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ニュースレターNo.54/2013年7月発行

第86回IETF報告 全体会議報告

第86回IETF Meetingは2013年3月10日(日)から3月15日(金)の間、米国フロリダ州オーランドにて、米国のCATV会社コムキャスト社と、子会社でメディア企業のNBCユニバーサル社のホストで開催されました。

フロリダといえば、1年中暖かでTシャツで過ごせるような印象でいましたが、滞在中は1日の寒暖差が10度くらいあり、朝晩は東京と同じくらい寒く、雨のそぼ降る寒い日もありました。

ディズニーワールドやユニバーサルスタジオもバスなどで行ける距離にあり、合間に楽しんだ人も多いようでした。個人的にはスギ花粉から逃れられると喜んでいたのですが、開催地でも別の種類の花粉が飛んでいたようで、かゆみや鼻炎に悩まされました。

さて、全体報告ですが、前回は「One Plenary」として1回にまとめる試みがされていましたが、今回は従来通りの「IETF Operation and Administration Plenary」と「Technical Plenary」に戻して開催されました。その両Plenaryについて、簡単にご報告します。

Technical Plenary

3月11日(月)の夕方から2時間の枠で開催されました。IRTF、IABチェアレポートに続いて、テクニカルトピック二つ、RFC編集者レポート、新規のIABメンバの紹介、最後に会場から自由に意見や質問を述べるオープンマイクという流れで議事進行がされました。

IRTFチェアレポート

IRTFチェアレポートでは、11ある研究グループの状況報告がありました。

  1. ASRG:Anti-Spam Research Group
  2. CFRG:Crypto Forum Research Group
  3. DTNRG:Delay-Tolerant Networking Research Group
  4. ICCRG:Internet Congestion Control Research Group
  5. ICNRG:Information-Centric Networking Research Group
  6. NCRG:Network Complexity Research Group
  7. NMRG:Network Management Research Group
  8. P2PRG:Peer-to-Peer Research Group
  9. RRG:Routing Research Group
  10. SAMRG:Scalable Adaptive Multicast Research Group
  11. SDNRG:Software-Defined Networking Research Group

P2PRGは活動終了し、ASRGとSAMRGの二つが活動終了に向けて動いていること、NCRG、NMRG、RRGの3グループはあまり活動がなく、CFRG、DTNRG、ICCRG、ICNRG、SDNRGは活発に活動されているとのことです。Applied Networking Research Prize(ANRP)という研究活動に対する賞の受賞者の1人であるGonca Gursun氏のスピーチが、第86回開期中のIRTFオープンミーティングでされることが告知されました。2014年のノミネーションは、2013年の秋に行われるそうです。筆者は今回久しぶりのIETFへの参加で、IRTFの活動に疎かったため、SDN(Software Defined Network)について、IETFの中では調査段階にあるということを新鮮に感じました。

IABチェアレポート

IABチェアレポートでは、第86回開期中に行われるITU-Tの状況について総括する“The World Conference on International Telecommunications(WCIT) 2012: What Happened, What's Next?”の予告や、IAB内の活動の進捗報告の他にIABメンバーの交代の話がありました。

これまでIETFチェアだったRuss Housley氏が次期IABチェアとなります。また、David Kessens氏、Danny McPherson氏、Jon Peterson氏の3人が退任し、新しくEliot Lear氏、Xing Li氏、Andrew Sullivan氏が加わります。また、Bernard Aboba氏、Jari Arkko氏、Marc Blanchet氏、Ross Callon氏、Alissa Cooper氏、Spencer Dawkins氏、Joel Halpern氏、Dave Thaler氏、Hannes Tschofenig氏の9人は、残留です。

既にIABのWebページは更新されており、IABメンバーの経歴などは詳しく紹介されています。

http://www.iab.org/about/iab-members/

IABは、IETF内の監督業務のほかに、対外組織との連携業務など内外に活動をしていますが、取り扱う内容がWCITのようなガバナンスや、プライバシー考慮など高次の内容になり、多様化しているとあらためて感じました。また、IABはwikiなどのWebベースのツールを持っていますが、今後の活動予定に「IPv6 for IAB internal website」というのが挙がっていて、これからIPv6対応するというのも意外でした。

