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ニュースレターNo.62/2016年3月発行

第94回IETF報告 全体会議報告

第94回IETF Meetingは、 2015年11月1日(日)から11月6日(金)の間、 神奈川県横浜市にあるパシフィコ横浜にて、 WIDEプロジェクトのホストで開催されました。 今回のIETF Meetingは、 2002年に横浜で開催された第54回IETF Meeting、 2009年に広島で開催された第76回IETF Meetingに続き、 日本で開催される3度目のIETF Meetingとなります。 会場はみなとみらい駅近くということもあって、 駅に併設された商業施設内にレストランやカフェも多くあり、 開催地としては快適に過ごせる場所であったのではないかと思います。

本稿では、このIETF横浜会合のレポートをお届けします。

6年ぶりの日本でのIETF開催

今回のIETF Meetingは、 開催前からISOC-JPとJPNICが共催してIETF勉強会という、 IETF Meetingの参加をより有意義にするための勉強会が開かれたり、 W3C TPAC (Technical Plenary/Advisory Committee Meetings Week)と開催時期を近づけたり、IETFとW3C TPAC両方のイベントに参加する人向けに参加料金の割引プログラムが用意されたりと、 会期前から今回のMeetingを盛り上げようとする試みが行われていました。

IETF勉強会
第1回:https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150618-01.html
第2回:https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2015/20150910-01.html

また、国内開催ということもあり、 国外で開催されるIETF Meetingでは60人から80人程度の日本人参加者が、 今回は364人と多かったことがとても印象的でした。 11月1日(日)のNewcomers' Orientationも、 通常の英語によるオリエンテーションの他に、 日本語によるオリエンテーションも開催され、 さらに11月3日(火)に開催されたSocial Eventでは、 日本の伝統文化を楽しんでもらう趣向が凝らされていました。 開会挨拶の際には鏡開きが行われ、 その酒を注いだIETF 94の焼印が押された枡が、 今回のSocial Eventのお土産として配られていました。 料理は、職人による寿司や天ぷら、おでんなど、 日本の代表的な料理が振る舞われ長い行列ができていました。 また、飴細工職人や切絵師による出店も設けられていて、 その場で飴や切絵を作ってもらえ、 こちらも順番待ちの列ができているなど、 海外からの参加者の評判も良かったようです。

さて、ここからは11月4日(水)に開かれた「IETF Operations, Administration, and Technical Plenary」の様子について、 簡単にご報告します。

写真: 江戸紙切りの様子
● 会場では数々の日本の伝統文化が紹介されていました(写真は江戸紙切り)

IETF Operations, Administration, and Technical Plenary

11月4日(水)の「IETF Operations, Administration, and Technical Plenary」は、 会期中の各WGの会合スケジュール問題を改善する一環として、 これまで別日程で開催されていた「IETF Operation and Administration Plenary」と「Technical Plenary」の二つの全体会合を一つにまとめて、 会期中の全体会合の時間を短縮する目的で試みられました。

11月3日(火)に開催されたSocial Eventの開会式の際にも着用していた、 赤い法被を羽織ったIETF ChairのJari Arkko氏のウェルカムスピーチから始まり、 ホストプレゼンテーションが続き、 各ホットトピックの報告として、 以下のトピックごとに報告がありました。

  • IETF-wide issues
  • Administrative topics
  • Invitation to IETF 95
  • NomCom update and requests
  • New research groups
  • Progress in format work
  • Meeting calendar updates

その後、IAB (Internet Architecture Board) ChairからのIAB活動報告、Technical Topicが一つ、 IABとIAOC (IETF Administrative Oversight Committee)、IESG (Internet Engineering Steering Group)オープンマイクという流れで、 議事進行がされました。

ホストプレゼンテーション

ホストプレゼンテーションでは、 WIDEプロジェクトの代表である江崎浩氏より挨拶がありました。 今回のNOCボランティアは、加藤朗氏、関谷勇司氏、 大江将史氏が中心となり、 WIDEプロジェクトのNOCメンバーとIETF NOCメンバーが協調して、 会場ネットワークを準備したと紹介がありました。 また、今回のNOCボランティアは会場ネットワークに加えて、 会場近くにあるよこはまコスモワールドの観覧車「コスモクロック21」の頂上付近で利用可能な、 SSID「ietf-wheel」というWi-Fiネットワークを提供しているという紹介もあり、 会場からはNOCボランティアの貢献に対する拍手がありました。 そして、今回のIETF Meetingのスポンサーをした各組織の紹介があり、 今回のIETF Meetingはこれら各組織の協力のもと実現することができたと謝辞を述べ、 会場からも大きな拍手が起こりました。

