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ニュースレターNo.39/2008年7月発行

インターネット10分講座:著作権の基礎知識

今回の10分講座は、著作権の基礎知識について解説します。

はじめに

日本において、コンテンツビジネスというのはどのような位置づけにあるのでしょうか。社団法人日本映画製作者連盟によると、平成18年の映画による興行収入は2,029億円規模であったそうです。また、日本の音楽著作権を管理する社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)によれば、JASRACが取り扱った平成18年の著作権関係の使用料は約1,111億円であったとのことです。平成19年度の日本の一般会計予算が約83兆円であることを考えると、これらはそれぞれ、国家予算の約0.24%、約0.13%に相当する規模であり、経済的にはそれなりの市場規模であることがわかります。

このように、日本の国家予算と比べてみても、日本のコンテンツビジネスというものがある一定規模を占める重要なものであることがわかるのですが、一方、その重要性に比例して著作権というものが正しく理解されているのかと問うた際、理解されているとは言い難い現状があります。

今回の10分講座では、「著作権の基礎知識」と題し、この著作権と、著作権の範囲と内容を定めた著作権法の概略について解説します。

著作権とは

多くの人が日常的に「著作権」という単語を使います。しかし、「著作権という権利は無い」ということを知っている人はどのくらいいるのでしょうか。日常的に口にする『著作権』とは、創作したもの(=著作物)の著作者に与えられる権利(「支分権」と言います)の総称なのです。支分権は『著作財産権』『著作者人格権』『著作隣接権』に分けられることが多いです。

著作権がわかりにくい理由に、「実は著作権という単体の権利があるわけではなく、個々の権利の総称を著作権と呼んでいること」「支分権毎に保護される範囲、存続期間、権利が制限される範囲が異なっていること」が挙げられます。詳しくは、図1の「著作権の種類と内容」をご覧ください。

著作権は大きく著作者の権利である著作権と、実演家の権利である著作隣接権に分かれます。さらに著作権は譲渡不可能な著作人格権、譲渡可能な著作財産権とで構成されます。著作財産権は、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利、と多岐にわたります。
図1 著作権の種類と内容

そしてこれらの著作権の範囲と内容について定めているのが、『著作権法』です。この著作権法は、『著作者人格権』や『著作財産権』の定義からはじまり、裁定利用・登録制度などの行政法的な要素、損害賠償額の推定などの訴訟法的な要素、差止請求権的な執行法的な要素、刑事罰などの処罰法規としての要素など、さまざまなものが抱合された法律となっています。いろいろな要素が含まれるために、わかりにくさが増している、ということもあるようです。「こういう場合には何をどうすればいいのか」という利用を考える際に、この著作権法だけを見れば、全てをカバーできるという性質のものではありません。ケースに応じて、それ以外の法律、例えば民法や民事執行法なども参照しなくてはならないのが難しいところです。極論すると、何か困ったことが起きた際には、必ず他のアプリケーションを呼び出さなくてはならず、しかもその呼び出し方法や区分がはっきりしていない、できの悪いプログラムのようでもあります。(図2 著作権法の構成)


図:著作権法の構成
図2 著作権法の構成

法規範のレイヤを理解しよう

少々余談となりますが、著作権などの複雑な権利を理解するためには、法規範全体にも「レイヤがある」ということを理解しておいてもいいかもしれません。インターネットで言うところのOSI参照モデルと同様、法規範についても階層があります(もっとも技術のレイヤほどお行儀がよくないので、きっちり分かれていないところもあります)。理解を深めるために誤解を恐れず大きく括ると、次のようになります。より普遍的な「憲法」が最上位にあり、その下に国家と国家の取り決めである「条約」があります。その下に、国会で定められる「法律」、行政が決める「規則」、私的自治の範囲である「契約」などと続きます。

この法規範のレイヤの中で、「実際の著作権に関わることは、どこでどの程度規定されているのか」を当てはめてみると、範囲が実に多岐に亘っていることに気づくことでしょう。(表1 法規範のレイヤと著作権制度のレイヤ)

表1 法規範のレイヤと著作権制度のレイヤ
法規範のレイヤ 決める主体 著作権制度のレイヤ
慣習・契約 個人(私的自治) パブリックドメイン、(出版)契約
規則 行政 著作権法施行規則
実体法 国会 著作権法
条約 国家 ベルヌ条約、万国著作権条約
憲法 財産権、人格権、表現の自由他

著作物とはなにか?

