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ニュースレターNo.49/2011年11月発行

IPv6関連WG報告

2011年7月24日(日)から7月29日(金)まで、カナダのケベックシティにて第81回IETFミーティングが開催されました。同時期、日本は非常に暑かったとのことですが、ケベックシティは涼しく、過ごしやすい気候でした。

今回の参加人数ですが、46ヶ国より1,057名(新規参加133名)と、プレナリにて発表されています。最近、参加人数は増加傾向だったのですが、今回は減少しています。国別の参加人数内訳では、米国、中国、日本、カナダ、フランスという順番でした。前回に引き続き、日本からの参加者が少なかったように感じられました。

本稿では、IPv6に特化した内容を議論するワーキンググループ(WG)での、会期中における議論内容を中心に紹介します。

画面:Wikiによる情報提供
会合ではWikiによる情報提供も行われています

6man WG(IPv6 Maintenance WG)

6man WG は、IPv6のプロトコル自体のメンテナンスを実施するWGです。今回は、7月26日(火)の夕刻に開催されました。

まずは、チェアによるアジェンダ確認、および6man WGで取り組み中である以下の文書についてステータス報告がありました。

  • IPv6 フローラベル仕様に関するドラフト群
    → IESGレビュー中
     draft-ietf-6man-flow-3697bis:改版ドラフトが必要とのコメント。
     draft-ietf-6man-flow-{ecmp,update}:エリアディレクター(AD)フォローアップ中。
  • IPv6ノードの要求仕様改版(draft-ietf-6man-node-req-bis)
    → ADレビュー中、執筆者の対応待ち。
  • UDPの0チェックサム(draft-ietf-6man-udpzero)
    → WGラストコールへ。
  • UDPチェックサムに関する問題提起(draft-ietf-6man-udpchecksums)
    → WGラストコール前に、改版ドラフトが必要とのコメントあり。
  • RPL(低電力高損失ネットワーク向けIPv6ルーティングプロトコル)用のデータ転送オプション(draft-ietf-6man-rpl-option/draft-ietf-6man-rpl-routing-header)
    →ADレビュー中、改版ドラフトが必要とのコメントあり。
  • 回線IDオプション(draft-ietf-6man-lineid)
    →WGラストコール準備完了。後述する、ルータ要請ベースのアクセス制御の問題(draft-dec-6man-rs-accessharmful)ドラフトの議論待ち。

今回は、以下のテーマが議論されました。

  • IPv6拡張ヘッダの統一フォーマット
    draft-ietf-6man-exthdr
  • 近隣探索におけるIPv6拡張ヘッダに起因するセキュリティ問題
    draft-gont-6man-nd-extension-headers
  • RFC3484 IPv6デフォルトアドレス選択機構の更新
    draft-ietf-6man-rfc3484-revise
    draft-ietf-6man-addr-select-opt
  • DADプロキシ
    draft-ietf-6man-dad-proxy
  • 近隣探索の問題と拡張
    draft-gashinsky-v6nd-enhance
  • 近隣到達不可能解析の問題点
    draft-nordmark-6man-impatient-nud
  • IPv6近隣探索の省エネルギー対応
    draft-chakrabarti-nordmark-energy-aware-nd
  • MS/TPネットワーク上でのIPv6転送
    draft-lynn-6man-6lobac
  • ルータ要請ベースのアクセス制御の問題
    draft-dec-6man-rs-access-harmful

