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ニュースレターNo.46/2010年11月発行

JPNIC会員企業紹介

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

日本通信株式会社
住 所 : 東京都品川区南大井6-25-3 ビリーヴ大森
設 立 : 1996年5月24日
資本金 : 3,831,102,010円
代表取締役社長 : 三田聖二
URL : http://www.j-com.co.jp/
従業員数 : 132名(2010年6月30日時点、連結子会社・臨時従業員含む)
事業内容 : MVNO(Mobile Virtual Network Operator;仮想移動体通信事業者)としての利用者へのサービス提供、およびMVNO事業に参入する企業・団体を支援するMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)サービスの提供
(2010年9月30日時点)

今回は、携帯網におけるMVNO(Mobile Virtual Network Operator;仮想移動体通信事業者)のパイオニアとして、次々と意欲的な製品・サービスを打ち出している、日本通信株式会社代表取締役専務COOの福田尚久氏にお話を伺いました。事業内容やキャリアとの関係だけでなく、グローバル視点から見た日本の通信事情および、今後の展望などについても熱く語っていただきました。

モバイルとインターネットの見えざる壁の橋渡しに
~MVNOから仕掛ける、シームレスな通信の実現~

(本記事は、2010年9月10日の取材に基づき作成したものです。)

パートナーとの絆がなくては始まらない~事業を始めたきっかけと現在の事業展開~

写真:福田 尚久氏
お話しいただいた方:
日本通信株式会社 代表取締役専務COO 福田 尚久氏

■御社のメイン事業はMVNO(仮想移動体通信事業者)ということですが、その具体的な内容を含め、事業概要についてお聞かせください。

モバイルネットワークのサービスは、従来は設備を持つ事業者が中心に提供をしていました。しかし、顧客の多様化を考えると、設備事業者数社のみでのサービス提供では、多様性という面で十分ではありません。

弊社は、そのような設備事業者のインフラ設備を借り、その上で独自の通信サービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator;仮想移動体通信事業者)事業と、他社によるMVNO事業の立ち上げを支援するMVNE(Mobile Virtual Network Enabler;VNO事業の支援サービスを提供する事業者)事業を行っています。

■そのように「通信の多様化」を考えられたきっかけは何だったのでしょうか。

弊社の社長である三田のバックグラウンドが大きいと思います。

三田は米国のある投資銀行に在籍していた際、ブラックマンデー※1の影響で、大幅なコスト削減をする必要に迫られました。そこで着目したのが、同社が自社ネットワークとして全米で展開していた通信インフラです。

「通信事業が本業ではないのに、通信設備を保有する必要があるだろうか、設備を通信事業者に売却し、リースバック※2でそれを使う方が効率的ではないか」。これを実現することで、その投資銀行は不要資産を持たずに済む上に売却益を手にしたと同時に、これを購入した米国の大手通信事業者にとっても全米規模のネットワークを手に入れることとなり、両者にとってメリットの大きい取引となりました。

三田はこのプロジェクトや、その後モトローラ社で日本での携帯電話事業の立ち上げに携わった経験を通じて、設備を構築し運用することと、設備を使うこととは別のことであり、それぞれのサービスに特化した事業者が出現すべきだと感じたそうです。特に、固定網ではサービス毎に特化した事業者が存在する一方、モバイルでは携帯事業者が上から下までカバーしており、インターネットのオープンさと比較し、モバイルはまだまだ開拓できる余地があると感じたことが、ビジネスモデル発想の原点です。

■そこから「MVNO」という発想が生まれていったのでしょうか。

そうですね。インフラ設備を借りて、その上でインターネットサービスを提供することに特化した会社が必要だということです。

三田は以前、鉄道会社に勤務していたこともありますが、通信の相互接続はそもそも鉄道から来たものです。米国は州をまたぐと法律が違い、また鉄道会社も複数あるため“trackagerights”という、互いに保有する線路を原価ベースで支払うことで、列車を通行させられる権利があります。同じような発想で、無線キャリアからネットワークを借りられるようにしようと考えたということです。