IETF-wide issues

IETF-wide issuesでは、IETF ChairのJari Arkko氏より、 参加者の内訳やIETFの全般的なホットトピックについて報告がありました。 第94回の現地参加者は、52の国と地域から1,298人の参加となり、 前回の1,358人の参加から60人ほど減少していました。 また、2015年の同時期に米国ハワイにて開催された、 第91回の参加者数の1,109人と比較すると、 189人程度参加者が増えたとのことでした。 新規参加者は全体の約21%の278人で、 ここ数年開催されているIETF Meetingの中でも、 今回は特に新規参加者が多い回となったことがわかります。 国別の参加者数は、1位米国、2位日本、3位中国、 4位ドイツとなっており、日本からの参加者数は、 全体の参加者数の1/4程度の割合となっていました。

今回はホットトピックとして、 .onionとGen-ART (General Area Review Team)の紹介がありました。

  • .onion
    .onionは、経路情報の匿名化を行う、 Torネットワークで利用するトップレベルドメイン名です。 このドメイン名を既存のドメイン名と同様にDNSで利用することを防ぐために、 RFC6761“Special-Use Domain Names”に従い、 .onionの予約を行うことを記述した、 RFC7686“The“.onion”Special-Use Domain Name”が発行されたとの紹介がありました。
  • Gen-ART
    Gen-ARTは、RFCの品質向上を目的として、 General Area Directorと共に、 IETF LC (Last Call)中のI-D (Internet Draft)を多角的にレビューするためのチームです。 今回、Arkko氏より、 そのレビュワーとして参加しているボランティアの紹介がされると、 会場から拍手が起こりました。

また今回のRecognitionでは、 会期中に25周年を迎えるBMWG (Benchmarking Methodology Working Group)の紹介が行われました。 BMWGは、これまでに34本のRFCを発行し、 インターネット技術に大きな貢献をしています。 初代BMWG Chairを務めたScott Bradner氏をはじめとした、 BMWGに関わったボランティアの方々に感謝の意が述べられ、 会場からもその貢献を讃えた拍手が起きていました。

  • その他
    その他のホットトピックとしては、Code & Hackathonとして、 Code SprintやIETF Hackathonの紹介がありました。 インターネットの発展形態と、 IETFが行っている標準化プロセスを端的に表現した言葉として、 David Clark氏が述べた“We reject kings, presidents and voting. We believe in rough consensus and running code”という言葉があります。 この“Running Code”をIETFでは重要視しており、 近年イベントを通じてさまざまなWGにて議論中の提案を、 実際に実装するイベントが開催されるようになりました。 今回開催された第3回IETF Hackathonは、 10月31日(土)と11月1日(日)の2日にわたり開催され、 参加者は2日合わせて100人程度だったと報告がありました。

また、Arkko氏のスライドには、 IETF HackathonにてSFC (Service Function Chaining)に関する実装を行った日本人チームの写真が掲載されており、 “Running Code”においても日本からの貢献があることが印象的でした。 第4回IETF Hackathonは、 第95回IETF Meetingの直前の2016年4月2日(土)と3日(日)の2日にかけて行われるそうで、 現在、準備や参加者募集していると呼びかけがありました。

Administrative topics

Administrative topicsでは、IAOC ChairのTobias Gondrom氏と、 IETF Trust ChairのBenson Schliesser氏から報告がありました。

Gondrom氏からは、 はじめに次回以降のIETF Meetingについての報告がありました。 第95回のホストは、 ラテンアメリカとカリブ海地域を担当する地域インターネットレジストリ(RIR)である、 LACNICに決まりました。 第96回はベルリン、第97回はソウルで開催される予定ですが、 第98回は開催地を予定していたモントリールの会場ホテルと調整がまとまらず、 開催のめどが立たなかったため、現在、 開催地を北米地域から再度探しているとのことでした。 第99回はヨーロッパ地域での開催が決まっており、 最終契約を行っているとのことです。 第100回は開催地をアジア太平洋地域と決めたが、 契約などについてはこれから行うそうです。

IASA (IETF Administrative Support Activity)に関する予算報告では、 2016年から2018年にかけての予算が決まったとの報告がありました。 また、Acknowledgmentsでは、 NOCボランティアと会場のネットワーク機器や回線を提供した企業、 Code Sprintの参加者の紹介がありました。

最後に、 11月5日(木)の昼には慶應義塾大学の村井純氏による“Japan x Internet”と題したTech Talk、そして、 その晩にはBits-N-Bitesが開催されるという紹介がありました。

写真: “Japan x Internet”と題したTech Talkの案内
● 村井純氏による“Japan x Internet”と題したTech Talkの案内

Schliesser氏からは、 IETF Hackathonにて作成されたコードなどの著作物(IPR; Intellectual Property Rights)の取り扱いをまとめた、 Hackathon IPRの紹介がされました。