これらのトピックスの中から、いくつかをご紹介します。

1. IPv6拡張ヘッダの統一フォーマット
draft-ietf-6man-exthdr
前回に引き続き、議論が続いている、IPv6拡張ヘッダの標準フォーマットを決める提案に関する議論です。WGラストコールのコメントを反映、挙げられた問題点について対応し終えたことについて報告がありました。会場から、IPv6を拡張する場合、終点オプションの利用を強く推奨しているが、経路途中すべての中継点での処理(従来、中継点ごとオプションヘッダ(hop-by-hopoptions header))をしたい場合にはどうするのか、などの質問があり、そのような拡張はこの文書の範囲外であることなどの返答がありました。RFC化に向け、IESGに送ることになりました。
2 . 近隣探索におけるIPv6拡張ヘッダに起因するセキュリティ問題
draft-gont-6man-nd-extension-headers
近隣探索の際に、拡張ヘッダの利用について明確には考慮されていないため、実装間の不整合、SAVI、RA Guardなどの機能での不具合や、セキュリティ上の問題が発生する可能性がある、という指摘です。解決策として、近隣探索時の拡張ヘッダを禁止するなどが提案されています。会場より、近隣探索のセキュリティ機構であるSEND(SEcureNeighbor Discovery)では、証明書のやりとりのために拡張ヘッダの一つである断片化ヘッダが多用される、との指摘がありました。SENDに関する考察を含めて、ドラフトの詳細化を実施し、メーリングリストで議論を継続することとなIPv6ノード、および、通信相手が複数のアドレスを持つ場合に、通信に使うアドレスペアを選択する仕様である、RFC3484に関する改版提案です。RFC3484の改訂については、残りの課題である、サイトローカルアドレスなどの廃止されたアドレス空間の扱い、プライバシー拡張アドレスの扱い、アドレスの有効期限の扱いについて議論を実施、その結果を反映したドラフトでWGラストコールを実施することになりました。アドレス選択のDHCPオプションについては、dhc WGにレビューを依頼、その後にWGラストコールを実施することになりました。
3 . RFC3484 IPv6デフォルトアドレス選択の更新
draft-ietf-6man-rfc3484-revise
draft-ietf-6man-addr-select-opt
IPv6ノード、および、通信相手が複数のアドレスを持つ場合に、通信に使うアドレスペアを選択する仕様である、RFC3484に関する改版提案です。RFC3484の改訂については、残りの課題である、サイトローカルアドレスなどの廃止されたアドレス空間の扱い、プライバシー拡張アドレスの扱い、アドレスの有効期限の扱いについて議論を実施、その結果を反映したドラフトでWGラストコールを実施することになりました。アドレス選択のDHCPオプションについては、dhc WGにレビューを依頼、その後にWGラストコールを実施することになりました。

今回のWGでは、IPv6の各種機能(近隣探索、近隣到達不可能解析など)に関する実利用上の問題点の指摘と、解決策の提案が多く実施されました。実際に、IPv6が利用され始めていることを受けてのことだと思われます。

□ 6man WG
https://datatracker.ietf.org/wg/6man/
□ 第81回IETF 6man WGのアジェンダ
http://www.ietf.org/proceedings/81/agenda/6man.html

v6ops WG(IPv6 Operations WG)

v6opsは、IPv6に関するオペレーション技術、および、共存・移行技術に関する議論を実施するWGです。今回も、合計24件と議題が非常に多く、当初は7月26日(火)午前、28日(木)午後2コマの計3コマで議論する予定でしたが、直前になって29日(金)に2コマ追加され、合計5コマでの実施となりました。参加者も非常に多く、26日(火)、28日(木)のセッションではそれぞれ200名程度が参加していたと思います。

前回、チェアより、ミーティング内でアジェンダとして取り上げる議題を厳選する提案が挙がっていましたが、結局のところ、今回は提案議題をほぼすべて議論するような形になっていたようです。議論を有効にするために、v6opsミーティング自体とは別に、提案内容について個別にチェアに相談する時間・部屋が用意されていました。実際に幾人かが相談に行っていました。

画面:Jabber、WebEx、Meetecho などを使ってリモート参加ができるWG
Jabber、WebEx、Meetechoなどを使ってリモート参加ができるWGもあります

今回、当初のアジェンダは、

  1. World IPv6 Day セッション
  2. Old Business セッション
  3. New Ideas セッション

という形で構成されていましたが、議論時間を多く取るために、追加された29日(金)のセッションにアイテムを回す調整が実施されました。「28日(木)のセッションでの発表の場合には1人3分の持ち時間だが、29日(金)に回ればより多くの時間を割り当てる」という形での募集で、アジェンダの順番がいくつか入れ替わりました。しかしながら実際のところ、29日(金)のv6opsセッションは参加者も半減し、それほど議論も活発には実施されませんでした。

