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ニュースレターNo.52/2012年11月発行

第84回IETF報告
全体会議報告

第84回IETF meetingは2012年7月29日(日)から8月3日(金)の間、カナダのバンクーバーにて開催されました。ちょうど日本は夏休みシーズン、行き帰りの飛行機は語学研修に向かう高校生などの団体がいて満席でした。この週、日本では30度をはるかに超える猛暑の週だったようですが、バンクーバーは最低気温15度程度、最高気温は20~25度、湿度40~50%。でも直射日光が当たるところは30度近くになるという天気でした。ちょっと太陽はぎらぎらしているけど、過ごしやすい感じです。バンクーバーは日本からわりと近く治安も安定していて、こういう気候のため短期留学先としても人気があるのでしょう。日本に戻ってきてから、暑い暑いと言っていると先週はもっと暑かったというお返事を複数いただいてしまいました。

さて、ここでは「IETF Operation and Administration Plenary」および「Technical Plenary」の二つの全体会合について、感想を交えて報告します。

IETF Operation and Administration Plenary

8月1日(水)に開かれた「IETF Operation and Administration Plenary」では、各種報告、アナウンスがありました。

冒頭で7月27日(金)、IETFのWebサーバが攻撃を受けたと報告がありました。その攻撃がIPv6経由だったということで、IPv6が広がり始めたかと会場内は盛り上がっていました。

IETF chairレポートでは、参加者の内訳やRFC、Internet-Draft(I-D)など前回のIETF meetingからの差分の紹介がありました。今回の参加者は51の国と地域から合計1,174人でした。参加者の多い方から米国、中国、日本、カナダ、フランスの順でした。

会議参加者の集計を行うブルーシートに、前回まではメールアドレスを書かせていましたが、今回から所属組織を書く形に変更となりました。

また今回より新たに、“Bits-N-Bites Event”が8月2日(木)の19時から21時まで開催されました。これはNANOGで行われている“Beer and Gear”イベントを参考に出展者のブースから情報を得たり、参加者同士で議論したりする場を作ろうというものです。スポンサーブースでは各組織の紹介やグッズが配られていました。中にはレゴブロックが置いてあり、遊んでくださいというところもありました。多くの人が参加し、盛況だったと思います。

前回のmeetingから六つの新しいワーキンググループができ、四つのワーキンググループがクローズされました。576件の新規のI-Dが書かれ、1,144件のI-Dがアップデートされました。またRFCは140件が発行されました。その内訳は81件がスタンダードトラック、4件がBCP、41件がインフォメーショナル、11件がエクスペリメンタルでした。

IAOC reportではIETFの会計状態の報告がありました。前回のIETF meetingの採算状況としては、Cisco社がスポンサーになってくれたことにより、若干の黒字となりました。次回は米国のアトランタ(スポンサーはNational Cable & Telecommunications Association)、その次のIETF 86は同じく米国のオーランド(スポンサーはComcast社)です。

IETF trust chairのBob Hinden氏の報告で、現在抱えている問題としては、IETFが米国の裁判所からの召喚令状を受け取っているそうです。

NOCレポートでは、会議会場であるハイアットホテルにはすべて1Gbpsのネットワークを構築し、ホテルの部屋にも引き込みました。会議場は無線LANを使えるようにしました。トラフィック情報のグラフによる報告もありました。トラフィック量としてはピークで300Mbpsを少し超えるぐらい、無線ノードの数では802.11aと802.11gが同程度ぐらいになっているように見えました。

それから2012 J.Postelアワードの発表と表彰がありました。今回の受賞者は、Pierre Ouedraogo氏でした。彼はアフリカ地域のインターネットを創立したメンバーでAfriNIC、AFNOG、AfCERT、AfriCANNを作り、活動をしました。

最後に、この7月12日(木)に亡くなったRL “Bob” Morgan氏を追悼しました。

写真:Bits-N-Bites Eventの様子
● Bits-N-Bites Eventの様子

Technical Plenary

7月30日(月)に開催された「Technical Plenary」では報告として、IRTF chairレポート、IAB chairレポート、RSEレポート、テクニカルセッションがありました。

