Real-time Transport Protocol http://www.ietf.org/rfc/rfc3711.txt

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