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ニュースレターNo.58/2014年11月発行

IANA監督権限移管の検討状況と、日本インターネットガバナンス会議

JPNIC Newsletterでは、2014年3月のNo.56および同7月のNo.57において、特集としてインターネットガバナンス関連の動向を取り上げました。それ以降もさまざまな動きがありますが、その中から、IANA(InternetAssignedNumbers Authority)機能の監督権限移管に関する状況と、JPNICが新たに取り組んでいる、日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)を取り上げます。

IANA機能の監督権限移管

2014年3月14日に米国商務省電気通信情報局(NTIA)が発表した、The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)との契約などにより同局が持つインターネットDNS機能の監督権限を、グローバルなマルチステークホルダーコミュニティに移管する意向※1に基づき、ICANNが呼びかけ人となって、インターネット関係者の間でその検討が進んでいます。

ICANNは、NTIAの発表と同時に、移管後の監督機構をどうするかという検討プロセスの構築に着手し、2014年7月のロンドン会議の直後には、IANA Stewardship Transition Coordination Group(ICG)を組成しました。ICGは、NTIAに対して提出する移管後の監督機構の提案の取りまとめに責任を持ち、IANAが管理するインターネット資源(IPアドレス、ドメイン名、プロトコルパラメータ)に関する検討コミュニティを中心に、政府や産業界など幅広い関係者20名によって構成されています。

ICGは、上に示した三つのインターネット資源に関して検討を行うコミュニティ(以下、検討コミュニティ)それぞれに、移管後の監督機構の大部分を委ねる、としています。IANAが管理する資源に関しては、それぞれの検討コミュニティが、オープンでボトムアップな検討機構を有しています。例えば、IPアドレスについてはNRO(Number Resource Organization)やRIR(Regional Internet Registry)、ドメイン名についてはICANN、プロトコルパラメータについてはIETF(Internet Engineering Task Force)といった機構です。それらの機構において、インターネットの黎明期から今までに、具体的な管理ポリシーが策定されてきました。ICGの考えは、それぞれの検討コミュニティを尊重し、それぞれが今までに整備してきた既存の検討機構を十分に活用しようというものです。それぞれの検討コミュニティが、自身が関係するインターネット資源について移管後の監督機構の提案を策定してICGに提出することとし、ICG自身は、三つの資源に関する提案を、広く一般からの意見とともに統合・調整するという役目に徹する、ということになっています。

これらの考えは、2014年8月27日に発表されたICGのチャーター※2で示され、引き続き2014年9月3日に、提案募集が発表されました。なお、募集要項となる「Request for Proposals(RFP)」は、2014年9月8日に改訂版が公開されています※3。提案は、2015年1月15日を締め切りとしています。

画面
●ICANNのWebサイトではRFP(募集要項)が公開されています

検討コミュニティにおける進捗状況

前述した流れもあり、各資源の検討コミュニティでは、IANA機能の監督権限移管に関する検討が進んでいます。

IPアドレスに関する検討コミュニティの状況

IPアドレスに関しては、各RIRが定期の会合やメーリングリストの上で検討を進めています。五つすべてのRIRは、春、秋の年2回、定期会合を実施しており、2014年は、APNIC(9月9日から19日)、ARIN(10月9日から10日)、LACNIC(10月27日から31日)、RIPE(11月3日から7日)、AFRINIC(11月22日から28日)の順番で開催されます。この五つのRIRでの検討成果は、NROによって取りまとめられ、IPアドレスコミュニティ全体の提案として、ICGが設定した締め切りである2015年1月15日までに提出されます。

皮切りとなったAPNICカンファレンスでは、事務局たたき台として、非常にシンプルな提案内容※4が、次の通りコミュニティに対して提示されました。

  • 2015年9月30日の現契約満了日をもって、IANA契約の終了
  • 原則1:円滑なIANA機能の維持
    • 現在の運営体制(IANA機能の運営をICANNが担うこと)の継続を支持する
    • 番号資源に関するIANA機能についてICANNとRIR間(NRO)のSLAの整備
  • 原則2:ICANNとNRO間の役割・責務の明文化(番号資源に関わるIANA機能)
    • ICANN・NRO間の既存の文書・見直しの必要性の確認
    • ICANNと全RIR(NRO)間の役割・責務を定義した文書の取り交わし

この根底をなす考えとしては、IPアドレスの観点からはIANA機能における監督権限を持つとされるNTIAの関与は極めて薄く、IPアドレス資源の源泉における台帳管理と分配というサービスが、受益者であるLIRやエンドユーザー、また中間組織として分配管理を担うRIRに対して、安定的かつ円滑に提供されることが必要かつ十分な条件であり、それを担保するための相互の取り決めがあればよい、というものです。

APNICは、会合が提案検討の初期の段階で開催されるため、会場で合意に至ることができる要素はこのようにシンプルですが、引き続き開催される他のRIRの会合では、既に実施されたRIRの会合を踏まえた議論が行われ、時を経るにつれ細部が詰められていくものと考えられます。各RIRが会合を持つタイミングは、検討進展の中の段階としてさまざまですが、メーリングリストを活用してそれぞれのRIRコミュニティの中で、適切な合意形成がなされることが期待されます。

