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ニュースレターNo.43/2009年11月発行

数字で見るIPアドレス・AS番号等に関する最新動向

JPNICでは、国別インターネットレジストリとして、IPアドレスやAS番号などのインターネット資源管理を行っています。こうした業務を通じて蓄積された数的データを活かし、本号から隔週で、「数字で見るIPアドレス・AS番号等に関する最新動向」と題し、「IPアドレス管理指定事業者」「IPv4アドレス割り振り割り当て」「IPv6アドレス割り振り割り当て」「プロバイダ非依存アドレス割り当て」「AS番号割り当て」「JPIRRサービス」などの動向についてご紹介します。

IP アドレス管理指定事業者の動向

JPNICでは、JPNICからIPアドレスの管理を委託されたIPアドレス管理指定事業者(以下、IP指定事業者)が、エンドユーザーに割り当てるIPアドレスの分配を行っています※1。したがって、一部のケースを除き、インターネットを利用するエンドユーザーに対して、直接IPアドレスの分配を行うことはありません。

以下の図は、この4年間のIP指定事業者数の推移を集計したものです。毎年一定数の新規契約および解約はありますが、IP指定事業者総数は約380でほぼ横ばいとなっています(図1)。

図1:IP指定事業者数の推移
図1:IP指定事業者数の推移

解約の理由では、2006年頃までは組織の解散や事業の終了による解約が多く、2007年度以降は、既にIP指定事業者である組織同士の合併や事業譲渡による解約が大半となっています。今般の経済状況等を鑑みると、この傾向は2009年度も大きく変わらないのではないかと予想されます。

それでは、どのような組織がIP指定事業者となっているのでしょうか。2009年8月末現在のIP指定事業者を、提供するサービス別に分類したのが、図2です。

図2:サービス別IP指定事業者数
図2:サービス別IP指定事業者数

この図からは、インターネット接続サービスを提供する事業者が最も多く、インターネットデータセンター、コンテンツサービスや携帯電話サービスを提供する事業者、学術機関等多岐にわたることがわかります。

さらに、最近3年間に新たに契約を締結したIP指定事業者を対象に集計したものが図3です。

図3:新規IP指定事業者のサービス別分類
図3:新規IP指定事業者のサービス別分類

2008年に入り、インターネット接続サービスを提供する事業者に代わり、コンテンツサービス、ホスティングサービスやインターネットデータセンターを提供する事業者の占める割合が高くなってきています。これは、インターネット接続以外のサービスにおいても、利用者の増加やサービスの高機能化により、まとまった数のIPアドレスを必要とするケースが増えていることを表しています。インターネット利用者のニーズの多様化も影響しているのではないでしょうか。

一方、2008年9月15日よりIP指定事業者への最小割り振りアドレスサイズが/21(約2,000個)から/22(約1,000個)に変更されました※2。この変更により、1年間に利用するIPアドレスが約500個以上であればIP指定事業者となることが可能となったため、より小規模なネットワークに対してIPアドレスの割り当てを行うIP指定事業者が増加するものと考えています。これまでには見られなかったサービスを提供するIP指定事業者も現れるかもしれません。

IPv4 アドレス割り振りおよび割り当ての動向

JPNICをはじめとするインターネットレジストリが、IP指定事業者等に対して、ネットワークに割り当てるためのIPアドレスの分配を行うことを、「割り振り(Allocation)」と呼んでいます。分配されたアドレスを、実際のネットワークに付与することを、「割り当て(Assignment)」と呼んでいます。

ここからは、IP指定事業者への割り振りおよび割り当ての状況についてご紹介します。以下の図4は、各年における割り振りホスト数(IPアドレス数)と、割り振り件数をまとめたものです。

図4:IP指定事業者へのIPv4アドレス割り振り状況
図4:IP指定事業者へのIPv4アドレス割り振り状況

JPNICでは、毎年110件前後とほぼ一定件数の割り振りを行っていますが、割り振りホスト数は年々増加してきています。IP指定事業者が提供する各サービスにおいて、より多くのIPアドレスが必要となってきていることが想像できます。

