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ニュースレターNo.62/2016年3月発行

JPNIC会員企業紹介

「会員企業紹介」は、JPNIC会員の、 興味深い事業内容・サービス・人物などを紹介するコーナーです。

今回は、おととしに創業50周年を迎えた、 株式会社インテックを訪問しました。

創業以来めざしてきたのは、 「いつでも、どこでも、誰もが」自由にコンピュータの恩恵を受けられる……そんな「コンピュータ・ユーティリティ社会」の実現です。 その心意気は、 当社における数々の先進的な取り組みに見て取ることができます。

そして、その高い志と、 50年以上の長い歴史に裏打ちされた技術力や高い運用能力により、 上流から下流までの一貫したシステム・インテグレーションを展開し、 定評を得ています。 ICTが広く社会に浸透し、 私たちの生活に欠かすことができなくなった現在においては、 情報技術を誰もが安全・便利・心地よく使える社会が実現するように、 同社は新しい価値を創造する「社会システム企業」となることをビジョンに掲げ、 さらに幅広いサービスの提供や研究開発に取り組んでいます。

株式会社インテック
住所: 〒930-8577 富山県富山市牛島新町5-5
設立: 1964年1月11日
資本金: 208億3,000万円(2015年4月1日現在)
代表取締役社長: 代表取締役社長 日下 茂樹
URL: http://www.intec.co.jp/
事業内容: 1. ソフトウェア開発
2. システム・インテグレーション
3. アウトソーシング/データセンター
4. ネットワーク・クラウドサービス
5. その他、IT関連ソリューションサービス
従業員数: 3,666名(2015年4月1日現在)
社会のシステムを根底から支えるその先に、新しい価値を創造する「社会システム企業」となることをめざして

創業の地 富山から、「コンピュータ・ユーティリティ社会」の実現を目標に達成した全国展開

写真:冨川慎也氏、鍛原卓氏
お話しいただいた方:
株式会社インテック
左:ネットワーク&アウトソーシング事業本部
N&O事業企画部 部長 冨川 慎也 氏
右:ネットワーク&アウトソーシング事業本部
ネットワークサービス事業部 事業部長 鍛原 卓 氏

―まずは、貴社の事業内容や事業展開の状況について教えてください。

冨川:創業者は現在の金岡会長の父である金岡幸二です。 「富山計算センター」として1964年に創業し、 2年前に創業50周年を迎えました。 当時、ホストコンピュータは非常に高価でしたが、 企業の給与計算代行などから始め、 電気・ガス・水道のようにコンピュータやネットワークをもっと自由に使えるようにと、 「コンピュータ・ユーティリティ」を唱えて北海道から九州まで、 多くの人に自由に使ってもらおうと全国展開を進めてきました。 そんな考え方は、時代としては早かったのかもしれません。

まだ当時は「インターネット」の「イ」の字も無く、 電話も電電公社の時代です。 その後、1985年に通信自由化があり、 「これからの時代はネットワークサービスだ!」と、 1990年前後からインターネットに取り組んできました。

現在の事業ドメインは、 「ソフトウェア開発」「SI・ハードウェアを含めたシステム構築」「アウトソーシング」「ネットワーク」の大きく四つです。

うち「アウトソーシング」は、受託計算に始まり、 1990年頃からはサーバなどのダウンサイジングの流れでお客さまのサーバを預かるようになり、 現在ではITのサービスを幅広く提供する部門となっています。 もちろん、今もなお創業当時と同じように、 帳票印刷をして請求書を発行するような、 ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)も行っており、 お客さまに密着した仕事をしています。

「ネットワークサービス」は、専用線ネットワークに始まり、 やがてIP化され、現在はVPNなども手掛けています。 1985年の通信自由化の際、 「第二種電気通信事業者」としてサービスを行っていたのもこの分野です。 大手通信事業者から回線を調達して、 他のサービスと組み合わせて提供し、 その後の運用も提供しています。

