メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.58/2014年11月発行

第90回IETF報告 全体会議報告

2014年7月20日(日)から25日(金)まで、第90回IETFミーティングがカナダで開催されました。オンタリオ湖、北西のトロントにある、フェアモント・ロイヤルヨークホテルが会場です。本稿では、このIETFミーティングのレポートをお届けします。

開催規模

第90回IETFミーティングの参加人数は、1,175名でした※1。ここ数回と大きくは変わらず、日本からの参加人数は、以前のように具体的な数字が公表されていないものの、IETFチェアの報告資料では、100名前後で推移しているようです。ワーキンググループ(WG)のリストにあるWG議長の中には、日本人の名前が見られますので、日本人はミーティングに参加しているだけではなく、IETFにおける活動の中で活躍されていることがわかります。

IETFには、120ほどのWGがあります。WGでは、技術の仕様や課題に関する検討結果などを、RFCとして取りまとめて公開するための活動が行われています。RFCの編集を行うグループであるRFCエディターによると、2006年以降、RFCが公開された数は毎年300前後とされています。2014年は、7月の時点でRFC化に向けて提出された文書が200ほどと多く、想定されていた作業量を超えています※2

ジョン・ポステル賞

今回は、2014年のジョン・ポステル賞の発表があるIETFミーティングでした。今年のジョン・ポステル賞は、ネパールにおける無線LANのネットワーク敷設に尽力した、Mahabir Pun氏に贈られました※3

写真:ジョン・ポステル賞の発表
● 今年のジョン・ポステル賞はMahabir Pun氏が受賞しました

第90回IETFのBoFに見られる新たな活動

IETFでは、新たな技術や議題が出てきた時や、WGを作成する必要があるかどうかがわからない状態の時には、Birds of a Feather(BoF)というミーティングが開かれて議論されることがあります。IETFにおいて、新たに立ち上がりつつある活動の動向を見ていくには、BoFのミーティングに参加するのが手っ取り早いと言えます。BoFの中には、発案者を中心として少人数で行われる非公式のBoFもあり、正しい数はわからないながらも、今回のIETFでは10ほどのBoFが開かれました※4。ここでは、そのうちのいくつかを紹介します。

UCAN(Use Cases for Autonomic Networking)

ネットワークの設定や最適化、障害からの復旧といった運用が、自動的に行われる自動ネットワーク(Automatic Networking)の技術に関するBoFです。その用語や概念は、IRTFのNetwork Management Research Group(NMRG)で検討されてきました。

Autonomic Networking - Definitions and Design Goals
http://tools.ietf.org/html/draft-irtf-nmrg-autonomic-network-definitions

BoF開催の背景となる文書

TCPINC(TCP Increased Security)

TCPの拡張(extensions)を利用して、TCPで転送されるデータを暗号化したり、その完全性を確認できるようにする技術のBoFです。第88回IETFミーティングで大きく取り上げられた、大規模なネットワークの盗聴(pervasive monitoring)への対策技術として位置付けられています。

BoF開催の背景となる文書

IANAPLAN(IANA Plan)

米国商務省電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration:NTIA)の発表したIANA機能の監督権限移管について、IETFにおける対応を検討するためのBoFです。IANA機能について言及されているRFCの更新が必要なことがわかっており、WG設立の方向になっています。

メーリングリストの情報

VNFPOOL(Virtual Network Function Pool)

ファイアウォールやロードバランサーといった、ネットワーク機能を仮想化するVirtualized Network Function(VNF)を使ったネットワークにおいて、ソフトウェア障害などに対する信頼性を向上させる仕組みを検討しているグループのBoFです。第89回IETFミーティングでもBoFが開かれていました。WG設立の方向で検討されているようです。

