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一般会員制度研究委員会
最終報告書

2001年11月5日

 この文書はhttp://www.atlargestudy.org/final_report.shtmlを翻訳したものです。JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品質に責任を負いません。


ICANN一般会員制度についての最終報告書

2001年11月5日

ICANN理事会への書簡
概要
背景
有権者の定義
一般選出理事の議席数
ALSO
調和のとれた合理的アプローチ
はじめに
背景
ALSC
ALSCの支援活動
一般会員の参加と代表制
ユーザー参加の重要性
電子メール基盤の会員制度は支持に欠ける
推奨される会員制度アプローチ
個人ドメイン名保有者
「個人ドメイン名保有者」の定義
一般会員制度の設立
ALSO
ALSOの枠組み
一般会員代表制
会員登録/選挙プロセス
プロセスに含まれるべき要素
結論/次なるステップ
付録

ICANN理事会への書簡

 一般会員制度研究委員会(ALSC)は8月、ICANNにおけるガバナンスの構造に一般会員制度を組み込む問題について審議するために、最終報告書草案を提出しました。今ここに、今年初めに作成されたスケジュールに基づき、報告書草案に関する議論と意見を反映させた最終報告書を提出致します。

 インターネットが世界で最も重要なインフラストラクチャとして急速に発展していくなかで、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は3年前の創設以来、その安定性とダイナミズムを推進するという大切な責務を任されてきました。

 しかし、そのガバナンスの構造は重要な点が不確定なままでした。すなわち、ICANN理事会の構成について、またそもそもインターネットの一般会員コミュニティに代表者が必要なのかどうかをめぐって常に論議が交わされてきました。このような論議は、ICANNがその重要な責務を全うする力を損なうほどの可能性を孕んでいます。

 ALSCは、ICANNの基本コンセプトが素晴らしいものであると強く確信しており、インターネットの利害関係者のコミュニティに幅広く根づいたと考えています。しかしまた、一般会員コミュニティが自らの意見を表明できるメカニズムが合意されかつ実施されることは、組織の安定のために急務であるという考え方にも立っています。

 この8ヶ月間、ALSCは数多くの選択肢を探ってきました。様々な意見に耳を傾け、広くインターネットのコミュニティにこの重要な問題について議論の場を提供してきました。様々な独自の研究を促進し、討議の議事録や選択肢を掲示して対話を促しました。また、レポート草案の発行に続き、ALSCとして、あるいは個々のメンバーが広範な議論に参加し、有益な意見を得てきました。

 しかし、こうした数々の努力を重ねても、問題への高い関心を喚起するのは難しいのが実情でした。ALSCは、インターネットコミュニティにおける主要な関心はインターネットそのものの安定性と信頼性にあり、これらの達成に最大の可能性をもたらすと思われる一般会員参加と代表制のシステムはコミュニティの暗黙の了解を得るであろうという結論に達しました。

 権限外ではありますが、ALSCでは、ICANNの現在の責務を、一政府間組織が同等に、またはより良く執り行うことが可能かどうかについても検討してきました。つまり、プロセスの合法性や正規の政府の構造を通した一定の一般からの参加を確実にしつつ、ポリシーと意思決定システムの安定性を確保することが可能かどうかという点についてです。

 しかし、このアプローチにはいくつかの重大な欠点があるとわかりました。ICANNは世界規模での独立運営の取り組みを反映した組織ですが、これは、成功すれば様々な形で大きなメリットをもたらすものです。インターネット標準の開発者やドメインネームシステムおよびアドレスシステムのプロバイダーを参加させ、インターネットユーザーが発言できる場を提供するシステムは、インターネットの安定性と継続的な発展に貢献するシステムとなります。これに関しては、政府間システムが同等の成果をあげられるとは考えられません。

 現在3つの支持組織にグループ分けされる開発者とプロバイダーは、このようなシステムに対し重要な役割を担っています。ALSCは、一般会員制度に伴う数々の問題を回避し、これらの支持組織のみにICANNを任せるべきかどうかについて議論してきました。しかし、ICANNの使命の成功にとって、ユーザーの関心事は非常に重要です。そのため、ユーザーの参加と代表制の効果的なメカニズムをICANNのプロセスに確立することが必要なのです。

 ICANNが開発者、プロバイダー、ユーザー間の調整を図る機関であるという見解に基づき、ALSCは、ICANN理事の議席の三分の一が一般会員から選出されることを推奨します。報告書草案の発行以来3ヶ月におよぶ対話を通じ、この提案が全会一致とはいかないまでも広い支持を得ることが分かりました。少なくともICANN理事の半数が一般会員から選出されるべきだという声もあります。しかし、この意見には明らかな問題点があり、ICANNコミュニティから広く十分な支持を得ることは難しいと思われます。

 ICANN理事の議席の三分の一が一般会員から選出されるシステムは、残りの三分の二の理事によって、極端な場合、一般会員制度の廃止をも含む一般会員代表制に関する定款が変更される可能性をもたらすのではないかという懸念もあります。このような、あからさまな対立は前例がありませんが、一般選出理事のシステムが成立した後は、ICANNにおけるガバナンスの構造を変更する際には、理事会メンバーの圧倒的多数の支持を得ることが要求されるでしょう。

 ALSCは、一般会員からICANN理事の候補者を選出する方法について相当の時間を費やして検討しました。私たちがここで扱っているのは、他に類を見ない独自の組織、独自の機能、真に独自の機構であり、追随できる前例はありません。

 ところが私たちの努力にかかわらず、あらゆる視点から見て絶対に安全な一般選出理事の選出システムはまだ見出せていません。電子メールアドレスに基づく選挙権は、昨年テストされましたが、重大な欠陥があり、国による議席の争奪に対して明らかに無防備でした。さらに深刻なことに、電子メールアドレス保有者を参加させる純粋なオンライン選挙については、データの取り込みや不正行為を防止できるという程度の確信さえ持てず、実施方法はまったく見出せていません。このためオンラインと郵送の組み合わせによるプロセスが必要となりますが、これは複雑であるばかりか、ICANNの財政を脅かす危険もあります。一見魅力的ではありますが、じっくり検証すると実行可能な選択肢ではありません。

 そこで、ALSCはドメイン名に基づいた選挙権のシステムを推奨することに決定しました。また、プロセスへの参加を希望するドメイン名保有者が、同時に一般会員支持組織(ALSO)の創設プロセスにも参加できるようなシステムを提案しました。

 この2、3ヶ月間の議論で、ALSO創設の提案が幅広い支持を得ていることが分かりました。ALSOによって、ICANNのプロセスにおける広範な問題が明確化され、持続的な参加を促し、同時に、選挙における一般会員の役割を高めていくであろうという意見が広く見られました。

 個人ドメイン名保有者を基盤にする選挙システムでは、有権者の範囲がかなり限定されるのではないかという懸念もありました。世界中の何千万人という有権者を見込んでいるものの、やはり、ALSOと選挙に参加する可能性がさらに広がるような方法を探求し続けるべきであると強く感じています。ALSCでは、そのような方法についていくつか検討してきましたが、さらに選択肢が広がることを期待しています。

 これらの勧告を示すなかで、9月11日のテロ攻撃以降、インターネットの安定性とセキュリティ、そして国際テロリズムという悪との対決というグローバルなニーズに関連したあらゆる問題へと注目が移りました。しかし、これはICANNのガバナンスに関する諸問題、特にALSCが今まで調査を進めてきた諸問題を迅速に解決することが強く求められる事態といえます。

 次々と試行錯誤を行って、ICANNを常に混乱の状態に留めようと望む者はいません。今こそICANNがその使命である技術的諸問題、すなわち一般の人々の重大な関心事に対処することにより、安定性と一貫性がもたらされるべき時なのです。

 そこでALSCは、マリナ・デル・レイでの年次会議において理事会がいくつかの重要なステップを採択するよう勧告いたします。これにより、ALSCの一般会員に関する勧告を実施するための初期ステップがタイムリーに進行し、同時に、理事会と一般の人々はさらに報告書を検討する時間を得ることになります。具体的には、2001年11月15日にICANN理事会が一般会員参加と代表制に関する下記の勧告を採択するよう推奨いたします。

  1. 理事会は、個人のインターネットユーザーがICANNの活動に重要な利害を持つこと、ICANNへの完全参加の機会を持つべきであることを認める。

  2. ALSCの最終報告書は評価と検討が可能であるが、理事会は、下記の基本原則が一般会員に関する迅速な行動を導くものであると認める。
    1. 一般会員支持組織(ALSO)を創設し、関心のある個人ならだれでも事前の通知によって参加でき、ICANNのポリシーや(個人間の議論がICANNの意思決定機関と連携するような仕組みを含む)意思決定に一般会員が参加できるような地域基盤の枠組みとする。

    2. 投票者登録と自主財源についての実用的システムをつくるために、一般会員制度は識別可能な現存するコミュニティ(ALSO有権者)を対象とする。(例:ALSCは、会員制度が個人ドメイン名保有者に基づくことを推奨し、妥当なレベルの識別方法を持つ会員制度が他にないかどうか確認する努力を継続している。本案は理事会によって検討されているが、一般会員を組織化するための初期努力を遅らせる必要はない。)

    3. ICANN理事を選出する際に、(ICANN理事の他の選挙区と同様に)一般会員に比例した議席数を提供する。(例:ALSCは、19人の理事のうち一般選出理事を6人とすることを推奨する。本案は理事会によって検討されているが、一般会員を組織化するための初期努力を遅らせる必要はない。)


  3. ALSOは関心のある個人が事前の通知によって参加し、一般会員がICANNへ参加することを地域的に支援するものであるが、ALSO設立に対する関心度を測るために、理事会は、ICANNのCEOに対し支持表明を得るよう要請し、結果を2002年3月のICANN会議で理事会に報告することを要請する。

  4. 理事会は、ALSCが既存の支持組織、他の関連団体およびICANNスタッフとともに、一般会員制度、投票者登録、地域を基盤とする独立運営のALSOについて詳細なプランを提案するための期限を3月31日まで延長することを承認する。

 私たちは、来年末までに完全なICANN理事会を構成するという目標を達成するために、上記のすべてが必要であると確信しています。さらなる審議を要する問題はありますが、ALSCは、来年3月に予定されているICANN理事会で最終決議が採択されるまで存続することを提案いたします。今後も理事会に貢献できることを願っております。

一般会員制度研究委員会

Carl Bildt (委員長)、Chuck Costello (副委員長)、Pierre Dandjinou、Esther Dyson、Olivier Iteanu、Ching-Yi Liu、Thomas Niles、Oscar Robles、Pindar Wong (副委員長).


