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ニュースレターNo.53/2013年3月発行

ARIN XXXレポート

2012年10月24日(水)から26日(金)の2日半にかけて開催された、ARIN XXX (ARIN 30)の開催地は米国テキサス州のダラスでした。ダラスと言うとケネディ元大統領が暗殺された街という以外の具体的なイメージがありませんでしたが、1980年代に建設されたと思われる高層ビルが間隔を置いて建ち並ぶ、ゆったりとした大きな地方都市という印象です。地域経済が潤っているためか街全体が整備されており、全米に12ある連邦準備銀行のうち一つが置かれている金融拠点である他、テキサス・インスツルメンツ社や、米国セブン-イレブン社発祥の地でもあるそうです。

今回のARINミーティングは、NANOGと“back to back”の開催として、NANOG56開催後に同じ会場で開催されました。秋のミーティングは例年この開催形式を取っており、初日であった10月24日(水)の午前中にはNANOGとのジョイント・セッションとして、IPv4アドレス移転ポリシーの状況やITR(International Telecommunication Regulations;国際電気通信規則)※1改正等について発表・ディスカッションが行われました。

ここではジョイント・セッションで取り扱われたテーマ、およびAPNIC地域としても参考になりそうなアドレスポリシーの提案について、ご紹介していきます。

NANOG・ARINジョイントセッションでのテーマ

NANOG56としては最終日、ARIN XXXとしては初日となるこの10月24日のセッションでは、次の3点の発表・パネルディスカッションが行われました。

NANOG 56 Agenda
http://www.nanog.org/meetings/nanog56/agenda.php

  • IPv4アドレス移転ポリシーアップデート
  • CGN(Carrier Grade NAT)のコスト分析
  • インターネットガバナンス アップデート(パネルディスカッション)

これらのテーマから見て取れるように、どちらのミーティングの参加者にとっても共通に興味を持ってもらえる、もしくは知ってもらいたいと考えるテーマを取り扱う構成となっていたように思います。

CGNのコスト分析は、導入するコストメリットをIPv6の導入と比較するという試み自体は興味深い発表でしたが、仮説を重ねている印象も受けました。

発表者の意図としては、どう算出したのかの具体例を提示することで、各組織でそれぞれの事情に応じて応用して、コスト分析ができるということだったようです。興味のある方は発表資料をご覧ください。

TCO of CGN
http://www.nanog.org/meetings/nanog56/abstracts.php?pt=MjAyNSZuYW5vZzU2&nm=nanog56

その他二つの発表・ディスカッションについては少し詳しくご紹介します。

ARIN地域における移転ポリシーの状況

移転ポリシーについては2012年4月のバンクーバーでのミーティングで基本的に整備され、Inter-RIRの移転も今年2012年の6月より施行されましたので、アドレスポリシーとして今回大きな動きはありませんでした。従って、ジョイント・セッションでARIN CEOのJohn Curran氏からの発表は情報として新しいものはなく、その場では会場から質疑もありませんでした。

Update on IPv4 Address Transfers
http://www.nanog.org/meetings/nanog56/abstracts.php?pt=MjAyNCZuYW5vZzU2&nm=nanog56

APNIC地域は移転を受けたい側として、ARINとの移転が可能になったとの情報が8月のAPNIC34では前面に出ていたのに対して、ARIN地域は譲る側になるためか、簡潔に紹介されていたことも印象的です。

しかし、NANOG、ARINへの参加を通し、北米地域では今後のIPv4アドレスの金銭的価値が意識されており、移転についても引き続き強い関心が持たれていると感じました。

移転全般に関する状況

ARIN地域ではまだIPv4アドレスの在庫が枯渇していないにもかかわらず、NANOGの会場でも、枯渇を見越してアドレスの確保や、リースを始めるとよいのでは等の話が参加者の間で上がっていました。ARIN地域内のオペレーターもすでに枯渇後の状況を強く意識しているようです。