WG設置前のWebページ

これらの他に、BoFのWikiには下記のBoFに関する最新情報が掲載されています。

Birds of a Feather Meetings(IETF Pre-WG Efforts)
http://trac.tools.ietf.org/bof/trac/wiki/WikiStart
  • Application Enabled Collaborative Network(AECON)
  • Transport Independent OAM in Multi-Layer network Entity(TIME)
  • Network Function Virtualisation Configuration(NFVCon)
  • Abstraction and Control of Transport Networks(ACTN)
  • Delay Tolerant Networking Working Group(DTNWG)
  • Transport Services(TAPS)
  • Application-based Policy for Network Functions(APONF)
  • RFC Format Update(RFCFORMAT)

IETFの活動のための、ネットワークやアプリケーションの活用

IETFチェアのレポートによると、Webページ「http://www.ietf.org/」の、コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)を使った提供が始まりました。その結果、東京からアクセスした時のページの読み込み時間は、3.2秒から0.8秒に短縮されたとのことです。

IETFミーティングでは、SNSやさまざまなツールも活用されています。Twitterアカウント@IETFでは、#IETFというハッシュタグで全体会議(プレナリー)のアナウンスや中継の情報などが流されています。#IETF90というハッシュタグは1,186ツイートで使われ、新たにフォロワーが578増えました。技術に関する全体会議(テクニカル・プレナリー)は、YouTubeで中継されており、301アクセスがありました。なお、初めて中継が行われて、“Hardening The Internet”というセッションが話題となった第88回IETFミーティングのテクニカル・プレナリーは、11,000回以上再生されたと報告されていますが、それ以降は300ほどであるようです。

2011年頃からAppleのApp Storeで配布されている「IETFers」は、iPhone用アプリケーションで、PCを広げなくてもWGのミーティングの参加に必要な発表資料などが閲覧できるようになっています。

テクニカルトピック 〜ネットワーク・トポロジーと地理的な情報〜

技術に関する全体会議であるテクニカル・プレナリーでは、最新のホットな話題や技術的なインターネットの仕組みのあり方が議論できるような話題が、テクニカルトピックとしてプレゼンテーションされます。今回のトピックは、「Network topology and geography(ネットワーク・トポロジーと地理的な情報)」と題して、三つのプレゼンテーションが行われました。

IXmaps.ca

カナダでIX(Internet Exchange)の位置情報を可視化している、IXmapsプロジェクトの紹介です。データセンターにあるルータの位置情報を、オペレーターの協力の下に集積して、Google Mapsなどを使って可視化しています。カナダの国際トラフィックはアメリカ国内を通ることがわかっており、アメリカ国家安全保障局(NSA)による通信傍受の対象となっているかどうかを調べられるといった用途の紹介もありました。

Internet Exchange Point(IXP) - Global Development Work

IXPの設置についての情報提供など、国際的に協力してIXPの発展を支えている、ISOCのWebサイト「IXP Toolkit&Portal」の紹介です。

CAIDA Tools, Data and Research on Internet Topology and Geography

カリフォルニア大学にある、インターネットトラフィックの分析を行っているグループのCAIDA(Center for Applied Internet Data Analysis)による、地理的な情報を含めた計測プロジェクトArchipelagoの紹介です。小型で安価なコンピューターであるRaspberry Piを使って、計測ノードを実現しています。

会場では、「利用者の観点では、地理的な場所よりもIXPがどれほど混んでいるのか、すなわち、トラフィック量に興味を持たれるのではないか」「発展途上国では、IXPの遅延やコストを知るために、(地理的な計測は)効率的だと思う」といったコメントが寄せられていました。


次回の第91回IETFミーティングは、2014年11月9日から14日まで、アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島、ホノルルで行われます。

(JPNIC 技術部/インターネット推進部 木村泰司)


※1 IETF 90 Administrative Plenary, IETF 90
http://www.ietf.org/proceedings/90/slides/slides-90-iesg-opsplenary-7.pdf
※2 RFC Editor Report, IETF 90
http://www.ietf.org/proceedings/90/slides/slides-90-iesg-opsplenary-0.pdf
※3 Mahabir Pun Receives 2014 Jonathan B. Postel Service Award
http://www.internetsociety.org/news/mahabir-pun-receives-2014-jonathan-b-postel-service-award
※4 IETF-90 BoFs
http://www.ietf.org/blog/2014/06/ietf-90-bofs/

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.