次の図5は、直近3年間に、IP指定事業者に新たに割り振りが行われたIPv4アドレスの用途について、割り振りを行ったIP指定事業者が提供するサービスを手がかりに集計したものです。

図5:サービス別IPv4アドレス割り振り数
図5:サービス別IPv4アドレス割り振り数

1年間に割り振りが行われるIPアドレスの大半は、インターネット接続サービスに利用されていることがわかります。しかし、インターネット接続以外のサービスにおいても、IPアドレスの割り振り数は増えています。

ホスティングサービスを利用した企業や個人によるシステム構築は以前から一定の需要があるように見受けられます。それに加えて、インターネットデータセンターを利用した企業向けのネットワークの構築等にも、IPアドレスが多く利用されるようになってきました。また、オンラインゲームや映像配信といったコンテンツサービスへのIPアドレスの割り振りが、徐々に増えてきているようです。インターネット利用者のニーズの多様化が、IPアドレス割り振り数にも現れてきているようです。

IP指定事業者が、自身や顧客のネットワークにIPアドレスを割り当てる際には、必要となるIPアドレスの内訳や用途を記入した申請書を提出します。その申請書の内容から、現在よく利用されているサービスの傾向がわかることがあります。

インターネット接続サービスでは、2003年~2007年前半頃までは、ADSLを利用したインターネット接続サービスの利用者に対して割り当てる、プールアドレスが主流を占めていました。しかし、2007年後半頃より、光ファイバーを利用したインターネット接続サービス用のプールアドレスを申請するIP指定事業者が、大半を占めるようになりました。

CATVインターネット接続サービスでは、利用者への割り当てを、プライベートIPアドレスからグローバルIPアドレスに変更する事業者が目立ちます。オンラインゲームやIP電話サービス、リアルタイムコミュニケーションを実現するインスタントメッセンジャー等の利用のために、グローバルIPアドレスを割り当てる必要があることを、変更の理由として挙げる事業者が多くなってきています。CATVインターネット接続サービスではその他にも、地上デジタルテレビ放送に対応したセットトップボックス(各種放送信号を受信して、テレビで視聴可能な信号に変換する装置)に、IPアドレスを割り当てることも多くなってきているようです。

IPv6 アドレス割り振りの動向

IPv6は、現在のインターネットで多く利用されているIPv4をベースに改良を加えた、次世代のインターネットプロトコルと言われています。JPNICでは、2000年よりこのプロトコルで利用するIPv6アドレスの分配を行っています。

以下の図6は、IP指定事業者へのIPv6アドレス割り振り件数の推移です。

図6:IPv6アドレス割り振り件数の推移
図6:IPv6アドレス割り振り件数の推移

1年度あたり5件程度で推移していたIPv6アドレスの割り振り件数は、2008年度に、21件と大きく増えました。2008年度末時点で、IP指定事業者全体(379組織)の約24%にあたる90組織が、IPv6アドレスの割り振りを受けています。

IPv4アドレスの在庫枯渇を見据えて、IPv6への対応を進めているIP指定事業者が増えたこと、また、2008年8月15日より実施された、IPv6アドレスの割り振りを受ける条件見直しにより、従来の基準では、IPv6アドレスの割り振りを躊躇していたと思われるIP指定事業者からの申請が増えたことが、割り振り件数の増加につながりました。今後も、IPv6に対応したサービスや機器の普及によって、IPv6の導入を考えるIP指定事業者が増える場合には、割り振り件数の大幅な増加も考えられます。

次に、現在割り振りを行っているIPv6アドレスの用途を、割り振りを行ったIP指定事業者が提供するサービスを手がかりに集計したのが以下の図7です。

サービス別IPv6アドレス割り振り件数
図7:サービス別IPv6アドレス割り振り件数

IPv6アドレスの割り振りを受けているIP指定事業者のうち、約66%がインターネット接続サービスを、約22%がインターネットデータセンターサービスを提供しています。一方、ホスティングサービスを提供する事業者数は、4%と多くありません。各分類毎の割り振り数のばらつきは、サービス提供に必要な機器や技術のIPv6対応状況とも関連があると思われます。

