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ニュースレターNo.42/2009年7月発行

WiMAX

モバイル用途においても通信の高速化要求はとどまるところを知りません。今回の10分講座は、高速無線通信として注目を浴びるWiMAXを取り上げました。

1. IEEE 802.16規格の変遷とWiMAXの誕生

「WiMAX (World Interoperability for Microwave Access)」は、都市部や郊外、山間部などの中規模エリアに対して、無線ブロードバンドアクセス(BWA:Broadband Wireless Access)を提供する目的で開発された技術です。WiMAXの規格策定は二つのグループによって行われています。一つは米国電気電子技術者学会(IEEE)において、高速無線アクセス技術を検討する「IEEE 802.16ワーキンググループ」であり、もう一つは民間団体の「WiMAXフォーラム」です。前者は主に物理層とMAC層について仕様の規格化を担当し、後者はネットワーク層、アプリケーション層に関する規定の策定や機器間の相互接続認証などを担っています。

(1) FWAからモバイルWiMAXへ進化を続けるIEEE 802.16規格
IEEE 802.16ワーキンググループはBWAの実現に向け、さまざまな無線インタフェースの規格を策定してきました。同ワーキンググループによって最初に策定されたのが、固定無線アクセス(FWA: Fixed Wireless Access)向けの規格となる「IEEE 802.16-2001」です。その後、障害物のある環境での使用を見据えた「IEEE 802.16a-2003」を定め、さらに2004年に固定無線のプロファイルやいくつかの機能追加と周波数の国際化を行った「IEEE 802.16-2004」が策定されました。このIEEE 802.16-2004に準拠した固定無線技術が「WiMAX (固定系WiMAX)」です。

さらに、移動無線通信に対するニーズの高まりに呼応し、IEEE 802.16ワーキンググループ内に「タスクグループe」が設立され、2005年末、移動無線通信に対応した「IEEE 802.16e」が策定されました。IEEE 02.16eでは変調方式に「スケーラブルOFDMA (Orthogonal Frequency Division Multiple Access、直交周波数分割多元接続)」を採用し、無線基地局を移動中に切り替える「ハンドオーバ」をはじめ、移動無線通信に必要な機能を盛り込み、さらにIEEE 802.16-2004において発生した不具合を修正する作業を施し、「IEEE 802.16e-2005」を策定しました。このIEEE 02.16e-2005に準拠した移動無線通信技術が「モバイルWiMAX」です。

また、2007年10月にITU (国際電気通信連合)はIEEE 802.16をIMT-2000の方式の一つとすることを勧告しました。

(2) IEEE 802.16jとIEEE 802.16m
併せて、IEEE 802.16ワーキンググループ内に「リレータスクグループ」と「タスクグループm」が設置され、新たな無線インタフェース(IEEE 802.16j、IEEE 802.16m)を策定しています。IEEE 802.16jは、IEEE 802.16eに中継機能を付加した規格で、2009年5月にIEEEにて承認されました。リピーターなどの中継局を用いることによって、ビル陰や地下街などの電波が直接届きにくい場所へ通信エリアを拡大することを目的にしています。

一方、IEEE 802.16mはITU-R (国際電気通信連合無線通信部門)が定める「IMT-Advanced」と呼ばれる、第4世代移動通信システムに対応する仕様の策定を目的としています。加えて、IEEE 802.16eとの上位互換性を確保すること、ハンドオーバを可能にすることなどのさまざまな要件が規格化にあたり定められています。

IEEE 802.16m規格が完成するのは、2010年の前半になる見込みで、IEEE 802.16mを採用した無線システムが“次世代のWiMAX”として実用化されるのは、規格が完成してからさらに1~2年先のことになると予想されます。

図1:IEEE 802.16規格の変遷
図1:IEEE 802.16規格の変遷

2.光ファイバーやADSLなどと比較したメリット

WiMAXの最大の特徴は、携帯電話並みのモビリティを備えつつ、ADSL並みの高速通信を実現した無線ブロードバンドアクセス技術であることです。

FTTHやADSLは大容量のデータ通信を行うために最も適した通信手段ですが、モビリティを確保することはできません。一方、広範囲な通信エリアをカバーし、高いモビリティを有している携帯電話(3Gなど)では数十Mbpsの高速通信は不可能です。WiMAXは、従来の通信技術では併せ持つことが難しい、モビリティと高速伝送を同時に兼ね備えた技術なのです。