“周波数を借りて設備を構築する”のではなく、“設備そのものを借りて事業を始めたい”、というのが伝送路設備を保有しない(旧第二種)事業者である弊社が、伝送路設備を保有する(旧第一種)電気通信事業者であるNTTドコモとの交渉を開始した理由です。

「1年後には、"接続して良かった"と言ってもらいたい」~通信キャリアとの"相互接続"に懸けた思い~

■「相対取引」ではなく、あえて「相互接続」という考え方での接続の道を取られましたね。交渉開始時は、どのくらい自信がありましたか。

弊社は2001年からPHSでのMVNO事業実績がありましたし、株式上場もしています。また、キャリアによってカバーされていないニッチな分野も多数ありますし、パートナーという形で事業を行っても成功すると確信していました。

また、「相互接続」という形にしたのは、我々に続く事業者が、どこも同じ条件で、設備を借りられる道筋を作りたい、ということにこだわったからです。

■それにはご苦労もあったのではないでしょうか。

私が交渉を担当したのですが、なにしろ誰もやったことのないことですから。今でこそ理解していただいていますが、交渉当時は一筋縄ではいきませんでした。最終的には、ちょうど2年前になりますが、総務省の判断を仰ぐことになり、大臣裁定が下りました。

だからこそ、ドコモさんにも「1年後には、“接続して良かった”と言ってもらいたい」と、三田も私も公言していましたし、それに向けた努力をしました。結果として、先方の回線純増数にも貢献できたのではないかと思っています。

■お互いにWin-Winの形に持って行けたということですね。

はい、結果として、お互いにメリットがあったと思います。回線数で再度首位に立ちましたし、その上MVNOからの収入は、端末負担分や奨励金などの営業経費をかけずに得られます。何でも独自にやらなくても、パートナーとの関係の中から生まれることもあると思います。

■独自ではカバーしにくい事業とは、例えばどういうことでしょうか。

理論的には、独自にできないことはありません。しかし、会社の規模によって、経営判断しやすい、しにくいというのはあるのではないでしょうか。つまり、大企業は、顧客規模が100万人ならその人たちに向けた新規サービスを提供できるでしょうが、500人向けのサービスというのは、規模的に構築しにくいと思います。また、顧客毎にカスタマイズした、きめの細かいサービスという意味でもそうです。大手がやりづらい分野で、弊社はサービスを提供できると思っています。得意とするサービスはそれぞれ違いますから。

日本だけでやっていくには、市場はあまりにも小さい~グローバルな視点から見た、日本の通信事情に対する憂い~

■日本のケータイや通信については、「ガラパゴス化している」という声も聞こえますね。これについてはどう思われますか?

何でも「持続可能=サステイナブル」な仕組みであれば、良いと思うんです。しかし、日本における電子機器類供給の現況は、果たしてサステイナブルでしょうか?

端末というのは、製造原価が想像以上に低いのに比べ、技術開発コストは恐ろしくかさむものです。ですから、その端末が日本のみを向いたものだと、その技術開発費を日本市場だけで回収しなくてはなりません。しかし、それには日本市場は小さすぎるのではないでしょうか。日本の端末メーカーがどこも利益を出せないのはそのためでしょう。

■しかし、日本の端末は同じ金額レンジで見ても高機能であり、海外のメーカーは、技術的にも、アイデアとしても、日本を見るという流れもあるようです。例えば、写メールやGPSなどですね。

日本のユーザーが高機能なものを欲しがった結果、高機能になっていったのなら良いと思うんですね。つまり、ガラパゴス化するほどの付加価値に対して、ユーザーが価値の対価を払った結果として技術開発がさらに進み、また一段と高機能になるという好循環ならば良いと思います。しかし実情は、メーカー側が他社との差別化を図りたいがためにどんどん端末を高機能にし、それを販売奨励金などで、安く見せているだけです。ビジネスとしては成り立っていないのではないでしょうか。

iPhone用のSIMカードについてのお話もいただきました
iPhone用のSIMカードについてのお話もいただきました

■日本はなぜ、そのようなガラパゴス化に至るスパイラルに陥ってしまったのでしょうか。

日本の場合は、2001年頃、たまたま“iモード”などの普及時期と、インターネットおよびブロードバンドの普及時期が重なってしまったことがあるかもしれません。

海外の場合は、コンテンツが既にWWWにでき上がっていましたが、日本では、“携帯向けプラットフォーム”と“WWW”という、ある種二つのプラットフォームができました。この後、この“携帯向けプラットフォーム”をグローバルに押し進めれば良かったのですが、そうはしなかったのではないでしょうか。数は取った者勝ちです。他の国でも認められれば、ガラパゴスにはならないのです。