それでは、「著作物」とは何を指すのでしょうか、これは、著作権法の条文上、とてもはっきりしています。『著作物とは、「思想又は感情を」「創作的に」「表現したもの」であって、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいう』と書かれています。著作権法は、本来的には芸術を保護して文化の発展を促進するという法律ですから、芸術作品でないと著作物として認められないのではないかとも思いがちですが、現実では著作物の範囲はかなり広げられています。コンピュータ・プログラムや即興の歌なども著作物になります。

ただし、広げられすぎることも問題で、保護しすぎると次の創作活動や新規ビジネスの立ち上げを阻害するという現象も生まれてくるため、痛し痒しなところがあります。また、このように著作物の範囲が広げられると、経済価値があるものに対して、なんでもかんでも著作物性を主張する人も出てきます。しかし、当然全てにおいて著作物性が認められるわけではありません。思想と感情を伴わないデータなどは著作物ではありません。また「創作的に表現したもの」と条文に書かれているため、機械的に撮影したものなどは著作物ではありませんし、単なるアイデアなどの表現されていないものも当然著作物として保護されません。一方、「選択又は構成に創作性があればよい」とされているため、一般的にわかりにくいようなものでも著作物として認められるものがあります。「編集著作物」や「データベースの著作物」というものが例として挙げられます。

また、人の著作物を利用して創作した場合も著作物(二次的著作物)です。この場合、原作の著作者の了解が必要ですが、たとえ他人の著作権を侵害した著作物であったとしても、それは著作物ということになります。

著作物性が否定された事例として、ディスプレイの表示画面の創作性、ニュースの見出しの創作性、書体の創作性などが挙げられます。

著作者とは誰か? どのようにして認められるのか?

それでは、どういう人が著作者として認められるのでしょうか。基本的には「著作物を創作した人」が著作権者であり、共同で創作した場合には「共同著作者」となります。また法人の場合は「法人著作者」となる場合があります。

特許、実用新案、商標、意匠は出願・審査・登録手続きが必要なのに比べて、著作物として認められるための、審査・登録等の手続きは一切不要です。このことが、「誰が著作者なのか」をわかりにくくしている側面もあります。したがって、特に多くの人がその著作に関わっている場合、許諾を取るためには複雑な手続きが必要になります。そのため、映画は、脚本、音楽などの集まりで構成される著作物ですが「映画制作者に自動的に権利が帰属する」ようになっています。しかし一般的にはこのような制度は用意されていません。

一方、『著作隣接権=実演家の権利』については、誰のどのような権利を指すのかと言うと、「実演」、すなわち「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸術的な性質を有するものを含む)」をする、「実演家=俳優、舞踏家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出するもの」の権利となります。

著作権っていつまで保護されるの?

著作権はいつまで保護されるのでしょうか。著作権法の平成15年改正では、「実名著作物」で死亡時から50年、「変名著作物」の場合は公表から50年、「法人著作物」の場合は公表から50年、「映画著作物」は公表から70年ということになっています。また著作者人格権の保護は、著作者の生存中となります。

ただし、ある著作物について著作権切れかどうかを判断するためには、著作権法だけでなく、最初にも述べた通り、いろいろな条約や他の法律も見ていくことが重要です。特に著作権は、陸続きの中に多くの国が存在し、国を越えて著作物の保護が必要となったヨーロッパでメジャーになった考え方でもあり、『文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約』『連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律』などの条約についても確認することが必要です。

著作権の保護期間に関して、有名なのは「ローマの休日事件」です。映画「ローマの休日」は昭和28年(1953年)に公表され、保護期間の終期が平成15年(2003年)末日でした。しかし、平成16年(2004年)1月1日の施行時に存続している映画の保護期間は70年に延長されるという著作権法の改正があり、「ローマの休日」の債権者は「平成15年12月31日の午後12時と、平成16年1月1日の零時は同時刻なので著作権は消滅していない」と主張しましたが、認められなかったということが起こりました。

インターネット技術に関わる個別の支分権について

著作権は多くの支分権で成り立つ権利ということを申し上げましたが、その支分権全てをこの場で解説することはできません。よって、「インターネット技術」の文脈で、どんな権利(支分権)についてよく話題になっているかを考えてみましょう。

