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ニュースレターNo.51/2012年8月発行

ARIN XXIXミーティングレポート

ARIN XXIX(ARIN 29)は2012年4月23日(月)~25日(水)、カナダのブリティッシュコロンビア州にある都市、バンクーバーで開催されました。

会場であったフォーシーズンズバンクーバーホテルは、ダウンタウンエリアの目抜き通りであるRobson Streetから徒歩圏内で街の中心地にあり、参加者が街の雰囲気を味わいながらもカンファレンスに参加できるよい立地でした。ちょうど季節柄、街のあちこちには桜が咲いていましたが、この桜は神戸市と横浜市から寄贈されたものだそうです。

春のARINミーティングは単独開催のイベントであり、基本的にアドレスポリシーの議論が中心です。テクニカルなセッションは、ほとんどプログラムには含まれていません。そのためか、オペレーターの参加はほとんどなく、参加者は約100名前後と、APNICやRIPE NCCなど古くからある3RIRのカンファレンスの中では割と小規模なものとなっています。

今回のミーティングの特徴

ARIN XXIXは、「自分たちが持つIPv4アドレス在庫を、他のRIR地域とどの程度分け合うべきか」、ARIN地域の姿勢を確認したミーティングだったと言えそうです。

実際、ARINにはまだ4.87× /8ブロックもの未割り振りなIPv4アドレスブロックが残っており、五つのRIRの中で最も多くの在庫を管理しています。歴史的PIアドレスも含めると、流動化する可能性のあるアドレス量はさらに多いと考えられています。

一方、既に昨年2011年4月に在庫が枯渇したAPNIC地域とは、利用可能なIPv4アドレス空間の大きさに格差が生じており、また、RIPE 地域も2012年の6月には在庫が枯渇することが予測されています。

インターネット全体を機能させるために、IPv4のアドレス在庫がARIN地域のみに偏ってしまうことなく、他のRIR地域にも必要とされるIPv4アドレスを行き渡らせることを、ARIN地域がどの程度認めるのか、その姿勢が注目されていました。

このように、ARIN地域はIPv4アドレス在庫の枯渇予測時期 (2013年6月)が少し先であることから、全体としては、IPv4アドレス管理に関する議論もまだまだ活発です。APNIC地域にも影響を及ぼす具体的な議論は、次にご紹介します。

写真:バンクーバーの街角
● バンクーバーの街角で

APNIC地域の立場から着目していた議論

ARIN地域は、未割り振りなIPv4アドレスだけではなく、分配済みのIPv4アドレスについても、五つのRIRにおいて最も多くのアドレスを管理しています。これはpotaroo※1(APNIC のChief Scientist、Geoff Huston氏が公開している統計情報)によると、合計で約84× /8ブロックに相当し、APNIC地域よりも30× /8ブロックほど多い計算になります。

今回のミーティングで、APNIC地域の立場から最も着目していた議論は、ARIN地域が他のRIRとの間で、IPアドレスの移転を認めることになるのか、というものでした。

また、あらかじめ議題には上がっていませんでしたが、オープンマイクの中で、「ARINに返却されたアドレスをIANAに返却するべきか、返却せずARINの在庫として保有すべきか」という議論も行われました。

1点目は「事業者自身による再配分」、2点目は「IANAへの返却を経て、IANAを介した再配分」という対応の違いはあります。しかし、どちらも、ARIN地域における余剰IPv4アドレス空間を他のRIR地域に配分するという点では共通しています。

RIR間におけるIPv4アドレスの移転ポリシー

この提案については、APNICからは事務局長のPaul Wilson氏もミーティングに参加し、ARIN地域がどのような姿勢を取るのか着目していました。

APNIC地域では既に在庫が枯渇していながらも、歴史的経緯を持つPIアドレスが限られているため、分配済みのIPアドレスからの余剰分を、必要としている事業者に再配分することが難しい状況です。

そこで、IPv4アドレスの在庫枯渇後に、地域内の事業者がまとまった単位のIPv4アドレスを確保する手段として、ARIN地域との移転が大きな供給源になることが期待されています。

ARIN-2011-1: ARIN Inter-RIR Transfers
https://www.arin.net/policy/proposals/2011_1.html

  • ARINは、ARINポリシーに相当する、アドレスの需要確認を行うポリシーを適用しているRIRとの移転を認める
  • 最小単位は/24とし、移転元は移転元RIR、移転先は移転先RIRの移転ポリシーに従う