―堅調に増収されていますが、主にどの分野が伸びているのでしょうか。

冨川:「アウトソーシング」と「ネットワーク」は両方とも、 定常的サービスで急に増えるようなものではないものの、 安定的かつ漸増しています。 「ソフトウェア」は、お客さまのIT投資に関係するので、 その時によって波があります。 特に銀行・生保・損保といった金融機関のお客さまからのご依頼は、 その時々で大きな波を生みだすことがあります。 また、最近ではSIなのかネットワークなのか社内的には分別しづらいところではありますが、 クラウドの中でも、特にプライベートクラウドが伸びていて、 ここ数年のトレンドです。 EINS/SPS (仮想サーバ基盤サービス)といった弊社のクラウドだけでなく、 Amazon社のAWS (Amazon Web Services)やMicrosoft社のAzureなどとも組み合わせて提供しており、 ここ数年は堅調に推移しています。 今後数年も、同様の傾向が続きそうです。

―取り扱いが多いのはどのような業界でしょうか。

鍛原:ネットワークのお客さまは突出して取り扱いが多い業界はありませんが、 特にアウトソーシングとネットワークのドメインは、 お客さまの数が非常に多く、 流通系とともにサービス系のお客さまも多くなっています。 大手の金融機関は自前でネットワークを持ち、 規制の関係で外に出すことも難しいのですが、 売り上げの観点では、1000億円強のうち、 絶対額として金融機関からのものが大きいと言えます。

―これだけ大きな会社に成長されて拠点も多いですが、本社は今も富山に置かれていますね。

冨川:今は富山と東京の両方に本社がある二本社制ですが、 登記上は出自の富山が本店所在地です。 ただ、ビジネス面では東京・横浜を含む首都圏地区が売り上げ規模の多くを占めています。

―北陸新幹線の開通で、一方の東京からは富山まで日帰り出張も可能になりましたし、片道2時間というのは魅力的ですよね。

冨川:そうですね。 北陸新幹線開通後は、物理的な距離はもちろん変わらないのですが、 東京と富山がすごく近く感じるようになりました。 東京から近くなったと同時に、富山から見ても同じです。 富山には大きい製造業のお客さまもおられ、 「東京が近くなったよね」と話をされています。 九州や北海道の事業者さんと話をすると、 東京への近さについて皆さん強調されるように、物理的距離より、 時間的距離の近さが大切に思います。

―7年前にTIS株式会社と共にITホールディングス株式会社の傘下となり、Webなどでもアナウンスがされています。今は貴社とTISは別会社ですが、今後の棲み分けなど、どうなるのでしょうか。

冨川:現在のITホールディングスは純粋持株会社で、 その下にTISやインテックが事業会社としてありますが、 2016年7月1日にITホールディングスグループは、 統合再編によりTISインテックグループとして、 新たなスタートを切ります。 これを機に事業再編で統合して強みを伸ばすことになっていきます。 仕事のやり方やお客さま層、営業方法もシステムの作り方も、 同じグループとはいえ両者の方法は違うので、 一朝一夕にことが進むということはないかもしれませんが、 それでもクラウドやデータセンターは、 規模の効果を活かして大きなビジネスにつながると考えています。

時代を先取りしつつ、盤石なサービスを提供する体制を構築

―数多あるVAN事業者の中で、貴社が特別第二種電気通信事業者第1号の認可を受けたというのは知りませんでした。通信の自由化と共に電気通信事業者になったというのは、すごく取り組みが早い印象があります。コンピュータ・ユーティリティやVANに目を付けるなど、貴社は実に先見の明があったということですね。

