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ニュースレターNo.35/2007年3月発行

Internet2.0に向けて
変貌するネットワーク社会を見極める
~ IP Meeting 2006の議論から ~

通信業界には、この10年を俯瞰(ふかん)した際に感じられる大きなパラダイムシフトがあります。日々進むブロードバンド化と通信網のIP化により、従来、レイヤーやサービスの種類によって分けられていた通信界の既成概念が崩れつつあるということです。そして今まで別物であった概念が融合(convergence)して提供されるサービスの登場する世界が、「Internet2.0=インターネットの第2フェーズ」です。

2006年12月5日に開催した「IP Meeting 2006」では、『このInternet2.0の世界とは果たしてどのような世界なのか、そしてそれを見据え、インフラに関わる各人が、今、一体何をすべきかを共に考えよう』という目標を掲げました。

写真:後藤JPNIC理事長
モデレータを務める後藤JPNIC理事長

まず、江崎JPNIC副理事長より、Internet2.0を考えるにあたり、以下の「五つの質問」が参加者全員に提起されました。

  1. インターネットにおいて誰がステークホルダーであるか。
  2. インターネット資源は一体誰のものであるか。
  3. そのインターネット資源を誰が提供するのか。
  4. どのようにグローバルに展開していくのか。
  5. 今後、新サービスの可能性をどのように創造/担保していくのか。

このあと紹介するコメントは、今回の講演者・パネリストが述べた「Internet2.0に向けての考察、思い」をまとめたものです。皆様も上記の五つの質問を念頭に入れつつ、Internet 2.0の世界を想像してみてください。

原点回帰

浅羽登志也社長 浅羽登志也 株式会社インターネットイニシアティブ取締役副社長

2.0を考えるにあたり「そもそも1.0は何か」を考え、原点に立ち戻ると、「P2P」の概念こそがインターネットの本質であると思う気持ちを強めています。「つなぐ人=提供側」「つながる人=提供される側」という関係はなく、皆が対等に線をつなぐことでネットワークが形成されている以上、全てはP2Pから始まっています。一度送り出したパケットに対してボーダーはなく、どこにでも驚異的に運ばれるのがインターネットの強みです。IPのプロトコル自体にはISPとISPの境目もなく、国毎の境目もありません。ISPはユーザーに対して「インターネットの接続をさせてあげている」のではなく、「インターネットのコア部分の運用代行をしているのだ」、そもそも最初はそのような気持ちで始めた気がします。

この「ボーダーレス」の考え方の他に、「ステューピッドネットワーク」「エンド・ツー・エンド」「ベストエフォート」という考え方が私の原点となっています。「ステューピッドネットワーク」は、ネットワークは余計なことを何もせずにパケットをしっかり運べということです。また、「エンド・ツー・エンド」は、やりたいことはエンド同士で実現しなさいということになります。ネットワークが余計なことをしない環境下で、エンド・ツー・エンドで制御し、アプリケーションを作り、コンテンツをマッシュアップする、そういうことが自由にできる土壌、そのような真のインターネットのオープン性を維持したいと考えています。また、「ベストエフォートは品質がなんとなく良くない」と思われがちですが、本当にそうなんだろうか、「最上の(best)努力(effort)」なのだから、「あらゆる力を尽くしてパケットを運ぼうとするインターネット」ではないかと考えています。

インターネットが驚異的につながっていくネットワークであることは既に申し上げました。だからこそ、そのセキュリティを守ることは難しい課題です。インターネットを利用するにあたり、ウィルスやスパムメールがあるということ、また、驚異的につながるものを制限しない利点が、逆に危険性をはらむという事実を理解した上で一人一人が何をすべきかを考えて利用する、ということに尽きます。それに対してプロバイダ側はいろいろなお手伝いをしますし、セキュリティを確保する技術も提供します。だからといって裸で歩いていいということではありません。その自覚を各自が持つことが一番重要です。

現在、P2Pがさまざまな問題になっています。しかし問題の本質は、「流す情報をコントロールできないこと」と「トラフィックの流れが最適化されていないこと」にあります。グローバルなインターネットには「ローカル」という概念がないため、物理的に近い場所から同じコンテンツを持ってくる良い仕組みがなく、帯域が非効率的に使われる事象が起こります。しかし、これはftpでもNetNewsでもそうでした。その時々の主要なトラフィックを最適化しようという努力は我々プロバイダが常に行ってきたことです。ポイントはいかにネットワークのリソースを効率よく使うように全体をコーディネートすることではないか、と考えています。