ARIN XXIXではこれまでの流れを踏まえて(詳しくは文末の「補足:RIR間におけるIPv4アドレス移転ポリシーの経緯」を参照)、施行判断前の最終確認として、Consultation Timeという形を取り、施行に伴う懸念がないか、コミュニティの意見を聴く時間を設けました。挙手によるコンセンサス確認は前回実施済みとして、今回は行いませんでした。ここで懸念が表明されなければ、前回得られたコンセンサスがそのまま有効となりますが、強い懸念が表明された場合は、コンセンサスの結果が見直しとなる可能性も残されていました。

結果としては「ARIN地域のIPv4アドレス在庫を他の地域にも配分できるようにするべき」との意見が中心であり、反対意見は表明されませんでしたので、ARIN Boardが本提案を否決する材料はなかったと考えてよさそうです。

APNICでは、ARINも含めた他のRIR地域との移転を2011年8月から認めているので、ARINで決議されればAPNICでの施行が決定します。

ARINへ返却されたIPv4アドレスのIANAへの返却

この議論は、グローバルポリシー(2011-01)が施行されたことを受け、オープンマイクで始まりました。

このグローバルポリシーは、RIRからIANAに返却されたIPv4アドレスを、各RIRに再度分配する方法を定義したものです。したがって、ARINへ返却された歴史的PIアドレスをIANAに返却することは、ARINのIPv4アドレス在庫を他のRIR地域に再配分することにつながります。

今回は、ARINに返却されたアドレスをARINで管理するのではなく、IANAへ返却することが、ARIN地域にとって適切であるのかということが争点となりました。

歴史的PIアドレス空間を中心としたIPv4アドレスの多くはARIN地域にあることから、ARINも他のRIRと足並みを揃えることは、本グローバルポリシーが適切に機能する上で重要な要素となってきます。

なお、APNIC地域では、APNICへ返却された歴史的PIアドレスはIANAへ返却することを、APNIC EC(理事会)で決議しています。

IANAへの返却については、各RIRの任意の判断に委ねられるべきであり、もう少し対応を吟味した方がよいとの意見もある一方、APNICの事務局長からは、歴史的経緯を持つPIアドレスは、RIR管理下のものではなくIANA管理下に属するとの整理を、RIR間で行ったはずであるという補足もあり、これを踏まえての議論となりました。

全体としては、IANAへの返却を支持する意見が多くあり、返却しない場合には他のRIRを納得させるだけの理由は必要となると考えられますが、一部参加者からは返却に対して懸念を示す意見も引き続きあり、今後の判断はARIN Boardに委ねられています。

ポリシー提案の結果

上記で紹介した2点の議論は、参加者へのコンセンサスの確認はなく、対応の判断はポリシー提案同様、ARIN Boardに委ねられます。

一方、コンセンサスの確認を実施し、議論された提案6点のうち、コンセンサスが得られた提案は以下の2点です。IPv4アドレスの移転に関する提案に加え、AS番号の移転についてもコンセンサスが得られました。

いずれの提案も、APNIC地域に直接の影響はありません。AS番号の移転はARIN地域に閉じた話であり、APNIC地域では提案されていない状況です。

  • ARIN-2012-1:Clarifying requirements for IPv4 transfers
    ARIN地域における移転要件の明確化。24ヶ月分の需要までの移転が認められる。(参考:APNICでは12ヶ月分)
  • ARIN-2012-3: ASN Transfers
    ARINがAS番号の移転も認めることを求める提案。上流が4バイトASに対応できない場合に備えたいとの意見が支持の主な理由。一方、AS番号はネットワークの顔であり、簡単に移転できるべきではない、4バイトへの移行を促進するべきとの反対意見も表明されていた。

その他のトピック

ここまでで取り上げたもの以外の、今回のミーティングで目立ったトピックをご紹介します。

  • Shared Address
    “100.64.0.0/10” のShared Address がRFC化され ※2、IANAでリザーブされたことがIETF Updateの中で発表されました(RFC6598)。このアドレスの用途としては、CGN(Carrier Grade NAT)が挙げられます。
  • ITRとインターネットガバナンス
    政府間の国際法となる“International Telecommucations Treaty(ITR)”について、世界的なITUのイベントにて協議されることが報告されました。

