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"Status Report of the Internationalized Domain Names Internal Working Group of the ICANN Board of Directors"
翻訳文

(社)日本ネットワークインフォメーションセンター
最終更新 2001年 7月 31日

この文書は2001年6月1日に公開されたhttp://www.icann.org/committees/idn/status-report-05jul01.htmを翻訳したものです。

 

国際化ドメイン名(IDN)に関するICANN理事会内部ワーキンググループによる現状報告

目次

I.IDNワーキンググループの今日までの活動
 A.設立
 B.使命(Mission Statement)
 C.調査票
 D.専門家との協議
II.調査回答の概要
 調査A:技術に関する質問
 調査B:ポリシーに関する質問
 調査C:現在行なっているサービスについて
III.次のステップ
 A.実態調査
 B.IDNワーキンググループ

付録
 調査A:技術に関する質問
 調査B:ポリシーに関する質問
 調査C:現在行なっているサービスについて

I.IDNワーキンググループの今日までの活動

A.設立

ICANN理事会は2001年3月13日、オーストラリア メルボルンでのICANN理事会において、決議[1.39]を承認し、IDNワーキンググループが設置されました。決議内容は以下の通り:

「理事会は、ドメイン名の国際化を取り巻く技術上・ポリシー上の問題について、 より一層の理解を促すために、国際化のための様々な取り組みや提起されている諸問題を明確化し、また、この取り組みに参加している技術専門家やその他関係者と対話を持ち、そして、理事会に対して適切な勧告をすることを目的とした内部ワーキンググループの設置を指示する」

理事会は加藤幹之氏を当ワーキンググループの議長に、そして、Karl Auerbach 、Ivan Moura Campos 、Vint Cerfの3氏をそのメンバーに任命しました。

B.使命(Mission Statement)

2001年4月、IDNワーキンググループは、その使命(Mission Statement)をICANNウェブサイトに掲載しました。そこには、当ワーキンググループが以下の3つの質問群に関して実態調査を実施することが述べられています。

  1. 国際化ドメイン名(IDN)によって引き起こされる技術的問題として、どのようなものが認識されていますか?それらの問題の解決策として可能なものは何ですか?また、それらの解決策の長所と短所は何ですか?

  2. IDNによって引き起こされる法律上またはその他のポリシー上の問題としては、どのようなものが認識されていますか?また、その問題の解決策として可能なものは何ですか?

  3. 実際に今どのようなIDNの取り組みが進行していますか?その規模はどのくらいですか?また、上記のような技術的・法的問題に対してはどのような立場をとっていますか?

この使命の記述によると、当ワーキンググループの「果たす役割は、理事会ならびにICANNコミュニティへの情報提供のための実態調査に限定されるものであり、これによってICANNは、その使命であるインターネットドメイン名とIPナンバーの技術的な管理を遂行できるものとする。当ワーキンググループが、IDNの技術標準を設定することはない。」ということが明確にされています。

C.調査票

当ワーキンググループは、上述した3つの質問群への回答を集めるため、3つの調査票を用意しました。これらの調査票は2001年4月30日にICANNウェブサイトへ掲載され(http://www.icann.org/committees/idn/survey-30apr01.htm)、2001年5月10日を回答期限としました。さらに、IDNに関係する多数の団体・個人へも電子メールで調査票が送付されました。2001年5月20日の時点で、当ワーキンググループには14件の回答が寄せられました。

D.専門家との協議

当ワーキンググループのメンバーはまた、IDNに関係する諸団体とも会合を持ち、情報収集に努めました。加藤氏は、2001年3月14日にメルボルンで開催された Multilingual Internet Names Consortium (MINC) の会合に出席しました。MINCはIDNへの取り組みに関する独自の調査を行なっており、当ワーキンググループとしては、その調査結果が得られることを期待しています。加藤氏はまた、2001年4月1日にヨルダン・アンマンで開催されたArabic Internet Names Consortium (AINC) の設立者会議へも参加しています。

II.調査回答の概要

以下に掲載するものは、2001年5月20日の時点で寄せられた回答をまとめたものです。第III項で説明する通り、当ワーキンググループでは以下の調査結果に対するコメントを募集すると共に、引き続き調査票への回答も募集しています。

以下、調査回答の概要です。

調査A:技術に関する質問

1.非ラテン文字をドメイン名として利用可能にする技術には、現在どのようなものがありますか?