概要

 一般会員制度研究委員会(ALSC)は、その憲章の実現のため、本報告書とこれに伴う勧告をICANN理事会に提出いたします。本報告書により、理事会から要請された「多様なグローバル・インターネットコミュニティと利害関係者がICANNのポリシーの策定、審議、実行に参加できるような効果的な手段」 i の提示がなされていることをALSC全員が確信しています。

 過去8ヶ月にわたりコミュニティへ広範に働きかけ、会議、オンライン会議はもとより、フォーラム上の1,163ものコメントを検討し、16の世界規模の支援イベントから意見を得、大量の調査報告や研究報告を受け取った結果、ALSCは5つの基本原則を確立しました。これは幅広い支持を得られるものと確信しています。

  • 個人インターネットユーザーはICANNの活動に重要な利害を持つため、ICANNに十分に参加する機会を与えられなければならない。

  • 代表制は、関心を持つ個人が十分な情報を与えられた上での継続的な参加と、一般会員のICANNのポリシーと意思決定への参加を伴う。

  • 一般会員有権者は、識別が可能で、現存する個人インターネットユーザーのコミュニティから成るものとする。

  • 一般会員は(他のICANN支持組織と共に)ICANN理事会メンバーを選出する役割を持つものとする。

  • 一般会員の参加の是非は今や議論の段階を過ぎ、ICANNへの継続的な参加のための組織設立に関し、個人インターネットユーザーや関連団体がどれほど関心を持っているのかを決定する時期である。

 これらの原則に基づき、ALSCは、ICANN理事会に対し以下の通り勧告します。これらは実用的で、実行可能であり、効果的かつ最も合意を得られるものであろうと確信いたします。

  • 「ALSO結成委員会」を組織し、ICANNおよび他のグループと協力して新しい、(財政的に)独立運営できる一般会員支持組織(ALSO)の設立を支援すること、また、一般会員選挙に優先的に着目しながら、本報告書に示された勧告の実現を支援すること。

  • 一般会員の参加と代表制を促進するためにALSOを設立すること。ALSOは、公開のディスカッション・フォーラムに参加したい者ならだれでもなれる「参加者」と、識別が可能で現存するユーザー・コミュニティから成る「会員」で構成され、ALSOのリーダーと一般選出理事を3年ごとに選出する。ALSOは、関心を持つ個人の、十分な情報を得た上でのICANNへの(個人間のディスカッションを奨励しICANNの意思決定機関と連係するようなメカニズムを含む)参加を促進し、ICANNの使命に関連した問題に対し「個人ユーザー」の視点を供与するという特殊な責任にのっとってICANNのポリシーならびに意思決定への一般会員の参加を促進する。

  • まず、(ALSO有権者となる)「一般会員」の定義を「個人ドメイン名保有者」とする。

  • ICANNの使命に関心を持つ個人インターネットユーザーが、合理的なレベルの識別方法(ドメイン名保有という要件はなし)によって一般会員制度に参加できるようなメカニズムについて、ALSO結成委員会が情報を集め、理事会に対して報告を行うよう指示する。

  • 可能ならば2002年末までに、最初はALSO結成委員会の指導のもとに、地域基盤のALSOメンバーの選挙を行い、直接選挙による6名の地域一般会員評議会議員、1名の(国際)一般会員評議会議員、直接選挙による6名のICANN理事会の一般選出理事を同時に選出する。ALSCは現行のアジア・太平洋地域を分割する提案を理にかなったものと見ているが、対立意見や新しい地域を作ることが一般会員制度の実施を著しく遅らせる恐れがある場合は、2名の一般選出理事を現行のアジア・太平洋地域の2ヶ国から選出するよう提案する。

  • 自主運営の、透明性のあるALSOを設立すること。これにより、ローカルおよび地域的な基盤の枠組みとして奉仕し、様々な意見を集約して定義し、会員を取り込み、合意に基づく意思決定を可能にし、他の支持組織と緊密に協力してポリシー策定を行う。最終的にALSOは一般会員評議会によって運営される。

  • 一般会員の代表制および参加計画を採択した後は、ICANNの定款を修正し、将来ICANNのガバナンス構造を本質的に変更する際は、圧倒的多数の賛成が必要であるとする。

 本報告書で詳細に検討されているこれらの勧告は、ALSCの判断では、一般選出理事9議席の維持と電子メールを基盤としたICANNが資金提供する世界規模の直接選挙を支持する層と、世界規模の直接選挙を支持せず、一般選出理事の議席数を削減したいと考える層との間での合理的な妥協案であろうと見ています。これは、合意を得る可能性のあるアプローチです。そして、一般会員制度の成り行きと持続的な一般会員制度の設立に関心を持つ人々が自らの立場を繰り返し主張するような行動を乗り越えて、あらゆる関係者と協力して、このアプローチに基づいた合理的で実行可能な妥協案を見出すことを促すものです。ALSCは、今後数ヶ月にわたり、あらゆる関係者と協力して、計画の実施に当たっての詳細を取り決め、実用的な支援を求めていきます。

背景

 ALSCは、この8ヶ月を一般会員問題の研究に費やしてきました。あらゆる関係者から意見を求め、個人のインターネットユーザーがICANNのポリシー策定や意思決定に効果的に参加する方法について、理事会が幅広い合意を得られるよう支援してきました。また、結果に対する先入観を排し、一般会員の参加と代表制システムの可能性について、すなわち、一般会員によって選出される理事の議席が0%の場合から100%の場合まで、または、個人を代表する政府間モデルから全世界の電子メールアドレス保有者の直接参加まで、広範にわたって注意深く考察してきました。

 そして、ICANNの現行のボトムアップアプローチや一般会員の関与は、インターネットユーザーの利益を強化するために多大な価値をもたらすということが確認できました。しかし、理事の半分を(一般会員から)選出することにより、公共の、または個人ユーザーの利益が独占的にもしくは最大に保護されるであろうという見解には同意できません。ICANN創設を認可した米国商務省の「ホワイトペーパー」は、すべての利害関係者の代表制に関する一般原則を定義しており、ICANNの発展にとって、(後に述べるような)変化が必要であることを認めています。 ii ALSCでは、既存の3つの支持組織とそれらが選出した理事の活動は、インターネットの安定した運営に貢献し、公共(またはユーザー)の利益に奉仕してきたと考えています。しかしまた、一般選出理事の視点がICANNのガバナンスにとって重要であるという点から、一般会員代表制と参加計画が実施された後、ICANN一般会員制度におけるガバナンスのあり方を本質的に変化させるには彼らの力が必要であると確信しています。

有権者の定義

 ALSCは、電子メールアドレスに基づいて個人を識別するシステムによって、公共(またはユーザー)の利益が確実に代表されるとは考えていません。そうしたアプローチは、多数の有権者が存在する地球規模のスケールにおいては管理的にも財政的にも実行不可能であり、データ傍受から、あからさまな不正行為までの危険性を伴います。また、このアプローチでは、コストがかさんで運営が難しいこと、非ラテン文字を使用する地域や、郵便システムが不十分な地域に暮らす数多くの人々に対し有効に対処することができないことは経験によって明らかです。これが、現在のICANNが取り組まなくてはならない、現実の世界なのです。

 代わって、ALSO有権者となるには、会員がドメイン名を保有または取得し、料金を支払うことが要件となると考えました。これは、まず個人を識別すること、レジストラを通じて分散した方法で会員と連絡がとれること(ICANNコミュニティをさらに強く結びつけることができます)、インターネットのインフラストラクチャに対する会員の直接的な興味を確実に引き出すこと-これこそがICANNの主要な関心事です-にとって有効な手段となります。確かに、この要件と付随する登録プロセスは、身元確認や不正を防止する方法として完璧な仕組みとはいえません。しかし、ドメイン名保有者のドメインネームシステムに対する明白な関心、レジストラへの支払い処理の完了(たいていの場合)、ドメイン名登録の確認、さらに一般会員費の支払いを考慮すれば、無制限の電子メール投票よりも、より高い(そして合理的な)個人識別の水準を提供することができるとALSCは考えています。

一般選出理事の議席数

 ALSCは、理事会を「公共の利益に奉仕する」理事と「機能重視の」理事にニ分するよりは、以下に述べる方法によってインターネットユーザーの利益に貢献することが、幅広い支援を得るための最高のアプローチであると考えます。

  • 利害関係者の関心、あるいは開発者、プロバイダー、ユーザーといった機能別にICANN理事会を構成する。(ALSCは、理事が常にこの枠に収まるとは考えていません。地域的な差異が問題となる場合や、技術面と経済的配慮の対立が問題になる場合などもあります。)

  • 関心を持つ個人すべてがICANNに参加できる機会を与え、一般会員が理事会の三分の一を選出できるようにします。

  • まず、一般会員、すなわちALSO有権者を「個人ドメイン名保有者」と定義します。これは、彼らが、ただインターネットに対してというよりはICANNの活動に強く明白な関心を持っていることと、ドメイン名保有者の圧倒的多数を占めるのが個人と従業員10人未満の企業であるためです。 iii (ALSCでは、一般会員ユーザーの「コミュニティ」は団体を含むものの、投票を行うのは個人のみであると考えます。団体はすでに既存の支持組織において大きな役割を果たしているので、これにより適切なバランスがとれるものと見ています。)

 当然これは、数あるアプローチのひとつに過ぎません。ALSCは幅広い支持を得ることができるアプローチを模索したのです。

 ALSOの枠組みと選挙は、6つの地理的地域、すなわちアフリカ、アジア・太平洋、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・西インド諸島、北米、そして中央/西/南アジア(CWSA)において実施されることを推奨します。ICANNの現行のアジア・太平洋地域が2つに分割されていますが、これは、世界で最も成長著しい地域における人口分布とインターネットの普及率を反映しており、実際的かつ明確な処置であると考えています。しかし、ICANNの現行の5地域の設定については、長期にわたる検討と政府間協議が展開されたことも承知しています。また、各地域にサテライトオフィスを置くという話も持ち上がりそうです。そのため、新しい地域を設定することによって一般会員制度の実施に著しい遅れが見込まれる場合、ALSCとしては、まず現行の5地域に基づいてALSOを展開しその選挙プロセスを実施し、一般選出理事2名を現行のアジア・太平洋地域の2カ国から選出するよう推奨します。

 また、理事の任期は3年間とし、一般会員については2回の選挙サイクル終了後、再評価することを提案します。これにより、一般会員制度はさらに発展し、ICANNがより安定する時間を与えることになり、6年間の経験に基づいて一般会員の参加と代表制システムに必要な変更を行う機会が与えられることになるでしょう。この案の実現には、時宜にかなった支援や開発、そして運営努力が必要となることは明らかです。

ALSO

 一般会員選挙の実施を(最優先事項として)支援し、実施に関する詳細を決定するため、また、ALSOならびにその会員制度基盤の立ち上げをサポートするために、ALSCは、ICANNによるALSO結成委員会と選挙小委員会の設立を提案します。ICANNは、ALSCの詳細な提案に基づき、一般会員選挙に関するガイドラインと手続きを策定し、予算を計画し、一般会員選挙の実施を支援することになります。また、前述のとおり、ALSO結成委員会は投票者を登録・認証する他のメカニズムをも模索していきます。また、定款と憲章、組織的な支援計画、予算案について提案(および実施を支援)します。また、ALSO設立のガイドラインを策定して、インターネットユーザーの利害に関する問題やICANNの技術上、管理上の使命に関する問題について(他の支持組織と緊密な検討を行い)理事会へ提案します。

