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ニュースレターNo.62/2016年3月発行

IP Meeting 2015 ~手を取り合って、垣根を越えて。~ 開催報告

IPMeetingは、その年のインターネットの状況を総括し、 今後に向けた議論を行う会合として機能してきました。 昨今はInternet Weekのメインプログラムとして、 プレナリのような位置付けにもなっています。

今回も、午前中には「Internet Today!」と題し、「運用動向」、 「新技術の標準化動向」、「インターネットガバナンス」、 そして「セキュリティ」という観点から、 2015年のインターネットを振り返り、 それぞれのホットトピックを総括しました。

そして、午後の部では、 「手を取り合って、垣根を越えて。」という今回のInternet Weekのテーマを意識し、 「次世代インターネットを担う人材を育てよう!」と「インターネットとAI~その未来~」という二つのパネルディスカッションを実施しました。 また合間には、Internet Week 2015の全セッションを「IPv6」、 「セキュリティ」、「ネットワーク運用管理」、「社会派」、 「DNS」、そして「最新技術」の6分野に分け、 プログラム委員がそれぞれの分野の総まとめを各10分間で紹介しました。

本稿では、 午後に実施した二つのパネルディスカッションの模様をお伝えします。

パネルディスカッション1:「次世代インターネットを担う人材を育てよう!」

人材の確保に関する取り組みは、 あらゆる企業にとって大きな課題の一つであり、 インターネットに携わる企業においても悩みのタネではないかと思われます。 また、インターネットの今後の成長と安定には若者の力を欠かすことはできず、 業界全体で人材の育成について真剣に考えていかなければなりません。 今回のセッションでは、学生2名と入社1年目の若者1名に加え、 実際に企業で人材育成に関わっている方をお招きし、 各々の立場から人材育成に関する考え方や率直なお話をいただきました。 以降に、 各パネリストが考える人材育成についての発表の要旨をまとめていきます。

写真:伊勢幸一氏

モデレータ:伊勢 幸一 氏(テコラス株式会社 技術研究所 所長)

パネリスト:河瀬 大伸 氏(大阪工業大学 情報科学部 情報ネットワーク学科)
川畑 裕行 氏(さくらインターネット株式会社 運用部 データセンター運用チーム)
畑田 充弘 氏(NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 担当課長)
森 優輝 氏(電気通信大学 情報理工学部 総合情報学科)

学生の主張

学生が企業に期待している教育とは?

写真:河瀬大伸氏、森優輝 氏

河瀬 大伸 氏
(大阪工業大学 情報科学部 情報ネットワーク学科)

森 優輝 氏
(電気通信大学 情報理工学部 総合情報学科)

一般的な理系大学生の場合、働くイメージが湧いておらず、 何になりたいのか、もしくはなれるのか明確になっていません。 また、学校で学んだ要素技術がどこでどう使われているのか、 何に役立つのか想像がつきにくく、 企業で何が求められているのかも分かっていません。 従って学生が企業に期待していることは、 まず働くイメージを持たせてもらいたいということです。 そしてその職種に必要な技術は何かを教え、 進むべき方向へ背中を押してほしいということではないかと思います。

学生にとって、社会に入るということは、 今までの環境が一変するため、 さまざまな不安を抱えさせるものです。 この不安は大きく分けて「技術」「人間関係」「社会人としてのマナー」の三つがあります。 それを踏まえて、学生が企業に期待することは、 まずは就職した企業できちんと業務ができるように指導してほしいということです。 皆、即戦力として役に立ちたいと思っています。 そして、人間関係の面でも社外の勉強会等に参加できたり、 社内でも広く親睦を深める場を設けたりしてほしいと考えています。 また、技術以外のマナーの部分においても正しい知識を習得したいと思っています。

まとめとして、 学生は初めての社会で進むべき方向がわからないながらも、 自分が役に立てることを期待しています。 何をどうしたらどうなるのか、 学ぶきっかけを与えることで、 進むべき方向も見えてくるものと思います。 また、仕事面だけでなく、 きちんとした社会人としての教養も身に付けていきたいと考えており、 そういった部分にも指導をいただきたいと考えています。

新人の立場から

入社1年目に私が受けた研修

写真:川畑裕行氏

川畑 裕行 氏
(さくらインターネット株式会社 運用部 データセンター運用チーム)

