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ニュースレターNo.56/2014年3月発行

第88回IETF報告 全体会議報告

第88回IETF Meetingは、2013年11月3日(日)から11月8日(金)の間、カナダのバンクーバーにて開催されました。

11月の初め日本はまだ暖かく、「バンクーバーは最低気温3度、最高気温9度です」と聞いて、「何を着て行こうか?冬の用意かな」という状態でした。到着してみるとバンクーバーはすっかり秋、きれいな紅葉でした。さすがに日本の装いのまま来た人は慌ててコートやマフラーを現地調達していました。会議が終わって、バンクーバーから日本に戻ってくると日本も寒くなり、私たちにはIETF会議がちょうど耐寒訓練になったようでしたが、日本にいた人からは「バンクーバーから寒さを持ってきた」と言われてしまいました。

さて、ここでは11月6日(水) に開かれた「IETF Operation and Administration Plenary」と「Technical Plenary」の様子について、感想を交えて報告します。今回は午前中に「Technical Plenary」、夕方に「Operation and Administration Plenary」という、1日にPlenaryが集中するスケジュールとなっていました。

Technical Plenary

午前中の「Technical Plenary」では、IAB(Internet Architecture Board) Chair、IRTF(Internet Research Task Force) Chair、RSE(RFC Series Editor) and RSOC(RFC Series Oversight Committee) Chairの報告と、「Technical Topic: Internet Hardening(インターネットのセキュリティ強化)」の発表がありました。

IAB Chair Report

はじめにIAB ChairのRuss Housley氏より、2014年のICANN Nominating Committee(NomCom; 指名委員会)にRuss Mundy氏を指名したとの報告がありました。

IABは、ISOC(Internet Society)、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)、W3C(World Wide Web Consortium)とともに、OpenStand主義への支持を表明しました。これらの団体は、技術革新や国境を越えた商取引のために、効果的かつ効率的な標準化プロセスを作り出してきましたが、今後はこのような「標準化原則」の重要性を掲げ、グローバルなオープンスタンダードの新たな枠組みの確立を目指すとのことです。

また、IABチェアは九つの他のインターネット団体とともに、“モンテビデオ宣言”に署名しました。

それ以外にIABが最近発行したその他の文書としては、RFC 6950:“Architectural Considerations on Application Features in the DNS”が報告されました。

続いて、IABの主催するワークショップの予定が発表されました。2013年12月に英国ケンブリッジで「インターネット技術の採用と移行に関するワークショップ(Workshop on Internet Technology Adoption and Transition; ITAT)」が、2014年2月に英国ロンドンで「インターネットのセキュリティ強化に関するワークショップ(Workshop on Internet Hardening)」が開催されるそうです。

それから、IABが執筆したRFCとして、2013年には以下のものが発行されました。

RFC 6852: Affirmation of the Modern Paradigm for Standards
RFC 6912: Principles for Unicode Code Point Inclusion in Labels in the DNS
RFC 6943: Issues in Identifier Comparison for Security Purposes
RFC 6949: RFC Series Format Requirements and Future Development
RFC 6973: Privacy Considerations for Internet Protocols
RFC 6950: Architectural Considerations on Application Features in the DNS

上記のRFC以外にも、インターネットドラフトも複数執筆中ということです。

IRTF Chair Report

IAB Chair Reportの次には、IRTF ChairのLars Eggert氏より、IRTF Chair Reportがありました。

IETF Meetingの期間中に開催されるIRTF Meetingは、Network Complexity(NCRG; ネットワーク複雑性研究グループ)、Software-Defined Networking(SDNRG; ソフトウェア定義ネットワーク研究グループ)、Internet Congestion Control(ICCRG; インターネット輻輳制御研究グループ)、Information-Centric Networking(ICNRG; 情報セントリックネットワーキング研究グループ)、Network Management(NMRG; ネットワーク管理研究グループ)、Network Coding(NWCRG; ネットワーク符号化研究グループ [提案])の、六つの研究グループ(Research Group; RG)です。これ以外に、IRTF Open Meetingを5日(火)の午後に開催しました。