 ICANNの役割(使命)が限定的であるということに注意を払うことは、ICANNを"乗っ取り"の対象としてそれほど魅力的ではないものとし、また、ICANNがその限られた狭い権限の範疇外にある問題を改善したり紛争を解決したりすることについて社会は期待しないということを確認することになる、ということに言及することは重要です。

 また、委員会は、ALSO設立を支援する際に既存の組織を活用するという勧告を含め、ローカルで地域的な国家別のALSOの枠組みを設置するためのガイドラインを策定することになるでしょう。

 ALSOの組織的な参加のメカニズムと選挙プロセスが、ICANNのポリシーの策定、および意思決定システムとプロセスに個人を参加させ、彼らの関心を反映するという使命を果たすことになるというコンセンサスを形成することは可能であると考えます。個人ドメイン名保有者は、ユーザーとしてICANNの活動に重要な利害を持つため、ICANNに十分に参加し理事会を選出する機会を与えられるべきです。そのためにも、選挙によって選ばれた、地理的に多様な一般会員評議会を設立し、一般会員参加のための枠組みを確立し、ユーザーの意見に注目することが不可欠です。また、ALSOは、ICANNの使命への参加意欲がある人々とのつながりを強化し、ICANNの責務であるインターネットのドメインネームシステムおよびアドレスシステムの技術的調整に対し、彼らが十分納得した上で参加できるようにするべきです。

 一般会員コミュニティの役割に対するこれらの提案によって、ALSCは、ICANNのポリシーおよび意思決定システムとプロセスの確立を支援し、個人インターネットユーザーを含む様々な利害関係者の理解と参加を得ることを意図するものです。これは合意を得た支持を獲得できるシステムの提案であり、ICANNのポリシーがあらゆる利害関係者のニーズ、利益、権利を真に反映するものになると確信しています。策定されたポリシーに不満を持つ人がいたとしても、少なくとも自らの立場が理解され、公平に考慮されていると納得できるようなものであるということです。最後に、すべての利害関係者の利益に注目することは、ドメインネームシステムの安定性を支え、ひいては幅広い一般からの支持を得られるようなオープンなポリシーの策定を促すことになるであろうと確信しております。

調和のとれた合理的アプローチ

 ALSCは、すべての利害を完全に満たすことのできる「一般会員制度」を確立するシステムは存在しないと考えます。リソースは限られており、あらゆる活動において妥協と優先順位づけが必要となる世界だからです。また、ALSCの推奨するアプローチが容易なものではないことも認識しています。(例えば、特定の地域が占有されることについての脆弱性がまだ残っています。)ICANNは、独立運営型の一般会員有権者基盤の設立に関心を持つ人々の新しい意見に常に耳を傾けるべきです。これにより、個人ドメイン名を所有していなくてもICANNの使命に積極的な関心を持つ人々も包括することができるのです。

 ALSCは、これが現在実行し得る、最も調和のとれた合理的なアプローチであると考えており、ICANNの活動に積極的な関心を持つ個人が、ドメイン名を登録し会費を支払うことで簡単に参加できる、総合的に公正なシステムを構築しつつあると確信しています。これは、関心を持つ全ての個人にシステム化された参加の枠組みを提供し、識別が可能で、かつ現存するコミュニティにおける一般会員制度(有権者)に着目し、登録と自己資金の合理的なメカニズムを提供し、(DNSO、ASO、PSOとともに)ICANN理事会を比例的に選出する責任を一般会員に与えるものです。

 ALSCの勧告は、ICANNの審議にかけるため理事会に提出されます。理事会、支持組織その他の関係者、ICANNスタッフの皆様とともに、一般会員制度、投票者登録、地域別独立運営ALSOについての詳細案を提案し、質疑応答を行うことを楽しみにしております。

 ICANN一般会員制度に関するALSC最終報告書は下記URLをご覧下さい。
  http://www.atlargestudy.org/

はじめに

 ICANN理事会は、「多様な世界規模のインターネットコミュニティおよび利害関係者がICANNのポリシーの策定、審議、活動に参加できるような効果的手段」への合意を得るために、独立組織である一般会員制度研究委員会(ALSC)を設置しました。インターネットドメインネームシステムおよびアドレスシステムを管理運営する非営利団体にいかにインターネットユーザーの参加を促すかという問題は、(ICANNが発足する)3年以上前から議論や研究が行われており、ICANN理事会に5名の一般選出理事が世界規模の直接選挙で選出されたにもかかわらず、いまだ未解決です。ICANNの成功は、世界中のルートサーバー・オペレーター、インターネットサービスプロバイダー、ネーム/アドレス・レジストリオペレーター、レジストラの有志の協力や、インターネットのグローバルな浸透とアクセス性を脅かす可能性さえ持つ人々からの支援にかかっています。使命を遂行するためには、グローバルな合意と支援、さらに各国政府の追従が必要です。ICANNの意思決定プロセスにおける個々のインターネットコミュニティの適切な役割や機能について論争を続けることは、こうした目標にとって有害となります。

 8月27日の「最終報告書草案」に続いて提出された本報告書は、ICANNへのインターネットユーザーの参加と代表制へのアプローチを提案しています。ALSCは、これを防御可能で、実行可能、効果的で最もコンセンサスを得られやすい提案であると考えています。この提案はICANN理事会へ提出され、11月5日付けでインターネット上に公開されます。ALSCのメンバーは、11月11日にマリナ・デル・レイで開催されるICANN年次会議に出席し、レポートについての討議と質疑応答を行います。ALSCへのアクセスは、オンライン、電子メール、Webサイト(www.atlargestudy.org)を通じて引き続き可能です。

背景

 ICANNの技術上および管理上の使命は限られたものですが、そのような範囲でもその活動が様々な形で世界中のインターネットユーザーのコミュニティに影響を与えうるものです。これは、1998年6月に米国商務省が発行した、ICANN設立を指導するポリシー声明である「ホワイトペーパー」に見出すことができます。すなわち「新組織は、広くインターネットコミュニティの利益を追求する民間組織として運営されるものとする。DNSの運営において、健全で公正、かつ広く受け入れられるポリシーを展開するためには、広く成長を続けるインターネットユーザーのコミュニティから情報提供が必要である。運営システムには、インターネットとそのユーザーの機能的かつ地域的な多様性が反映されなければならない。また、意思決定への国際的な参加を保証するメカニズムが構築されるべきである。」というくだりです。 iv

 世界中のインターネットコミュニティが参加する方法については、ICANN設立以前から常に激しい論争が起ってきました。昨年、相当数の公開討論を経ても明らかな合意に至らないままに、ICANN理事会は、いわゆる「暫定的妥協措置」を採択しました。すなわち、「現職の4名のICANN理事の在任と組み合わせ(任期は2年未満)、自薦による一般会員候補者から5名の理事を直接選挙で選出する。これにより、(少なくとも)一般会員に関する研究の成果が導入されるまでは、ICANN理事会における一般会員の9議席は確保されることになる、というものです。 v

 インターネットコミュニティによるICANNポリシーの審議・決定への情報提供と関与を適切に進める方法について、ALSCが総合的に研究した結果がこの妥協案に一部反映されています。34,035通の電子メールアドレス保有者による世界規模の直接選挙で5名の一般選出理事が選ばれ、2000年11月から議席についています。

 ALSCは、広範かつグローバルな民主的手順を求めて一般会員による管理を主張する層と、ICANNの責務である技術および管理業務の専門家に運営を任せるべきだと主張する層の間で、最も公正で実用的な妥協点を模索することに8ヶ月を費やしてきました。また、参加と代表制の基本的な問題に加えて、昨年の一般会員選挙時に起きた、メカニカルな問題や実務的な問題そして財政的問題を深く考慮するとともに、断固とした意志を持つ少数派によって引き起こされる不正行為、侵害およびデータの取り込みを防止する方法を模索しました。

 一般会員参加についてインターネットコミュニティ全体の合意を得るのは、特にそのほとんどがALSCとつながりを持たないがために、骨の折れる作業です。実際、143,789名の一般会員選挙登録者や5,000名のICANNアナウンスリスト登録者に通知を行い、さらにALSCアナウンスリスト(10月31日付けで5,985名の登録者)の定期連絡でもかなりの働きかけを行ったにもかかわらず、参加と情報提供はわずかなものでした。ALSC支援会議の平均参加者数は約45名、オンラインフォーラムへの意見の掲示は10月27日の時点で100名でした(1,163の掲示のうち半数以上は同じ6名が書き込んだものでした)。ICANNの支持組織やその他の関係者からは口頭(または手紙)でフィードバックを得ましたが、広義の原則を越えるような合意を獲得するに十分な意見が集まったとはいえないようです。

 当然のことながら、これは、一般会員制度の設立が実際どれほど関心をもたれているのかという疑問を残しました。ALSCは、関心度を示すレベルがフォーラムに書き込みをした100人と2000年の一般会員選挙で有効登録となった143,806人の間のどこかであろうと仮定し、3月1日のICANN会議に先立ち、ICANNが「関心の表明」の呼びかけを行うよう提案します。これにより、個人インターネットユーザーのICANNへの持続的な参加を支援する組織の設立に賛成する個人または団体の数を具体化することができます。

 ALSCとのつながりのいかんに関わらず、上記の問題の解決、特に、ICANNが責任を担うインターネットの様々な局面の安定性を損なわないという解決には、あらゆるインターネットコミュニティが利害を持つものです。審議を通して、ALSCは、一般会員制度の設立を支援する意志のある人々からだけでなく、その継続した支援と参加がすでにICANN存続の鍵となっている既存コミュニティや、ICANNの成功に利害を持ち、現実に影響を与える政府その他の関係団体からの合意を獲得することを追求しました。ALSCは、意見が多種多様な場面では調整役に立つようにして意見に注意深く耳を傾けながら、あらゆる議論と証拠を検討しました。ALSCは、この勧告があらゆる関連団体の合意を得る最大の可能性を持つものとしてここに提案しています。

ALSC

 ALSCは、ICANN一般会員制度に関するコンセプト、構造、プロセスを包括的に研究するため、2001年2月にICANN理事会によって設立された独立委員会です。ALSCは、インターネットの技術的調整を目的としたICANNのポリシー策定、審議、活動に、インターネットユーザーが効果的に参加する方法について合意を築き、ICANN理事会に対し勧告を行うという任務を任されています。ALSCの設立憲章によると、ALSCの勧告は、2002年11月に開催される年次理事会で着任するというスケジュールに基づき一般選出理事を選出すべきであるとしています。

 2001年1月26日、ALSC委員長にCarl Bildt、副委員長にChuck CostelloとPindar Wong、そしてALSC事務局長にDenise Michelが就任することが理事会によって承認されました。また、2001年3月13日のメルボルンでの四半期理事会では、資金調達が承認され、ALSC構成メンバーについても批准されました。Carl Bildtが推薦したPierre Dandjinou、Esther Dyson、Olivier Iteanu、Ching-Yi Liu、Thomas Niles、Oscar Roblesの6名が満場一致で承認されました(個々の略歴は付録のURL参照)。理事会の指導に基づき、ALSCメンバーの人選においては、インターネットコミュニティのさまざまな利害を広く反映し、研究に適した地理的および人的多様性を達成しつつ、理事会から指定された時間内で効率的に作業できることを考慮に入れました。