鍛原:いつでもどこでもコンピュータが使えるようにとのコンセプトの下、 当時米国のTelenet社(現在のSprint社)からパケット交換機を購入、 技術を含めて輸入しました。 米国製なので当時そのままでは使えず、 自社でパケット集約装置を作り、日本独自のプロトコルに対応させ、 お客さまのシステムの変更を抑えつなぐということを行いました。 当時、距離による通信コストが高かった時代で、 全国に弊社の拠点を展開することで、 お客さまはどこの拠点からでも手軽に接続しやすいネットワークとしてご利用いただいておりました。 その後、パソコン通信の時代には、 パソコン通信を扱っていた各社様とも広くお付き合いをさせていただいたこともありました。 当時の通信プロトコルには、 HDLC (High level Data Link Control procedure)、 全銀手順(全銀協標準プロトコル)やBSC手順(Binary Synchronous Communications protocol)など多くの通信プロトコルが存在していましたが、 これらを弊社独自開発のパケット集約装置に自社で通信制御部をコーディングすることで、 幅広い利用者がVANへ接続できるようになりました。 その頃の通信速度は、1200bps程度で今とは全く違う時代ですね。

―貴社は、計算センターが元々の姿で、それがEDI (電子データ交換)などの強さにつながっているということでしょうか。

冨川:今は「アウトソーシング」と言っていますが、 お客さまの業務を預かるという点では、 昔の受託計算の頃と違いは無く、そこに弊社の本質があります。 昔はお客さまから紙を受け取り、それを打ち込んで印刷しました。 それが今はオンラインでつながり、 コンピュータを動かしてデータをきちんと提供する、 というやり方が違うだけです。 ですので、我々のコア、 つまりインテックのDNAには「通信」というキーワードが入っています。 時代と共に形は変わっても、それが根底にあります。

―JPNICも設立20年を迎えましたが、それこそ、この20年ですっかり世の中はインターネットを普通に使うようになりました。インターネットが無かった時代から今に至る中で苦労したことや、インターネットの出現前後で大きく変わったこと、または苦労や変遷で強く印象に残っていることはありますか。

鍛原:ネットワークがIPに変わって、 インターネットの出現によってLAN上で動いていたさまざまなプロトコルがTCP/IPに統一されました。 そのインターネットがADSLから光回線へと変化し、 個人が安く回線を使えるようになったという点では、 環境がすごく変わってきたと思います。 特に光回線を自由に使える環境になったのは大きく、 高速回線を個人で使えるようになったのは非常に印象的です。 ただ、企業は、まだ個人ほどの高速回線を使っていない、 というギャップがあるように思います。 とはいえ、回線のコストはフレッツの出現で下がったと思いますが。

冨川:インターネットはどちらかと言うと、 ドライブが個人ベースです。 我々自身はコンピューティングユーティリティということで、 基本的にはエンタープライズのお客さまにサービスを提供しています。

2000年ぐらいに、楽天をはじめとしたECが流行って、 それをきっかけにインターネットが爆発的に成長しました。 昔の専用線のままでは、そんなことは起こらなかったはずです。 弊社も2000年頃に、ECビジネスをいくつかトライしてみましたが、 上手くいったものも上手くいかなかったものもあります。 それは、コーポレートカルチャーもありますが、 お客さまが個人相手ではないことが理由であったように思います。

インターネットは接続自体もそうですが、 その上に作られたサービスが、今、 まさに花開いていると感じています。 物理メディアは有線から無線になり、 サービスもLINEみたいなものが出てきている。 我々が直接お客さまに提供するのは、 企業のバックエンドの仕組みなので、 インターネットそのものを提供するというよりも、 インターネットにつないでさし上げるのが主体となります。 そういったサービスを支える幅広いセキュリティが、 今後の大きなビジネスになるのではと感じています。

―先ほどの「クラウドのインテグレーション」といったお話は印象的でしたが、お客さまから求められているソリューションには、他にどんなものがありますか。

鍛原:弊社は、 ネットワークを提供するだけの会社ではなく、 「上流から下流まで、 一貫して面倒を見てほしい」というのがよく言われることですし、 それを提供できるのが強みです。