また米国内では、一部の業界関係者よりも広い層が関心を寄せているらしく、今後のケースへの参考として参加している弁護士もいました。そして、地域外からは今回初めて中国のNIRであるCNNICのスタッフも3名参加しており、目的は筆者と同様に、北米地域での移転の状況に関する情報収集ということでした。

実際、特定の/8ブロックの移転を取り扱う権利を受けたとしてニュースにも取り上げられたHilco Streambank社は、/8をそのまま/8単位で譲り受けられる組織を会場で探していることが確認されるなど、今回も複数のブローカーがNANOG、ARINともに参加し、参加者との移転の取引に関する情報交換が行われていました。

一方、価格が折り合わないとの話も聞きました。「1アドレス当たり11~15ドルと移転元が提示するケースが多く、RIR地域間の移転ポリシーは施行されたものの、現時点ではまだ情報交換を行っている段階であり、具体的な商談に結びつくまでには至っていない」とブローカーの1人から聞きました。

全体としては、意識はされていながらも実際大きな動きがあるまでには至っていないとの印象です。

ARIN XXXでのポリシー議論

アドレスポリシーの提案、その他のポリシーに関する議論は、従来通り、ARIN単体のセッションの中でのOpen PolicyMeetingで行われました。

Open Discussion議論のうち、APNIC地域としても参考になりそうな動きとしては、新gTLDの申請が受付開始となったことに伴い、新gTLD申請組織へのアドレス割り当てに関する議論がありました。

現在のアドレスポリシーでは、gTLDは「クリティカルインフラストラクチャ」と見なされ、IPv4、IPv6ともにプロバイダーに依存しないPIアドレス割り当てを受けることが認められていますが、申請組織がICANNと契約締結前にシステムを準備する上でアドレスが必要になると思われるため、どの段階で割り当てを求めるべきか、との問題提起がきっかけです。

また、今回議論された5点のポリシー提案の中でも、これに関連する提案として、今後新gTLD申請者からのアドレス申請が増加することを見越し、“ARIN-2012-6: Revising Section 4.4 C/I Reserved Pool Size”という、クリティカルインフラ用のリザーブ空間を/16から/15に拡大することを求める提案が行われ、検討の必要性は確認された上で継続議論となりました。

gTLDレジストリ用の割り当てにクリティカルインフラ用のIPv4アドレス在庫がすべて消費されないよう、IX用のリザーブを別途分ける、という要素が今後新たに盛り込まれる見込みです。

gTLDへのクリティカルインフラとしてのPIアドレス割り当ては、APNIC地域でも認めていますので、参加していたAPNICスタッフと本件について対応を検討する必要性があることをARINミーティングの会場で話し、近日APNICとJPNICスタッフ間の定例ミーティングにて、APNIC地域としての対応について確認・話し合いをする予定です。

また、個人への割り当て情報におけるプライバシー情報を非公開とする提案が棄却されたという点が、APNIC、JPNICでは既に施行している状況と比較すると興味深い結果であると感じます。

その他の提案については、APNIC地域としても着目すべき内容は今回ありませんでしたが、興味のある方は今回議論された提案5点の詳細を、次のページの“Draft Policies”からご確認ください。

Draft Policies & Proposals
https://www.arin.net/policy/proposals/

インターネットガバナンスに関するパネルディスカッション

NANOG・ARINジョイントセッションの最後のアジェンダであったインターネットガバナンスについては、WCIT(World Conference on International Telecommunications; 世界国際電気通信会議)におけるITRの改正について各パネリストがそれぞれの立場からの見解を述べ、会場からも参加者が意見を述べていました。

WCITとは、国際電気通信に関するITUの規則であるITRをインターネットも含めるかたちで見直すべきか、検討が行われるITUの会合です。

Google社のVint Cerf氏、Comcast社やCisco社の方も壇上に上がっており、インターネット業界にも影響を及ぼす可能性のある改定が行われるという印象を、会場の参加者に与えていたのではないかと思います。