利用する人が幸せになるネットワークを

近藤邦昭会長 近藤邦昭 まほろば工房/JANOG(JApan Network Operators' Group)会長

運用の立場からも、サービス提供側の立場からも、「お金を出してインターネットを成長させてくれた人=利用する人が幸せにならなくてはいけない」があるべき姿であり、その観点で「ネットワーク利用者」が常にステークホルダーであると思います。理想論に聞こえるかもしれませんが、この根底には「インターネットは皆で作っていくものだ」という気持ちが中に含まれています。

世の中のトラフィックが爆発しているという話、それに絡んで、その悪の権化がP2Pであるかのように言われていますが、「それの何が悪いのか」というのが私の実直な質問です。P2Pで何か悪いことが起きているように皆が思っている節がありますが、そこに正当な情報が流れている可能性も当然あります。今は技術的にトラフィックの中身を見て遮断ができますが、そうだとしても本当に遮断していいトラフィックかどうか誰も判断できません。だとすると本来事業者は全部を流すべきであって、トラフィックが爆発したから圧縮するという方向性は少しおかしい気がします。こういったネットワークの使い方も一つの文化です。

また「遅い」という話も出ています。日本のプロバイダは、相対的にリッチな回線を持っています。ですから「遅い」現象が一体どこで起きているのかを検証すると、エッジやLANの中であったりします。バックボーン、いわゆるインターネットと呼ばれているコアの部分はさほど問題になっていないことが多いのです。「パレートの80対20の法則」を聞いたことがありますか。これをインターネットに当てはめると、「全体のトラフィックのうち、P2Pのトラフィックが8割、残り2割が一般トラフィック」であり、「そしてその2割を8割の人が使っている」と統計的にも言うことができます。ここから導き出されることは、「社会の経験則で考えてもインターネットは全体的にうまく動いていると判断できるのではないか」ということではないでしょうか。考えなければいけないのは、エッジで混んでいるものをインターネット全体の問題ととらえる人の方かもしれません。

新サービス創出の可能性は第一に「サービス事業者の想像力」にかかっています。ユーザーは、「今のサービスで満足している」と言いつつも新サービスが出ると飛びつきます。それは事業者が潜在的にあるシーズをユーザーとの対話の中で敏感に感じ取り、新サービスとして具現化しているからです。新たなニーズやサービスはこのように発掘され、実現していきます。インターネットはインターコネクトしていくことによりネットワークが形成されていますから、全てがグローバルです。どういうサービスがどの範囲で提供されるかは、サービス提供側と提供される側の相互関係において決まっていくことであり、最終的に利用する人が幸せになるネットワークを皆で作っていきたい、というのが私の考え方です。

インターネットがコミュニケーションの基盤であり続けるために

外山勝保氏 外山勝保 日本電信電話株式会社情報流通プラットフォーム研究所グループリーダ

「Internet2.0への期待」という意味では、今後もインターネットは我々のコミュニケーション基盤であり続けるだろうと思っていますし、そう期待しています。リアルの世界とサイバーの世界がより融合し、人だけでなくいろいろなモノがつながり、まだ誰にも思いつかない楽しい使い方が出てくるだろうと思います。ただそうなると、インターネットに接続する人・モノに、ますます性善説が通用しづらくなるだろう、ということも実感しているところです。

インターネットは相互につなぎ、協力して遠くに運びましょう、というところから出発しています。そしてIPという基盤は多様な使い方ができます。当初はシンプルに作ることの方が重要であり、「セキュリティ」や、パケットを運ぶこと自体の「ビジネス」という点はあまり考慮されていなかったと思います。シンプルさが多様な使い方を生み出す点を維持していくことが重要である反面、今後も我々のコミュニケーションの基盤としてあり続けるには、現実世界の原理原則を全く無視するわけにはいかないと思うのです。従って、やはり「安全であること(セキュリティ、認証、著作権等)」、並びに「通信基盤ビジネスとしても成り立たせる」という経済原則を、インターネットを2.0への高みに押し上げるためにもしっかり議論していく必要があると考えます。