 憲章にあるように、ALSCは、結果に対し、あるいは過去の決定や活動を再検討する決定に関し、先入観を持つことなく任務を開始しました。ALSCの目標は、インターネットコミュニティから意見を得るための適切なメカニズムの構築について合意に基づく勧告を行うことであり、ICANNの効果的かつ効率的な運営と、その技術上、管理上の使命の達成に貢献することです。「合意」に達するかどうかは、最終的にはICANN理事会の決定次第ですが、合理的かつ実行可能な妥協案を作成し、合意を得る可能性のある案を提案します。ALSCは、一般会員制度への幅広い合意を得るため、あらゆる関係者からの意見を求め、世界中の個人や組織の参加を奨励します。そのため、特に次のような問題に取り組むものです。

  • ICANN理事会には「一般会員選出理事」が必要か。

  • もしそうであれば、何名が適当か。

  • 「一般会員選出理事」をどう選ぶべきか。少なくとも次のような選択肢を考慮する。「一般会員」による選出、現行の理事会による任命、他の組織または多数組織による選出または任命、これらの方法の組み合わせ。

  • 「一般会員」による選出が推奨される場合、一般会員制度を設立する際にどのようなプロセスや手順を採用するべきか。もしあるとすれば、会員制度の最低限の基準は何か。正確には、一般会員はどのように一般選出理事を選ぶべきか。

  • 一般会員制度の仕組み、役割、機能はどのようなものになるべきか。また資金調達はどうするか。

  • 一般会員制度とICANNの3つの支持組織との関係はどうあるべきか。

ALSCの支援活動

 ALSCは、世界規模の支援活動、討論、調査、合意を獲得するためのキャンペーンを行い、それらから得た情報を勧告に盛り込みました。このレポートは現在までのALSCの活動を反映したものです。現在までの活動は以下の通りです。

  • 10月31日現在5,985名が登録している自薦の「ALSCアナウンスリスト」への定期的な電子メール連絡と呼びかけ。(143,789名のICANN一般会員メーリングリスト登録者に電子メールでメッセージを送付し、ALSCアナウンスリストへの登録による「参加」を促した。)さらに、Membership Advisory Committeeの元会員、Membership Implementation Task Force、一般会員候補者、ICANN支持組織やその他組織、調査協力団体や関連Webサイトの運営者など、興味のありそうな組織や個人に電子メールを送付した。(注:ALSCにとって、電子メールは世界と接触し、情報発信やフィードバックを得るための主要な手段です。ALSCでは、英語以外にアフリカ言語、中国語、デンマーク語、フランス語、北京語、ノルウェー語、ロシア語、スペイン語、スウェーデン語も受けつけています。)

  • 帯域幅の低いマシンでも閲覧可能な、ALSCのWebサイト(www.atlargestudy.org)での情報提供と参加促進。Webサイトでは、背景情報、ALSC文書(ALSCレポート草案、審議議事録、ALSC設立文書、プレゼンテーション、書簡、告知、プレスリリース、記事など)、概要、ALSC会議の概要と通知、2000年一般会員選挙統計、様々な関係者からの研究報告書、オンラインフォーラム、関連Webサイトへのリンクが掲載されている。

  • 「研究募集」により、数々の国の研究者や関心を持つ個人から、国際組織への個人の参加における役割、要求、プロセス、構造についての調査や研究論文を集めた。*オンラインフォーラムには、100名が参加し、ALSCや他のインターネットユーザーと意見を交換した。(10月27日の時点で1,163の書き込みがあったが、その半分以上は同じ6人によるものだった)(10月27日の時点で、フォーラムには書き込みをしていない60人の登録者がいた)

  • 既存のICANN構成団体や支持組織との会議

  • 一般の人々にALSCの活動へ関心を高めてもらい、意見を収集するためのメディアへの広報活動。

  • メルボルン、ストックホルム、シリコンバレー(USA)、モンテビデオで計4回のALSC支援会議が開催され、ALSC設立憲章について様々な角度からの話し合いが行われた。

  • 11ヶ国で12の支援会議が開催され、ALSCの活動と意見収集への意識喚起が行われた。また、ALSCメンバーによって、非公式会議も多数開催された。

  • ALSC実務会議3回と定期ALSC会議の召集。

  • ALSCの初期結論と一般会員制度システムについての意見募集について記した「ディスカッションペーパー」を7月12日に配布しコメントを求めた。


  • 討論を促し、情報を引出すために一般会員の参加と代表制システムの仮説を掲載した選択肢テンプレートを7月30日に配布し、コメントを求めた。

  • 「最終報告書草案」を8月27日に配布し、コメントを求めた。

 この8ヶ月間、ALSCのメンバーは一般会員問題について深く討議を重ねてきました。個人ユーザーをICANNへ参加させるための、あらゆる領域の選択肢を検討しました。選択肢とは、既存のICANN諮問機関を通しての情報提供から、新しい一般会員組織の設立まで、また、一般会員選挙によって全理事を選出する場合から、一人も選出しない場合までを含むものです。ALSCは指示されたとおり、一般会員に関する諸問題、決定ならびに活動について「ゼロから」先入観のない研究、調査を行いました。その調査は、どんな疑問も残さないほどの徹底ぶりでしたが、これは、ALSCの最終勧告をより実用的で、実行可能で、効果的なものにするために役立ったと確信しています。

一般会員の参加と代表制

 ALSCは、寄せられたあらゆる意見を検討し、ICANNの発展と昨年の一般会員選挙の実際、機能的意味においての透明性と責任の必要性、ICANNが直面しているコストと資源の制約、ICANNの使命遂行の必要性などをすべて真剣に検討してきました。これにより、個人インターネットユーザー(一般会員参加者)のICANNポリシー策定と意思決定への参加と、ICANN理事会における個人インターネットユーザー代表は必要であるという結論を得ました。また、一般選出理事とALSOリーダーを選出するため、一般会員制度は自薦による個人ドメイン名保有者(一般会員)によって適切に構成されるとも結論されました。

ユーザー参加の重要性

 ICANNの現行のボトムアップアプローチや個人インターネットユーザーの関与は、インターネットコミュニティ全体の利益へ焦点を当てることを強化するために多大な価値をもたらすことが確認できました。(インターネットコミュニティ全体の利益のために運営される)ICANNには「公共の利益」に対する責任があるため、個人に役割を与えることは(非営利組織や公共の利益を追求する組織等と同じく)意義あることです。ICANN創設を認可した米国商務省の「ホワイトペーパー」は「新組織は、広くインターネットコミュニティの利益を追求する民間組織として運営されるものとする。DNSの運営において、健全で公正、かつ広く受け入れられるポリシーを展開するためには、広く成長を続けるインターネットユーザーのコミュニティから情報提供が必要である。」と述べています。 vi

 ICANNは、政府ならびに既存の支持組織だけでなく、普段の関心は他に向いていても、ICANNの活動に影響を受ける人々に対しても責任があります。ICANNの技術上、管理上の使命は一見限られたものに見えますが、その活動は個人インターネットユーザーに無数の影響を与え、(興味を喚起する)可能性があるのです。こうしたユーザーは様々な価値を持ち、個人的、政治的あるいは経済的な利害を代表します。彼らの関心は、非ラテン文字のドメイン名、個人や団体の身元情報や所在地確認のためにIPアドレスやドメイン名を使用する可能性、ICANNとの契約のもとに独立組織が提供する様々なサービスの競争と選択(または非選択)、ドメイン名の知的所有権問題、新gTLDの導入、gTLDやccTLDの運用、といった問題にあります。

 ストックホルムで開催されたALSC会議でのTelnicのGreg Block氏のコメントが、状況をうまく表現しています。「新しいgTLDの増大により、私たちは新しいタイプのドメインに直面しています。これは、例えばナイキのロゴを全てのドメイン名の最後につけるのと哲学的に同じく、マーケティングや強力なブランド創出に適しています。新gTLDの中にはデジタルなナイキタウンと呼べるほどの効果を創出できるものもあり、gTLDを使用し、関連するディレクトリやポータル、その他数々の関連サービスを利用することにより、注意深くパッケージ化され管理された例を示すものがあります。また、プライバシーや個人の権利がどうなるのかといった問題が明らかになっていない中で、明確な主張ができる個人を理事会に選出することは重要です。」 vii

 こうした見解には異議もありました。ASOのアドレス評議会議長であるHans Petter Holen氏は、同会議で、「ICANNとは、インターネットプロトコル、アドレス、ドメインの3大領域を扱う組織です。だから、一般会員制度設置の必要性に疑問を感じております。」と発言しています。 viii

電子メール基盤の会員制度は支持に欠ける

 ICANNにおける個人インターネットユーザーの役割の大切さは確認されましたが、ICANN理事会の半数を電子メールアドレス保有者による直接選挙で選ぶことにより、ユーザーの利益が独占的にもしくは最大に保護されるであろうという見解については、注目すべき証拠も論拠も見出せませんでした。インターネットを利用する、世界の16才以上の個人にICANNリーダーの決定権を自動的に与えるという見解には、あまり支持が集まっていないようです。特筆すべきは、NAISのレポート ix であり、ALSCフォーラムの参加者100名の圧倒的多数と同様にこの提案を支持しています。 x この見解は明らかに考慮する必要があります。しかし、ICANN構成団体やその他の利害関係者による賛同を得ていない状況を見ると、このアプローチが必要な支持を獲得できていないことは明らかです。

 ALSCは、インターネットコミュニティにおける主要な関心はインターネット自体の安定性と信頼性にあり、これらの達成に最大の可能性をもたらすと思われる一般会員参加と代表制のシステムはコミュニティの暗黙の了解を得るであろうという結論に達しました。しかしまた、ICANNの使命を理解しているかどうか疑わしい世界中の有権者が、電子メールを基盤とした直接選挙でICANN理事会の半数を選出することは、その効果を不安定なものにしてしまうのではないかという懸念が、ICANNコミュニティ内に幅広く残っています。

 電子メールアドレス保有者を識別し、認証し、組織化するのは非常に困難で、また、そのアドレス自体、一時的なものであることが多いようです。4億人のユーザー(2002年末までには6.73億人、2005年末までには10億人になると見込まれています。) xi をICANNのユーザー代表制の基盤とするのは実際的ではないでしょう。世界で利用されているメールボックスの数は、昨年の5.05億個から2005年には12億個に増加するとの予測が報告されています。2003年までには、メールボックスの半数が、電子メールプログラムからではなくWebブラウザからアクセスされることになるという予測もあります。 xii もちろん、その全員が一般会員になるとは考えていませんが、この中のほんの数パーセントしか参加しないにしても、インターネットの電子メールコミュニティの範囲を特定し、登録、識別や必要なサービスについて認識しておくことは重要です。