2~4つの基本的なアプローチがあるという回答が複数の人々から得られました。素人的に分かり易く言うと、ドメインネームシステムは元々ASCII形式のラテン文字を処理するよう設計されました。これは、インターネットやDNSが米国や西欧で最初に開発・展開されていた頃には理に適うものでした。IDNを扱うには、2つの基本的なアプローチがあります。1つは、ドメイン名を、GB、BIG5、SJISなどのローカルエンコーディングの状態、または、UTF-8のようなUnicode Transformation Formatの状態でインターネット上に送り出すというものです。このアプローチでは、完全な相互運用性を維持するために、インターネット全体に渡ってサーバの設定を変更する必要が出てきます。実際、回答の中には、これらの多様な文字種に対応するために、DNS全体の再設計が必要であるという指摘もありました。このため、このアプローチはIDNへの「サーバ側」のアプローチと呼べるでしょう。

2つめのアプローチは、ユーザ側のコンピュータでローカルエンコーディングもしくはUnicodeをASCII Compatible Encoding(ACE)に変換するというものです。このアプローチの1つに、Row-based ASCII Compatible Encoding(RACE)があります。これによって、ドメイン名はASCII形式でインターネット上に送られることになります。この変換アプローチでは、ユーザがIDNを利用したい場合、ASCIIへの変換を実現させるために適切なソフトウェアが必要になります。このため、このアプローチはIDNへの「クライアント側」のアプローチと呼べます。

様々な団体から、これら2つの基本的なアプローチによる、種々の具体的実装方法が提案されました。さらに、クライアント側、サーバ側双方の変更が必要なハイブリッド型のアプローチも提案されました。

2.「1.」でお答え頂いた技術について。その長所と短所は何ですか?具体例を挙げてお答え下さい。

サーバ側のアプローチの主な長所は、クライアント側での実装が不要だということです。IDNを利用しようというユーザのコンピュータには、既にローカルエンコーディングがインストールされているはずです。短所としては、世界中のインターネットサーバを修正するのに相当な時間がかかってしまうこと、DNSに対して根本的な変更が企てられた場合に対抗代替ルート(alternate roots)が作られてしまう恐れがあること、その結果、同一のドメイン名が複数存在し得ること、といった点が挙げられます。同一のエンコード値が異なる文字セットを表す場合もあり、セキュリティの問題につながる可能性もあります。

クライアント側のアプローチの主な長所は、サーバ側での実装が不要なため、理論的には早期の実現が可能だということです。短所としては、ユーザ側で変換用ソフトウェアをインストールする必要があること、JISのようなローカルな文字セットをUnicodeに変換した上で、さらにASCII形式に変換するのが難しいこと、ドメイン名の長さが限定されること(調査A質問9への回答を参照)、そして、知的財産権にからむ問題(調査A質問11への回答を参照)などが挙げられます。

3.特定の文字に関して、より多くの問題が起きるということがありますか?またその理由は何ですか?

文字種によっては、複数のローカルエンコーディングの仕組みがあるという回答結果が得られました。さらに、繁体字と簡体字を持つ中国語のように、1種類以上の文字種を持つ言語もあります。中国語はまた、膨大な文字数を抱えています。アラビア語では、句と句の間のスペースによって、文字の意味や文字の形が違ってきます。また、ヘブライ語では、特定の文字が省略されることがあります。こういったことが、上述の2つのアプローチが現在抱えている複雑さを特徴づけています。

4.技術に短所が見受けられる場合、誰がその問題解決に取り組んでいますか?

Internet Engineering Task Force(IETF)にはInternationalized Domain Name Working Group(IDNWG)が設置されており、この問題に熱心に取り組んでいます。その他の組織としては、Unicode Consortium、MINC、Chinese Domain Name Consortium(CDNC)などがあります。回答の中には、特定の文字種(質問3への回答を参照)に関する具体的な問題については、地域レベルで解決するべきだとの指摘もありました。

5.その解決策として、どのようなものが検討されていますか?そのうち最も有望な解決策はどれですか?問題解決の実現までに、後どのくらいの期間が必要ですか?