インターネットの世界の中で、IPを運ぶということを主軸にしているプロバイダがビジネス的に差別化を図るには、コンテンツ提供者やサービス提供者と密に連携しながらビジネスをする必要があるのではないでしょうか。そういう意味において、今後のステークホルダーはコンテンツ提供者と利用者がなるのではないかと思います。

ビジネスと言えば、課金の話も重要です。私も流すべきトラフィックはどんどん流せという考えには賛成です。ただ、平均ベースに料金体系を構築している以上、事業者の良心から、少なく使っている人と多く使っている人との不公平感は感じています。トラフィックを増やしている原因が一部のP2Pなので、みんな「P2Pが悪い」と端的に言っているんだと思います。

インターネットがある限り、新サービス創出の場は失われません。ただ、全て透過に通信するという話については、「どこまで必要か」の考慮が必要であると考えています。今はIPv4でNATやFirewallがあるところでサービスするしかない状況です。そこでサービスを提供して儲かるのであれば、多少のコストを払ってもいろいろと作っていく、うまく障害を乗り越える方法を提供者は考えるのが現実論です。インターネットの今後や本質を考えるにあたり、いかに経済原則などの現実と理想との間を取るのか、この辺りは皆様にも考えていただきたいポイントです。

ネットワークにおいて、一体何が公平か

谷脇康彦氏 谷脇康彦 総務省総合通信基盤局料金サービス課長

現在総務省では、「ネットワークの中立性」をキーワードに「ネットワークにおいて一体何が公平なのか?」を考えています。

従来、通信の競争政策では、サービスの種類あるいはモード(通信形態)別に、特に物理的なネットワークとその上の伝送サービスというレイヤーを中心に公正な競争が実現するか否かを考えてきました。しかしIP化・ブロードバンド化により市場が統合され、競争環境に変化が生まれています。その一つが「水平的な」市場統合、つまり、音声・データ・映像を分ける意味、固定と移動を分ける意味、あるいは距離区分で分ける意味がなくなりつつあるということです。二つ目は「垂直的な」市場統合です。プラットフォーム・コンテンツ・アプリケーションまで含めた垂直統合型のビジネスモデルが生まれてくる中で、それぞれのインターフェースをどのようにオープンに保ち、レイヤー間やレイヤーの中でのコスト負担をいかに考えて縦方向の公正競争を確保するかが重要となっています。

こういった市場の変化の中での「ネットワークの中立性」は、通信レイヤーを他のレイヤーがいかに公平に利用できるかという「ネットワーク利用の公平性」と、ネットワークを増強するためのコストを誰がどのように負担するかという「コスト負担の公平性」の二つの観点に分けられます。つまり、P2Pに代表されるネットワーク利用の多様性を実現しつつ、これを維持するための仕組みをどう確立するかがポイントです。認証・課金機能や著作権管理、QoSの確保などを行うプラットフォームの部分のオープン性を保ちつつ、また、どういう場合であればネット上で特定のアプリケーションの機能を制約することが許容されるかといった点も考察が必要になります。また、「端末」も非常に重要なキーワードです。レガシーなネットワークでは、ネットワーク側でエンド-エンドの通信を制御することが常識でした。しかし、端末側でダイナミックにネットワークを制御するという形態も重要であり、そのどちらも自由に選べる形が今後のネットワークの柔軟な活用の在り方と言えます。端末側の知性を活用することにより、端末とネットワークの責任分担がどう変わっていくのか、その時に出てくる社会的問題点は何かといった点も考える必要があります。

ネットワーク上のトラフィックは非常に伸びています。この急増にどう対応するかも大きな課題です。帯域占有率が時間帯によっては上下とも8~9割に達しているところがあります。注目されるのはP2Pの占める割合が高く、特に上り帯域において占有率が高いという点です。日本はブロードバンド基盤が最も整備され、FTTH化によって上り帯域も拡大していますが、これらを背景にP2Pが爆発的に増加していると考えられます。これはコンテンツ・アプリケーションというものが、いわゆるレイヤーの上から下に流れるという形が崩れ始めていることを示しています。通信キャリアが現在構築を始めているNGNも、レイヤー型の構造をとっていますが、これに加えて、ネットワーク側とその外縁にあるエンド側が対等の立場を持つネットワークの構築も必要でしょう。このため、NNI(Network-Network Interface)のオープン性をどう担保していくのか、通信レイヤーとその上下のレイヤー間のオープン性をいかに担保するのか、また端末との間のUNI(User-Network Interface)をどのように担保するのか、これらがいわば「ネット民主主義」を確保するための検討課題です。マーケットメカニズムがきちんと働いていればこういった問題はそもそも考える必要がないのですが、もし競争が阻害される要素がどこかにあり、市場のメカニズムがうまく働かないことが起こった場合に、どこに着目してマーケットをモニタリングするのか、そして、いかに競争阻害的な要素を排除するのかが重要になっていくのです。