 昨年の一般会員選挙において、世界の電子メールアドレス保有者の参加を試みたことは、現状では克服できないメカニカルな問題や不合理な財政負担といった問題を残すことになりました。電子メールアドレス保有者で構成される有権者を扱うのなら、ICANNが十分に情報を得た有権者を創出し、断固とした意志を持つ少数派による不正行為、侵害あるいはデータ取り込みを防ぐことができるような合理的な方法は見つかりません。世界の電子メールアドレス保有者を、ICANNのポリシー策定と意思決定システムへ参加させることはさらに負担が増大するでしょう。(これに対して必要な努力は実行不可能なものになります。)ALSCの見解では、一般会員代表制には、構造化された参加のメカニズムが伴わなければならないというコンセンサスが生まれつつあります。

 理論上のメリットはどうあれ、電子メールアドレスによって個人に連絡を取るという試みは、世界規模では管理的にも財政的にも実行不可能で、データ取り込みや明らかな不正行為の発生という危険があります。また、各国政府が個人ユーザーの関心を代表し理事会に参加するという考え方も受け入れられません。このアプローチは明らかに合意を得ていません。ALSCのストックホルム会議でAT&TのMarilyn Cadeはこう述べています。「政府は、ユーザーあるいは政府機関が望むからといって、必ずしも迅速に動くものではありません。ICANNのプロセス改善の必要性や誰がどう取り組むかについての問題を、政府が参加すべきかどうかという問題と混同してはなりません。司法権(電子商取引関連)について話し合われたハーグ協議の顛末を思い出してください。7年間も草案のままでした。また、ヨーロッパ・サイバー犯罪協定評議会にいたっては、秘密裏に草案が作成され、民間部門やNGOの参加は一切ありませんでした。」 xiii

推奨される会員制度アプローチ

 合意を獲得するための最善の基盤と、公共の利益に奉仕するための最善の方法には次の事項が必要となります。開発者、プロバイダー、ユーザーといった機能別の振り分けによってICANNを組織する。個人ユーザー(一般会員)を「個人ドメイン名保有者」と定義する(ICANNの活動に対し、強く明白な関心を持つALSO有権者となるため)。すべての個人インターネットユーザー(一般会員参加者)にALSOに参加する機会を与える。一般会員に理事会の三分の一を選出する機会を与える。(開発者、プロバイダー、ユーザーといった機能別振り分けによってICANNを組織するという提案にあたり、ALSCは、ICANNの既存構成団体を広く代表することを追求しましたが、ICANNの現行の組織構造については特に勧告を行っていません。また、一般選出理事以外の議席数の割り当てについても提案していません。ALSCでは、組織によっては、一つ以上の機能を満たす場合があることを認識しており、また、これがすべてのインターネット利害関係者向けに広く理解されることを望むものです。)

 ALSCは、ALSO指導者と理事を選挙で選ぶために一般会員がドメイン名を保有するという要件を課すことは、個人を識別すること、レジストラを通じて分散した方法で会員と連絡がとれること、インターネットのインフラストラクチャに対する会員の最低限の知識を保証し、興味を確実に引き出すこと-これがICANNの主要な関心事ですが-を可能にする方法であり、実行可能な妥協案であると考えています。

 すべての電子メールアドレス保有者はALSOに参加でき、最低限のコストでドメイン名を取得できますが、若干の努力も必要となります。ALSO有権者を志望する人にわずらわしさを感じさせないためにも、ALSO結成委員会が適切なサポートができる組織を特定し、そういった組織を奨励することを提案します。また、ICANNの使命に関心を持つ個人インターネットユーザーが、合理的レベルでの身元確認によって一般会員に参加できるような他のメカニズムについて、ALSO結成委員会が意見を収集し、理事会に報告するよう提案します。

個人ドメイン名保有者

 個人ドメイン名保有者は、ICANNの活動に対し明らかに関心を高めつつあり、ICANNへの組織化されたユーザー参加と代表制の効果的な初期基盤を形成することができます。同じく重要なのは、一般会員制度の基盤を個人ドメイン名保有者とすることが、合意を得た支援を得る最も有効なアプローチであることです。ドメイン名を保有することは、一般会員有権者への参加を促す合理的な発端となり、また、納得した上での参加システムを確立すれば、一般会員組織がICANNの責務である公共の利益の実践を支援できます。現在、.com、.net.、orgレジストリには約3000万の第2レベルドメイン保有者が、また、ccTLDと.eduレジストリには約1100万相当のドメイン名保有者が存在しており、その数は膨大です。まもなくこれに新gTLDレジストリが加わり、その数はさらに増加することになりますが、これは一般会員制度発足の合理的な基盤となるでしょう。一般会員コミュニティの組織によって、ドメイン名保有者をALSO有権者の基本とする方法は、その適切性がさらに高まります。例えば、VeriSignレジストラは顧客の75%が個人または従業員10人未満の中小企業であると見積もっています。 xiv

 電子メールアドレス保有者の身元確認は困難ですが、このアプローチなら、識別可能で現存するコミュニティにおける一般会員制度に着目し、登録と自己資金の合理的なシステムを得ることで、個人インターネットユーザーの構造化された参加とコミュニケーションのための枠組み構築を期待できます。また、レジストラとともに初期支援を行い、個人ドメイン名保有者を登録Webサイトにつなげ、さらに、レジストリとともにドメイン名を確認することにより、ICANNの一元的な実施が困難なプロセスを分散化します。一般会員制度をICANNの使命への参加意欲のある人、DNSの知識を持つ人とつなげることにより、具体的には、ドメイン名登録とその維持、一般会員活動への資金供与、ALSOへの参加によって制度が強化されます。

 構造化された一般会員の参加は、ユーザー、プロバイダー、開発者の関心を調整する重要な手段であり、世界中のユーザーの関心についての情報源となります。ICANNの創設は、世界中のインターネットコミュニティがインターネットのドメインネームシステムおよびアドレスシステムの運営における合意を得たポリシーを策定し、情報提供をオープンに行えるようにするためのものです。しかし、現在のICANNの構造は、個人による適切な直接参加システムがないため、彼らの関心を代表できていません。既存の支持組織は、専門家の立場から理事会にアドバイスを行うために組織されたものです。これらの支持組織による一般参加の機会提供は非常に限られています。政府(およびICANNの政府諮問委員会)は有用であるものの、個人参加に適したメカニズムとはいえません。

 個人ドメイン名保有者で構成される一般会員制度は、個人ユーザーの関心を代表するため、また、関心を持つすべてのインターネットユーザーによる世界規模のコミュニケーションと参加を促進するために必要です。また、世界中の一般会員が最も重要とみなす事項に基づきICANN理事会が有意な比率で選出されることを保証するものです。

「個人ドメイン名保有者」の定義

 ALSO有権者となるために、「個人ドメイン名保有者」を「登録ドメイン名」の「事務連絡担当者」と定義し、また、「登録ドメイン名」を「レジストリTLDのドメインにある登録名で、2つ以上のレベルから成り立つものであり(例:john.smith.name)、そのレジストリオペレーター(または、レジストリサービス提供を行う関連会社)は、レジストリデータベースのデータ維持や維持の手配を行い、その作業から収入を得る。」と定義することを推奨します。 xv

 一般会員制度をさらに明確にするために、ALSCは下記事項を推奨します。

  • ドメイン名の各個人事務連絡担当者は、会費を支払って一般会員となる選択権が与えられる。

  • 事務連絡担当者である個人が複数のドメイン名を扱っていても、1一般会員となる(また、一般会員選挙の投票権も1となる)。

  • 一括登録を行うISPなどの団体は、ドメイン名保有者(事務連絡担当者)に一般会員となる機会について通知することが求められる。

  • 個人ドメイン名保有者に基づく一般会員制度に焦点を絞るため、登録ドメイン名(上記の定義のとおり)のうち権限を委譲したドメイン名の登録は不適格とする。

 ALSCは、一般会員制度に「個人ドメイン名保有者」を利用する場合、大小の公共機関のドメイン名登録により著名人が含まれてしまう可能性があることを認識しています。一般会員投票の特権が与えられるのは個人事務連絡担当者のみです。ALSOは個人ユーザーのための組織ですが、個人がICANNにおいて「さまざまな顔を持つ」こともあり得ることを理解しています。また、一般会員制度と代表制に関与するためにドメイン名を保有するといったことがあり得ることも認識しています。しかし、一般会員制度の会費や、地理的多様性のニーズを反映した地域別選挙といった要素が、この問題に対処できるであろうと考えます。

 一般会員制度にとって完璧なメカニズムであるとは明言できませんが、合意を得た支援を獲得するために、これは最高の方法であろうと考えています。ALSCでは、組織が、多数の個人ドメイン名保有者を組織のために投票させようとしたり、投票に関与することはないという仮説を検討しており、こうした行為を調査し、回避する方法について意見を求めています。個人投票はプライベートなものであり、一般会員のプライバシー保護についての最終決定の内容によっては、1組織のドメイン名を代表する個人保有者が突然増加する可能性もあります。選挙に関与しようとする組織の試みは、最終的に本人にはねかえってくることになります。少なくともそのような組織の試みのいくつかは組織を公表することになり、苦情を受ける可能性があるからです。ALSCでは、組織の自由な発言の権利を認めた上で、どのようなルールや手順が世界規模で適当かについて意見を求めます。

一般会員制度の設立

 一般会員制度を設立するにあたり、ALSCは、ICANNがALSO結成委員会の指導のもと支援努力を行うよう提案します。一般的な支援に加えて、委員会がレジストラと協力して、ドメイン名登録インフラストラクチャを使用し、現在のまたは将来その見込みがある個人ドメイン名保有者の事務連絡担当者に、一般会員制度への参加と財政支援の機会があることを通知します。またALSCでは、自発的な寄付や草の根活動によってALSOを迅速に組織することは多大な利益をもたらし、委員会がそれをどのように達成するかを決定することを奨励します。

 また、一般会員制度とその参加および代表制に向けた活動は、会費によって自己資金調達できるようにすることを提案します。ICANNは資源の限られた非営利組織であるため、一般会員が年会費を支払うことが妥当です。会費徴収が個人の入会を妨げる場合もあるでしょう。しかし、これは、自己資金調達により、ALSOが(ICANNを含む)他の資金援助から独立するというニーズに則っており、結果的には、一般会員活動を支える意欲を持つ会員制度が確立し、よりレベルの高い公共奉仕とその効果がもたらされることになるのです。いくつかの証拠により、ALSCは、昨年の一般会員選挙への最初の参加基準が低すぎたことで、ICANNにさほど興味のない人が、簡単だからという理由で、または単に国家主義的競争という「奨励」によって、多数参加してしまったのではないかと懸念しています。