私からは、実際に私が受けた新入社員研修についてお話します。 全体としての研修期間は3ヶ月間あり、まず、 入社後に基礎的なマナー研修等を行いました。 その後、運用部、カスタマーサポート、営業部、 プラットフォーム事業部および情報システム室での研修を行い、 ほぼすべての部署での研修をすることで、 会社の全体の業務を把握した後に弊社が所属する双日グループでの合同研修を受けて他社のメンバーとも意見交換し、 研修が締めくくられました。

研修を通じての感想として、運用、営業、 開発のそれぞれの現場を体験することができ、 総合的で非常に綿密なプログラムであったと思います。 ただ、2015年入社が3名という人数であったからこそ、 このように中身が濃くきめ細やかなプログラムが組めたのかなとは思っています。

企業の教育担当の立場から

企業における教育の実際

写真:>畑田充弘氏

畑田 充弘 氏
(NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 担当課長)

私からは、実際に教育を行う側の立場で、 現在行っているセキュリティ部門の人材育成についてお話します。

人材によってそれぞれレベルに違いがありますが、 私が一番大事だと考えているのは、初級から中級に拾い上げ、 さらにその人間をどのように上級レベルに育成していくかという点です。

セキュリティ人材の教育においての課題は、 守る対象に関する技術理解、実践で使える技術の習得、 加えてエンジニアとしてのキャリアパスの具体化の三点が挙げられます。 我々の教育プログラムでは、演習を通して、 サーバやネットワーク等を構築するところから指導します。 机上の論理だけでなく、社内等の事例を再利用し、 演習に盛り込むことで、上記の課題解決を図っています。 またキャリアパスの点では、 スペシャリストとして生きるモチベーションを高めるには、 ロールモデルがいることがわかりやすく、 場合によってはby nameでのロールモデルを提示すべきだと思っています。

私が指導を通じて得た教訓としては、 まずセキュリティに対する使命感を共有していくことが大事であり、 演習の間は現業から完全に分離させ、 教育に時間を占有させることが必要であると思いました。 また、同じような仲間と場を共有していくという経験も重要であると感じています。

また、通り一遍等な育成方法はなく、 それぞれのパーソナリティに向き合って、 どのようにアプローチすると効果的なのかは、都度、 試行錯誤する必要があると感じています。

最後に、人材の育成は投資であり、 きちんとした投資を行わないとリターンも得られないと思いますので、 企業も人材育成について理解を深めていくべきであると思います。

総括

インターネットの会社における教育の現状と難しさについて

写真:>伊勢幸一氏

伊勢 幸一 氏
(テコラス株式会社 技術研究所 所長)

ネットワーク業界における教育の難しさとして、 そもそもの「教育者不足」と、 「教育経験不足」という二点が挙げられると思います。

まず、「教育者不足」という点を掘り下げてみると、 インターネットに関する分野は次々と技術のトレンドが入れ替わっていくので、 自身が追いつくことで精一杯である上、 たとえ教育プログラムを作成してもすぐプログラムは陳腐化してしまいます。 教育を行う側がそういった状況にあると、 教育にかける時間の確保は難しく、 さらには人材を育成したことに対する評価軸も無いこともそれに拍車をかけ、 教育を行う側には育成のメリットがない、 ととらえられることが多いです。 これではモチベーションが低下してしまいます。 このようなことから、 結果的に人材育成にリソースを割いている場合ではないという状況に陥っているのではないでしょうか。

次に、「教育経験不足」という点を掘り下げてみます。 インターネットの初期の段階では教科書などを整えていく余裕は当然無く、 一子相伝的に口頭で技術を伝えてきたり、 または自分で何でも切り開いて学んだりという側面があり、 人材育成に関して体系的なノウハウが蓄積されていないように思います。 このように教育する側にも自身が教育された記憶が無いので、 教育の仕方がわからないのではないでしょうか。 そのため、丸投げ式に仕事を与えるという事態が生じたり、 教育受ける側にとっては、 教育者や配属先等によって教育の粒度が異なったりする場合があるという課題が生まれてきています。 そのため恒常的に、 若手が独学で勉強せざるを得ない状況も発生しています。

こちらで通り一遍倒のプログラムを準備し、 育つのを待つという方法よりは、 コミュニケーションしながら、 その人のレベルや要望に合わせて育成プログラムを提供していくという方法に、 人材育成の手法はシフトしていくのではないでしょうか。 人が人を育てるというのは至難の業ではありますが、 人が育たなければ、近い将来自分たちも困ったことになり、 未来はありません。