Invitation to IETF 95

Invitation to IETF 95では、LACNICのCTO Carlos Martinez氏より、 第95回IETF Meetingの紹介が行われました。 また、2016年1月でIETFは30周年を迎えることとなり、 第95回は30周年を迎えた後で最初のIETF Meetingとなるようです。 ホストを務めるLACNICの紹介動画を流した後、 ブエノスアイレスの魅力について紹介がありました。

NomCom update and requests

NomCom update and requestsでは、 NomCom (Nominating Committee) ChairのHarald Alvestrand氏より、 NomComの活動の進捗報告がされました。 はじめにNomComのメンバーの紹介がされ、今回は男性37名、 女性6名の、計43名の推薦があったとの報告がありました。 また、今回のIETF Meetingにて43名中39名の面接を行う予定であり、 年末までには候補者をまとめられる予定であると報告がありました。

New research groups

New research groupsでは、IRTF ChairのLars Eggert氏より、 会期中に開催されるRG (Research Group)の紹介がありました。 今回開催されるRGの会合は、以下の五つです。

  • Crypto Forum (CFRG)
  • Information-Centric Networking (ICNRG)
  • Network Function Virtualization (NFVRG)
  • Network Management (NMRG)
  • Software-Defined Networking (SDNRG)

またこの他に、 以下の四つのProposed RGの会合も開催されるとの報告もありました。

  • Proposed Human Rights Protocol Considerations (HRPC)
  • Update on the Internet Research Task Force at Proposed Thing-to-Thing (T2TRG)
  • Network Machine Learning Research Group (NMLRG)
  • Proposed How Ossified is the Protocol Stack (HOPSRG)

RGの紹介の後は、 IRTFとISOCが共催したワークショップ“Research and Applications of Internet Measurements (RAIM)”が、 10月31日(土)に開催されたとの報告がありました。

Progress in format work

Progress in format workでは、 RSE (RFC Series Editor)のHeather Flanagan氏から、 RFC formatの改訂作業のゴールと進捗についての報告がありました。 改訂作業のゴールとしては、 XMLによる記述は変更しない一方で、 アウトプットのファイル形式はplain textやPDF、 HTMLに対応することをめざしているとのことです。 また、図表については、 従来のASCIIアートによる表現ではなくSVG (Scalable Vector Graphics)ファイルを利用可能とすること、 文字については、Non-ASCII文字も利用可能とすることが説明され、 今後も作業を継続するとのことでした。

IAB Chairレポート

ChairのAndrew Sullivan氏から、IABの活動内容の紹介がありました。 また、今回はBoFの開催が少なかったことを受けて、 IABではBoFの開催を手伝う姿勢があるので、 BoFを開催したい人はぜひ気軽に声をかけて欲しいとのことでした。

Technical Topic

今回のTechnical Topicは、 計測結果に基づくエンジニアリングがインターネット技術においても重要であるという観点から、 IABのBrian Trammell氏とCAIDA (Center for Applied Internet Data Analysis)のAlberto Dainotti氏からそれぞれ、 “Measurement-Driven Protocol Engineering”と“Measuring and Monitoring BGP”と題した発表がありました。

Trammell氏からは、IABが取り組んでいるIP Stack Evolutionプロジェクトを例に、 このプロジェクトではインターネットはUDP上で正しく動作することを前提に設計が進められているが、 本当にインターネットはUDPでカプセル化したパケットが増大しても問題なく動作するのかという問いかけをし、 計測を行うことの必要性について説明していました。 また一方で、計測を行うツールはいろいろとあるものの、 実際にはインターネットの計測を行うことは困難であり、 計測結果のデータが不足しているため、 計測したデータを共有できる仕組みを持つ必要があるとのことでした。

Dainotti氏からは、 「アラブの春」の際に行われた国単位でのブロッキングや、 東日本大震災の時に発生したBGPの変化、 MITM BGP attacksなど、 BGPに大きな変化が見られた代表的な出来事の紹介がありました。

IAB、IAOC、IESGオープンマイク

今回のオープンマイクは、 これまで「IETF Operation and Administration Plenary」と「Technical Plenary」でそれぞれ別に設けられていたオープンマイクが、 一つにまとめて行われました。 会場から「今回はBoFが少なかった」という声があった一方で、 IAB ChairのSullivan氏からは、 Bar BoFについては「開催については特に許可を取る必要はないので、 必要に応じて開催して問題ない」などの、 BoFに関する話がありました。 また、「W3C TPACやOpenStack Summit等、 関連するイベントがIETFと会期が近くまとまっていて参加しやすかった」という声もありました。


次回のIETF Meetingは、 2016年4月3日(日)から4月8日(金)にかけて、 アルゼンチンのブエノスアイレスにて開催されます。

(青山学院大学 情報メディアセンター 根本貴弘)

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