現在有効なIPv6アドレスポリシーにおいて、割り振りを受けることができないとされている、ASPやコンテンツプロバイダとしてサービスを提供するIP指定事業者は、IPv6アドレス割り振り数が0となっています。

以下の図8は、提供サービス別のIP指定事業者総数と、IPv6の割り振りを受けたIP指定事業者数を比較したものです。

図8:サービス別IPv6アドレス収得事業者数比
図8:サービス別IPv6アドレス収得事業者数比

割り振りが行われたIPv6アドレスを、個々のネットワークに割り当てる場合には、割り当て先に関する情報(ネットワーク情報)をJPNICデータベースに登録します。以下の図9は、JPNICデータベースに登録されたIPv4アドレスおよびIPv6アドレスのネットワーク情報の件数をまとめたものです。

図9:ネットワーク情報登録件数の推移
図9:ネットワーク情報登録件数の推移

IPv4アドレスでは、各家庭のネットワークに対して、例えば/29(8アドレス)のように、まとまった数のIPv4アドレスを割り当てるサービスの普及が、登録件数の増加につながっています。一方、IPv6アドレスでは、IP指定事業者自身や企業、学術機関が割り当て先として登録されており、IPv4アドレスのように、各家庭のネットワークに対して割り当てられるケースは少ないようです。

IPv6アドレスは、利用できる個数の多さから、家電や自動車等、今までインターネットの利用を想定していない分野への応用が期待されています。これらの分野でもIPv6アドレスが積極的に利用されるようになれば、IPv6アドレスのネットワーク情報の登録数も増えてくるのではないでしょうか。

プロバイダ非依存アドレス割り当ての動向

JPNICからIP指定事業者に分配されるIPアドレスは、「プロバイダ集成可能アドレス(PAアドレス)」と呼ばれます。このPAアドレスとは別に、直接割り当て先組織に分配されるIPアドレスを、「プロバイダ非依存アドレス(PIアドレス)」と呼びます。

JPNICでは、PIアドレスのうち、IANA※3を頂点とした、現在の階層的なIPアドレス管理体系が確立する以前(1995年頃まで)に割り当てられたものを、「歴史的経緯を持つプロバイダ非依存アドレス(歴史的PIアドレス)」として、その他を「特殊用途プロバイダ非依存アドレス(特殊用途PIアドレス)」として管理しています。

以下の図10は、JPNICが管理するIPv4アドレスを種類別に分類したものです。

図10:JPNIC管理下IPv4アドレスの種類別分類
図10:JPNIC管理下IPv4アドレスの種類別分類

JPNICが管理するIPv4アドレス数は約1億300万ですが、そのうち、PAアドレスは約6,660万強、歴史的PIアドレスは約3,660万強、特殊用途PIアドレスは約1万2,000となっており、JPNICが管理するIPv4アドレス全体の35%をPIアドレスが占めています。JPNICより新たに分配されるアドレスは、現在はPAアドレスが大半となっているため、JPNIC管理下IPv4アドレスに占めるPIアドレスの構成比は、今後さらに低下することが想定されます。

以下の図11は、歴史的PIアドレスのネットワーク情報に登録された組織名を元に、各組織で行っているサービスや事業等で分類を行ったものです。

図11:サービス別に見た歴史的PIアドレスの割り当て先組織数
図11:サービス別に見た歴史的PIアドレスの割り当て先組織数

歴史的PIアドレスの約93%(図11の太枠部分)が、学術機関・公共団体・企業等に割り当てられています。その中でも、学術機関・公共団体には、歴史的PIアドレス全体の38%が割り当てられています。日本のインターネット黎明期に、学術組織間を結ぶネットワークへの接続用として、早期に歴史的PIアドレスの割り当てを受けたことが、割り当て組織数やアドレス数にも影響していると考えられます。