WiMAXは同じBWA技術として「LTE(Long Term Evolution)」と比較されることがよくあります。LTEは既存の携帯電話技術であるW-CDMAやHSPAを発展させたもので、音声通話を中心とした従来の携帯電話の技術、サービスと多くの共通性を持たせているため、サービスが立ち上がれば携帯電話ユーザーの間で急速に利用が広がると予想されます。一方、WiMAXは既に商用化が開始され、現在139ヶ国で472のサービスが導入または計画されており、LTEと比べ時間的に先行しています。WiMAXは高速データ通信用の無線サービスとして、携帯電話とは異なる新しい市場の創造を目指しています。従ってWiMAXとLTEは競合するものではなく、並立または補完の関係を築いていくと考えられます。

3. WiMAXフォーラムの役割

WiMAXフォーラムは、2001年にチップ、機器ベンダーや通信事業者などによって設立された民間団体です。参加企業・組織は年々増加しており、現在世界で500以上の企業や団体が参加しており、技術、制度面での検討や機器の認証試験、マーケティング活動などを行う八つのワーキンググループが設置されています。

WiMAXフォーラムの目的はIEEE 802.16をベースにした無線システムに対して実装の仕様を策定し、異なるベンダーが開発した無線機器、設備同士の相互接続性を確保することです。

WiMAXフォーラムは世界各国の電波利用状況や規制状況に柔軟に対応できるよう「システムプロファイル」を定めています。「システムプロファイル」とはIEEE 802.16で策定された仕様の中から「使用する周波数帯」をはじめ、無線通信において双方が同時に送受信を行うための「多重化方式」、「1チャネルあたりの周波数帯幅」などを絞り込むとともに、物理層とMAC層の必須項目、オプション項目を整理したものです。

さらに異なるベンダー同士がエンド・ツー・エンドで相互接続性を確保できるよう、上位層も含めた総合的な実装仕様を「WiMAX」標準として策定しています。

つまり、WiMAXフォーラムのミッションは規格そのものを作るのではなく、IEEE 802.16の中から実装に必要な規格をプロファイル化すること、そして、上位層について、IETF (Internet Engineering Task Force)などが定めているオープンなプロトコルを適用させた「ネットワークアーキテクチャ」を策定することです。

4. 無線伝送規格

(1) FWAの無線規格

FWAの標準規格であるIEEE 802.16-2004では、物理層の規格として免許バンド、免許不要バンド共にシングルキャリア方式、OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重方式)方式、OFDMA方式が定義されています。その中で、固定WiMAXでは免許バンド、免許不要バンド共にOFDM方式を採用しています。

複信(双方向通信)方式としてTDD (時分割複信)方式とFDD (周波数分割複信)方式、およびH-FDD (半二重FDD)が定義され、さらに、OFDMを用いた多重化方式としては、下りがTDM (Time Division Multiplexing、時分割多重)、上りはTDMA( Time Division Multiple Access、時分割多元接続)となっています。変調方式には、異なる四つの変調方式を電波の受信状況などに応じて選択して対応する適応変調が定義されています。

(2) モバイルWiMAXの無線規格

モバイルWiMAXの無線規格を定義しているIEEE 802.16e-2005では、基地局を移動中に切り替える「ハンドオーバ」や「パワーセーブ」、「マルチキャストブロードキャスト」など移動通信に必要な機能が盛り込まれています。無線アクセス方式ではOFDMAを使用します。IEEE 802.16-2004でもOFDMAが定義されていましたが、サブキャリア数が固定であるため、システムの帯域幅が変わるとサブキャリア間隔が変化してしまいました。しかし、IEEE 802.16e-2005では、サブキャリア数を可変させることで対応する「スケーラブルOFDMA」が採用されています。これにより、異なる帯域幅を持つ複数システムが混在する環境への端末対応が容易になり、1ユーザーあたりの伝送速度や、同時に利用可能なユーザー数などをきめ細かく制御することが可能となっています。また、OFDMAでは、通信ユーザー毎にサブチャネルを割り当て、さらに周波数軸と時間軸の平面上に細かく通信リソースを割り当てることができるため、効率的な通信ができるようになっています。

