ニュースレターNo.90/2025年7月発行
Internet ♥ You No.25
アリスタネットワークスジャパン合同会社
神谷 尚秀さん
通信との出会いから、ネットワーク業界へ
インターネットではないのですが、通信に興味を持ったきっかけは、 大学の講義でした。 工学部の通信方式に関する講義で、 ラジオのAM・FMのように電波に情報を乗せて伝搬できること、 情報が載った電波を数式で表現できることに面白さを感じたからです。 大学・大学院では光通信をテーマに研究を進め、 光通信の伝送関係のシミュレーション・実験を行っていました。 就職活動時には物性や光ファイバー、 レーザーといった研究開発に携わりたいと思っていました。 その中でご縁があったのが前職の古河電気工業株式会社でした。 光ファイバーもレーザーも有名な会社なので、 そこで光通信の研究ができると思っていたのですが、 ルータ製品の開発・製造などを手掛ける古河ネットワークソリューション株式会社に出向となり、 そこから本格的にネットワーク業界に足を踏み入れることになりました。
学生時代に通信方式や光通信に関する物理の勉強をしていたものの、 ネットワーク技術についてはほぼゼロからのスタートになりました。 4年目ぐらいまではBGP (Border Gateway Protocol)などルーティングプロトコル関連のソフトウェア開発を担当しました。 最初の頃はTCP/IPは知っていましたが、 BGPは知らないレベルでした。 その後は2年ほどお客様に技術提案を行うフロントのエンジニア。 そして、よりお客様に近い、技術営業担当を3年ほど担当していました。 エンジニアから徐々にお客様側の業務になりましたが、 開発担当者時代は、正直、人と話すのが苦手だと思っていました。 しかし周りからは、 話すことに向いていると言われ実際にお客様が求めているものをご提案できると、 喜んでいただけました。 そこに気がついてからは、 人と話して仕事をするのはいいなと思うようになりました。 また、各社の事業、ビジネスモデル、 バリューチェーンなどの社会の仕組みを知る機会になったので、 とてもよかったです。 ただ、異動により職種が大きく変わるのは新しく覚えることがたくさん出てくるので大変でしたね。
転職後のキャリア
自分でキャリアを選んで、経験を積むことにより、 人生の選択肢を増やしたいと思うようになり、転職をしました。 日本企業以外の文化・働き方を経験してみたいと考え、 外資系企業を志望しました。 現在の仕事内容は、主にプリセールスを担当するSEで、技術提案から導入、 必要に応じて検証を行うなどの業務内容です。 お客様に合った提案を実現するため、 営業担当と連携しながら活動しています。 外資系企業に転職して、前職とはやはりギャップがありました。 前職では、異動ごとに新しい職種になっていたということもあり、 異動したての時期は上司や先輩が手取り足取り丁寧にサポートしてくれる印象で、 知識・経験値に応じたチャレンジを少しずつさせていただいていました。 また、仕事以外でも家族参加型のイベントもあり、過ごしやすい環境でした。 一方で現職は、入社してまだ1年ぐらいですが、 仕事の進め方を自分で決めるなど自由度が大きい反面、その分責任も大きい印象です。 また、事業戦略や技術のアップデートが驚くほど速いため勉強は大変ですが、 学ぶ内容がどれも面白いので、意欲的に取り組めています。
コミュニティ活動がくれた仲間と経験
社会人になってからは、外部での経験を積みたいとアピールしていました。 出向先の部署には同期が3名しかおらず、 技術が好きな同年代の仲間がもっと欲しいと感じ、 先輩がJANOGを紹介してくれたのがきっかけでコミュニティ活動に参加し始めました。 初めてのJANOG Meetingの参加はJANOG31で、 会場運営委員という会場準備や参加者向けの会場ネットワークを構築するスタッフとして参加しました。 また、JANOG31で知り合ったメンバーとの繋がりもあり、 wakamonogという若手エンジニア向け勉強会の運営メンバーとして参加していました。 幸運なことにそういったコミュニティで繋がった同世代は、 とても活発な方々が多いと感じます。 そういう方々と一緒に活動する中で、ネットワークの楽しさを教えてもらいました。 コミュニティ活動を続けていくうちに、 幸運にもJANOG運営委員にならないかと声をかけていただき、とても感謝しています。 当時は最年少メンバーで、若手の巻き込み役として期待されていました。
こういった活動に積極的に関わることで、その分仲間も増えますし、 ネットワーク業界で仕事をする楽しさも増してくると思います。 ただ、無理をしすぎると会社や家族に迷惑をかけてしまう恐れがあるので、 苦にならない程度でゆるく、長く続けていくというのが良いと感じています。 JANOG実行委員の活動などで、「こんな企画どう?」と提案して、 「それいいね!」と賛同してくれるメンバーと一緒に活動するのは楽しいですね。 思い返せば、大学時代も近隣の子どもと遊ぶボランティアサークルに所属していて、 お祭りの実行委員長もやっていましたね。 現在は息子が通う小学校のPTAでまとめ役を担当しています。 まとめ役的なことを担うのは、わりと得意なのかもしれません。