 例えば、「ICANN選挙キャンペーンにおける日本の経験」を著した小倉利丸氏はこう述べています。「彼らがICANN選挙の意図を汲んでいないのは明らかである。JIF(日本インターネットフォーラム)は郵政省の指導のもと、(アジアではなく)日本のICANN理事を選出するために設置された。郵政省の指導のもと、民間部門がJIFに取り込まれたが、日本では民間部門と政府は分離していないため、政府を排除するだけでは十分とはいえない。日本のISPのなかにはICANN選挙キャンペーンを展開したものもあり、日本人の投票を促進するために特別なWebページが作られた。従業員に登録を行うよう指導する企業も数社あった。例えば、日立の内部資料によると、同社は1,500人を登録するよう割り当てられ、経営陣は各オフィスや部門ごとに、3人ずつ登録するよう割り当てた。そして、ノルマを果たさせるために報告書を要求したのである。」 xvi

 ドメイン名の所有権、コスト、確認、そして会費は、国家主義的競争や関心を持たない個人の参加といった問題の抑止につながり、同時に、選挙ルールの確立を促進し、ルールが破られた場合の成り行きを決めることとなるでしょう。

 個人ドメイン名保有者の基準はALSCが見出した最良の選択肢です。しかし、ドメイン名の料金を支払えない(または、ドメイン名を必要としていない)が、一般会員有権者にはなりたいという個人もいるだろうと考えます。権利剥奪にならないためにも、ドメイン名の保有が、ALSO有権者となることを志望する人にとって障害とならないよう適切な支援ができる組織をALSO結成委員会が特定し、奨励しなければなりません。例えば、国連開発プログラム(UNDP)はALSCと対話を持ち、彼らの活動が一般会員制度にどのように貢献できるのかを話し合いました。これは、他の世界的または地域的な組織にとっても追求する価値がありそうです。ALSCでは他の案は見つかっていませんが、ALSCは、委員会が本件について検討を続け、一般会員に参加し、ICANNの使命に関心を持つ個人インターネットユーザーを合理的なレベルで身元確認するメカニズムが他にないかを理事会へ報告するよう推奨します。時間とリソースを追加すれば、他の関連団体の協力により、委員会は一般会員の特別ドメインや対面型登録を可能にするような新しい選択肢を発見できるかもしれません。

ALSO

 ALSCは、最も合意を得る可能性のあるアプローチは、ICANNへの個人の参加と、ポリシーの策定と、意思決定システムおよびプロセスへ個人の関心を反映させることであり、これらのICANNへの期待を実現するには、関心を持つ個人インターネットユーザーの構造化された参加と個人ドメイン名保有者の代表制が必要であるという結論に達しました。

 ALSCは、ICANNへの一般会員の参加を促進するために、一般会員支持組織(ALSO)の設立を提案します。ICANNの現行システムは、個人インターネットユーザーを直接参加させ、彼らの利益を代表するという期待を実現していません。DNSOは組織の再構築が必要だという点でALSCはDNSOと合意していますが、ASOとPSOは総合的にうまく機能しているようです。しかし、ALSCでは、3つの支持組織とも、持つとオープンになり他を参加させるようにしなくてはいけないと見ています。ICANNにおける数多くの審議と決定を検討しましたが、文書からは「合意を得た」意思決定プロセスがどこに示されているのかわかりませんでした。多くの例では、「オープンプロセス」の決定に対する意見が、十分に検討され、文書化され、取り込まれたかどうかは不明でした。

 ALSCは、理事会が支持組織の内部活動を支えるスタッフの提供について検討することを提案します。情報共有、公共への働きかけと教育、見解のまとめとプレゼンテーション、メーリングリストとWebサイトの保守、様々なICANN構成団体・支持組織・理事会の間の調整、合意を得た意思決定の文書化にともなう問題に対処するには、専従スタッフを追加し、支持組織のプロセスの検討が必要です。また、ALSO結成委員会は、(ユーザーの選択を含む)一般会員のプライバシー保護と同時に、彼らを教育し、そのポリシーへの支持を集めようとする様々な組織や関連団体とのオープンで透明性の高いコミュニケーションを奨励する特定のメカニズムについて情報収集するよう提案します。

 関心を持つ個人すべてが「ICANNのボトムアップの合意形成」に参加する機会を与えられ、また、それを可能にするメカニズムを確立するようにすべきでしょう。ALSOは、ICANNが個人の活力と経験をより生産的に組織化するべきであると考えます。すなわち、より広いコミュニティが問題を理解できるようにし、個人が責任を持つて、オープンかつ予測可能な方法でフィードバックを返し、実体のある影響を及ぼすような仕組みを確立することが大切です。

 ALSO設立の提案に際し、一般会員の構造およびプロセスは以下の目標の達成に貢献するであろうと考えます。

  • インターネットコミュニティの利益のための運営というICANNの使命を遂行する。これは、インターネットの技術的な名前と番号のインフラストラクチャを管理し、ICANN内ですでに十分反映されてきた営利と公共の利害を調整することで達成できる。

  • 安定した、責任のある、オープンかつ予測可能な方法で確実にICANNが運営されることを保証する。

  • ICANNの目標である、関係団体からの幅広い、文書化された合意を得た意思決定を達成し、自発的な応諾を高める。

  • ポリシーへの参加と影響を与える実際的な方法を提示し、関心を持つコミュニティからの知識と支援を得る。

  • 個人ユーザーの視点を関連した問題の調整に反映させる。具体的には、技術的問題の決定に技術面以外の考察を持ち込むと同時に、ICANNに対し「技術面以外の」世界で重要あるいは論争を起こしかねない問題について、事前に警告する。

  • 「技術面以外の」コミュニティと「技術的な」コミュニティの双方が、彼らの関心とその活動が与える影響をより効果的に広く一般に説明できるよう支援する。

 構造化された方法で個人インターネットユーザーを直接代表し、参加させることは、ICANN理事会がインターネットコミュニティ全体に対して責任を持ち、ICANNが「ボトムアップかつ代表制で運営され、広範なインターネットユーザーコミュニティからの意見を受け入れる」 xvii という職務の遂行に明らかに貢献します。本報告書のなかで最も重要な勧告は、一般会員参加システムの構築であり、すなわち、地域を基盤とし(最終的には問題を基盤とする予定ですが)、十分に情報が与えられた上での個人のICANNへの参加を支援するALSOを設立することです。

ALSOの枠組み

 ALSCは、2002年のALSOの枠組みおよび一般会員選挙を、6つの地理別地域に基づいて実施するよう推奨します。これにより、地理的に多様な各地域のALSO一般会員評議会議員と、ICANN理事会の理事となる各地域の一般選出理事(各選挙の当選者)6名を同時に選出します。昨年の一般会員選挙は5地域で行われましたが、これに第6番目の地域を新規追加することを提案します。これら地域の名称および構成は次のようになります:中央・西・南アジア(CWSA)地域、構成国はインド(.in)、パキスタン(.pk)、アフガニスタン(.af)、カザフスタン(.kz)、ウズベキスタン(.uz)、キルギスタン(.kg)、トルクメニスタン(.tm)、タジキスタン(.tj)、スリランカ(.lk)、モルジブ(.mv)、イラク(.iq)、イラン(.ir)、イスラエル(.il)、シリア(.sy)、ヨルダン(.jo)、レバノン(.lb)、パレスチナ自治区(.ps)、クウェート(.kw)、UAE(.ae)、イエメン(.ye)、オマーン(.om)、バーレーン(.bh)、カタール(.qa)、サウジアラビア(.sa)(付録のISO 3166-1リスト参照)。これにより6名の一般選出理事ならびに一般会員評議会議員は、ICANNの地理的多様性という要件を満たすことが可能となるでしょう。また、選挙区を6つにすることで、占領を防ぎ、グローバルな代表制と包括性が保証されることとなります。

 私たちの提案は、ICANN定款に定められた5地域(アフリカ、アジア・太平洋、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・西インド諸島、および北アメリカ)を踏まえたものであり、一般選出理事には、各地域から少なくとも1名以上の市民を含むことを義務付けるものです。地域別選挙により、人口が多い国やインターネット普及率の高い国が理事を独占することが防げます。また、全体としての議席の占領も発生しづらくなります。なぜなら、どの組織も各地の一般会員を多数組織しなければならないからです。加えて、第6番目の地域を設定するという今回の提案は、成長目覚しいアジア・太平洋の人口分布ならびにインターネット利用の実態を反映するものです。日本を除くアジア・太平洋地域におけるインターネットユーザー数は、2005年までには米国を上回ると予想されます。当地域におけるインターネットユーザー数は、昨年は6,400万人でしたが、2005年には2億4,000万人以上になる見通しです。 xviii

 ALSCは、既存の5地域がICANNの他の多くの組織部門にすでに深く関わっていることを承知しています。地域数変更に伴い、地理的多様性をさらに広い意味で再評価する必要が生じるでしょう。また、各地域への国の振り分け方には異論があり、時間がかかることも承知しています。私たちの考えは正しい方向を向いていると考えますが、これにより一般会員制度の導入が著しく遅れるのであれば、ALSCとしては、既存の5地域原則に基づいてALSOの展開を図り、その代わり、一般選出理事2名を現行のアジア・太平洋地域の2カ国から選出するよう提案します。

 ALSOの選挙で選出された各地域の一般会員評議会は、各地域出身の議員5名と理事1名で構成されます。地域別グローバル一般会員評議会には、各地域から2名ずつが参加し、ALSO構造の構築を支援する責任を担うことになります。このALSO構造とは、ローカルおよび地域別のALSOの枠組みの支援活動と教育、会員の取り込み、意見集約、合意に基づく意思決定を促進するものです。さらにまた、他の支持組織と緊密に連携し、ICANNの技術上および管理上の使命であるインターネットユーザー・消費者に関する問題に対処しポリシーを策定するためのものでもあります。一般会員評議会にローカルおよび地域における組織の構成を支援する責任を与えることで、ALSOは重要な枠組みを持つことになります。つまり、この枠組みにより、一般会員は、それぞれの言語で一般会員に関する問題について学び、討議することが可能となり、他の地区・地域のユーザーとの共通点を見つけることができるのです。それが結果的には、理事会に有益なユーザーアドバイスの提供となるわけです。

 草の根の一般会員コミュニティがALSOに参加し、ALSOのあり方に寄与する機会を確実にするために、ICANNの当初の援助ならびに組織化の努力は、ALSO結成委員会の指導のもとに行われることが望ましいでしょう。また、同委員会が、憲章および細則の草案、支援計画、選挙手順などALSOの設立に必要な活動を策定するよう提案します。結成委員会の委員は、一般選出理事が1名以上含まれ、多様な地域ならびにさまざまな専門家の代表で構成されることが必要です。

一般会員代表制

 理事会の再編成に関わる今回の私たちの提案もまた、上記の目的に基づいたものです。質の高い理事で構成される理事会が「ユーザーの声」や多様な利害を確実に代表することが何よりも重要なのです。