その他にも、インターネット・コンピュータ関連(ネットワーク機器販売、ソフトウェアやコンピュータ開発組織、システムインテグレータ等)にも、歴史的PIアドレス全体の約19%が割り当てられています。今後のインターネットの発展を見据えて、技術開発用のネットワーク構築目的で割り当てを受けた、と考えられます。

特殊用途PIアドレスは、一定の条件を満たす場合に限り、IP指定事業者に依存しないIPv4またはIPv6アドレスとして分配を行っています。

以下の図12は、各年度における特殊用途PIアドレス割り当て状況をまとめたものです。各年度、平均7件程度の割り当てが行われています。

図12:特殊用途PIアドレス割り当て件数
図12:特殊用途PIアドレス割り当て件数

IP指定事業者となる条件は、徐々に小規模なネットワークを対象とするようになり、IP指定事業者としてPAアドレスの割り振りを受けやすくなってきていることから、今後は特殊用途PIアドレスの割り当てを希望する組織は減少していくと考えられます。

以下の図13は、特殊用途PIアドレスのネットワーク情報に登録された組織名を元に、各組織で行っているサービスや事業等で分類を行ったものです。

図13:サービス別に見た特殊用途PIアドレスの割り当て先組織数
図13:サービス別に見た特殊用途PIアドレスの割り当て先組織数

特殊用途PIアドレスの約40%(図13の太枠部分)が、企業等に割り当てられている点は、歴史的PIアドレスと大きな違いはありません。ホスティングサービス、ASPやコンテンツプロバイダをはじめとして、顧客へのサービス提供を目的としたネットワーク構築のために、特殊用途PIアドレスが利用されており、これは、歴史的PIアドレスとは異なる特徴の一つです。

いずれの組織においても、IP指定事業者に依存しない独自ポリシーでのネットワーク運用と、安定したサービス提供をめざして、特殊用途PIアドレスの割り当てを受けたものと考えられます。

AS番号割り当ての動向

AS番号は、統一された運用ポリシーによって管理されたネットワーク(AS)※4を、インターネット上で一意に識別するための番号として利用されています。日本では、現在、JPNICがAS番号の割り当てを行っています。

当初AS番号は、16ビットの数字を用いて、全部で65,536個と決められていましたが、2007年1月には32ビットに拡張されました。この拡張された空間から割り当てられたAS番号は「4バイトAS番号」と、従来のAS番号は「2バイトAS番号」と呼びます。以下の図14は、JPNICから割り当てを行った年度毎のAS番号数を、AS番号の種類別に分類したものです。

図14:JPNICが管理するAS番号の割り当て状況
図14:JPNICが管理するAS番号の割り当て状況

JPNICでは、年平均25件前後のAS番号を割り当てていましたが、2008年度は、2バイトAS番号の割り当て件数が大きく減少しました。

AS番号は、新たにマルチホーム※5構成のネットワークを構築する場合や、既に構築されたネットワークをマルチホーム化させる場合に割り当てを受けます。2008年度の2バイトAS番号割り当て件数の減少は、既存ネットワークのマルチホーム化を目的としたAS番号割り当て数の減少によるものでした。

ASの運用には、利用者に提供するサービス等に応じた運用方針を自ら決められる等の長所がある一方、運用には多くの労力と費用がかかる、といった短所もあります。これらを見極めて、新規に構築するネットワークを既に構築されたASに接続して運用する方が効率的である、と考える組織も多くなってきているようです。また、既存ネットワークのマルチホーム化を考える組織は、今後も一定数あるかとは思います。しかし、既に多くのネットワークでマルチホーム化が進んでいることから、この目的での新たなAS番号の割り当ては、今後も減少傾向にあると考えられます。

4バイトAS番号は、2007年3月の割り当て開始から、およそ2年半が経過しましたが、その割り当て件数は伸び悩んでいます。これは4バイトAS番号に対応する機器やソフトウェア、経路制御オペレーションが普及途上にあり、実際に4バイトAS番号を利用したネットワーク運用を開始できる状況にないことが、原因の一つとなっているようです。