IETFは、クライアント側のアプローチの一つであるInternationalized Domain Names in Application(IDNA)に焦点を当てて取り組んでいるのではないか、という回答が多く寄せられました。Walid社は、その主張によると、IDNAの幾つかの点において同社が保有する特許を読みとることができると発表しています。特許問題は別として、IETFでの作業が完了するまでには、最低6ヶ月はかかるという回答が複数ありました。

サーバ側のアプローチも、いくつか進められています。中には、広範囲にわたるDNSの再設計が必要となるものもあり、その完全な実装までには10年かかるかもしれません。

Neteka社は、クライアント側、サーバ側双方を変更するハイブリッド型のアプローチを進めています。

6.現在、国際化ドメイン名(IDN)の標準として一般に認められているものはありませんが、その理由は、競合する技術が複数存在するからだと思いますか?それとも、内在する問題があまりに困難なために、未だ最良の解決策が見つからないからだと思いますか?

IDN問題は極めて複雑なため、理想的な解決策がないとする回答がいくつかありました。さらに、様々な利害関係者が存在し、また、様々に異なるアプローチは、それぞれ異なる優位性をもっており、その優位性を判断する観点も様々です。Neteka社は、利害関係者を「システム管理者・運用者」「エンドユーザ」そして「技術者」といった形でグループ分けしています。Register.com社は、「インターネットコミュニティにとって最も重要であるというDNSの本質から、可能性のあるすべての解決策の長所と短所について、十分な理解を深めることが重要であり、インターネットの安定性を脅かすことのない方法で導入していくことが大切である。」と答えています。

7.現行の「テストベッド」や事前登録は、IDNの技術的問題解決に役立っていますか? もしくは、妨げになっていますか?どのように役立って/妨げになっていますか? 運用試験は現行のインターネット運営に影響を与えると思いますか?

回答者の多くは、正当なテストベッドによって運用を経験できることは、解決策を理論から実践へ移行させるのに役立つのではないかと感じています。しかしながら、テストベッドの中には、特定の技術を、その適切性や品質にかかわらずインターネットコミュニティに受け入れさせようとしているものもあるとの意見もありました。また、ICANNが承認する範囲外での代替的な名前空間を創設することにつながりかねないテストベッドもあり、それは言い換えればユーザの混乱を招くことになり得る、との回答もありました。

ある回答者は、テストベッドに関するユーザからの期待には、注意して対処する必要があると答えています。ユーザは、テストベッドがインターネットの運用の一部であるかのような印象を持ち、テストベッドにおける技術的な誤りに関して、それを正常なテストの過程の一部としてではなく、インターネットの運用上の問題として認識してしまうかもしれないというわけです。

John Klensin氏はさらに、「正しく定義されていないテストベッド」や「単純に8ビットで行こうとする戦略」は「現在基準を満たした上で普及しているソフトウェアにダメージを与える危険性を産み出す・・・」と言っています。(調査A質問16よ り)

Stefan Probst氏は、VeriSign社のテストベッドによって、レジストラは面倒な立場に置かれたと述べています。一方では、ISOCが技術の標準化に先立つIDN登録に反対しており、他方、登録をさせないということは顧客を失うということを意味していたわけです。同様に登録者も、ISOCの警告に従うか、あるいは、自分の名前をサイバースクワッターから守るかの選択を迫られたわけです。

8.自然言語はあまりに複雑、豊富で多様なために、ユーザの期待に完全に応えることのできる真のIDNシステムの実現は、現在の技術力の限界を超えていると思いますか? その問題解決に当たっては、ドメインネームシステム全体の運営を妨害することなく、漸進的に行なうことは可能ですか?

