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ニュースレターNo.51/2012年8月発行

第83回IEFT報告
全体会議報告

第83回IETF Meetingは2012年3月25日(日)から30日(金)の間、フランスのパリにて開催されました。パリといえばエッフェル塔に凱旋門、シャンゼリゼ通りやお洒落なカフェを想像されると思います。しかし、会場は中心街より西に外れた国際会議場です。IETF参加者の多くは近くの高級ホテルに宿泊していました。高級ホテルで安全かと思いきや、客室から現金、iPadなど盗難の報告が相次ぎ、IETFセクレタリとホテル側が協議する事態となりました。街中でも地下鉄で財布を取られたとか物売りが来るとか、優雅な街というより治安の悪さを印象づけられました。

さて、ここでは「IETF Operation and Administration Plenary」および「Technical Plenary」の二つの全体会合および気になったトピックについて、感想を交えて報告します。

IETF Operation and Administration Plenary

3月28日に開かれた「IETF Operation and Administration Plenary」では、各種報告、アナウンスがありました。

IETF chairレポートでは、参加者の内訳やRFC、Internet-Draft(I-D)など前回のIETF Meetingからの差分の紹介がありました。今回の参加者は56の国と地域から合計1,318人でした。参加者の多い国から米国、中国、フランス、日本の順でした。ただし中国は約150人、日本は年度末にかかったことから約80人とかなり少ない数でした。参加者の順位で日本が4位まで下がったのは、2011年3月の、東日本大震災発生直後に開催された第80回会合以来です。

前回のミーティングから三つの新しいワーキンググループ(WG)ができ、五つのWGがクローズされました。576件の新規のI-Dが書かれ、1,144件のI-Dがアップデートされました。またRFCは115件が発行されました。その内訳は64件がスタンダードトラック、5件がBCP(Best Current Practice)、40件がインフォメーショナル、6件がエクスペリメンタルでした。

IAOCのレポートでは、今回のパリは参加人数が増え、収支が改善されたことが報告されました。前回の台北は212人予定より参加者が少なく、収支としては苦しかったようです。それでも2011年はすべてのミーティングにホスト、スポンサーがつき、なんとかやりくりできたそうです。今回のミーティングもなかなかホストが決まらず、本当に直前にCisco社が名乗りを挙げたそうです。それから、今後の3年間の計画を立てることがほぼできたということで、まだ開催地が決まっていなかったところの発表がありました。IETF89(2014年3月)はイギリスのロンドン、IETF90(2014年7月)はカナダのトロント、IETF91(2014年11月)米国のハワイとなるそうです。また、IETF94(2015年11月)は横浜に決まり、WIDEプロジェクトがホストになると発表されました。「日本は大好きだし、村井純先生と仲間たちだから楽しみだ」という発言もありました。

それから新しい試みとしてNANOGの“Beer and Gear” イベントにならって、“Bits and Bites” イベントをやってみようという話が出ています。飲み物とおつまみを出して、情報交換に役立てたり人の輪を広げようということだそうです。

また、ISOCが20周年を迎え、記念イベントとしてISOC's 20th Anniversary:Global INET 2012 を、2012年4月22日から24日にかけてスイスのジュネーブで開催することが発表されました。「会場はITU-Tのすぐ近くだけど、仲良くやっているから大丈夫」と笑わせていました。

NOCレポートでは、今回のネットワークはISPから1Gbpsの回線を2本引き、会場およびホテルもすべて1Gbpsの線で構成されたそうです。また、ホテルにもIETFの無線LANを持ってこようと、いろいろと調整しながら引き込みました。ただ、ホテルのネットワークがまともに動くようになったのは、火曜の夜あたりでした。無線アクセスポイントの調整が難しかったそうです。

画面:IETF初心者向け心得
● 老子の「道」が名前の由来となっている、IETF 初心者向けの心得をまとめた「Tao」

Technical Plenary

3月26日(月)に開催された「Technical Plenary」では報告として、IRTF chairレポート、IAB chairレポート、RSOC & RSEレポート、World IPv6 Launchのアナウンス、そしてテクニカルセッションがありました。