ボーダーレスという意味では、サイバーの世界は国境がありません。しかし国というものは依然として存在しています。全ての国が同じ政策を取ることはありませんし、他国と利益が相反する場合もあります。まさに国境のあるリアルの世界と国境がないサイバーの世界の境目で社会的なシステムの整合性が問われます。また、デジタルデバイドという観点からは、ブロードバンドのアクセスをいかにユニバーサルにするかを考えないと意味がない時代になりました。このため、ユニバーサルサービスの在り方についても見直しが必要です。電話の時代と違って、インターネットの世界では行政がなるべく口を出さないことが肝要です。しかし、サイバーの世界でもリアルな世界と同様に、国と国との利害衝突が生まれたり、ある国の規制が別の国の規制に影響を与える可能性もあります。従って、インターネット政策の分野でも、市場の公正競争を確保することはもとより、それ以外の領域でも国益という観点から国が政策として行うべき部分は相当あるのではないか、そしてネットワークの中立性の議論はこうした幅広い論点を含んだ議論の端緒を開くものでないかと考えています。

携帯のIP化とThe Internet

渡辺文夫氏 渡辺文夫 KDDI株式会社技術統轄本部技術開発本部長

携帯のマーケットは9,400万台という膨大な規模です。その中でiモードやEZweb等のいわゆる、IP接続が可能なサービスの利用者は、今や87%に上っています。この数字はPCの国内台数、ブロードバンドサービスの契約数と比べても相当な数です。誰にとっても「すぐそばにある携帯機」はインターネットを語る上でも大きな存在と言えるのではないでしょうか。

面白いデータがあります。「コンテンツをどこから購入するか」というデータです。いわゆる「物品」の購入ではパソコンからの購入が多いのに対し、音楽等の「デジタルコンテンツ」の購入では携帯からの方が圧倒的に多いのです。欲しいと思った時、時間と場所を選ばず気軽に購入するにはやはり携帯が向いています。さらに、携帯は「事業者がきちんと管理している個人を認証するデバイス」としても評価されています。つまり、携帯の中にダウンロードしたファイルの管理が著作権者の意図した通りに可能であることが、著作権保有者にも理解されています。こうして、有料の音楽ダウンロードはCDの販売とほぼ同じレベルのかなりのビジネスサイズとなっています。また、「携帯でどんなサービスを使いたいですか」という調査では、「音楽プレイヤー」「GPS」「TV放送受信」「おサイフケータイ」「FM ラジオ放送受信」等の支持が高くなっています。お気づきの通り、これらは「通信」ではありません。携帯機は今後、個人の認証デバイスとして使う機会も増え、もはや「単なる通信装置ではない」ことが明らかです。

今の移動体と固定のネットワーク、また電話網とデータ網は、過去の経緯から基本的には別々のネットワークです。しかし使う側から見ればそれぞれの区別を意識したいとは思いませんし、また区分けしておかなくてはいけない本質的理由は今やどこにもありません。そういったことからKDDIではネットワークを統合するプラットフォーム「ウルトラ3G」の開発を進めています。「FMBC(Fixed, Mobile & Broadcasting Convergence)」と呼んでもよいでしょう。固定系の方がNGNと呼ぶ概念と同じですが、移動体的世界がより色濃い主体となった発展です。この将来プラットフォーム構想について、「インターネットとの関係」が取りざたされることがありますが、今と位置関係は大幅に変わるものではないのではないと想定しています。インターネットとはその伝送部分で相互に接続しあいます。事業者間ネットワークはNNIでつながり、また、サービスデリバリープラットフォームもきちんと作られます。これらが全てアクセスには非依存で、固定も移動も有線も無線も全部がまぜこぜで自由に使えるようになるだろうと思います。また「放送」との協調では「IP over デジタル放送」を開発しています。これは、「放送のデジタル化」ではなく「放送波の上にIPパケットを乗せる」ことです。リターンリンクも携帯や有線といろいろな可能性が広がります。この面白さは、放送でIP上のコンテンツが配信可能ということです。放送の持つ同報性と同期性が、インターネットの持つ双方向性とコンテンツの豊富さをうまく利用できる方策となるのです。