我々の事業部が担当する「EINS WAVE of Everything」というソリューションがありますが、これがまさに、 お客さまのさまざまな要求を具体的に実現するために落とし込んだサービスです。 基盤にバーチャルデータセンターがあり、 我々のDC (Data Center)に広帯域の回線でつないで自由に使えるようになっています。 さらに、昨年からは「DCAN」(Datacenter and cloud services-Customer Adapted Network)という、 ユーザーの拠点と接続するためのネットワークも提供を開始しました。 社内ネットワークをお使いいただけて、 DCにも高速につながる上に、 クラウドやインターネットサービスなども使えるように、 いわゆる情報コンセントも提供しています。 クラウドについても、弊社のEINS/SPSだけでなく、 外部クラウドも簡単に接続できるようにしており、 やりたいことに応じて、 小規模と大規模なクラウドを使い分けられるようにしました。 さらに、そこにお客さまのアプリケーションなどを組み込んで、 ネットワークを大きくしようとしています。

冨川:複数拠点での運用にも積極的に取り組んでいます。 元々、首都圏地区と富山に拠点があり、 個別に対応はしていましたが、 2011年の東日本大震災の影響で、 BCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリ)の機運が盛り上がってきています。 首都圏のお客さまは、やはり首都圏にシステムをお持ちなので、 それを富山と分散化する。 首都圏と富山、そして大阪をも大三角形でつないで、 お客さまの要望に合わせた安定稼働環境を提供しています。

どれが一押しサービスかという観点では、お客さまからすると、 プライベートクラウドサービスであるEINS/SPSでしょうか。 お客さまにとってはオンプレミスなサーバと同じ感覚で使っていただけます。 運用は弊社が行っていますので、 何かあればもちろん即座に対応し、 インフラ・運用・アクセスを一気通貫に提供しています。

また、運用要員は富山と大阪にもいるため、 万が一首都圏で災害にあっても、 オペレーションも冗長化されており安心です。 ネットワークの提供のみだと、 価格競争にさらされ差別化が難しい上、 運用の無人化といっても、実際のところは、 現状のアプリケーションだと完全無人化は難しい。 弊社には複数拠点に運用要員がおりますので、 システムだけでなく運用のDRも提供しています。 このような態勢は、お客さまに大変好評をいただいています。

―もちろん各社がBCPやDRには気を遣っているわけですが、貴社も各拠点にきっちりした体制を整えていらっしゃるということですね。富山に行ってもエンジニアがいてオンサイトで対応してくれるなど、各拠点でフルスペックのサービスを提供されるとは、並大抵のことではないと思います。

IoT時代に向けた新技術の研究

―Webを拝見していて気になった新サービスは「i-LOP」です。位置情報サービスとしてGPSだけではなく、屋内でもビーコンを使ってロケーションを特定するなど、いろんなサービスが考えられそうです。IoTについても、貴社には先端技術を研究する体制があります。研究所で進められている研究や、これから取り組んでいきたいことなど、何かあればお聞かせください。

鍛原:弊社の近年の目標は「社会システム企業になる」というもので、 それに向かって各部門が走っています。 その中のパーツとして、i-LOPや交通、ヘルスケアなどがあり、 それらを混ぜ合わせて一つにしていくのです。 では、我々が属するネットワーク&アウトソーシング事業本部では何をすべきなのかと考えたら、 それはよく言われる「IoT」ということになるだろうと思います。 つまり、あらゆるモノをどうつないで連携させるのか。 そのための基盤を提供するのが、役目だと思っています。 その役割を果たすために、 i-LOPの実証実験などの研究開発を進めています。

冨川:内閣府の「環境未来都市」構想で、 選定された11都市の一つが富山市です。 富山市の提案には「コンパクトシティ」などいくつか分野がありますが、 そこにITをどう適用するか、 技術開発をするイメージで弊社も取り組んでいます。 弊社としては、要素技術を実験し、 モールでの実証実験ではハードウェアベンダーやディベロッパーとも一緒に取り組んでいます。 IoTという観点では、 ネットワークはもちろんデータの集め方も重要ですので、 その点を担当する部署もあります。