YouTubeで伝える技術と業界の魅力
YouTubeチャンネル『show int』は土屋君(さくらインターネット株式会社の土屋太二さん)にYouTubeで発信活動をしないかと誘われて始まりました。 NOGなどのイベントももちろん楽しいのですが、 実は登壇者や実行委員会メンバーとのオフレコ話や懇親会での雑談がとても楽しい。 そういったネットワークエンジニアの面白話を発信したいね、 というのが『show int』を始めた理由の一つでした。 先輩エンジニアから教わったノウハウや業界の話を伝えたいという思いもあります。 ネットワークチップについて解説した動画(「ネットワーク機器を支える心臓部 ネットワークチップ(汎用シリコン/ASIC)の世界【ネットワークエンジニアの基本知識】」)は準備に力を入れた甲斐もあり、 多くの方々にご覧いただいています。 「わかりやすかった」といった感想も寄せられ、とても嬉しかったです。 これからネットワークエンジニアとして機器を触り始めるという方におすすめの動画です! 解説動画を撮影する前の準備は正直とても大変です。 もちろん誤ったことは発信できないので、細かいところを調べて資料を作成しています。 それでも、大変さを上回る面白さがあります。 わからなかったことが理解できるようになる喜びや、 自分が楽しいと感じたことを伝えて、 土屋君が共感してくれることはとても楽しいです。
知識の“伏線回収”が面白い
どんな勉強や活動でも、自分の知っている知識と、 勉強や活動から得られた新たな知識が紐付いたときに面白さを感じるのだと思います。 技術だけではなく、組織運営などの活動についても同様です。 結果が期待通りであっても、そうでなくても、それが知識となり、 自分の幅が広がることが嬉しいですね。 歴史、哲学、スポーツ、科学、政治、経済……全部面白いですね。 これまでの知識や経験が、繋がったときの面白さが大好きです。 伏線回収みたいなことですかね。
若手に伝えたい、ネットワーク業界の魅力
インターネットの世界は1社や1組織で完結しません。 他社と繋がり、協力してインターネットを支えるというのは、 他の業界にはなかなかない特徴です。 それを面白がれる方には向いている環境だと思います。 新卒でこの業界を志望してくる人はまだ少ないかもしれませんが、 たまたま配属された方でも配属されてラッキーといずれ思えるようになると思います。 インターネットはなくならないでしょうし、技術を深堀りしたり、 外に出て経験を広げたり、さまざまな仕事の仕方があります。 最新技術のキャッチアップ等、大変なことはありますが、 お客様に必要とされるソリューションを届けたときの喜びはとても大きいです。 私自身、この業界に関わることができて本当にラッキーだったと思っています。
今後の目標
JANOG運営委員の一員としては、 技術者が楽しめる居心地のいい場を提供し続けたいと思っています。 そのためにはまず、自分自身が「面白い」と思えることを発表していきたいです。 自分が面白いと感じたことは、きっと誰かにも響くはずだと信じています。 お客様への提案、『show int』にも、それは通じています。 将来像としては、生涯現役で働きたいです。自分が楽しいと思えて、 なおかつ世の中に求められていることをしていたいです。 のんびり過ごしたい気持ちもありますが、 なぜかつい仕事を入れてしまうんですよね(笑)。
プライベートではまっていること
子育てです。 子どもはSASUKEが好きなので、 自宅に単管パイプを使ってSASUKE風のアスレチックを作りました。 まずは、好きなことや得意なことに夢中になってくれたらいいなと思っています。 他には、父親の頑張っているところを見てもらう機会がなかなかないので、 PTA活動には積極的に参加しています。 仕事と家族の時間は明確に分けるようにしていて、 朝のうちに自分のことは終わらせるようにしています。 朝が早い生活なので、夜は21時に就寝していますね。
最後にインターネットに対する、
愛情のこもったメッセージをお願いします!
今まで支えてくれてありがとう。 これからも元気でいてください。 大学3年生で留学していたとき、 当時付き合っていた今の妻とSkypeでやり取りできたおかげで、 ホームシックにならずに済みました。 あのときの自分を支えてくれたインターネットを、 今こうして自分が支える仕事ができていることを、 とても嬉しく思っています。 これからもインターネットの維持発展に貢献して、 かつての自分のように支えを必要とする人の力になりたいです。 これからもインターネットには元気でいてほしいですね。
『show int インターネットの裏側解説』