ドメイン名に関する検討コミュニティの状況

ドメイン名に関しては、ICANNにおいてgTLDのポリシーを取り扱う分野別ドメイン名支持組織(GNSO)、ccTLDのポリシーを取り扱う国コードドメイン名支持組織(ccNSO)を始めとした横断的な検討母体として、“Cross Community Working Group to Develop an IANA Stewardship Transition Proposal on Naming Related Functions”というワーキンググループの組成に向けて準備中です。本稿執筆時点では、ワーキンググループを構成するICANN内の各組織において、参加メンバーの人選などが進められています。各組織内の調整を経て、ワーキンググループが組成されると、その後の進め方やスケジュールが見えてくるものと思われます。

プロトコルパラメータに関する検討コミュニティの状況

プロトコルパラメータに関しては、IETFが、規格策定に用いる標準的な手順に従って、立案を進めています。標準的な手順とは、その規格を検討するのにふさわしいワーキンググループ(WG)において、インターネットドラフトとして規格草案を作成し、WGのラフコンセンサスに基づいてRFC(Request for Comments)としてまとめる、というものです。ふさわしいWGがない場合には、WG組成に向けたBoF(Birds-of-a-Feather)セッションをIETF会合中に開催して、WGチャーターの検討などの組成準備を行います。

IETFには、IANA機能の監督権限移管に関して検討を行うにふさわしい、既存のWGがありませんでした。そこで、2014年7月にカナダのトロントで行われた第90回IETFでは、前述の手順に従ってBoFを開催してチャーターを検討し、同9月8日に「ianaplan※5」という名称でチャーターおよびWGが承認されました。WG承認に先立って、同8月30日には、草案初版となる「draft-lear-iana-icg-response-00※6」が公表されており、2014年11月に米国のハワイ・ホノルルで行われる第91回IETFで開催されるWG初回会合などを通じて、RFC化に向けた検討が進められます。

日本インターネットガバナンス会議

JPNICでは、前述のIANA機能の監督権限移管に関する問題を、日本国内のより広いインターネット関係者に知っていただいた上で検討を進めるべく、「インターネットガバナンスを検討する会」と題して、この問題に関する議論を行う会合を、2014年6月18日に開催しました。そして、引き続きそれ以外のインターネットガバナンスに関するさまざまな問題についても、充実した検討ができる基盤を日本国内に構築するために、「日本インターネットガバナンス会議(IGCJ: Internet Governance Conference Japan)」という名称を付け、継続的な活動として取り組むことにしました。

写真:「インターネットガバナンスを検討する会」の様子
●「インターネットガバナンスを検討する会」の様子

JPNIC NewsletterやメールマガジンJPNIC News & Viewsにおける既報の通り、インターネットに関する課題は、IANA機能の監督権限移管のような、インターネット基盤の資源管理だけにとどまらず、インターネット基盤を活用した利用やサービスを含む、情報社会全体の問題として広がりを持ち、複雑化してきています。情報社会全体ということで、それに関与する、あるいはその影響を受ける関係者は、公共政策に責任を持つ政府当局や、インターネット上のビジネスを行う事業者、インターネットの利用者など、多岐にわたります。

インターネットガバナンスとは、これらインターネットの課題に対処していく営みであると、JPNICは捉えています。世界全体に目を向けると、今年2014年で9回目を迎えたInternet Governance Forum(IGF)や、今年4月に開催されたNETmundial会合など、いろいろな盛り上がりを見せる一方で、日本国内における関心は、高いとは言えない状況です。

今後、ますます複雑化していくインターネットの諸課題に対処していくためには、前述したように幅広い関係者の中で、課題を共有し、検討していく必要があります。そのためには、さまざまな関係者の間で、諸課題に関する理解や言葉遣いを共有する必要がありますし、それ以前に、今まで接点が少なかった関係者が、お互いを知り、信頼感を醸成するなど、検討の基盤となる場を作り、整えていくことも必要だと考えられます。

IGCJは、6月18日の会合を第1回と位置づけ、8月19日に第2回、10月24日に第3回を開催しました。また、Internet Week 2014の期間中である11月20日(木)には、第4回を開催いたします(P.3参照)。IANA機能の監督権限移管をはじめとして、テーマとして検討することも余りあります。しかしまず当面はIGCJを、さまざまな関係者が集う、インターネット諸課題を話し合う場として整え、広く認知していただくことを最優先として進め、将来的には国内関係者の意見集約や合意形成もできる場として、発展させていきたいと考えています。

IGCJに関する情報は、Webページに集積してあります。

日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)

画面

https://www.nic.ad.jp/ja/governance/igconf/

過去の会合に関する資料やミーティングレポートなども入手できます。ぜひともメーリングリストに加入していただくとともに、会合開催の折にはお誘い合わせの上ご参加いただき、盛り立てていただければ幸いです。

(JPNICインターネット推進部 前村昌紀)


※1米国商務省電気通信情報局がインターネットDNS機能の管理権限を移管する意向を表明
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2014/20140317-02.html
※2 Charter for the IANA Stewardship Transition Coordination Group is Published
https://www.icann.org/news/announcement-2014-08-27-en
※3 IANA Stewardship Transition Coordination Group Issues Request for Transition Proposals and Suggested Transition Process Timeline
https://www.icann.org/news/announcement-2014-09-09-en
※4 IANA session @ APNIC 38: a discussion proposal
http://blog.apnic.net/2014/09/08/iana-session-apnic-38-a-discussion-proposal/
※5 Planning for the IANA/NTIA Transition (ianaplan)
https://datatracker.ietf.org/wg/ianaplan/
※6 Internet-Draft: Draft Response to the Internet Coordination Group Request for Proposals on IANA
https://tools.ietf.org/html/draft-lear-iana-icg-response-00

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