■おっしゃる通り、WWW=インターネットはオープンな世界であり、一方の携帯は閉じられたネットワークで、そこに考え方の相違があるかもしれませんね。

通信事業者は、国毎に事情も違い、規制に縛られて自由がないところもありますから、国内での通信インフラ作りに主眼を置き、注力して良いと思います。その結果、垂直統合の方向でやっていかざるを得ない一面はありますね。

一方、インターネットは互いに繋がるという横のつながりがあり、これが最も重要なことです。このせめぎあいが、今の通信の世界を作ってきたと思いますね。

自社のネットワーク戦略は、事業戦略にも直結する~今後の事業展開~

■今後は、横の繋がりを増やしていきたいということですね。今後の事業展開はどのようにお考えですか。

会社として重要視していることは、グローバルなネットワークを構築したいということです。

かなり以前の話ですが、沖縄で携帯電話を使う際はローミングが必要でした。今でもまだ海外に行けば、ローミングが必要です。インターネットがそうであるように、沖縄から上海、上海からシンガポールへ移動しても利用者がどの国のサービスを受けているかを意識しない、つまり世界が一つの地域という状況をモバイルの世界に作りたいと考えています。高層ビル間に渡り廊下を構築するようなイメージで、インターネットの技術を利用し、各国別の携帯網を融合したいということです。こういった世界はPC、携帯、スマートフォンのいずれにおいても実現でき、世界中どこでも同じ値段で実現できていいはずです。

“日本の携帯”にこだわってしまうと、日本だけに閉じたものになってしまいます。当社は米国でもサービスを提供していますが、そのように世界中の各地域で設備を借りれば、シームレスにサービスを提供することは技術的には既に可能です。実際それを可能にするチップも開発されています。

■今ほど、米国での事業のお話が出ました。米国では、M2M※3のサービスなども提供なさっているようですが、日本での状況はいかがでしょうか。

間接的に当社のサービスを使ったことのある人は何百万人もいますよ(笑)。

例えば、プリクラです。今のプリクラは、携帯電話やパソコンにメールを飛ばすことができますが、そのネットワークとして、あるメーカーに当社を使っていただいています。プリクラは、場所によっては無線しか接続できないので。

他にはクリーニング業界があります。クリーニング店の数は、実はコンビニの3倍もあるそうなんですが、これだけ多数の店舗から受け取ったものをまた元の店舗に戻すには、複雑なロジスティクスが必要とされます。この業界のあるメーカーのPOS※4に、無線通信を入れました。クリーニング屋の店主に有線通信を入れてもらうのはハードルが高いため、無線通信が必要になったんですね。

余談ですが、当社のネットワークのピークは、プリクラが1年で一番撮られる日、そう、成人式の日なんですよ(笑)。

■M2Mの世界も、知らないところで進んでいるんですね。

そうですね。これは価格が下がったことも大きいのです。以前は、M2Mのハードウェアモジュールは、自動車メーカーへ納入できるほどの高級仕様となっており、高価でした。しかしその後、キャリアによるIOT※5がほぼ不要となったことと、国際的な相互認証の開始により、「技術基準適合証明」を日本で取らずとも、各国の認証を一括して取得できるようになったため、海外の安いモジュールが数千円で入ってくるようになりました。

M2Mのデータ量および通信料は微々たるもので、総コストの中では端末コストの占める割合が突出して高いことを考えると、こういったモジュールの低廉化で、参入障壁が大幅に下がりましたね