以下では、議論されたいくつかのトピックについて、簡単に紹介します。

1) World IPv6 Day セッション
「World IPv6 Day」は2011年6月8日(水)に実施されたイベントで、この日に多くのWebサイトがIPv6化されました。終了後、元通りIPv4のみに戻したサイトがほとんどでしたが、いくつかのサイトは継続してIPv6対応をしています。
今回の会議におけるv6opsの当セッションでは、実際にIPv6対応した組織からの状況報告や、World IPv6 Day当日のトラフィックなどの様子を観測した結果が報告されました。自社のサーバをIPv6対応にしたマイクロソフト社では、実際にIPv6でアクセスしてきたユーザーは非常に少なかったこと(0.5%程度)、IPv6によるアクセスの9割方はネイティブIPv6でのアクセスであったこと、7%のユーザーがWindows XPを利用していることなどが報告されました。特に、Windows XPのユーザーが多かったことは、Windows XPでは意識的にインストールしないとIPv6に対応しないため、驚くべき数値だとのコメントがありました。概ね問題点はなかったとのことですが、IPv6ではIPアドレスによる位置情報検索サービスがサードパーティーより提供されていないことを課題の一つとして挙げていました。その他、RIPE NCC、Hurricane Electric社、Comcast社などが報告を実施しています。このセッションとは別に、25日(月)夜に実施されたテクニカルプレナリでもWorldIPv6 Dayセッションが開催されており、こちらでは、Google社、Facebook社、Yahoo!社などが報告を実施しています。
報告の後、関連議題として、以下が議論されました。これらは、継続的に議論になっているアイテムでもあります。
2) World IPv6 Day参加招集(World IPv6 Day Call to Arms)について
draft-chown-v6ops-call-to-arms
World IPv6 Dayに向けて有用な内容でしたが、終了後、RFC化は必要ないと著者が判断したようです。内容を他のドラフトにて取り込むとのことです。
3) Happy Eyeballs:デュアルスタックホストにおいて通信を成功させるために
draft-ietf-v6ops-happy-eyeballs
Happy Eyeballsの仕様について、メーリングリストの議論を反映し、アルゴリズムの詳細を削除、要求条件に絞ったとの著者からの報告があり、賛同の意見がありました。Happy Eyeballsに類似する仕組みは、現在、ChromeやFirefoxの最新版に実装されているそうです。
4) DNSホワイトリストによるIPv6 AAAAの返答
draft-ietf-v6ops-v6-aaaa-whitelisting-implications
IESGからのコメントを受け、改版したことに対する著者からの意見照会がありました。DNSのホワイトリスティングは推奨すべきでない、という立場から、このドラフトをRFC化すべきかどうかも議論になりました。改版後、dnsopWGに意見照会をする予定です。
5) 6to4を「歴史的」ステータスに変更する提案
draft-ietf-v6ops-6to4-to-historic
6to4を廃止したときの影響について、議論がありました。製品に関してはあまりインパクトはないこと、廃止に関する広告の範囲(6to4リレーのオペレーター向けなど)について、議論がありました。
6) IPv6のカスタマーエッジルータに対する高度な要件
draft-ietf-v6ops-ipv6-cpe-router-bis
RFC化されたカスタマーエッジルータに対する要件として、追加すべき高度な要件に関する議論です。PCP(PortContorol Protocol)を、要件として取り込むことに関する議論や、今回から、新たに組織されたhomenet WGとのすみ分けが主な議論になりました。homenet WGの様子を見なら、議論を進めることになっています。
□ v6ops WG
http://datatracker.ietf.org/wg/v6ops/charter/
□ 第81回IETF v6ops WGのアジェンダ
http://www.ietf.org/proceedings/81/agenda/v6ops.html

(NTT情報流通プラットフォーム研究所 藤崎智宏)

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