 前述のように、合意を得るための近道は、理事会を一般選出理事とその他の利害関係者とにニ分するのではなく、開発者、プロバイダー、ユーザーという機能別にICANNを組織すること、そしてそのユーザーの定義を、(ALSOを設立し、その有権者となる)「個人ドメイン名保有者」とすることだとALSCは確信します。また、ユーザーがICANNに十分に参加し、理事会議席の三分の一を一般選出理事が占めること、各地を代表する理事を選出する機会を提供することも欠かせません。これにより、理事会の構成は、6名の一般選出理事、12名の他の支持組織が選出する理事(現在はDNSO、ASO、およびPSO代表)、そしてICANN事務総長兼CEOとなります。DNSOは、より効果的な構成および意思決定のプロセスを実現するため再編成されるものと考え、一般選出でない議席数の割り当てに関してはここでは言及しません。

 一般会員に理事会議席の半数を割り当てることでユーザーの利益が最大限に図れるという動議に関して、ALSCは慎重に検討しましたが、最終的には理論的根拠が健全ではないという理由で却下しました。ICANNの発展とその責務を考慮すれば、機能面から再編する方法がより合理的で、最も合意を得やすいでしょう。一般選出理事に6議席を割り振ることで、ユーザーは比例的な役割を得ることができ、いずれかの支持組織がICANN内で過度の影響力を行使するのを防ぐことが可能です。一般会員参加のシステムが成立した後、これに関わるICANN定款の変更には圧倒的多数の支持を必要とすることが提案されています。ALSCは、この案を実施するべきだと考えます。

 このような理事会の構成により、ICANNの支持組織をより広範に効率的に代表することが可能となると考えています。現行のやり方では、一般選出理事は特定の支持団体がなく、一般会員制度と交流を図る効率的なメカニズムもありません。しかし、私たちの今回の提案は、自己資金とスタッフを有する、ローカルおよび地域を基盤とする一般会員支持組織に焦点を当てるものです。ユーザーの関与ならびに地域別評議会という広基盤の構造とすることで、ALSOは、非常に多くのユーザー会員が一般会員の意見の展開と収集、合意による意思決定への参加、一般会員が統一見解を提示することを促進し、ポリシーの策定においても、他の支持組織と緊密に連携していけるのです。

会員登録/選挙プロセス

 ALSCは、昨年ICANNがグローバルなオンライン一般会員選挙を実施したことを大いに評価するものです。この結果、5名の一般選出理事が選出され、ICANN理事会で活躍しています。さらに特筆すべきは、ICANNが実施後15ヶ月の開発途上の選挙制度を変更して、(間接ではなく)直接投票を成し遂げたという事実です。これにより、5,000の登録を処理可能なシステムを確立し、最終的には176,849の登録が行われました(うち143,806が有効登録)。しかもこれは、極めて限られた予算(当初20万ドル)と限られた職員によって、ほとんど何の指針もなしに達成したものです。

 改選されない一般選出理事の議席についてはさておき、選挙ではその手順において制度上の多くの問題が明らかになり、電子メールアドレス保有者による今後の選挙に関して深刻な疑問が生じるところとなりました。以下にこうした問題を列挙します。

  • 143,806件の有効登録が受理され、うち76,183が有効承認され、34,035が今回の投票に参加した。50%から45%が棄権したがその理由は不明。いずれにせよ、これは選挙手順に何らかの問題があることを示す。

  • 34,035名の投票。これは、予測有権者数の1%の100分の一(0.01%)である。選挙は、一般的な民主主義の基準に則るべきだが、これで実際に基準に合致するかどうかは疑問である。

  • 選挙経費は一票につき$10.28から$15.43と見積もられている。経費の43%は、登録者へのPINレターの印刷費や郵送料、切手代、手数料などで、かなり流動的なものであった。これは、電子メールアドレス保有者である有権者の数を考えれば、ICANNにとって「予算割れ」の数字である。

  • 9,721通のPINレターが(宛て先不明につき)返送されてきた(2001年8月19日時点)。その92.2%は、アジア地域宛てのものであった。つまり、全有効登録者の6.8%は、投票ができなかったことになる。郵便の効率性に関して疑問がある。

  • 33,670数の登録申込が中国からなされた。これは全申し込み数の21.2%である。しかし、China NICのモー・ウェイ理事は、「私たちの調査では、多くの中国のユーザーが言葉および手続き上の問題で苦慮したことが分かった。登録、投票を試みた中国のユーザーのうち、一般会員選挙に参加できたのは10%以下と見積もっている」と述べている。 xix 技術、認証プロセス、言語はいずれも、投票参加に至る深刻な障害と思われる。

  • 攻撃的で国粋的な登録の呼びかけが行われた形跡がある。これは、きちんと情報を与えられた上で、(ICANNに)真剣に取り組むべき一般会員制度のあり方に関して疑義を生じるものである。

  • 同一IPホストアドレス、同一住所での複数登録のケースが多数見つかっている。これは、不正である場合もあるし、そうでない場合もある。この検証は非常に困難であった。登録終了後、不正もしくは不正の疑いにより、33,043数、つまり18.7%の登録が有効記録データベースから削除された。

  • システム設計が完璧ではなく、障害が起きやすかった。サービス拒否も何件か起きている。2,800名の一般会員は、投票しようとしてエラーメッセージを受信している。また、登録情報が含まれている可能性のある登録スクリーンが、セキュリティ保護のないインターフェースでつながれていたケースもある。

 Chuck Costello氏は、Carter Centerの民主主義プログラムの所長として、またICANN一般会員選挙モニターとしての立場から次のように述べています。「投票者リストの信頼性には疑問がある。しかも当のリストによって、投票可能な有権者のプールが決定されてしまう。従来の郵便による郵送システムを会員申請者個人の真偽検証に用い、複数登録を阻止する方法では不正が起きやすい。コンピュータのセキュリティプログラムなら、同一住所使用のパターンを特定可能だが、このシステムでは、同一住所に複数会員がいても合法と見なしてしまう。つまり、一軒の家でも、家族が別々の電子メールアドレスを持っていてもおかしくないから。複数の電子メールアドレスを使って何度も登録をしようと思えば、制御網をくぐってシステムをごまかすことはさほど難しくない。したがって、大規模な組織的不正が行われれば、選挙結果が変わってしまうリスクもあるだろう。アジア地域においては、確かに一括登録が行われており、個々のPINの秘匿性が損なわれているとすれば、他者に成りすました登録、投票という問題も生じる。」 xx

 Kent Crispin氏は、選挙期間中ICANNに技術支援を提供しましたが、ALSCフォーラムへの書簡の中でやはり同様の指摘をしています。「6月下旬に、単一のIPアドレスから1500もの登録がなされていることが、偶然発見されました。明らかに日本からでした。これで赤信号がついたのですが、最終的には打つ手はないという結論に達しました。明らかに怪しいのですが、それが合法である可能性もあるわけで、確かめる方法がないからです。つまり、ICANNは、不正の可能性のあるこの1500の登録を確認不可能だからという理由で受け付けたわけです。しかも、この単一IPアドレスからの1500もの登録は、ICANNが見つけた疑わしい事象の一つに過ぎません。他にもおかしな登録はいくつもありました。たとえば、調べてみたところ、電子メールからWeb向けのゲートウェイを使用したコンピュータからの登録もいくつもありました。こうしたサイトがどう管理されているのか、このインターフェースをどうやって宣伝したのか、なぜ設置されたのか、何も分かりません。また、勝手にICANNサイトを設けて、まるでICANNの代理のようなことをやっていた組織もあります。中には、単なるICANNの翻訳サイトのように見えながら、ICANNスタッフの誰も読めないような言語で書かれていたものもあります。ですから、簡単には分からないのです。こうしたサイトの大半は、偶然に発見されたものです。たまたまおかしな登録がある、というわけで誰かが気づいたから分かったのです。何かしらの不正選挙をたくらんだWebページは、選挙が終わったとたんに姿を消したでしょうし。ですから現在の結果が、実際に投票した人たちの考えを反映しているかどうか、確かめる方法はありません。それに、自分が投票するために登録したのかどうかも知らない有権者もいるのではないでしょうか。」 xxi

 このような選挙の対価は、ALSCにとっても懸念材料です。Mike Roberts氏は「ICANNにおけるより良い代表制の実現に向けて」と題する論文の中で、「経費は35万ドル以上」と見積持つています。つまり、一登録会員につき約$2.40、一登録投票者につき$4.60、そして、一投票につき$10.28です。総経費のうち、およそ15万ドルつまり43%は、登録者への郵送物の印刷費や郵送料、切手代、手数料などで、かなり流動的なものであり、その郵便には各自のPIN番号が記載されていました。残りの20万ドルは、主としてプロジェクトの固定費であり、ハードウェアやソフトウェアの購入費、システム設計の契約やプログラミング、試験、設置、最適化のための経費、投票システム・ベンダーの契約費、翻訳その他の会員および一般支援サービス、会員および投票者向け情報および通信経費、臨時の事務支援、プロジェクト管理の経費です。一般会員プロジェクトには、ICANNの間接経費や事務所支援、一般コンピュータ設備、管理等の経費は一切課されておりません。加えて、このプロジェクト期間中、専門技術者が数百時間もの無料奉仕をしてくれました。したがって、記録上の総経費は35万ドルですが、実際の経費を全てICANNの帳簿に載せた場合よりも、もしくは全てを契約ベースで行った場合よりも25%から50%低い数字なのです。しかし、経費の一部は、こうした初めてのプロジェクトにありがちな性格のものであり、中には量産すれば安価になる性質のものもあります。これは、理事会が今後の一般会員理事の選出手順に関して下す決定いかんで変ってくるものです。」 xxii

 ALSCは、個人電子メールアドレス保有者に基づいて、効率的な一般会員有権者の構築とグローバル選挙を実施することは不可能であり、不正やデータの取り込みが生じると考えます。代わりに、会員がドメイン名を保有するという要件は個人の識別に有効であり、かつ各自がインターネットのインフラストラクチャに直接関心を持つことを保証する方法として役立つことが分かりました。ALSOリーダーシップによる先行選挙により、ALSOの独立組織の設立に弾みがつくものと確信します。すべてオンラインでの選挙にすれば、お金も時間も節約できます。会員の定義を登録ドメイン名保有者とすることで、(完全ではないにしても)信頼性のより高い投票者の確認につながり、経費がかさみ、頼りにならないPIN郵便を利用しなくても済みます(不正防止の作業はいずれにしても必要です)。これはまだグローバルには実施されていませんが、国によっては、ドメイン名保有者によるオンライン選挙で有望な結果が出ています。たとえば、カナダ・インターネット登録認定権者(CIRA)の理事会選挙などです。 xxiii ALSCは、一般会員制度の登録と選挙プロセスがさらに発展し、統一性や公正さ、財政の基準に見合うものになるであろうと楽観しています。

 ALSOのリーダーシップを作り上げるために、ALSCは、グローバル選挙を6つの地理別地域において行うこと、各地域でALSO会員が1名の理事を選出し、その1名が3年の任期でICANN理事会に務めることを推奨します。各地域の最高得票者で理事となる1名に加えて、次席を得た5名の候補者で地域の一般会員評議会を構成します。各地域選出の理事は、職権上当然、地域の一般会員評議会の議員となります。各地域の一般会員評議会は、異なる国の出身である2人の委員を選び、グローバルALSOの一般会員評議会の議員となり、ALSOを管理します。