以下の図15は、AS番号のネットワーク情報に登録された組織名を元に、各組織で行っているサービスや事業等で分類を行ったものです。

図15:サービス別に見た割り当てAS番号数
図15:サービス別に見た割り当てAS番号数

割り当てられたAS番号の約66%が、インターネット接続やインターネットデータセンター、ホスティング、ASPやコンテンツプロバイダ等、顧客やエンドユーザーへのサービスを提供するためのネットワークに対して割り当てられています。また、その他の分類では、インターネットエクスチェンジポイント(IXP)や、移動体通信事業者のネットワークに対して割り当てられているようです。これらのどのサービスにおいても、インターネットへの接続を途切れさせないようにすることが求められますが、既に構築されたASを利用してサービスを提供する場合には、利用するASの運用ポリシーに依存することとなり、独自のサービス提供レベル等を設定することが難しくなります。この解決策として、AS番号の割り当てを受け、独自のポリシーで安定したネットワーク運用をめざしているのではないでしょうか。

一方、学術機関や公共団体、企業ネットワーク等にも、AS番号の割り当てが行われています。インターネット接続サービスやインターネットデータセンター等と比べれば、ネットワークの利用者は限られますが、ネットワークの規模が大きくなる場合には、利用者に安定したインターネット環境を提供することが必要となります。そのため、AS番号の割り当てを受けて、ネットワークの運用を行うケースが多いと考えられます。

JPIRR サービスの動向

IRR(Internet Routing Registry)は、インターネット上で自律的に運用されているネットワーク同士が、お互いに正しく経路交換を行うために必要となる、経路広告元のAS番号や、経路広告を行うアドレスといった情報を提供するデータベースです。実際に経路広告が行われているアドレスブロックと、IRRに登録されている情報との比較、各ネットワーク間でのフィルタリング、障害時の連絡先確認等の際に、IRRが利用されます。IPアドレスやAS番号の割り振り/割り当て先に関する情報が登録される、WHOISとは役割が異なります。

以下の図16は、JPIRR※6に登録される代表的な4種類のオブジェクトについて、各年度末時点における登録数を示したものです。

図16:JPIRRサービスにおける登録オブジェクト数の推移
図16:JPIRRサービスにおける登録オブジェクト数の推移

JPNICでは、2002年より試験的に提供していたJPIRRサービスを、2006年8月より、正式サービス化しました。JPIRRサービスの認知度向上をめざして、AS番号割り当て先組織への個別訪問、指定事業者連絡会等の各種ミーティングでのJPIRRを利用したオペレーションの紹介等により、IRRを利用したネットワーク運用に関心を持った組織や、継続的なサービス提供にご理解いただいた各組織からの申し込みにより、オブジェクト登録数を増やしてきました。

maintainerオブジェクトは、JPIRRサービスを利用する場合に、一番初めに登録が必要となるオブジェクト※7です。maintainerオブジェクトの登録後に、割り振り/割り当てを受けたアドレスブロックに関する情報(route(route6)オブジェクト)やAS番号に関する情報(aut-numオブジェクト)を登録します。JPIRRに登録されたこれらのオブジェクトは、各ネットワークのオペレーターから広く参照されます。

一つのネットワークから複数の割り振りアドレスブロックを経路広告する場合や、割り振りアドレスブロックを分割して経路広告を行う場合には、一つのmaintainerオブジェクトに対して、複数のroute(route6)オブジェクトが登録されることがあります。また、上流の接続事業者が、自身のmaintainerオブジェクトを利用して、顧客が割り振り/割り当てを受けたアドレスのroute(route6)オブジェクトやaut-numオブジェクトを登録するケースもあります。このような運用方法の影響もあり、maintainerオブジェクト数以上に、他のオブジェクト登録数が増加しました。

以下の図17は、上流の接続事業者に依頼せずに、自らJPIRRにオブジェクトを登録している組織について、maintainerオブジェクトに登録されたAS番号と割り当て先組織名を手がかりにして、各組織で行っているサービスや事業等で分類したものです。