図2:モバイルWiMAXでの電波利用概念図
図2:モバイルWiMAXでの電波利用概念図

その他、通信効率を高める無線通信技術としては、主に次の三つが追加されています。

(1)適応変復調技術
移動端末のチャネル状況に応じて、適応的に符号化率や変調方式を切り替える仕組み。

(2)ハイブリッドARQ( 自動再送要求)
誤り訂正処理でデータの誤りを検出してもデータを捨てずに保持し、再送信されたデータと合成して再度誤り訂正処理を実施することで受信能力を高める技術。

(3)スマートアンテナ技術
複数のアンテナを用いてデータを送受信するアンテナ技術。代表的な技術としては、基地局から複数のアンテナで送信し、アンテナ間で送信信号に対して処理を施すことによりデータの誤りを少なくするスペースタイムコーディング、複数アンテナを組み合わせてデータ送受信の帯域を広げるMIMO (Multi Input Multi Output)、複数データを複数アンテナから送信し受信側で一つのデータにまとめる空間多重、MIMOを用いて複数ユーザーのデータを複数アンテナで処理する協調MIMO (Collaborative MIMO)などの技術。

5. モバイルWiMAXのパフォーマンス

「75Mbpsの通信速度と半径10数キロメートルの伝送距離(通信可能エリア)を実現」というのが、WiMAXが登場した当初、語られていた性能数値です。これらの性能数値は、さまざまな条件下で導き出された論理的な数値であり、WiMAXフォーラムで策定されているシステムプロファイル、および実際に使われる周波数帯域の下では、現実的な性能数値とは言えません。

WiMAXが実用化された際にどれぐらいの通信速度と通信距離を享受できるのか、他の無線技術の性能と比較しながら、WiMAXフォーラムより公開されているホワイトペーパー※1から引用したデータをもとに見ていきます。

表1:占有帯域10MHzにおけるスループットの性能比較の例
注1 : 異なる無線技術の性能を比較する際に用いられる指標
注2 : マルチセルにおけるシステムレベルのシミュレーションにて導出
パラメータ 3xEVDO
Rev.B
HSPA WiMAX
多重方式 FDD FDD TDD
チャネル帯域幅
(MHz)
下り通信 5 5 10
(下り/上り
通信時間=3)
上り通信 5 5
周波数利用効率
(bps/Hz)注1
下り通信 0.93 0.78 1.91
上り通信 0.28 0.3 0.84
スループット
(Mbps)注2
下り通信 4.65 3.91 14.1
上り通信 1.39 1.5 2.2

表1を見てわかるように、WiMAXは他の通信技術と比べ、周波数利用効率においても、スループットにおいても優れた特性を有していることが理解できます。ただし、上記シミュレーションから得られるスループットは、平均値であり、例えば電波の伝搬環境が他の基地局からの干渉などで粗悪な状態になりやすいセルの周縁部などでは、WiMAXに限らずユーザーはシミュレーションで示された数値よりも低いスループットしか得られないことが多々あります。

6. WiMAXの利用周波数帯と国内での周波数帯割り当て状況

利便性の高いローミングサービス、モバイルWiMAX機器市場におけるスケールメリットなどの恩恵を最大限にするため、利用する周波数を世界共通にすることが重要になってきます。しかし、国毎に周波数帯割り当てに関して方針が異なるため、一つに絞ることは難しいのが現状です。そこで、WiMAXフォーラムでは、利用可能な周波数帯として、「2.3GHz帯」「2.5GHz帯」「3.5GHz帯」の三つの周波数帯域を推奨しています。

国内においては、2007年末、総務省によって2.5GHz帯の周波数帯がモバイルWiMAX技術を採用するUQコミュニケーションズ株式会社に30MHz割り当てられました。また、総務省は地方におけるデジタル・ディバイドの解消、地域の公共サービス向上などに寄与することを目的とし、「固定系地域WiMAXサービス」用として2.5GHz帯の10MHz幅を割り当てました。