ただIoTは、お客さまとしてもそこから得られるベネフィットが、 まだつかみづらい段階なので、 弊社としてはどうしていくべきかを考え、 上手に提案していきたいですね。 弊社はハードウェアを作っているわけではないですし、 現時点ではまだ、 IoTを導入していただいたからといってお客さまのコストを直接低減させることも難しいかもしれません。 ですので、気が長い話といいますか、 ECのように一足飛びに普及するものでもないかもしれません。

―確かに、ECの方が、エントリーは簡単でしょうね。スマートメーターなどがもっと普及するようになると、IoTが加速されるのかもしれませんね。

冨川:そうなんです、 ECは分かりやすいですよね。 ところが、「IoTで工場管理」などと言っても、 工場それぞれは個別の要素で出来上がっている部分がありますからイメージしづらい。 共通化したサービスを、 コストを低くしながら提供するというのが我々のメインミッションなので、 その意味でまだIoTはそこまではいっていないと言えるでしょう。 ただ、何かしら関わっていこうとはしています。 そういった意識は、先ほど紹介した「EINS WAVE of Everything」にも表れていて、 サーバだけじゃない世界を提供していこう、 双方向を実現しようということで、「Everything」を付けました。

鍛原:そうですね、 その時代はもう近くにはあるのだとは思います。 もう、ヒトとヒトとをつなぐだけではなくなってきていますから。 モノとモノをつなぎ始めるようになると、 今度はセンサーやデータを運ぶためのコストという問題が出てくる。 インターネットが出てきた時に価格破壊がありましたが、 もう一度、そういうことが起こるのではないでしょうか。

冨川:インターネットの出始めにいろんなサービスが出てきたように、 これからいろんなアプリケーションが出てくると思います。 ただ、ECの話に戻ると、 ECのおかげで便利に買い物ができるようになりましたが、 IoTでインターネットにつないだからといって、 「それが何だ」というところもある。 スマートメーターもくまなく普及すれば便利でしょうが、 山奥にまで設置されるのには時間がかかります。 自動運転もそうですね。 すべて自動運転になれば渋滞も事故も無くなるのかもしれませんが、 街中の車がすべて切り替わるには何年もかかるでしょう。 ですから、気が長い話だと思うのです。 何十年後には全部切り替わるのかもしれないが、それまでの間、 新旧をどうマイグレーションするのか。 そういうことを話したり考えたりしているのが今のフェーズです。

―確かにまだ気が長い話ではあります。しかし、IoTの時代になると、IPv6への対応も避けて通れないところです。そのあたりはいかがですか?

鍛原:IPv6については、 研究所でずっと研究してきていますが、 では現場はどうかと言うと、IPv4のままでも、 何か問題があって困ったという話は今のところ聞いていません。 IPv4が世の中に出てきた当時は、 割り当てサイズの制限が厳しくなかったので、 その時に受けたアドレスを持っているお客さまもいますし、 弊社も手持ちの中でまだどうにかやり繰りができているというところです。 外部に公開するサーバの数は増えているのが実態だとは思いますが、 今のところはさほどの影響は出ていません。

もちろん、お客さまにはIPv4を提供しながらも、 サービスの一部にIPv6を使っていたりします。 そもそも、 小さい組織ですとIPv4のプライベートアドレスで足りてしまうということがあります。 非常に大きい企業や、 グローバルアドレスを使った外部とのやり取りが大量に必要な組織では、 すでにIPv6が使われているのかもしれないですね。 そのような状況なので、 ゲートウェイのところでIPv4/IPv6変換するといった対応でやり繰りできています。 そして、お客さまがIPv6対応をする際にも、 まずはそこからだと思います。 そろそろIPv6の波が来てもおかしくないとは思うのですが。