図17:サービス別に見たmaitainerオブジェクト登録数
図17:サービス別に見たmaitainerオブジェクト登録数

各分類において、およそ2割から4割のAS番号割り当て先組織が、maintainerオブジェクトの登録を行っています(図17)。属する分類から見ると、一般ISP、CATVインターネット、インターネットデータセンター、ホスティングサービスが全体の77%を占めています。これらのサービスでは、ユーザーや顧客のネットワークに対してインターネットへの接続性を提供するケースが多く、他ASとの通信時にフィルタリングされることを防ぎ、インターネット全域への到達性をより確実なものにする必要があります。上流の接続事業者に依存する形ではなく、自ら積極的に経路制御に関わるオペレーションを行うため、主要なIRRであるRADB※8への登録以外にもJPIRRに登録することで、登録情報の冗長化や、より安定したネットワークの運用をめざしているのではないでしょうか。

残りの約23%は、提供されたインターネットへの接続性を利用してサービスを行うケースが大半を占めています。ネットワークの規模や利用者数等の事情により、自らmaintainerオブジェクトを登録する形ではなく、上流の接続事業者により、オブジェクトの登録が行われているようです。maintainerオブジェクトの登録数はわずかですが、これらの分類においても、JPIRRへの登録目的は上記の分類と変わりはなく、安定したインターネット環境の提供のために、JPIRRを利用していると考えられます。

(JPNIC IP事業部 川端宏生)


※1 IPアドレス・AS番号が欲しい時は
http://www.nic.ad.jp/ja/ip/whereto/
※2 IPv4最小割り振りサイズ変更に伴う文書施行のお知らせ
http://www.nic.ad.jp/ja/topics/2008/20080916-01.html
※3 IANA(Internet Assigned Numbers Authority)
カリフォルニア大学情報科学研究所(ISI)のJon Postel教授が中心となって始めたプロジェクトグループで、ドメイン名、IPアドレス、プロトコル番号等、インターネット資源のグローバルな管理を行っていました。2000年2月には、ICANN、南カリフォルニア大学、およびアメリカ政府の三者の合意により、IANAが行っていた各種資源のグローバルな管理の役割はICANNに引き継がれることになりました。現在IANAは、ICANNにおける資源管理、調整機能の名称として使われています。
※4 AS(Autonomous System)
日本語で「自律システム」とも呼ばれます。ASは、統一された運用ポリシーによって管理されたネットワークの集まりを意味し、BGPというプロトコルにより接続される単位となります。AS間で経路情報の交換を行うことにより、インターネット上での効率的な経路制御を実現します。通常、規模の大きいISPのネットワークは固有のASを形成しています。ASは16ビットか32ビットの数字を用いたAS番号によってインターネット上で一意に識別され、日本ではJPNICがその割り当てと管理を行っています。
※5 マルチホーム
あるネットワークが冗長性あるいは負荷分散等の目的で、インターネットへ二つ以上の到達可能性を持つことです。JPNICでは、片方をメインに、片方をバックアップにという使い方をすることはマルチホームとして扱わないと定めています。
※6 JPNIC Web「JPIRR」
http://www.nic.ad.jp/ja/irr/
※7 JPIRRの代表的なオブジェクト
(1)maintainerオブジェクト(メンテナーオブジェクト)
オブジェクトの新規登録、削除、更新を行う際に必要な認証情報を記述したオブジェクトです。JPIRRにオブジェクトを登録する際には、このオブジェクトが必ず必要となります。
(2)route(route6)オブジェクト(ルートオブジェクト)
アドレスのプリフィクス情報と、ASの起源情報を表すorigin ASの情報を記述したオブジェクトです。
(3)aut-numオブジェクト
ASに割り当てられた番号(AS番号)や、そのASにおけるルーティングポリシーを記述したオブジェクトです。
(4)as-setオブジェクト
複数のASを、一つの共通したポリシーにまとめて記述する際に主に利用されるオブジェクトです。
参考情報
「JPIRR データベースに登録される情報一覧」
http://www.nic.ad.jp/doc/irr-objects.html
※8 RADB(Routing Assets Database)
Meritという米国の研究機関によって運営されている、publicなインターネットルーティングレジストリ(IRR)の一つです。

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