テクニカルトピックI

テクニカルトピックIでは、“The End of Plain Old Telephone Service (POTS)”と題して、前回85回ミーティングのプレナリで計測についての話者の1人だった、FCC(米国連邦通信委員会)チーフテクニカルオフィサーのHenning Schulzrinne氏が今回も登壇しました。

米国では、2018年に電話網(日本でいうところの加入者電話回線網)を引退させることが予定されており、それに向けた整備が行われています。Schulzrinne氏によると、「それはtechnical + economics + policyの問題である」ということで、多面的に現状分析と問題点が話されました。FCCでは、タスクフォースを作って取り組んでいますが、携帯電話とその技術の登場によって固定電話の役割は終焉を迎えても良い状況になっています。3段階の移行が考えられており、「copper → fiber, wired →wireless, circuit → packet」と表現されていました。

しかし、固定電話には悪い部分(品質やビデオ送信などができないことやセキュリティ)もありましたが、良い部分(緊急時の通話や可用性や低コストやグローバルな接続性)もあり、特にユニバーサルな展開の維持などを携帯電話で行うことに課題があるとしています。また、これまでの電話網における番号体系が、IPベースでは変更になることから、番号の問題も取り上げられていました。

IPアドレスは通信先の特定以外にもIDとして利用されたり、名前体系と紐付けられたりといった運用がされています。一方、電話番号には、地域コード(局番)などの管理階層があります。IPアドレスと電話番号それぞれの管理体系を踏まえた移行計画が必要そうです。今回の発表を受けて、IETF内でも電話網の終焉に関係した必要技術の提案が増えていきそうです。

テクニカルトピックII

テクニカルトピックIIでは、IEEE Registration Authority CommitteeチェアのGlenn Parsons氏より、“IEEE 802 Proposed OUI Registry Restructuring”と題して、イーサネット技術で利用される番号であるOrganizationally Unique Identifiers(OUI)の拡張について話がありました。

OUIをはじめとするイーサネット技術で利用される番号は、IEEEのRAC(Registration Authority Committee)が登録管理をしています。昨今のスマートフォンの増加などで物理デバイスが急増したことによるOUIの枯渇問題があり、拡張せざるを得ない状況になってきたことを受けた管理機構の改訂に向けた発表でした。既存のOUIとOUI-36は維持しつつ、MACアドレスなどに使われるEUI-48の管理体系を新設し、MACアドレスとは分離した企業IDを登録すること、新設する企業IDを使った仮想マシンのアドレスを作るようにすることなどが提案されています。2014年には登録開始したい意向のようで、2013年半ばまで意見を募集するそうです。この再編については、draft-ieee-rac-oui-restructuring-00.txtとしてドラフト文書が提出されています。

RFC編集者レポートとオープンマイク

RFC編集者レポートでは、RFC文書のフォーマット変更の準備作業状況報告がありました。現在のRFC文書のフォーマットはRFC2223で規定されていますが、規定への変更要望が、“RFC Series Format Requirements and Future Development”(draft-iab-rfcformatreq-03.txt)というドラフト文書にまとめられています。この文書はまもなくRFCとして発行する承認過程に入るようで、2013年はドキュメントに従った文書フォーマットの変更作業に入るそうです。

会期の始まりだからか、テクニカルトピックの発表が終わると徐々に人が減っていき、最後のオープンマイクの頃にはかなり人が減ってしまい、オープンマイクの質問もそれほどなく終了しました。

写真:Technical plenary 会場の様子
●Technical plenary 会場の様子

IETF Operation and Administration Plenary

こちらは、3月13日(水)の夕方から2時間半の枠で開催されました。従来通り、ホスト企業のプレゼンテーションから始まり、IETFチェア、IAOCチェア、IETFトラストチェア、Nomcomチェアからのレポート、IAOCオープンマイク、IESGオープンマイクという流れで議事進行されました。今回、IETFチェアをはじめ、IAB/IAOC/IESGメンバーの交代の時期で、新しいチェアやメンバーの紹介が合間に議事として行われました。テクニカルプレナリに比べると、発表資料にも面白い画像が入っていたり、くだけた感じで進められました。

