メインコンテンツへジャンプする

JPNICはインターネットの円滑な運営を支えるための組織です

ロゴ:JPNIC

WHOIS 検索 サイト内検索 WHOISとは? JPNIC WHOIS Gateway
WHOIS検索 サイト内検索

ニュースレターNo.59/2015年3月発行

インターネットガバナンスの動向
~IANA監督権限移管後の体制に関するコミュニティからの提案~

特集1では、インターネットガバナンスの最新動向として、再びIANA監督権限移管の話題を取り上げます。本稿執筆時点(2015年1月下旬)では、IANAが管理する三つの資源(番号資源(IPアドレス)、プロトコルパラメーター、ドメイン名)の管理方針を検討するコミュニティ(OperationalCommunities)より、それぞれの資源に関するIANA監督権限移管後の体制についての提案が出そろいつつあり、大きく状況が動いています。JPNIC Newsletterでは、2014年3月に発行したNo.56から、4号連続でインターネットガバナンスに関する話題をお届けしていますが、読者の皆さまにおかれても、ぜひともこの状況を注視していただきたいと思います。

IANA監督権限移管に関しては、2014年7月に組成されたIANA Stewardship Transition Coordination Group(ICG)が同年9月に、移管後の管理体制について提案募集を開始しました※1。それに従い、IANAが管理する「IPアドレス」「ドメイン名」「プロトコルパラメータ」という三つの資源について、現時点で方針の検討を実際に行っている組織が、当該資源に関する移管後の管理体制を検討し、2015年1月15日に設定された締め切りまでに、ICG宛てに提案を提出することになりました。つまり、IPアドレスについては「RIRコミュニティ」が、ドメイン名については「ICANNコミュニティ」が、そしてプロトコルパラメータについては「IETF」が、提案を提出することになったのです。執筆時点では、あらかじめ提出遅延の見通しを表明していたドメイン名関連のICANNコミュニティを除き、提案が提出された段階です。

以降では、現時点でのそれぞれのコミュニティによる検討状況をお伝えします。

IPアドレス - サービスレベル協定とレビュー委員会

IPアドレスは、2014年9月から11月にかけて各RIRにより開催されたミーティングを中心に、五つのRIRコミュニティで提案の検討が進みました。これら五つのRIRにおける検討を統合してICGに提出する提案をまとめるために、同年11月に、CRISPチーム(Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal Team)※2が、各RIRコミュニティから2名、各RIRの職員1名の総勢15名によって構成されました。JPNICの奥谷泉は、APNIC地域のメンバーに選出されるとともに、CRISPチームのチェアにも就任し、提案をまとめ上げることになりました。

APNICでは、ICGの提案募集要領公表直後に開催されたAPNIC 38カンファレンスで、移管後体制の要旨をたたき台として提案し、コミュニティのラフコンセンサスを取り付けました。RIPEも、APNICと同様の提案内容に基づいて議論を行いました。ARINとAFRINICでは、それぞれコミュニティに対して意向の調査を実施し、それに基づいた議論が行われました。LACNICでは、MONC(Multistakeholder Oversight Number Council)という監督機構を設けることが議論に挙がったのが特徴的です。

結果として、移管後管理体制の大原則に関しては同じ方向性が見えつつも、監督機構という新たな要素が一つのRIRから提案されたという状態で、CRISPチームはIPアドレスに関する統合提案の作成を託されました。

CRISPチームは、全RIRミーティングが終了した12月初旬から本格的な検討を開始し、途中2版のドラフトを公開し、そこで得られた意見を丁寧に勘案しつつ、年末年始休暇の時期も含め、集中的に検討しました。その結果、IPアドレスコミュニティとしての統一提案を、ICGが設定した提出期限である2015年1月15日にICGに提出しました※3。IPアドレスに関する統合提案の要旨は、以下の4点となりました。

  1. ICANNが、IPアドレスなど番号資源に関するIANA機能を引き続き運営し、これをRIRとの契約に基づいて行うこと
  2. IANAサービス提供に関する知的財産関連の権利(商標「IANA」、iana.orgドメイン名、データベースの利用権)は、コミュニティにとどめること
  3. IANAの番号資源に関するサービスレベル合意を、IANA機能運営者であるICANNとRIRとの間で取り交わすこと
  4. 各RIRの代表からなるレビュー委員会を組成し、IANA機能の運営が、取り決められたサービスレベルを満たすかどうか、NRO EC(全RIRの最高経営責任者(CEO)からなる、NROのExecutive Council)に助言を行うこと

これらは、APNICとRIPEによる大原則を採用しつつ、LACNICのMONCのアイデアを一部取り入れるとともに、CRISPの検討において立ち上った知的財産権への言及を含めた、という形です。

ドメイン名 -NTIAの役割を整理し、マルチステークホルダーによる機構に置き換え

ドメイン名に関しては、ccTLDとgTLDを一括して、ICANNに設けられたワーキンググループである、Cross Community Working Group to Develop an IANA Stewardship Transition Proposal on Naming Related Functions(以下CCWG)で検討が行われました。