■それで、使用される幅も広がったと。

そうなんです。他にも自動車の耐久レースにおいて、8時間近く途切れることなく3G無線ネットワーク経由で動画配信したり、ある業界の業務用無線のデジタル化をサポートしたり、DVDレンタル自動販売機の無線ネットワーク構築など、多種多様な導入例があります。お話しできないことも多いのですが、こういったネットワーク戦略とは、各社の事業戦略にも直結することであり、本当に中枢に関わるお手伝いをさせていただいています。こうした仕事は、とても楽しいですね。

■「お手伝い」ということでは、MVNEとしての実績には、どのようなものがおありになるのでしょうか。

パソコンメーカーなど、通信も必要だけれど、通信事業が本業ではない場合のアウトソース先としてや、キャリアとの交渉を担っています。Enablerとしてお手伝いすることで、異業種のパートナーが増えていくことも嬉しいことの一つだと感じています。

現代の希薄さをシームレスに埋めるネットワークを~エリアを圧倒的に広げてどこでもドアが作れたら~

■今回、JPNICの会員になっていただきましたが、JPNICに対する期待はどのようなことでしょうか。

今後の目標として、「インターネットの技術と考え方を利用して、携帯の世界と融合していきたい」、つまりはコミュニケーションインフラをシームレスにしていきたいということを考えています。少なくとも、モバイルとインターネットとの見えざる壁を、もう少しどうにかできないかとは思っています。

日本は、モバイルのインフラとしては世界で最高のものを持っています。またネットも十分発達しています。しかし、モバイルとインターネットの融合は、今後、海外の方が早く進むように感じています。近い将来、ここからが携帯で、ここから先がインターネットという概念がなくなるかもしれず、また「ケータイ」という言葉すらもなくなる世界が来ると思いますが、私はここでまた、日本が一歩出遅れてしまう懸念を持っています。これを何とかできないか。これは、我々1社でできることではなく、インターネット側にいるJPNIC会員企業のみなさんと共同で対処していかなくてはいけないことでしょう。

元来、携帯事業者はモバイルの中の世界に閉じこもりがちでした。インターネットの世界に身を置くJPNIC会員になることにより、幅広い層から知識を吸収し、また逆に発信していきたいという考えがありますね。モバイル業界は戦略的に進んできているので、面白い人材も多いですから。

■最後に、「インターネット」を一言で表すとなんでしょうか。

「wheel for the mind」、思考の車輪とでも言いましょうか。脳や気持ちが車輪に乗って、距離や時間、すべてを超越していくようなイメージです。スタートレックの「テレポート」、もしくはドラえもんの「どこでもドア」と言っても良いかな。

娘がニューヨークに留学していた際、常時接続環境でビデオチャットをしていたので、遠く離れているという感覚がほとんどありませんでした。人と人との結びつきが希薄になってきている世の中、特に都市の生活では、インターネットは時間・空間を超越して、人々を結びつけていると思います。そこが「どこでもドア」的だと言えるでしょう。冬の間雪で閉ざされる富山県山田村で、パソコンベースの電話会議システムを導入することで、雪に閉ざされてもお隣同士が会話できるという事例でも、同様のことを端的にイメージできますね。

インターネットの世界は「合意」で成り立っています。個々のネットワークは独立しており、それが合意の上で成り立っているプロトコルの上で成立しています。皆で協力し、ハッピーになるイメージですね。

固定網しかなかった時代から、今は、携帯網およびインターネットがあります。網の種類を問わずシームレスに融合させることに、我々は今後注力していきたいと考えています。

写真:日本通信株式会社の受付の様子
日本通信株式会社の受付の様子

※1
1987年10月19日に発生した世界的な株価大暴落。
※2
自己で保有する資産をいったんリース会社に売却し、その後直ちに同一資産のリースを受けるリース形態。
※3
Machine to Machineの略。
機器間通信をIPネットワークで行うこと。
※4
Point Of Saleの略。販売時点情報管理。
※5
Inter Operability Testの略。キャリアが課す携帯端末とネットワーク間の接続試験を指す。法的に義務付けられてはいない。

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