プロセスに含まれるべき要素

 一般会員制度の設立初期に使え、今後ICANNおよびALSO組織化に有用であろうプロセスに含まれるべき要素は以下の通りです。

  • アウトリーチ(働きかけ) - 一般的な支援努力として、ドメイン名保有者に対し一般会員となる機会があることを伝える。

  • 合意 - TLDレジストラおよびレジストリと、個人ドメイン名保有者への連絡、検証にドメイン名登録インフラストラクチャを使用する点に関して合意を結ぶ。gTLDおよびccTLDレジストラ、レジストリの両者とも、一般会員制度の構築に協力してくれると期待される。認定レジストラとの合意と任意プログラムとによって、ccTLDのドメイン名保有者の会員申請が可能になると思われる。ただしこれは、ccTLDレジストリがALSOの検証およびマーケティング手順に応じることに合意した場合のみである。

  • 通知、現行個人ドメイン名保有者(IDNH) - ICANNは、レジストラと協力し、全ドメイン名事務連絡担当者に通知を行う必要がある。これらの担当者は、次の3条件で、一般会員に「参加する」ための情報ならびに機会が提供される。すなわち、登録Webサイトと情報(名前、ドメイン名、電子メールアドレス、住所、電話番号、秘匿・連絡希望を含む)を提供すること、一般会員代表制と参加のための活動に使用される初期の一般会員匿名メーリングリストへの加入に合意すること、年会費を支払うことである。会員登録を複数回行うことはできない。(IDNHがレジストラを変更した場合、記録保持のための適切な手順を開発する必要がある。)

  • 通知、将来のIDNH - ICANNはレジストラと協力し、上記活動を承認することによって一般会員に参加できるように、それぞれの登録プロセスにホットリンクを加え、ドメイン名事務連絡担当者を直接、登録Webサイトにつなげる必要がある。レジストラは、ICANNと協力し、いずれは一般会員制度をドメイン名の登録ならびに更新プロセスに完全に統合していくことが期待される。

  • ALSO会員制度データベース - 登録プロセスを完成させるには、ALSO登録Webサイトで、該当するレジストリに質問をして、IDNHの情報を検証することが必要となる。従来のデータ分析を用いて二重登録を防止することも考えられる(拡張可能提供プロトコル(Extensible Provisioning Protocol)を用いて自動的に行うことが可能)。

  • 最終的にALSOは、投票レジストリおよびデータベース・処理システムの管理の責任を持つ。当該システムは、登録者からの払込金や会員情報の受け取りや、ドメイン名保有の検証、二重登録の除去、投票契約者に投票レジストリからの有権者データベースを提供するために用いる。

  • 選挙 - 選挙の各段階での管理は、投票用紙の決定から有権者教育や対話、投票に至るまで、全て外注契約とすることが推奨される。(ICANNとは全く無関係のところで、より多くの有権者教育や対話がなされると考えられる。)

  • 再検討 - 選挙サイクルが2巡した時点で一般会員制度の登録および選挙を徹底的に再検討する。

 ALSCは、選挙小委員会が以下の構成およびプロセスに基づいて一般会員選挙のための提案作成を行うことを推奨します。

  • 投票用紙 - 昨年の一般会員選挙時と同様に、各地域の候補者名簿を作成する。これは、ICANN候補者指名委員会ならびに自由指名の両方の手順を介して、投票用紙には、有識かつ有資格の候補者名が記載され、自由な選択ならびに投票の利便が保証されることとする。指名委員会が3名の候補を選び、自由指名候補者の中で推薦者数の多い上位6名が、各地域の投票用紙に記載されることが提案される。

  • 有権者教育と対話 - 昨年の一般会員選挙同様、候補者Webページおよび質疑応答フォーラムを使用する。加えて、一般会員匿名メーリングリストを利用することで、開かれた対話が促進されるであろう。会員も、初期メーリングリストを介して、独立第三者の作った他リストに加わることもできる。

  • 投票 - 昨年の選挙時と同様に、選択投票制度を用いて、6地域における理事を各1名(最高得点者、投票総数の50%プラス1票以上)と、5名の出身地を異にする地域評議会委員(次点となった、5カ国からの5名の候補者)を決定する。

  • 任期 - 理事の任期はすべて3年とする。後任理事は、前任理事とは出身国が別でなければならない。

結論・次なるステップ

 ALSCは、本報告書の主要な要素に関するICANNの検討が最終結論に至るまで引き続き協力していくつもりです。さらに、理事会がALSO結成委員会および選挙小委員会に対し、ALSCおよびICANNスタッフと協力し、以下に挙げる勧告を実施するよう提案します。

  • 2002年3月のICANN会議において、ローカルおよび地域のALSO組織を設立することに国際社会がどの程度の関心を持っているかを報告する。それにより、関心を持つ個人および一般会員による、納得した上でのICANN活動への参加協力が促進される。

  • 初期ALSO活動支援基金の基となる詳細な予算の作成。これにより、ALSOは十分な時間を費やして独立かつ安定した資金調達資源を探し、当該経費を相殺できるような外部からの経済的支援者を探すことが可能となる。

  • ALSO設立のための指針。その使命は、一般会員支援と教育、会員の取り込み、意見の集約、合意に基づく意思決定、そして、他の支持組織と蜜に連携し、各種問題に取り組み、ICANNの技術上および管理上の特別な使命に含まれるインターネットユーザー関連問題のポリシーを決めること。(ALSOが策定するポリシーは、ICANNの慣行同様、他の関連支持組織においても参照される。)
  • グローバルなALSOの枠組み構築のための、ローカルならびに地域ベースのALSO組織設立のガイドライン。

  • グローバルな支援および組織化キャンペーン。ローカルならびに地域レベルでのインターネットユーザーの関与に焦点を当てたもの。

  • 一般会員プライバシー保証の方法。かつ、ICANN問題に関するオープンで透明性のある教育および会員間協議を最大限に促進する方法。

  • 拡張可能提供プロトコル(Extensible Provisioning Protocol)を使用した、一般会員制度加入希望者のための、自動更新および登録者データ収集法の検討。

  • 会員登録手順、およびレジストラからの支払いと会員情報を受け取るデータベース・処理システムの管理用RFPの発行。

  • 一般会員制度登録実施のためのTLDレジストラとの合意。

 以上は、現在理事会の審議のために提出されている推奨案です。すでに述べたように、ALSOは、理事会ならびにICANN構成団体、利害関係者と協力し、今後生じるであろう、そして、さらなる討議・努力が必要となるであろう、実施上の問題に対処するつもりです。ICANNが一般会員制度に関し、最終的な成功に至る解決策を見出すまで、私たちは支援を惜しまないつもりです。


付録

ICANNの背景
http://www.icann.org/general/abouticann.htm
ALSC憲章
http://www.icann.org/committees/at-large-study/charter-22jan01.htm
ALSCメンバー
http://www.atlargestudy.org/members.shtml
ALSCフォーラムコメント
http://www.atlargestudy.org/forum.shtml
ALSC支援イベントおよび会議リスト
http://www.atlargestudy.org/calendar.shtml
ALSC支援イベント、実務会議の要旨
http://www.atlargestudy.org/meetinginfo.shtml
ALSC「研究論文募集」および提出リスト
http://www.atlargestudy.org/studies_list.shtml
ALSCディスカッションペーパー#1
http://www.atlargestudy.org/DiscussionPaper1.shtml
ALSCオプションテンプレート
http://www.atlargestudy.org/template.shtml
選挙データ
http://www.atlargestudy.org/documents.shtml
拡張可能提供プロトコル
http://www.ietf.org/html.charters/provreg-charter.html
ISO 3166-1リスト
http://www.din.de/gremien/nas/nabd/iso3166ma/codlstp1/index.html

i 一般会員制度研究委員会憲章(2001年1月22日ICANN理事会により承認)
http://www.icann.org/committees/at-large-study/charter-22jan01.htm
ii 『ホワイトペーパー』- インターネットの名前およびアドレスの管理 記録番号:980212036-8146-02、米国商務省電気通信情報局ポリシー声明 (1998年6月5日)
http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/domainname/6_5_98dns.htm
iii VeriSign, Inc. はALSCへ送付した電子メールの中で、「VeriSignレジストラは、顧客の75%以上が個人あるいは従業員10人未満の中小企業であると推定している」と述べています。
iv 『ホワイトペーパー』同章より
v 一般からのご意見募集:At Large Study(2000年11月27日にICANNにより掲載)
http://www.icann.org/committees/at-large/study-comments.htm
vi 『ホワイトペーパー』同章より
vii ALSCストックホルムでの支援ミーティング会議記録(2001年6月5日、スウェーデン・ストックホルム)
http://www.atlargestudy.org/stockholm_outreach_meeting_summary.shtml
viii ALSCストックホルムでの支援ミーティング 同上
ix 『ICANN, Legitimacy, and the Public Voice: Making Global Participation and Representation Work』NGO and Academic ICANN Study (NAIS)レポート(2001年8月31日)
http://www.naisproject.org/report/final/naisreportUSLetter.pdf
x ALSCオンラインフォーラム 過去の議論のアーカイブ
http://www.atlargestudy.org/forum_archive/index.shtml
xi Computer Industry Almanac, by Egil Juliussen and Karen Petska-Juliussen
http://www.c-i-a.com/200103iu.htm
(職場あるいは家庭で毎週インターネットを利用している成人ユーザー数を計上。インターネットユーザーの定義は、16才以上でインターネットを定期的もしくは不定期的に利用している人とする。)
xii IDC's third annual E-mail Usage Forecast and Analysis, 2001-2005
http://www.idc.com/software/press/PR/SW091701Bpr.stm
xiii ALSCストックホルムでの支援ミーティング 同上
xiv VeriSign, Inc.からALSCへの電子メール(2001年9月26日)により確認
xv .comレジストリ契約第1.6項を参照:
http://www.icann.org/tlds/agreements/verisign/registry-agmt-com-25may01.htm#I-6
xvi ALSCストックホルムでの支援ミーティング 同上
『Japanese Experience about ICANN Election Campaign』(小倉利丸)も併せて参照
http://marux.org/~ogura/ogura_report20010605.html
xvii『ホワイトペーパー』同章より
xviii InfoWorld(2000年4月30日)
http://www.nua.ie/surveys/index.cgi?f3DVS&art_id3D905356709&rel3Dtrue
xix ALSCストックホルムでの支援ミーティング 同上
xx Charles Costello氏(Carter CenterのDemocracy Programディレクター)によるICANN選挙に関するレポート
http://www.markle.org/News/Icann2_Report.Pdf
xxi ALSCオンラインフォーラムを参照
http://www.atlargestudy.org/forum_archive/index.shtml
xxii 『Towards Improved Representation in ICANN』(Mike Roberts)
http://www.atlargestudy.org/roberts_paper.html
xxiii CIRA選挙情報を参照
http://www.cira.ca/news-releases/47.html

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