例1:複製権

「複製権」という権利があります。これは「著作者がその著作物を複製する権利を専有する」というものです。無断複製は複製権侵害となります。

例2:公衆送信権等

「公衆送信権等」という権利があります。これは「著作者が、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有する」というものです。つまり、著作物を公衆に向けて送信する権利になります。 これは、本来的にはWebなどのサーバクライアント型を想定しています。そこで、基本的に1対1の通信であるP2P型の通信が、「『公衆』に送信する」ことに該当するか否かが問題となりますが、「ファイルローグ事件」では、公衆送信権侵害を認めています。

例3:同一性保持権

著作者人格権の中に「同一性保持権」というものがあります。これは「著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」という権利です。コンピュータの利用に伴う改変については認められています。 この「同一性保持権」の侵害については、ゲームにおいていくつかの判例がありますが、以下に述べる例をとってみても、定まった評価がされていない様子がわかります。

  • 例3-1
    • 本来であれば、ありえない数値が記憶されたメモリーカードの使用は、同一性保持権の侵害とされた
    • しかし別のゲームでは、データについて本来登録できない数値を設定することは、同一性保持権の侵害ではないとされた
  • 例3-2
    • 通常選択できない、衣服を着けない状態のキャラクターを使用可能にすることは、同一性保持権の侵害とされた
    • しかし通常ではありえない速度の連射機能を付加したコントローラーは、同一性保持権の侵害ではないとされた

また、判決では「どの程度の利用であれば著作権侵害になるのか」についてもやはり解釈にゆらぎがある状況で、今後の動向が注目されます。

裁判例を離れて近時の例を紹介しましょう。 まず、「銀河鉄道999事件」があります。某歌手による「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」という短いフレーズが、銀河鉄道999の中に出てくる台詞である「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」を侵害していると漫画家が主張したことを発端とする騒動です。そもそも、これだけ短いフレーズに著作物性はあるのか、夢や時間について述べた言葉はある程度表現に限界があるのでどこまで似ていればよいのか、さらには「銀河鉄道」という言葉はどうなのだということで、かなり難しい問題があります。

また「おふくろさん事件」は、有名な演歌の「おふくろさん」について、歌い出しの前に語りをつけていたのが、歌詞の改変にあたり、同一権侵害かということが論じられていた問題ですが、歌詞そのものではない語りについても歌詞の改変と言えるか、もし、そうであればカラオケで歌唱している人たちは、同一性保持権侵害として刑事処罰に処せられるのか等々難しい問題があります。

いずれにせよ、このわかりにくさというのは著作権制度の持つ大きな問題点です。

著作権の侵害をしたらどうなるの?

著作権を侵害した場合に受ける罰については、かなり重いものとなります。状況により、民事では「損害賠償請求」「差止請求」「不当利益返還請求」「名誉回復等の措置の請求」がなされ、刑事罰としては「10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金」が与えられます。この10年以下の懲役というのは、権利範囲が明確で、より保護されてきた特許法違反より重く、「特許法と著作権法で逆転現象が起きているのでは」と言う法曹家もいます。

特にこの逆転現象に関して言うと、「著作権の間接侵害」をした場合に与えられる罰に関しても波紋を呼んでいます。特許権については、「限定的に、間接的に特許権侵害に関与した一定の行為を特許権侵害とする」という規定があるのですが、著作権については、間接侵害の規定がありません。したがって、素直に考えれば間接侵害は認められないとなるところですが、現在の裁判では、一定の場合には責任を認めており、その範囲についても、間接侵害の認められる特許権よりも広く認定しているのではないかという懸念があります。

さらに、著作権法の世界では、民事上は原則として直接の侵害者と同視できる場合しか責任を負わないにも関わらず、刑事事件で「幇助」として立件されるケースが増えています。この場合の「幇助」には、明らかに間接的に関与した者を広く含んでおり、ましてや民事で責任を負わないのに、幇助として処罰する必要はないのではないか、刑事法と民事法の逆転現象が起きているのではないかという懸念があります。

今後、インターネットに限らず新しい技術も多く生まれてくるでしょう。ますます複雑多様化する社会の中で、著作権法が守りたいものは「文化である」ということをあらためて念頭に置き、「それではそれを実施する手段としては何をどうすればよいのか」を再考する時期に来ているようにも思えます。つまり、作者だけを常に保護すればいいのか、そうでもないだろう、では利用者を保護すればいいのか、そうでもない、どこでバランスを取るのか、このあたりを引き続き、多くのプレイヤーで適切に議論を積み重ねていく必要性があるのではないでしょうか。そして政策決定のプロセスをより明確化することで、もっとコンセンサスを得られる制度ができるのではないかと感じています。

(弁護士 壇俊光)

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