ドメインネームシステムは、自然言語による問い合わせに対して、一貫して適切な結果を返すといった“ディレクトリ・サービス”の提供を目指したものではないとの回答が複数ありました。DNSは、例えば大文字小文字を区別しないなど、言語に関わる特定のエラーを少なくするということを最初の設計の段階から織り込んでいますが、英語においてさえ、同じ単語の変形を区別することやその他の微妙な違いを区別することは不可能です。

こういった理由から、自然言語に関わる問題や、ユーザから文脈に応じた対応を期待されることは、IDNを使用する上での適正範囲から外れるものであると考える人もいます。彼らはドメイン名を単なる識別子と捉えており、IDNの使用は、DNS上で識別子として使用される文字に関して、より広範囲の文字種の対応を追加することを目的としていると考えています。しかし、ドメイン名の性質はその開始時点から進化してきており、今や個人や企業のウェブ上でのアイデンティティを意味していると考える人々もいます。

識別子(identifier)からアイデンティティ(identity)への進化というわけです。従って、DNSは自然言語のルールを最大限組み入れるよう努めるべきです。DNSより上層のディレクトリ・サービスは、こういった増大するニーズに対応する一つの方法だと思います。

回答者の中には、自然言語の問題は地域レベルで対応するべきだと忠告する人もいました。ユーザの期待を適度に和らげるためには、ユーザにDNSの限界について教える必要があります。また、自然言語のルールを導入する際には、インターネットの安定性を脅かさない方法で、とりわけ名前の一意性を損なわないようにして行なわなければなりません。

9.個々の技術は、ドメイン名のサイズ制限にどのように影響していますか?もし影響しているとすれば、その解決策としてどのようなものが可能ですか?

ドメイン名は255オクテットまでに限定されており、1セグメント(ピリオドとピリオドの間)につき63オクテットまでとなっています。異なる文字セットを表すには、異なるオクテットの数が必要となります。非ラテン文字のエンコーディングには、大抵ラテン文字よりも多くのオクテットが必要になるため、IDNではラテン文字のドメイン名ほど長くすることはできません。技術専門家は、非ラテン文字によるドメイン名に包含できる文字数を増やすために、様々な圧縮アルゴリズムを検討しています。

10.IDNは、WHOISデータベースの技術的運営に特別な問題を引き起こすと思いますか? もしそうであれば、どのような問題ですか?またその解決策として、どのようなものが可能ですか?

VeriSign GRS社はこのように回答しています。「もしWHOISサービスに国際化ドメイン名が含まれるのであれば、WHOISサーバ自体も国際化されるべきである。一つの可能性としては、クライアントやサーバに加えて、WHOISプロトコル自体も国際化させる方法がある。もう一つの方法は、IDNAアプローチの採用である。IDNはACEフォーマットで保存されるようになっており、WHOISクライアントはWHOISサーバに問い合わせをする前に、ユーザが国際化ドメイン名で入力したものをACEフォーマットに変換することができる。」長期的な解決にはサーバ側のアプローチが必要とされるという回答も複数ありました。

11.IDNに関する技術で、特許もしくはその他の知的財産権によって保護されているものはありますか?もしあるとすれば、そのことがIDNを実装する上で影響を与えることになると思いますか?

Register.com社によると、「IDNの解決策の様々な部分について、数社が知的財産権を主張している」とのことです。例えばWalid社は最近特許を受けましたが、その主張によると、その特許はIETFによって検討されているIDNAの幾つかの点において読みとることができるということです。Walid社は、もし同社の特許として開示されている技術の使用を必要とするような標準をIETFが採用した場合には、「互恵主義の原則に基づき、合理的で差別的でない取り決めによる非独占的実施権」を供与するとしています。数人の回答者は、この特許について懸念を表明しており、IETFはIDNAという解決策を続行するかどうかを決定する上で、この問題を考慮に入れるべきだと示唆しています。

Neteka社は、多言語技術に関して特許を出願しています。Neteka社によると、同社の技術はオープンソースとして自由に利用可能だということです。

Stefan Probst氏は、オープンソースライセンスにて利用可能な技術の採用に限り、支持すると答えています。

12.あなたは現在、IDNのためのIETF標準化プロセスに参加していますか(もしくは、過去に参加したことがありますか)?

回答者の多くは、IETF IDNワーキンググループに積極的に参加しています。

13.IDNの標準がIETFによって採用された場合、どのくらいの速度でそれがブラウザーなどのアプリケーションに導入されると思いますか?その導入に際して、何らかの問題が予想されますか?導入プロセスを促進するために、IETFとICANNは何ができると思いますか?