日本国内では総務省の説明会にて、直接ITUに意見を述べる方法が案内されており、先日、JPNICも意見提出を行いましたが、このパネルディスカッションではISOCスタッフがパネリストであったこともあり、non-ITUメンバーとしてWCITに向けて意見があれば、ISOCに意見を寄せる方法が大きく取り上げられていました。

パネル全体としては具体的なITRの改正点について議論が行われたというよりも、インターネットに影響を及ぼすような改正は望ましくないということが議論の基調であり、具体的な情報提供というよりも、WCITという動きがあることへの周知セッションという位置付けに近いように感じました。

WCITの会合は、2012年12月3日(月)から14日(金)までアラブ首長国連邦のドバイで開催されます。ARINではインターネットガバナンスに関する情報を取りまとめたWebサイト※2も設けており、ここでWCITに関する情報もまとめて掲載しています。

写真:NANOGミーティングの様子
●NANOGミーティングはとてもカジュアルな雰囲気です

その他

今回NANOG単体のミーティングから出席しましたが、全体としてInter-domain RoutingポリシーにおけるLocal Preferenceの傾向やDNSSECの計測等、研究ベースの発表が多い印象を受けました。ルーティングセキュリティにも関わる技術であるRPKIのemulationに関する発表も行われていました。

個人的に最も興味深かった発表は、基調講演での米国国土安全保障省の方からの発表で、インターネットのセキュリティ、インフラ整備に関わる技術の研究、計測に当たり、特に費用の提供面で、米国政府機関として協力できるところはないか、NANOG参加者に呼びかけていたことです。

インターネットをクリティカルインフラと見なし、サイバーセキュリティにおける対応を重視しているようであり、DNSSEC、RPKI、IPv6対応、Ark(CAIDA)※3、PREDICT※4などを支援できる分野の例として挙げており、政府が資金面でインターネットの基盤インフラやセキュリティ技術を支援する考えがあることを感じました。実際、NANOG参加者の数名はこれにより研究の資金援助を受けていると会場で教えてくれました。

ミーティングを振り返って

ARIN地域における移転の状況は、今後、アジア太平洋地域のアドレス流動化につながる可能性もあるという点で、引き続き動向に注視していきたいところです。

また、新gTLDへのアドレス割り当てについては、今回ARIN地域で、このような議論が行われていることを知り、参考になりました。レジストリごとに割り当ての方針にばらつきが生じないよう、今後調整していくことが必要であると感じました。

そして、今回はNANOGとARINがback to backでの開催であるため、NANOG参加者がARINにも残ることを想定していましたが、NANOGとARINで参加者が基本的に大きく入れ替わっていることが印象的でした。単独ミーティングでも感じたことですが、オペレーションナルな内容も織り交ぜながら、オペレーターも参加しているAPNICや他のRIRフォーラムと比較すると、ARIN地域はアドレスポリシーの議論に関心がある方に特化したフォーラムのようです。

ARIN XXX
https://www.arin.net/participate/meetings/reports/ARIN_XXX/

次回のARINミーティングは、2013年4月21日(日)から24日(水)、中南米の島国バルバドスで開催される予定です。

(JPNICIP事業部 奥谷泉)

※1 国際電気通信規則(ITR)
国際電気通信連合(ITU)が定める、国際電気通信業務の提供、運用、料金決済などに関する業務規則の一つです。
※2 ARIN - INTERNET GOVERNANCE
https://www.arin.net/participate/governance/
※3 研究・計測団体CAIDAによる計測のためのインフラ
http://www.caida.org/projects/ark/
※4 研究・計測に利用できる大規模なデータのリポジトリーとそのプロジェクトの名称
発表資料:What Has the Government Done for You Lately? P.27-29
https://www.nanog.org/meetings/nanog56/presentations/Monday/mon.keynote.maughan.37.pdf

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