そのようにならないためにも、 このように皆さまと意見を交わしつつ、 今後もこの業界の次世代を担う人材をみんなで育成していければいいと考えています。

写真:「IW2015セッション総括!」の様子
●二つのパネルディスカッションの合間には、プログラム委員による「IW2015セッション総括!」が行われました

パネルディスカッション2:「インターネットとAI~その未来~」

AI(人工知能、Artificial Intelligence)の技術は既に我々の身近に存在しており、 新聞や報道においても頻繁に目にするようになりました。 今後もさまざまな領域への応用が見込まれており、 ビジネスとしても無視できない存在となってきています。 インターネットの業界においても、 AIを活用する動きは出てきており、 AIの技術とインターネットの技術が垣根を超え、 どのようなコラボレーションを生み出していくのか、 将来がとても楽しみな分野となっています。

このセッションでは、AIの中でも進捗著しい「Deep Learning (深層学習)」という技術を中心に、 AI/Deep-Learningに関する基礎と今後の展望についての解説を東京大学大学院の松尾豊先生にしていただいた上で、 このAIが、インターネットの業界とどう関わっていくのか、 インターネット業界の第一人者にそれぞれ見通しを語っていただきました。 ここでは、そのAI/Deep-Learningの解説と、 パネリストの主な発言を紹介します。

写真:江崎浩氏

モデレータ:江崎 浩 氏(東京大学、JPNIC副理事長)

パネリスト:須藤 武文 氏 (さくらインターネット株式会社)
長谷川 順一 氏(株式会社Preferred Networks 取締役 最高戦略責任者)
松尾 豊 氏(東京大学大学院)
山下 達也 氏(NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 部長)

AI/Deep learningの基礎と今後の展望

写真:松尾豊氏

松尾 豊 氏
(東京大学大学院)

AIのブームは今回で3回目となります。 現在話題にのぼる、 IBM社が開発したワトソンやApple社のSiriといった技術は、 第一次AIブームや第二次AIブームの延長線上にありますが、 今回の第三次AIブームで注目されるDeep Learningは、 簡単に言うと、 人間の脳と同じような神経回路をコンピュータ上に作成し、 機械が学習することを可能にしたもので、 技術的にブレイクスルーがあり、 新しい期待が持てる技術になると思います。

今までの人工知能の技術では、 人間が現実世界の対象物を観察し、 モデルの構築を行っていましたが、 このようにモデル化に人間が大きく介在せざるをえなかったことが、 人工知能の根本的な壁となっていました。 しかし、Deep Learningにおいては、 モデル化すること自体を自動化するというところまで踏み込んでいるので、 これまでの問題が少しずつ解消されつつあります。 実績としても効果が見られており、 Deep Learningにより2012年以降、 画像認識におけるエラー率が目に見えて低くなっており、 2015年2月には人間の精度を超える結果を出しています。 また、現在も技術は日々進歩しており、 このDeep Learningに強化学習(行動を学習する仕組み)を組み合わせるという技術も生まれています。 これにより、人工知能が試行錯誤することによって「運動の習熟」ができるようになりました。 既にロボット等でも実験がされており、 一つの動作が段々と上手になっていく様子がうかがえます。

昔から人工知能の分野では、 子どものできることほど難しいと言われてきました。 1960年代から70年代にかけて、 既に定理証明やチェスなどはできるようになっていましたが、 画像認識や「積み木を上手に積む」といったような子どもにでもできるようなことに関して、 人工知能の技術は一向に向上しませんでした。 しかし、Deep Learningの登場以降、 前述の通り劇的な飛躍を遂げています。 今までは、特徴量を抽出する(モデル化する)ことが、 大変だったのですが、現在の計算技術の高まりにより、 これが可能となったことが要因として挙げられます。 今後、認識と運動の次の発展を考えると、 言語の意味理解という段階に人工知能は進んでいくのではないかと思っています。

私は人工知能を「大人の人工知能」と「子どもの人工知能」というように、 分けて考えたほうが良いのではないかと考えています。 これまで説明したDeep Learningを中心とした、 特徴量の設計を人間が行わなくてもよい技術が子どもの人工知能であり、 特徴量の設計を人間が行う必要がある技術を大人の人工知能と呼んでいます。 大人の人工知能は、 今までデータが取れなかった領域に関して新しくデータを取得し、 既存の人工知能を当てはめることによって付加価値を生み出していきますが、 子どもの人工知能の場合、認識によって、 背景知識がほとんどいらない状態から学習していきます。 今後、人工知能が人間の発達と同じような進化(認識能力の向上→運動能力の向上→言語の意味理解)を遂げると思われます。 子どもの人工知能は、今まで人間が認識して判断せざるをえなかったような、 自然を相手にするような分野での活躍も見込めるでしょう。