複数の人が、標準が採用されるスピードは、選択される解決策や、採用される標準に関係する知的財産権の取り扱いに依存すると答えています。Walid社は、もしIETFがクライアント側のアプローチを採用した場合、主要なアプリケーションは“数ヶ月のうちに”アップグレードされると考えています。一方、サーバ側での解決がなされる場合、その実装サイクルはひどく遅いものになるとしています。インフラ・ベースでの解決を行なう場合は、その完全な実装までに10年はかかるでしょう。

回答者によると、IETFはできるだけ早急かつ慎重に標準を採用することで、そのプロセスを促進させることが可能とのことです。ICANNはIETFの取り組みの努力と、最終的に採用される標準に対して支援していくべきだと考えます。

14.IETF標準は、その他のIDN標準と相互運用が可能になると思いますか?相互運用に当たっての問題を取り除くために、何ができると思いますか(すべてのccTLD(国別トップレベルドメイン)がIETF標準を採用するわけではないと仮定して)?

広範囲のIDNアプローチがあることを考えると、IETFの標準がすべてのIETFデプロイメントと相互運用可能になることはありそうにないということで回答者の意見は一致しています。Neteka社は、同社のハイブリッド型の解決策で、相互運用性の問題が減少できると言っています。また、Walid社は、技術標準を採用するかどうかは自主的な判断となるが、市場の圧力は標準化と統一性を促進することになると言っています。しかし、VeriSign社は、「IETF標準に従うことが、現在IDNを提供している全ccTLD・gTLD運営者にとって必要である」と考えています。

15.IDNに関して、他に対処すべきユーザからの要求はありますか?

過去のものとの互換性、HTMLもしくはXMLドキュメントに埋め込まれたURLといったようなドキュメント内でのIDNの使用、そして、記号や句読点の導入といった問題が挙げられました。また、Neteka社は、平均的ユーザは高度な技術知識も持っていないことや、大きな変更作業やプラグインの設定などができないということを認識すべきであると主張しています。

16.その他何か技術的問題がありましたらお知らせ下さい。

Neteka社はさらに、ユーザがクライアント側での解決において直面する困難さを強調しています。特に、「平均的ユーザは、なぜ既存のシステムを使って多言語ドメイン名にアクセスできるようになるのか、即座に理解することはできない」という点です。

John Klensin氏は、ICANNは「現在基準を満たした上で普及しているソフトウェアにダメージを与える危険性を生じさせるDNSの不正使用、すなわち、曖昧なもしくは一意性が保たれない名前付けをするようなDNSの不正使用から、インターネットを守るべきである。正しく定義されていないテストベッド、“単純に8ビットで行こう”という戦略、多言語サイバースクワッティングの助長などの危険性がかなりあり、これらはICANNに対して再三に渡り明確に提示されてきているものである。これらに対する解決策は、影響を受ける関連ドメイン名について警鐘を鳴らし始めることであり、もし、先にあげた危険な状況が継続して推し進められるならば、再委任の手続を起こす可能性も示すということが考えられる。もし、私の推測通り、ICANNがこの問題に対処する能力が事実上ない場合は、それを認め、市場によって種々の問題が解決されるまで、この分野から手を引くべきである。」と述べています。

調査B:ポリシーに関する質問

1.国際化ドメイン名(IDN)の価値について、あなたのお考えをお聞かせ下さい。IDNによって誰が恩恵を享受することになりますか?そのような恩恵を受けるという経験上の証拠はありますか?IDNによって損害を受けるのは誰ですか?

回答者は、IDNに対し総じて非常に肯定的な姿勢を示しています。彼らは、世界人口のほとんどは母語の文字としてラテン文字を使用していないと考えています。従って、IDNによるインターネットへのアクセスや、インターネットでのIDNの使用は増加するだろうと考えています。さらに、現在ラテン文字のドメイン名しか使えない企業や組織が、ラテン文字を母語の文字として使用しない人々にアクセスする機会が、IDNによって増加することになるでしょう。このような考え方に対する経験上の証拠については、現在までのところIDN登録が膨大な数に上っているという事実以外、確認できる回答はありませんでした。

同時に、IDNはサイバースクワッティング発生の機会も増加させることになるという回答もありました。JPNICは、IDNによって視覚障害者のインターネット利用がより困難になるかもしれないと示唆しています。「視覚障害者にとっては、英語のアルファベットを発音する方が、2000以上の日本語文字から特定の文字を音声的に識別するよりもずっと簡単であることから、IDNの導入によって入力したいドメイン名を特定するのが難しくなるかもしれない」とのことです。

2.商標またはその他の名称の翻訳・音訳は違反行為となりますか?この質問に対する回答は、法律制度によって異なるものになると思いますか?商標に関する条約またはその他の国際協定で、この問題に言及しているものはありますか?