IRTF関係のRFCとして、Scalable Adaptive Multicast(SAMRG; スケーラブル適応マルチキャスト研究グループ)からRFC 7019: “Application-Layer Multicast Extensions to REsource LOcation And Discovery(RELOAD)”が発行されました。

続いて、2013年度のネットワーキング研究賞(Networking Research Prize) 4本のうちで、今回の発表分になっていたIdilio Drago氏の受賞が発表となりました。また、2014年度のNetworking Research Prize候補の募集をしているそうです。

RSE and RSOC Chair Report

RSE and RSOC Chair Reportでは、RSEメンバーの紹介がありました。

それから報告として、IAOC(IETF Administrative Oversight Committee)がRFC Production Center and RFC Publisher Statementsの作成および契約と、RFC Series Editor契約のレビューと助言のまとめを完了したそうです。その他には、RFC Style Guideの議論が続いており、RFC format WGで作業がされています。

Technical Topic: Internet Hardening

続いて、今回のテクニカルトピックは「Internet Hardening」でした。IABのAlissa Cooper氏が司会を務めました。

この話題は、米国国家安全保障局(NSA)の盗聴問題に端を発して、「インターネットを敵の監視から守ることができるのか?」「誰/どのような組織が働かなくてはならないのか?」という課題について考えてみようというものでした。

最初にBruce Schneier氏がイントロダクションとして、現在のインターネットを取り巻く状況について話をしました。次にBrian Carpenter氏は、これまでのIETFで何があったかを話しました。1990年代半ばにはEコマースのために強い暗号が必要となりましたが、多くの政府はより強力な暗号の使用を制限したがりました。IETFでも、この束縛について議論を重ねました。その後、政府機関の方がIETFに来たこともありました。Stephen Farrell氏は、IETFアクティビティのポテンシャルについて話をしました。IETFはHTTPやTLS、あるいはIPsecを使い、技術的なアプローチがあることを示しました。オープンマイクでも「国ごとのポリシーの問題もあるが、技術的に取り組んでいくことも重要である」といった発言がありました。

写真:Technical Plenaryの様子
● Technical Plenaryの様子

Operation and Administration Plenary

夕方の「IETF Operation and Administration Plenary」では、最初にスポンサーのHuawei社より挨拶がありました。今回のスポンサーTシャツには、IETFのキーワードを組み合わせたデザインが使われていましたが、それを見せて「これがIETFです」と笑わせていました。

続いてIETF ChairのJari Arkko氏より、今週(今回のIETF)のトピックとして、これからのトランスポートプロトコル、WebRTCの重要な決定、広がる監視と可能なセキュリティ、その他の進展、HTTP2.0やTLS1.3の作業が継続していることが挙げられました。

その次には、参加者の内訳や新しい取り組みの報告がありました。今回は54の国と地域から1,142人が参加しました。初めての参加者は123人でした。前回のフロリダでは1,407人でしたので、少し減っています。地域ごとの集計では、米国、中国と続き、日本、カナダの順ですが、日本とカナダは同じぐらいでした。

今回、新たにビデオ中継とソーシャルメディア活用の試みをしました。YouTubeでは最大276人が見ていました。トータルでは、7日(木)の15:30までで748人が見ていたそうです。Twitterでは「#IETF88」のタグがついたものが827ツィート、Facebookでは327の「いいね!」がつきました。

また、IETFとしてのアンチハラスメントポリシーを作ろうとしているそうです。前回に引き続き実施されているメンタープログラムには、58人が参加しました。それから「Top 10 Things to Know Before Your First IETF Meeting」という、IETF入門ビデオが作成されているそうです。

次に、IAOCチェアのChris Griffiths氏とIADのRay Pelletier氏から、報告がありました。今回は参加費を払った参加者とスポンサーが若干予定より多く、収支見通しも予定より上回りそうだと報告がありました。ベルリンの収支決算の最終報告では、参加者は予定より多かったのですが、ホストがつかなかったことや、付加価値税を支払わなければならなかったことにより、若干のマイナスとなりました。次回第89回のミーティングは、ICANNがホストになることが発表されました。

次回のIETF Meetingは、2014年3月2日(日)から3月7日(金)にかけて、英国ロンドンにて開催されます。

(アラクサラネットワークス株式会社 新善文)

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