IRTF chairレポートでは、Lars Eggert氏からIRTFの報告として各WGの活動紹介がありました。現在、活発に活動しているのは、ASRG (Anti-Spam Research Group)、CFRG (Crypto Forum RG)、DTNRG (Delay-Tolerant Networking RG)、ICCRG(Internet Congestion Control RG)、NMRG(Network Management RG)、SAMRG (Scalable Adaptive Multicast RG)と今回初めてミーティングを開くNCRG (Network Complexity RG)です。継続的に活動を続けているグループとし ては、HIPRG、MOBOPTS (IP Mobility Optimizations RG)、P2PRG (Peer-to-Peer RG)、RRG (Routing RG)があります。 VNRG (Virtual Network RG)は活動を中止します。

IAB chairレポートでは、Bernard Aboba氏よりIABの活動の紹介がありました。今回より新たにJari Arkko氏、Marc Blanchet氏、Mary Barnes氏の3名が加わりました。入れ替わりにOlaf Kolkman氏、Andrei Robachevsky氏、Dow Street氏が退任しました。さらにIABで執筆しているRFCの状況の報告とリエゾンの報告がありました。

それから、ISOCのLeslie Daigle氏よりWorld IPv6 Launchの説明がありました。この目的はIPv6普及のための鶏-卵問題を打ち破るきっかけであり、通常のビジネスとしてIPv6を扱っていく、しかもIPv6をデフォルトにしていくというものだそうです。昨年のWorld IPv6 dayは1日だけのイベントだったのに対し、World IPv6 Launchは2012年6月6日よりずっとIPv6サービスを始める日ということで、キックオフだと表現されています。今回の参加対象とされているのは、アクセスネットワーク、ホームルータ、Webサイトということです。詳細は次のURLを参考にしてください。

http://www.worldipv6launch.org/
http://www.attn.jp/worldipv6launch/(日本語)

今回のテクニカルプレナリのテーマは、“Implementation Challenges with Browser Security” で、モデレーターはHannes Tschofenig氏でした。背景としては、現在のインターネットには多くのセキュリティ問題があるが、今回はWebにフォーカスを絞って議論するということでした。「WebはDNS、TLS、HTTP、URIs、HTML、XML/JSON、JavaScriptなど多くの技術要素が組み合わさって実現している。それらはOS、デバイス、ブラウザというさまざまなところで実装されているが、どうセキュリティを確保していくのか」という質問がパネラーに出されました。

最初にRTFMのEric Rescorla氏は、TLSは大丈夫かという話をしました。「httpsならTLS/SSLで暗号化されるが、99%のトラフィックはhttpのまま暗号化されていない。httpsを要求するのは約1%である。多くの人たちはhttp://を使っている。他にもセキュリティを確保する方法があるか検討したが、自動的にhttpをhttpsにする仕組みを入れたりしながら、どこでもTLSを使うのがよい」という話でした。Mozilla FoundationのThomas Lowenthal氏は“Cryptography Infrastructure”というタイトルで、「暗号化は安全にできるし、650あるCA局はすべての人から信用されているが、時々CA局はミスをする。そのため実装時にはいろいろと考慮しないといけないことが増えている。信用モデルによって制限を加えるといったようなことを考えないといけない」、といった話がされました。Casaba Security社のChris Weber氏はWebの新たな機能とWebブラウザの実装、それに標準化という関係の中で複合した問題が起きることを指摘しました。Google社のIan Fette氏は先日RFC6455として発行されたWebSocketのセキュリティをどのように実現しているかを説明しました。PayPal社のJeff Hodges氏は、Webブラウザの実装について話をしました。「多くの種類のブラウザがあるが、スタンダードはきちんと決まっている。また、セキュリティの枠組みも実装されていく。これらは安定性の競争である。従って世界の終わりではない」と説明しました。それから、オープンマイクでモバイル端末のセキュリティは大丈夫だろうかといったコメントが出ていました。

今回のテーマもアプリケーションエリアを中心にした話題であり、従来のIETFの中心と言われていた、インターネットエリアやルーティングエリアの人たちの興味とずれてきています。しかし、多くの人たちにとってインターネットの入り口は今やブラウザであり、そのセキュリティ対策を総合的に考えていこうというのはIETFとしてのメッセージとして非常にタイムリーだったと思います。

次回のIETF Meetingは、2012年7月29日(日)から8月3日(金)にかけてカナダのバンクーバーにて開催されます。

(アラクサラネットワークス株式会社 新善文)

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