メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.44/2010年3月発行

第76回IETF報告 全体会議報告

概要

地図:開催地

山陽新幹線の改札口を出ると、正面に立っている看板「Welcome -76th IETF Meeting Hiroshima」の文字が目に入ってきました。ホテルに向かう途中のアーケードには、IETFミーティング開催の横断幕がかかっています。市内のこのような掲示は、私が参加したことのあるIETFミーティングでは見たことがありませんでした。IETFが日本の広島で開催されるという実感とともに、ホストであるWIDEプロジェクトの力の入れように驚き始めた開催前夜でした。

第76回IETFミーティングの開催概要は以下の通りです。

  • 開催期間 : 2009年11月8日(日)~13日(金)
  • 会場 : ANAクラウンプラザホテル広島
  • 参加登録者数 : 1,155名
  • 参加国数 : 44ヶ国
  • 参加費 : 635USD(早期割引料金)、785USD(通常料金)、200USD(一日料金)
  • ホスト : WIDEプロジェクト
写真:Plenaryの様子
Plenaryの様子

全体会議(Plenary)での発表によると、日本からの参加人数は363名と最も多く、全体の34%を占めていました。米国は304名で27%、中国は99名で9%、続いてフランス4%、韓国4%という内訳でした(2009年11月10日時点)

初日の11月8日(日)はチュートリアルとレセプションが開かれ、2日目から最終日にかけて、各WGのミーティングとBoFが開かれました。

Operations and Administration Plenary概要

Operations and Administration Plenaryは、IETFの運営などに関する全体会議です。4日目の11月11日(水)16:30から3時間程行われました。ホストであるWIDEプロジェクトのプレゼンテーションと、新設されたItojun Service Awardの発表、NOCレポート、IETFチェアの活動報告などが行われました。

WIDEプロジェクトのホストプレゼンテーション

WIDEプロジェクトのプレゼンテーションでは、WIDEプロジェクト代表で、JPNICの理事でもある村井純氏によって広島市内の広告や、第76回IETFのロゴやTシャツのデザイン、RFID(Radio Frequency Identification)の利用実験などについて説明が行われました。

会場のホテルが面している平和大通りでは、数多くのイルミネーションが飾られるイベント「ひろしまドリミネーション」が毎年行われていますが、今回はIETFの開催期間に合わせ、イベントの開始が例年よりも早められたとのことでした。また、ロゴとIETFで恒例となっているTシャツは、広島市立大学の及川久男教授によってデザインされたそうです。

RFIDは、以下の二つの実験で使われました。

- 発言者の情報表示システム

マイクの前に立って発言する際、マイクスタンドにかかっているRFIDリーダーにタグをかざすと、発言者の氏名などがスクリーンに表示されます。タグは、首から下げる名札入れに入っているため、人によってはマイクに近づくだけでタグが認識されます。議論中に発言者の名前を確認できる他、Jabberや議事メモの作成に役立っていました。

- E-bluesheet

ブルーシート(Bluesheet)とは、WGなどで参加者自身が記入する形式の参加者リストです。今回のIETFでは、ブルーシートに加えてRFIDリーダーが座席にまわってきました。タグをRFIDリーダーにかざすだけでよいため、紙に氏名やメールアドレスを記入するよりも楽になっています。

RFIDタグは、1,121名中、889名によって使用されました(2009年11月10日時点)。RFIDの利用実験で印象的だったのは、その運用とサポートです。RFIDタグは、ユーザーが登録しなければ有効にならないオプトインの形で配布され、また意図せずに他人に読み取られるのを防ぐ、“スキミングプロテクション”カードも一緒に配布されていました。会場にはヘルプデスクが設けられ、常時スタッフが対応できるようになっていました。

この他に、ソーシャルイベントの参加者向けに、「PASPY」と呼ばれるFelicaカードが配布されていました。PASPYは広島市内の交通機関で使えるだけでなく、平和記念資料館の入場などにも使うことができます。

写真:RFIDリーダー
発言者のRFIDを読み取るためにマイクスタンドに設置されたRFIDリーダー

○Itojun Service Award

Itojun Service Awardは、KAMEの実装などで知られる萩野純一郎氏の功績をたたえ、萩野氏の家族と有志の寄付を基にして設置された賞です。この賞は、インターネットに関わる開発や運用などの技術的貢献を行った人に贈られます。

第1回のItojun Service Awardは、Google社のLorenzo Colitti氏とErik Kline氏に贈られました。両氏は、GoogleのWebサービスを、IPv6を使って利用できるように尽力したことが認められ、受賞に至りました。

□The KAME project
http://www.kame.net/
□Internet Society(ISOC) - Itojun Service Award
http://www.isoc.org/itojun/

○NOCレポート

NOCレポートは、IETFのために設置されたネットワークに関する、ネットワークオペレーションチームからの報告です。WIDEプロジェクトのメンバーでもある東京大学の加藤朗氏によって行われました。概要は以下の通りです。

- ネットワークのデザイン

“Simple but robust”という原則の下、どのネットワークでもIPv4とIPv6が使えるようになっていました。

写真:萩野氏のご家族と、Lorenzo Colitti氏とErik Kline氏
萩野氏のご家族と、Itojun Service Awardの最初の受賞者になったGoogle社のLorenzo Colitti氏とErik Kline氏(右端の二人)

会場のみならず、会場以外の五つのホテルでもIETFのネットワークが提供されました。一般の宿泊客も使えるようになっており、ボトルネックになると考えられるNATが介在しない、高速なネットワークが提供されました。