不適切な決議がされると現在のインターネットのあり方に悪影響を及ぼす懸念があるとして、ARINがコミュニティにその影響を十分に周知し、コミュニティとしても動向を把握しておくことを求める意見が参加者から表明されました。

このITRは、成立した場合はARIN地域に限らず、世界的に適用されるものです。ITRが対象とするものの中には、アドレス管理などが含まれる可能性もあることから、その場に参加していたAPNICスタッフも、レジストリが主導的な対応を取る必要性を強調していました。国内においても、情報発信を行うことが重要なテーマであると思います。

  • IPv4アドレスブローカーの参加
    今回のミーティングではIPv4アドレスのブローカーの参加も目立ち、私が認識していただけでも少なくとも4社が参加していました。このうちの半数はパテントビジネスにも関わっている法律事務所で、ミーティングの参加者やRIRスタッフと意見交換を行いながら、ポリシー議論の動向をとてもよく把握しているようでした。

テーマごとに分かれ「IPv4移転ポリシーのあり方」について議論したランチテーブルには、こういったブローカーも参加し、ARIN地域の他の参加者と、適切な移転要件について議論を行っていたことは興味深い状況でした。

なお、APNICの事務局長はこれらのブローカーと個別に話をし、APNICのアドレスポリシーに従うことに同意する前提で、ブローカーの情報をAPNICのWebサイトで紹介する対応を進めていることを今回発表していました。これは分配済みアドレスを必要な人に行き渡らせるために、移転元と移転先を仲介する役割が必要であることを認めた上での対応です。

写真:アドレスポリシー議論中
● アドレスポリシー議論の様子

まとめ

今回のミーティングでは、ARIN地域がそのIPv4アドレス在庫をどう他の地域に配分していくのかという点において、一部根強い懸念も継続しており課題は残っているものの、ARIN地域でRIR間におけるIPv4アドレス移転ポリシーがコンセンサスを得られたという観点からは、全体としては他の地域に配分する姿勢は示されたと言えそうです。

前述した通り、ここでご紹介した議論およびコンセンサスの得られた提案の施行については、今後ARIN Boardが判断することになります。本提案の施行が決定した場合、APNIC管理下の事業者は、ARIN管理下の事業者とIPv4アドレスの移転を行うことが可能となります。

なお日本においては、こういった流れを踏まえて、現在は国内に閉じているIPv4アドレスの移転の範囲を海外にも拡張する必要性や、JPNICへ返却されたアドレスの管理方法について、2012年6月19日(火)に開催するJPNICオープンポリシーミーティング(JPOPM)で議論する予定です。

[参考情報]
ARIN XXIX Meeting
https://www.arin.net/participate/meetings/reports/ARIN_XXIX/

補足:RIR間におけるIPv4アドレス移転ポリシーの経緯

RIR間におけるIPv4アドレスの移転については、ARIN地域内で必要性を感じるフォーラムのメンバーもおり、2011年の初めから提案として議論されていました。その後、他のRIR地域との移転を認めることへの懸念も根強く、継続して議論が行われている状況でした。

特にAPNICとの移転については、APNIC地域では移転時のアドレスの利用確認を行うポリシーがないことから、ARIN地域のアドレスの流動化が進むことについて懸念が示されてきました。APNICではその後、2011年11月に移転時のアドレスの利用確認を行うポリシーを施行した結果、同年秋のARINミーティングでは、RIR間の移転を認めることでコンセンサスが得られました。

しかし、オンサイトのミーティングで議論された内容に大幅な見直しが加えられた提案が、メーリングリストでの最終確認に諮られていることを理由とした懸念が、一部のコミュニティメンバーから示されました。これに対してARINBoardとしては、コンセンサスの得られた本ポリシーの施行判断は保留とし、ARIN XXIXにて、コミュニティの意見をオンサイトで最終確認をする判断を下しました。

このような状況から、APNIC 事務局としては、懸念を示し続ける一部のフォーラムメンバーの根底には、他の地域にARIN地域のIPv4アドレスを譲りたくないという心理も働いており、議論の状況によってはどのような結論に転ぶかわからないとの心配もあったようです。

写真:次回開催予告
● 次回のARIN XXX は、米国テキサス州のダラスで開催されます

(JPNIC IP事業部 奥谷泉)


※1 IPv4 Address Report
http://www.potaroo.net/tools/ipv4/
※2 IANA-Reserved IPv4 Prefi x for Shared Address Space
http://www.ietf.org/rfc/rfc6598.txt

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