IRTF chairレポートでは、Lars Eggert氏からIRTFの報告として各ワーキンググループの活動紹介がありました。現在、活発に活動しているのはグループとして次の四つのグループがあります。このうちICNRGは、今回から新しく加わったグループです。

  • CFRG (Crypto Forum RG)
  • DTNRG (Delay-Tolerant Networking RG)
  • ICCRG (Internet Congestion Control RG)
  • ICNRG (Information Centric Networking RG)

継続的に活動を続けているグループとしては、次の6グループがあります。

  • ASRG (Anti-Spam RG)
  • NCRG (Network Complexity RG)
  • NMRG (Network Management RG)
  • P2PRG (Peer-to-Peer RG)
  • RRG (Routing RG)
  • SAMRG (Scalable Adaptive Multicast RG)

また、次の2グループは活動を中止しました。

  • HIPRG (Host Identity Protocol RG)
  • MOBOPTS (IP Mobility Optimizations RG)

そして新たに準備中のRGとして、次の二つがあります。

  • SDNRG (Software Defined Networking RG)
  • EERG (Energy Efficiency RG)

IAB chairレポートでは、Bernard Aboba氏よりIABの活動紹介がありました。うち、ワークショップとしての活動としては、IETF期間中に開催される“Congestion Control for Interactive Real-Time Communication”の紹介があり、ここでIRTFのICCRG sessionが行われるということでした。またIABで行った議論の成果として“IPv6 privacy survey”が出されたり、他に“T-mobile IPv6 Deployment”が2012年5月に出たそうです。また、RFC発行に関する二つのRFC、

  • RFC 6548: Independent Submission Editor Model
  • RFC 6635: RFC Editor Model (Version 2)

も発行したとのことです。

RSE (RFC Series Editor)レポートでは、RSEの役割としてRFC Formatの決定、Style ManualのRFC化、Style Manual Web pageとRFC Editor websiteの管理があると紹介がありました。

今回のテクニカルセッションのテーマは、“Software Defined Networking(SDN)”でした。まず、はじめにDavid Ward氏が“Programmatic Internet”というタイトルで発表しました。SDNの流れは運用性向上のためにCLI(Command Line Interface)からの脱却をはかろうというものです。 マルチレイヤネットワークの仮想化とビジュアル化や高度な管理のためといった点で、SDNが注目されてきています。SDNに対応するハードウェアは揃ってきています。しかし、現状では、

  • トポロジー、使用率、ロスなどがわからない
  • ノードケーパビリティ、資源発見機構が無い

など、問題が多いと指摘しました。

それからSDNに関係している団体は、IETFだけでなく、W3C、IEEE、ONF、ITU、Open Stackなど多くの団体があると紹介がありました。

SDNは、技術的にはこれまでの階層的なAPIモデルから組み換え可能なモジュール型のAPIになっています。応用としては、WANのネットワーク管理やマルチテナントデータセンターといったところで利用されるだろう、とSDNが注目されていることを紹介しました。

次にNick Deamster氏が“The Past, Present, and Future of SDN”と題して発表しました。ここでは、一般的なSDNではなくOpenFlowの説明をした後、さらにSDNには大きな可能性があると主張しました。この方はOpenFlowをさらに拡張する研究をしているそうです。

写真:会場の近くのバラード入江
● 会場の近くのバラード入江

最後にTed Hardie氏が、“SDN units and evolution”と題して、通信の発展と技術の方向性、それとSDNへの期待の分析を発表しました。恐竜やキリンの進化を例に使って、技術の進化の過程を面白おかしく紹介が中心となりました。

テクニカルセッションは結論を出す場ではなく、注目するべき話題を取り上げるところです。そこで今回もSDNをどう考えるかというより、SDNが出てきた背景と現状の紹介でした。


次回の第85回IETF meetingは、2012年11月4日(日)から11月9日(金)にかけて米国、アトランタにて開催されます。

写真:今回のIETF会合はGoogle社がホストを務めました
● 今回のIETF会合はGoogle社がホストを務めました

(アラクサラネットワークス株式会社 新善文)

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