インターネット、これまでとこれから

―ネットワークをつなぐという話がありましたが、ネットワークに携わってきた中でのご苦労などはありますか。

鍛原:たくさんありますね(笑)。 その中で特にということですと、 ネットワークは「つながって当たり前」と考えられることによって生じる苦労でしょうか。

ルータなりスイッチなりを、 メーカから購入しシステムを構築する際に、もちろん、 納品前に事前に検証するのですが、 いざお客さまに導入すると動かないなんてこともあります。 弊社内の環境では問題が無くても、 お客さまの機器をつなぐと動かない。 そうなった時に、各機器はメーカ製品ですので、 ログなどは見られてもプログラムの中身までは解析できない。 そういった点で、 時間がかかったり想定の機能を実現したりすることができないこともありました。 それでも、どうにか設定して、 最終的にはお客さまのところで動くようにしないといけないので、 そういった経験によって、今があるように感じています。

冨川:専用線の時代と違って、 インターネットには多くのものがつながっているため、 こちらを直したらあちらが動かない、ということも起こり得ます。 その中では、 弊社が管理していないものが原因で不具合が起きたとしても、 何とかしないといけないというものも含まれます。 回線についても、 仮に99.999%の高品質なSLAが提示されていたとしても、 切れることはあるんです。 それでも、お客さまからは「何とかしろ!」となる。 もちろん、バックアップなどは提供しているのですが。 電気のコンセントみたいに、本当に挿すだけなら別ですが、 そこまで単純な話ではありませんので。 Plug and playの善し悪し、という感じですね。

また、ネットワークも随分と複雑化しています。 エンジニアも「これだけ知っていれば良い」という時代ではなくなっています。 そういったことも、悩ましいですね。

―貴社にとって、「インターネット」とは、どのような存在でしょうか。また、JPNICへのご要望などをお願いします。

鍛原:私的な感覚にはなりますが、 昔のインターネットは非常に便利なものでしたが、 今は使い方を誤ると非常に危険なものにもなり得るようになってしまった気がします。 それがいつからかと考えると、ECが始まった頃からでしょうか。 企業が使うためにはセキュリティを万全にしないといけないとなり、 我々はそのパーツを提供しています。 しかし、クラッカーだとかそういう人達に対する対応は、 一般的にはまだ後手にまわっているのが現状です。 ですので、いかに早期発見し、早期対処を行うかが大切になります。 弊社としても、 セキュリティ対策をより強化していかねばと考えています。

昨年2015年、 産業ソリューション事業部内にセキュリティサービス部を設置し、 セキュリティ全般についてこの部を窓口にして取り組んでいくことにしました。 セキュリティは、全社で協力して取り組むことが必要です。 インターネットを扱う上ではセキュリティ対策が必須で、 ネットワーク技術者としては、そこが肝だと思っています。

冨川:ネットワークやインターネットは、 つながるためのパイプのようなイメージです。 でも、それが最近は巨大なブラックボックスのようになってきています。 世界の誰一人として、 インターネット全体を把握している人はいません。 そこを上手く分かってもらえるように、 お客さまやユーザーをどう啓発していくか、 というのがJPNICに期待する役割でしょうか。

インターネットを使った犯罪などを見ると、 「怖いな」と思うようなものがたくさんあるわけです。 いたちごっこだとは思いますが、 そういうものに対抗できるようにしていかないといけない。 でも、そのような普及啓発を事業者がやると、 ビジネス色が強くなりすぎてしまう。 中立の立場にあるJPNICのようなところには、 そこの辺りをもっと取り組んでいただきたいですね。

それから、 昔は商用と個人利用が別れていたインターネットですが、 今は混在しています。 IoTのような形であらゆるものが接続されるとすると、 コスト面の効率性からもインターネットが選ばれ、 使われるはずです。 しかし、 インターネットのようなオープンな空間でIoTが実現した時に、 果たしてどんなことが起こるのか、 というのが想像し切れていません。

―セキュリティに対する要請は多いですね。世の中にいろんなセキュリティ関連の団体はあるわけですが、それでもJPNICへのお問い合わせもあるのです。「セキュリティ」と一口に言っても、国家安全保障から人間の行動によって引き起こされる脆弱性まで、幅広いいろんなものが含まれています。抜け漏れなく対処するためには何が必要なのか、他組織とも連携して対応できればと考えています。セキュリティについては、今後JPNICとしても取り組みとして増やしていきたいと考えています。

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