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ニュースレターNo.37/2007年11月発行

巻頭言:コミュニティ力

株式会社まほろば工房代表取締役/近藤 邦昭

私がこのインターネットを取り巻くコミュニティに飛び込んだのが約12年前。ちょうどその頃は、ダイアルアップを主とするコンシューマー向けのISPが次々と立ち上がっていた時期で、OCNがサービスを開始したのも、その数年後でした。

そして、それから2年後の1997年には、ひょんなことからJANOG(日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ)というインターネットの運用者コミュニティの立ち上げに参画し、3年後の2000年には、その会長という役目を仰せつかりました。このJANOG会長という役割も、JANOG10年の節目をもって、JANOGの創生メンバーである数名とともに本年8月に終えました。

思えば、この10年というのはインターネット激動の期間であって、私自身も多くの経験をさせてもらいました。

JANOG発足当初の10年前、インターネットコミュニティといえば、WIDEを中心とする技術研究と、NSPIXPに参画するBGPコミュニティが中心的でした。当時の日本における、インターネットの規模や利用形態などを考えれば、これが技術的にも、コミュニティの大きさ的にも必要十分で、技術者一人一人が全体を把握して、問題点を全体で考え、そして解決していくという意味で心地よいものだったと思います。

その後10年で、インターネットにかかわる技術、運用形態も劇的に変化したのはいうまでもありません。この変化に伴い、コミュニティの形態、そしてコミュニティに期待される役割も変化したと思います。そのような中で、JANOGという「インターネット運用」というフォーカスを持つコミュニティを見続けてきたわけですが、その周辺事情も大きく変化を遂げています。特に最近感じるのがコミュニティの分散化です。

技術分野やサービスの形態が多様化し、それぞれの規模が大きくなる中で、それら全体を横断的に取り扱うというようなことは、現在ではほぼ不可能な状態であって、そのため、それぞれにコミュニティが形成されてきているのが実情です。セキュリティに関するコミュニティ、コンテンツ配信に関するコミュニティ、ホスティングサービスに関連するコミュニティなどです。インターネット運用に関するコミュニティですら、役割の違いから複数あるというのが現実です。

複数のコミュニティが存在すること自体は、それぞれの分野の役割を明確にし、そしてその役割の中で自らの責務を果たしていくという意味で非常に意味深く、それが今日におけるインターネットの躍進を支える原動力であると思います。一方で、分散化してしまったがために、全体が見えなくなっているという側面も見え隠れします。

これを受けてか、インターネットコミュニティ横断的なコミュニティを作ろうという動きも実際にあります。しかし、実直な感想としては、あまりうまくいっていないように思えます。それはなぜか。正直なところよくわかりませんが、直感的には、横断的コミュニティに対して期待できるところがよくわからないとか、その役割の必要性に対する理解が進まない、というようなところだと思います。

JANOGというコミュニティは、当初インターネット全体に対する技術共有という役割があり、これはインターネットに接する人たちから求められたものでした。特に、インターネットの爆発的な発展を背景に、多くの技術者がインターネットに関連する技術を求めていたということもその一端にあります。そして、10年という年月を経た現在では、JANOGの基本的な役割に変化はありませんが、それぞれの技術者がISPやネットワーク運用団体として分断化され、その関連性が疎になってきたという状況の変化があります。そのような状況を受け、特にインターネット運用という側面において、互いの技術情報を共有することで、互いのネットワーク技術を高めあうという機能が、JANOGの新たな役割として期待されてきているといえます。

逆に言えば、コミュニティというのは、そこに参加する人たちが、参加することによって、期待できる結果が得られないと発展しないのだろうと思うのです。さらに言えば、コミュニティを形成する人たちが、そのコミュニティを形成することで何かを与えようと思うのではなく、何かを得ようとしなければ発展しないということです。それが、コミュニティに潜在的な力を持たせ、大きな活動へと発展させるのだと思います。

現状、インターネット全体に対する横断的コミュニティは、その必要性や明確な役割、アウトプットを示すことができていません。しかし、将来的にはインターネットの技術や組織など、さまざまな要素が複雑化することは必至で、何らかの横断的コミュニティが必要になるのだろうと思っています。

コミュニティ自身は、必要に応じて自然発生的に発足するものだと思いますが、コミュニティ力を上げるためにはいろいろな面で強力なバックアップが必要でもありますから、JPNICには、今後も多く発足するであろう、横断的コミュニティをはじめとするさまざまなコミュニティに対して、温かい目で、そして、強力なバックアップをすることで、インターネットの行く末を見守ってもらいたいと期待しています。


執筆者近影 近藤 邦昭 (こんどう くにあき)
1970年北海道生まれ。神奈川工科大学 情報工学科修了。1992年に某ソフトハウスに入社、主に通信系ソフトウエアの設計・開発に従事。1995年株式会社ドリーム・トレイン・インターネットに入社し、バックボーンネットワークの設計を行う。1997年株式会社インターネットイニシアティブに入社、BGP4の監視・運用ツールの作成、新規プロトコル開発を行う。2002年株式会社インテック・ネットコアに入社。2006年まほろば工房として独立。翌2007年株式会社まほろば工房を設立、同代表取締役に就任、現在に至る。その他、元日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長も務めるなど、業界関連活動にも力を注いでいる。

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