世の中には、 機械が画像を認識して判断することが困難であるがゆえに人間がやっているという類いの仕事がたくさんあります。 子どもの人工知能の発達により、 そこが自動化されていくものと思われます。 また、 運動に関しても機械的な動きしかできないと思われていますが、 機械が行う運動も上達していくということが起きると思います。

このように、産業として人工知能を見たときの方向感として、 AIで「情報」をインテリジェントにしていく路線と「運動」をインテリジェントにしていく路線という二つの道があると思います。 今後人工知能のビジネスで勝ち残っていくには、 情報路線では多くの会社が既に進出を果たしており、 参入が難しい状況となっていますが、運動路線であれば、 日本は特に運動を伴う労働のニーズが高く、 子どもの人工知能はものづくりとの相性も良いので、 日本の強みを活かしていけるのではないかと考えます。 そのためには、 人材の育成やビジネスモデルの早期検討を行うことが重要であり、 社会全体で新しい社会の未来像を描いていくことが必要になります。

これを受け、 インターネットとAIの関わりとその未来について語った、 パネリストによる主な発言は次の通りです。

ホスティング・データセンター事業者の立場から

写真:須藤武文氏
須藤 武文 氏
(さくらインターネット株式会社)

我々の事業では規模というものが重要です。 事業の拡大を目指すと、規模を大きくする必要があり、 その分労働力が必要になってきます。 AIを用いて、ハンドリングを自動化すると、 人間管理から脱皮でき、 コストも抑えられるのではないかと思います。 また、データセンターに溜まったログから、 AIを利用して通信の制御や空調の制御あるいは異常検知をしたりできるのではないかと考えています。

さらに別の観点で言うと、AIを使用する顧客の場合、 大量の計算を一時的に行うという使用方法が多く、 今までのWeb事業者等とは利用方法が変わってきているという側面があり、 我々もそういった需要の変化に対応していかなければならないと考えています。

ISP事業者の立場から

写真:山下達也氏
山下 達也 氏
(NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 部長)

我々インターネット事業者も、 自社でかけるオペレーションのコストを下げないと、 この先の成長は難しくなるのではないでしょうか。 例えばBGPのオペレーションもコストを下げられるかもしれないし、 また、DDoS攻撃への対策もAIが利用できる部分があるかもしれません。 そう考えると、人工知能に期待することはあり、 AIに任せられる部分は任せ、 人間は人間にしかできないような仕事に意識を向けていければいいのではないかと思います。 AIの技術はインターネットにとっても有益なことだし、 チャレンジしがいがあります。

インターネットとそのビジネスを推進する教育者の立場から

写真:江崎浩氏
江崎 浩 氏
(東京大学、JPNIC副理事長)

AIに関するアルゴリズムがフリーで入手できるようになったとしても、 大量の計算を可能にするためには、 それを動かす強固なインフラがないと機能しません。 したがって、 実際にこうしたAIを生かしたビジネスを成り立たせるのには、 適切な投資が必要であると思います。 松尾先生のお話にあった子どもの人工知能という技術は、 第三次AIで大きなポイントとなっており、 今後も目が離せません。

IoTにフォーカスしたAIビジネスを行う立場から

写真:長谷川順一氏
長谷川 順一 氏
(株式会社Preferred Networks 取締役 最高戦略責任者)

大量のデータをクラウドで分析しようとすると、 データをクラウドに送る際のコストや通信遅延という課題があります。 また、データの解析も人が介在することがボトルネックになっています。 さらに、クラウドとエッジ、 もしくはその中間のどこで解析するかを効率化(自動化)することも必要であり、 それぞれが協調してシームレスに処理できるようにするということが、 私の考えていることです。 このような課題に対し、Deep Learningを用いてさまざまな産業と関わりつつ解決を図っており、 なるべくクラウドにデータを上げなくてもすむような、 ネットワークワイドなAIを構想しています。

今後もAIのできることはどんどん増えていき、 人間が行う仕事は対面が必要となるような仕事に寄っていくだろうという未来を私は予想しています。

(JPNIC 総務部 手島聖太)

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