IETF チェアレポート

2013年3月でチェアがJari Arkko氏に交代することが決まっているため、Russ Housley氏による最後のチェアレポートとなりました。第86回の参加者は、51の国と地域から1,071人の参加となり、前回から20人ほど減少しています。新規参加者は182人と、全体の1割は新規参加者で新しい参加者層の取り込みがされているようです。国別の参加者数は、1位米国、2位日本、3位中国で、これは前回と変わらない状況でした。

IETFに投稿するドキュメントの記述のために提供されている、xml2rfcツールのバージョンアップの告知がありました。1月からベータテストが開始され、いくつかの発見されたバグ修正版が3月からダウンロード可能となったそうです。古いバージョンのツールも半年間はダウンロード可能ということです。

また、IETFのミーティングのホストについて、シスコ社とジュニパーネットワークス社の両社と「Multi-year Host Agreement」という契約を結び、今後の9年間で開催されるミーティングのうちそれぞれ3回ずつについてホストとなることが決定したそうです。シスコ社はホストのほか、会議システムや無線LANのシステム提供も行うそうです。

IAOCチェア、IAD、IETFトラストチェアレポート

IAOCチェア and IADレポートは、IAOCチェアのBob Hinden氏から行われました(ちなみにIADチェアは、Ray Pelletier氏です)。今回は、報告の前に、IETFチェア交代にあたりRuss Housley氏の功績を面白おかしく紹介し、IABメンバーから一言ずつ贈る言葉があり、メンバーのBert Wijnen氏からはオランダ語と思われる歌まで披露されました。意味はわかりませんでしたが、栄誉を称えるような勇敢な曲調の歌でした。その後、記念品が授与されていました。

その後、2012年の収支報告や2013年の予算(詳細は、http://iaoc.ietf.org/budget.html)やチェアの選挙の結果報告として、IAOCチェアにはBob Hinden氏が選出され、IETF TrustチェアにChris Griffiths氏が選出されたことが報告されました。

Nomcomチェアレポート、IAOCオープンマイク、IESGオープンマイク

Nomcomチェアからは、IAOC 2名、IAB 7名、IESG 7名の選出結果発表がありました。引き続き、Russ Houstley氏から「Passing The Baton To Jari」(Jariにバトンを渡します)という発表があり、これに応える形でJari Arkko氏からは「Accepting the Baton from Russ」(Russからバトンを受け取ります)という発表がありました。Russ氏は記念品として授与されたサッシュをつけてスピーチをしていました。Jari氏からは、「今日はちゃんとジャケットを着るよ」という発言があり、新しいIETFチェアとして、IETFのこれまでの活動の良い所は伸ばし、悪い所(結論がでるまでに時間がかかるケースがある等)を改善していくといった表明がありました。

この後はIAOCのオープンマイクとIABのオープンマイクですが、この段になると一層リラックスした雰囲気になり、IAOCのオープンマイクの際には、Bob Hinden氏は、「フリースタイルで」といいながら、長いマントを羽織って登場しました(今回のソーシャルイベントがユニバーサルスタジオのハリーポッターのアトラクションを貸し切って行われることに引っ掛けたようです)。

しかし、IABのオープンマイクでは雰囲気は一転し、会場からはリーダーシップやダイバーシティの問題、マイノリティや英語を母国語としない人へのケア、若手などへのメンターの提案など多くの参加者で円滑に運営していくための話し合いが時間いっぱいされました。今回のオープンマイクでは、非常に多数の女性がマイクに立って発言をしており、一層今までにない雰囲気となっていました。ダイバーシティに関してはその後もIETFの全体メーリングリストで活発なやり取りが続いていますが、今回あったような話は簡単に結論が出るものでもなく、継続してなされていくと思われます。

写真:第86回IETFの会場
●第86回IETFの会場となったCaribe Royale

次回のIETF Meetingは、2013年7月28日(日)から8月2日(金)にかけてドイツのベルリンにて開催されます。

リンク

第86回IETFミーティング議題・資料
- https://datatracker.ietf.org/meeting/86/agenda.html

第87回ミーティング
- https://www.ietf.org/meeting/upcoming.html

(株式会社インテック 廣海緑里)

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