ICANNは、そもそもマルチステークホルダーで構成されたコミュニティで、考え方が多様ですので、理事会決定やサービス提供に関する不満の声が少なくありません。そういった状況を反映してか、NTIAが去った後のIANA機能の説明責任機構を考える上では、ICANN自体の説明責任機構を強化する必要があるという考えが、ICANNコミュニティ内に根強くあります。IANA機能に関する監督権限や説明責任の機構と、ICANN自体に関するそれらを整理するのに時間がかかり、2014年10月に開催されたロサンゼルス会議の場で、やっとCCWGが内容の検討に着手しました。

着手後の検討は集中的に急ピッチで進み、その結果、同12月1日には最終提案の様式でドラフト※4が公開され、意見募集にかけられました。内容としては、IANA機能監督に関してNTIA内部に設置されている機構の構造を踏襲することを旨に、IANA機能に関してICANNと契約を結ぶ契約法人(Contract Company)、契約法人の意思決定を担うために法人の外に設けられるマルチステークホルダーレビューチーム(Multistakeholder Review Team, MRT)、直接のサービス受益者であるレジストリの意見をまとめる顧客常設委員会(Customer Standing Committee)、不服申し立てを処理する独立抗告パネル(Independent Appeals Panel, IAP)からなる仕組みで構成されています。

冒頭で述べた通り、当初のICGへの提出期限を過ぎた本稿執筆時点で、提出版は公開されておらず、CCWGでは提案の最終調整を集中的に行っている状況です。

プロトコルパラメータ - 基本的に現行の枠組みを踏襲

プロトコルパラメータに関しては、既存の枠組みをそのまま適用する方向で、検討が進みました。IETFの標準的なプロセスにのっとって、2014年7月にカナダ・トロントで開催されたIETF 90会合でBoFが開催された後、ianaplanというWGが設立されました。WGでは、draft-ietf-ianaplan-icg-responseという名称のインターネットドラフトをRFCとして採択するという作業となりましたが、その9版※5でRFC化に向けてInternet Engineering Steering Group(IESG)の承認が降りたものが、2015年1月6日に、ICGに提出されました。

内容としては、IANA機能についてICANNと取り交わされ、RFC2860として公開されている覚書、およびプロトコルパラメータのレジストリ機能を定めたRFC6220を基とした枠組みだけで、特段に新たな機構が必要ないという見解を示すとともに、移行にあたってプロトコルパラメータは公有のものであることをすべての関係者で確認すること、将来的にICANN以外の団体がIANA機能運営者となる場合の、移行時にあるべき配慮を示したものとなりました。

今後

ICGでは、今後各資源に関する提案を統合する作業に入り、3月までに統合提案の素案を作成、意見募集の上、7月までに最終提案をNTIAに提出するという予定になっています。3資源の提案は、それぞれの既存の枠組みや背景から、違う機構を含んでいます。また、ドメイン名に関しては提案されている機構が複雑であり、これがNTIAで受け入れられるための調整作業は、難航が予想されます。

JPNICでは今後も本件への注視を続け、情報提供に努めてまいります。また、日本の関係者の皆さんの意見を移管後体制に反映させるべく、グローバルな検討への参画や、日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)を中心とした意見収集と議論の場の運営などを積極的に行っていきます。ご不明な点などあれば、ingov-query@nic.ad.jpに、ぜひともお気軽にお問い合わせください。

(JPNIC インターネット推進部 前村昌紀)


※1 IANA Stewardship Transition Coordination Group Issues Request for Transition Proposals and Suggested Transition Process Timeline
https://www.icann.org/news/announcement-2014-09-09-en
※2 Consolidated RIR IANA Stewardship Proposal Team (CRISP Team)メンバーの一覧、会議日程、各会議の資料や録音が参照可能
https://www.nro.net/nro-and-internet-governance/iana-oversight/consolidated-rir-iana-stewardship-proposal-team-crisp-team
※3 Response to the IANA Stewardship Transition Coordination Group Request for Proposals on the IANA from the Internet Number Community
https://www.nro.net/wp-content/uploads/ICG-RFP-Number-Resource-Proposal.pdf
※4 Cross Community Working Group(CWG)On Naming Related Functions Public Consultation on Draft Transition Proposal, 1 December 2014
https://www.icann.org/en/system/files/files/cwg-naming-transition-01dec14-en.pdf
※5 Internet Draft "draft-ietf-ianaplan-icg-response-09", Draft Response to the Internet Coordination Group Request for Proposals on the IANA protocol parameters registries
https://tools.ietf.org/rfc/rfc6220.txt

このページを評価してください

このWebページは役に立ちましたか?
よろしければ回答の理由をご記入ください

それ以外にも、ページの改良点等がございましたら自由にご記入ください。

回答が必要な場合は、お問い合わせ先をご利用ください。

ロゴ:JPNIC

Copyright© 1996-2024 Japan Network Information Center. All Rights Reserved.