IP化のネットワークは、ビジネスモデル的には回線交換の時代、あるいはISDNの時代とは全く異なります。高速サービスはやればやるほど赤字になるコスト構造になりがちです。そういう理由もあり、携帯業者は垂直統合ビジネスモデルをとっていました。著作権管理と個人認証をきちんとして垂直統合的に音楽ダウンロードを提供することにより、新しいマーケットが成長しました。さらに可能性を広げる観点から、今はオープン化も進めています。単なるオープン化にとどまらず、一気に解体して水平分業型にすべきとの声もあります。しかし我々はそのような垂直/水平択一議論が良いとは考えていません。おそらく当面はオープンモデルとクローズモデルが並存していき、連携分業型のモデル、つまりアライアンス型のモデルが重要と考えます。この辺りのバランスが取れないとビジネスにならず、事業継続もできません。事業継続できないということは基本的なインフラを皆様に提供できないことを意味します。お金を払う人と受け取る人の両方がハッピーでなければ経済原理は成り立たちません。マクロな意味で経済として動く状態が作れなかったら全員がアンハッピーになります。どこかに「経済的にバランスの取れた」点があるはずです。全体を発展させ、安全なインターネットにしていくということからも、分業連携型、取引用語で言うなら「相対」型が必要です。様々なニーズにきちんと対応できる必要があります。例えば、何が何でもとにかくパケットを届けろという意味でのベストエフォートタイプと、自分の要求通りの品質で通信したい(逆に要求以下なら通信しない)というハイグレード品質の二つのニーズを満たさねばならないこともあるでしょう。この経済原理が働いているという状況で、かつ、競争原理が適切に担保出来ているという状況であれば、あとのサービスの創造はネットワークの仕掛けではなく、人間の知恵や独創性や想像力というものにかかっていると言えるのではないでしょうか。

インターネットの真の国際化とは

前村昌紀 前村昌紀 JPNIC IPアドレス担当理事

Internet2.0 を考えるにあたり、四つの論点を提示します。「Everything on the Internet(インターネット上に全てが乗る)なのか」「安価で世界のみんなをつなぐということ」「世界のみんなをつないだ副作用」「ロングテイルを伸ばす新技術」ということです。

まず、「Everything on the internetなのか」を考えます。今までインターネットはICTの主要要素でありました。しかし今後、様々な事業者が経済合理性に基づきビジネスを展開するにつれ、インターネットを経由しない通信トラフィックが増えていくのではないかと思います。例えば「IPTV」「コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)」のような事業が急激な成長を遂げています。IPTVのようなリッチコンテンツは広告によって大きな収入を得ることができます。リッチコンテンツは広帯域を要しますし、コンテンツの価値を維持するためにはコンテンツをより確実な手段でお客様の手元まで届けたいと考えるでしょう。これを実現するためにはコンテンツの配送を行う専用のネットワークをお客様の近くまで設けることになります。「放送通信融合」というキーワードでも、放送がインターネットに乗るか乗らないかという話があります。規制や法律など政策的な問題がありながらも、マルチキャストが全インターネット的に普及したら不可能な話ではないと思いますが、現段階では閉域IP通信網を放送に利用するという局面の議論が展開されています。放送に限らず、しばしばインターネットとインターネットではない閉域IP網が混然として語られることが多いですが、この二つを明確に分けて考えることが必要だと思います。