7. 2009年5月現在における実験やサービスの状況

(1)UQコミュニケーションズ株式会社の状況・計画

UQコミュニケーションズ株式会社が発表した進捗状況報告によれば、2009年2月26日より「東京23区、横浜市、川崎市」においてサービスの提供を開始しています。

当該地域における基地局無線局免許取得数は、2009年3月末時点で723局となっており、さらなる基地局建設を推進している状況となっています。また、2009年7月1日からは、上記エリアに加え、首都圏周辺部、中部・近畿地区におけるサービスエリア拡大が予定されており、全国へのサービス展開が加速していくものと思われます。

WiMAXサービスを利用するための端末については、サービス開始当初にUQコミュニケーションズ株式会社より4機種のカード端末が販売されています。今後は、PC内蔵型の端末や、各種メーカーの独自端末などの普及が期待されています。

WiMAXサービスを手軽に体感することができるよう2009年6月末までは、お試し期間として通信料金が無料でした。また7月1日からサービスエリア拡大に伴い、予定通りサービスが有料化されています。料金も予定通り、月額4,480円の定額料金プランとなりました。

(2)地域WiMAXの状況

地域WiMAXについては、総務省より無線局免許の申請受け付けが実施され、41社(CATV事業者40社、電気通信事業者1社)の無線局申請が行われました。

先の、無線局免許申請事業者のうち、福井県敦賀市の株式会社嶺南ケーブルネットワークおよび愛媛県新居浜市の株式会社ハートネットワークの両事業者においては、2009年4月より有償サービスを開始しています。どちらの事業者においても、地域限定のサービスではありますが、全国WiMAXの事業者料金より割安の料金プランにて地域の活性化を目指しています。今後、残りの事業者においても順次サービスが開始される予定であり、全国各地において地域WiMAXの展開が広まることが期待されています。

8. 将来への展望

(1)モバイルWiMAXによるアプリケーション

モバイルWiMAXによって実現されるサービス、アプリケーションとして想定されるものとしては、その高速性、広域性、モビリティのメリットを生かしたPC、MID (Mobile Internet Device)向けから進展し、Non-PC向けのものが登場してくると思われます。

  • Webアクセス、メール閲覧
  • 音楽や映像などの大容量コンテンツのダウンロード
  • 監視カメラ、ホームセキュリティ、ガス/電気検診など
  • 移動車両向けの情報提供など

さらに、地域系事業者が提供するサービスでは、サービス対象地域のデジタル・ディバイド解消、公共サービス向上など、公共の福祉の増進に寄与することが求められており、地域住民向け高速インターネットアクセス、緊急地震速報の提供、公共車両の運行状況の提供といった公益性の高いサービスが想定されています。

(2)将来のユーザー数、端末数

日本におけるモバイルWiMAXのユーザー数としては、現時点でUQコミュニケーションズ株式会社が2012年に500万加入以上のユーザー数を想定していますが、今後展開されるM2M市場へのモバイルWiMAXの適用拡大により、ユーザー数、端末数ともに大きく上回るものと想定されます。

また全世界的に見ると、現在、約460ものWiMAXネットワークが135ヶ国で展開されており、全世界で4億3000万人が、WiMAXのサービスを利用可能な状況です。今後、3.5GHz帯周波数のライセンスが割り当てられ、2010年までには8億人がWiMAXを利用可能になると、WiMAXフォーラムでは予測しています。2008年までに、50以上のモバイルWiMAX製品がWiMAX認定を受けており、WiMAXフォーラムは、2011年までには1,000もの製品が「Mobile WiMAX Form CertifiedTM」の認定を受けて世界中へ展開されると見積もっています。

WiMAX Forum日本オフィス

中山正芳(MWG-J主任、住友電工ネットワークス株式会社)
鈴木達也(MWG-J副主任、三菱電機株式会社)
伊藤泰成(UQコミュニケーションズ株式会社)
大和田泰伯(株式会社スペースタイムエンジニアリング)
高橋偉一郎(ArrayComm)


※1 http://www.wimaxforum.org/technology/downloads/Mobile_WiMAX_Part2_Comparative_Analysis.pdf

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