- ネットワーク回線

会場のANAクラウンプラザホテル広島は1Gbps、他のホテルは100MbpsでNTT西日本の回線に接続され、その先はSINET、JGN2+、NSPIXP3、JPNAPに各々1Gbpsで接続されました。主にAlaxala社とCisco社の機器が使われました。NSPIXP3とJPNAPから先では、NTTコミュニケーションズ、KDDI、IIJの3社によって接続サービスが提供されました。

- 無線LAN

これまでのIETFと同様に複数の規格で提供されました。クライアント数を以下に示します(2009年11月11日時点)。最大で854クライアントが接続しました。

802.11g: 324  802.11n: 255
802.11a: 149  802.11b: 10

会場1階のレストランでは、ガラス張りのワインセラーの中に基地局が設置され、カバー範囲を広げるとともに、NOCチームのユーモアが現れていました。

- IPv6

総トラフィックのうち約7%がIPv6でした。これにはGoogleのDNSサーバで、WebサーバのAAAAレコードが返されるような設定変更が会期中に行われたことが影響したようです。

今回のネットワークは、特に障害が発生せず大変安定していたことから、IETF参加者のメーリングリストでNOCチームに感謝する旨のメールが数多く飛び交っていました。

○IETFチェア報告など

IETFチェアのRuss Housley氏からは、RFCの公開状況などについて報告がありました。

- RFCの作成状況

前回(IETF-75)以降、RFCは104公開されました。合計で約3,077ページあるそうです。

- Code Sprint

ミーティングの前日に、IETFのWebページなどのプログラミングを行うセッション“Code Sprint”が今回も行われました。今回は、IETFのコンテンツ管理に使われている、Djangoの1.1へのバージョンアップが行われました。

IAOC(IETF Administrative Oversight Committee)とIAD(IETF Administrative Director)のレポートは、Bob Hinden氏とRay Pelletir氏によって行われました。

- 2009年度のIETF運営状況

今のところ参加者数は計画の範囲内ではあるものの、当初予算に比べて収入が減りました。一方、会議費における飲料費の低減化を図るなどし、支出も減りました。ISOCからの追加補助は不要である見込みです。

- 2010年度の予算

2010年度の予算が承認されました。IETFミーティングの参加費は635ドルに据え置かれる予定です。

写真:村井純氏
Receptionでスピーチを行うWIDEプロジェクト代表の村井純氏

Technical Plenary概要

Technical Plenaryは、ミーティング参加者全体で技術的な議論を行う全体会議(Plenary)です。11月12日(木)の16:30から3時間ほど行われました。

- IRTF(Internet Research Task Force) Chair's report

二つのResearch Group(RG)の紹介が行われました。Anti-Spam Research Group(ASRG)は、スパム対策のRGで、現在はブラックリスト管理に関するドラフトの作成が行われています。Scalable, Adaptive Multicast Research Group(SAMRG)は、複数の方式のマルチキャストに関するRGで、“ハイブリッドマルチキャスト”と呼ばれる複数の方式が組み合わされたマルチキャストの、テストベッドの構築が行われています。

- IAB(Internet Architecture Board) Chair's report

逆引きに使われるTLDである「.ARPA」における署名レコードの提供が計画されています。2009年第4四半期に一時的なセットアップが行われ、2010年第2四半期にルートゾーンを管理するためのアーキテクチャへの組み込みが行われるスケジュールとなっています。

ドメイン名や識別子の国際化に関する議論

今回のTechnical Plenaryにおける議論のテーマは、ドメイン名や識別子の国際化(Internationalization in Names and Other Identifiers)です。はじめに、アルファベット以外の文字列がドメイン名やパス名で使われるケースを紹介し、文字列同士の比較やマッピングなどの処理が持つ複雑さが説明されました。

IABでは、ドメイン名と文字列のエンコーディングに関する考察の結果をドキュメントにまとめる作業が行われています。

会場では、複数のコード体系がある中でbackward compatibility(後方互換性)を保つにはどうすればいいのかといった疑問が投げかけられたり、誤認しやすいURLを使ったフィッシングを防ぐためにaどうすればいいのか、といった議論が行われました。

□ IAB Thoughts on Encodings for Internationalized Domain Names
http://tools.ietf.org/html/draft-iab-idn-encoding-01

IETFミーティングに合わせて行われたイベント

今回のIETFでは、会期中以下のイベントがありました。いずれもランチの時間を使ったセッションで、会場のホテルで行われました。

- ISOC Briefing Panel: “Internet Bandwidth Growth:Dealing with Reality” - 11月10日(火)

近年のさらなる広帯域化の影響と広帯域アプリケーションの影響などについて、トラフィックの統計を取っている研究者などによるパネルディスカッションが行われました。

- Challenges to the Future in WIDE Project - 11月12日(木)

ホストであるWIDEプロジェクトによる最新動向の紹介が行われました。同プロジェクトの村井純氏、江崎浩氏に加え、パナソニック電工株式会社と日本放送協会のスピーカーによる、さまざまなIPの適用場面について発表が行われました。

今回のIETFについて

今回、ミーティング参加者用のMLのやりとりが、とても活発でした。通常は“本MLは稼動していますか?”といった質問が投げられることがあるほど静かなMLですが、今回は、広島への行き方に始まり、市内のサッカー/フットサル場や、空手道場がどこにあるかといった質問、さらに広島という地名の由来、RFIDの活用法など、さまざまな情報交換に使われました。質問には、WIDEプロジェクトのメンバーが、一つ一つに丁寧に対応していたのが印象的でした。

写真:案内板
「Chanllenges to the Future in WIDE Project(2009年11月12日)」の案内板

次回の第77回IETFは、2010年3月21日~26日、米国のアナハイムで開催される予定です。

(JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司)

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2020 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.