次に、「安価で世界のみんなをつなぐ」ことを考えます。インターネットは儲からないという声をしばしば耳にします。その割に、世界のみんなをつなぐためのグローバルな調整は大変です。世界中には先進国もあり発展途上国もあります。先進国からみたときに、発展途上国につながることはビジネス的な観点からいうとそこまで重要視されないだろうと思うと、「世界のみんなにつながる」というのは一見メリットに比べて重たいもののように見えます。しかしながら発展途上国の側から見ると、インターネットへのアクセスは「発展に向けた知識へのアクセス」という至上のものと捉えられています。私もこの「世界のみんなにつながる」ことの重たさに途方に暮れそうでしたが、インターネットにつなぎたいと思った人々自身が自分たちの力でつなぎに来るというのが今までインターネットが広がってきた流儀であったことを思い出して立ち直りました。インターネットコミュニティはインターネットにつながるための知識や経験をミーティング等を通じて提供するという形で既にかなりの手助けをしています。しかしそれでも回線などの設備投資や、「それでは国際回線の価格差をどう克服するのか」といった経済原理だけでは解決できない問題も存在しています。国際的な公共政策として何らかの手当てが必要なのかもしれません。

また「世界のみんなをつないだ副作用」も起こります。皆をつなぐことにより、トラフィックは増大し、スパムメールもセキュリティ脅威も増しました。最近大きな問題は「P2Pファイル共有」です。必ずしも使うかどうかわからないファイルを共有するという事象が、膨大で無用なトラフィックや著作権コントロールの問題を生みました。インターネットを安心して使ってもらうために、堅牢性やセキュリティ、著作権管理をもう少しまともにする必要があります。さもないとインターネットは使えないものになります。10Gbpsを越える回線が欲しいという風潮もありますが、不正・無用なトラフィックを制御できれば、今はそこまで逼迫(ひっぱく)度も高くないかもしれません。

ユビキタスネットワークや無線技術は、「Anyone to Anyone」を「Anyone everywhere to Anyone everywhere」「Machine to Machine」に変える技術です。インターネットにつながるのはAnyoneではなくAnythingになり、小さなユーザーやモノがどんどん増えています。モノがインターネットにつながると何が嬉しいのか、安い帯域として使うのか、あるいはあらゆる情報を集めてデータマイニングするのか等、どう利用するかがポイントになり、場合によっては人間の情報行動や技術の使い方を再設計しなければならないこともあります。しかし「インターネットの本質」がマルチメディア性やコンテンツのリッチネスにあるのではなく、グローバルにAnyone to Anyoneで自由な通信を実現するところにあるとすると、こういった特性をフル活用してビジネスを組むことで、様々な可能性を生みだせます。この辺でインターネットは「ロングテイルを伸ばす新技術」とも呼べそうです。

インターネットは「外交官モデルではなく劇場モデル」です。これは、一つの決め事をするにも、テーブルの上や下で個別に交渉するのではなく、皆の前で発言して情報や技術を共有し、協力して動かすという文化です。一つ一つのネットワークの要素技術は囲い込み戦略を取りがちで閉鎖的なものですが、「インターネットの技術」とは「この閉鎖的な要素技術をつなぐための、社会で共有される技術」です。真にグローバルなネットワークとなるためのインターネットの真骨頂は、その社会的な技術に我々がどうアプローチをし、この劇場の上でいかに立ち回るかで発揮されるのではないでしょうか。


写真:遠隔画面
遠隔で参加した江崎JPNIC副理事長

未来を考えることは、我々が、現在の自分自身の立ち位置を明確に知ることでもあります。立ち位置を知るために、「ステークホルダーは誰か」「どのようにグローバルに、新しいビジネスの創造性を担保していくか」を考えることがキーポイントとなります。皆それぞれ立場の違いがある中で、少なくとも「Internet2.0」に向けた問題意識や見通しなどは、実はそれほど食い違っていないのではないでしょうか。インターネットの健全な発展を願い、そしてユニバーサルという方向に向かって歩む方向性は同じです。現状の課題には「セキュリティ」「コスト分担」「ガバナンス・資源管理」「モラル・リテラシ」「地域格差」等のさまざまな観点からの問題点がありますが、歩む方向性さえ同じであれば、技術の役割、コミュニティの役割、政府の役割等、それぞれの役割の中で自分がやるべきこと、またそれに向けた解決アプローチはおのずとわかるものなのかもしれません。誰しもが変化を受け入れ、そして乗り越えるために、皆で協力することが必要です。

IP Meetingで使用した資料類は、以下のWebページで公開しております。ご興味のある方はこちらをご覧ください。

http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2006/main/ipmeeting/

(JPNICインターネット推進部 根津智子)

(注:各講演者のコメントの内容は、当日の話をもとに編集を行ったものです。また、各講演者の肩書は2006年12月5日開催当時のものです。)

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