商標法は国によって様々ですが、多くの国では、商標の翻訳もしくは音訳によって、世間の人々がその元となる商品やサービスを混同する恐れがある場合は、違反行為と見なされると思われます。また、商標の希釈化という考えが認められる国では、翻訳や音訳は「希釈化するもの」とみなされる可能性があります。ある回答者は、この問題はパリ条約第6条の2に取り上げられていると指摘しています。

JPNICは、外国商標を日本語に翻訳・音訳した結果出てきた文字列が、日本の商標を侵害する場合もあると言っています。

3.IDNの存在は、サイバースクワッティングの発生率を増加させると思いますか?それはどのようにしてですか?

ほとんどの回答者が、新たな登録の機会が発生する時にはいつでも、新たなサイバースクワッティングの機会が現れると答えています。また何人かは、IDNはラテン文字の場合以上にサイバースクワッティングを受けやすいというわけではないと答えています。特定の文字種が特別な問題を引き起こすことになると感じている人もいます。JPNICによると、漢字の中には互いによく似ているものがあるということです。新たな文字種が加わると、商標権者が自分の商標を侵害されないよう監視する際に、言語上の問題が発生し得る、との回答もありました。

4.サイバースクワッティングを最小限に抑えるための方策として、どのようなものが考えられますか?次の方策のうち、どれが最も重要だと思いますか?
  - 事前登録のための「サンライズ」期間
  - 有効に機能するWHOISデータベース
  - 有効に機能するUDRPシステム

これら3つの方策はすべて等しく重要であるという回答がいくつかありました。また、有効な紛争解決のメカニズムが最も重要な方策であると考える人もいました。ただし、その手順については、ICANN UDRPの現在の形式に必ずしも従う必要はないとしています。サンライズという方策は、レジストリとレジストラをドメイン名紛争に巻き込むことになるため問題であるとする回答が少なくとも1つありました。

5.このようなポリシー問題の検討は、ICANN内外のどのような団体によってなされるべきだと思いますか?またそれらの団体は、どのようにして検討を進めていくべきだと思いますか?

総じて、IDNが引き起こす諸問題については、ICANNが検討していくことを支持する回答が得られました。DNSO内にIDNワーキンググループを設置し、そこで活発に検討をして、具体的勧告を公式的に出すことを望む声もありました。また、MINCや、IETF、CDNC、JETといった団体と協力して取り組んでいくことを奨励する意見もありました。

6.IDNに起因する法律上またはポリシー上の問題として、他にどのようなものがありますか?もしあるとすれば、ICANNはそれらの問題にどのように取り組むべきだと思いますか?

ある回答者は、レジストラとレジストリの間のコミュニケーションが改善されるべきだと答えています。UDRPの評価作業を行い、可能な調整を行なうことを提案する回答も複数ありました。特にICANNは、IDN紛争を扱うことのできる新たな紛争処理機関について検討するべきだとしています。またJPNICによると、ある特定の文字が複数の国で、すなわち、特定の国コードレジストリの領域を越えて使用されることがあると指摘しています。

調査C:現在行なっているサービスについて

1.現在、どのような国際化ドメイン名(IDN)サービスを提供していますか?サービス内容を説明している資料を提供して下さい(販促物や広告物など)。サービスの料金はいくらですか?また、同等のASCIIドメイン名と比較した場合、料金にどの程度の差が見られますか?

複数の回答者が現在IDN登録サービスを提供しています。TWNICは無料で登録を提供しています。VeriSign GRS社とJPNICのIDN登録料は、ASCII文字での登録と同額です。IDNの名前解決を含む、IDNの取り組みに関連するソフトやその他のツールを提供しているところが複数ありました。

2.あなたは<IDN>.gTLD 、<IDN>.ccTLD 、もしくは<IDN>.<IDN>のうち、どの登録サービスを行なっていますか?他に今後登録サービスを行なう予定のドメイン名があれば教えて下さい。

Walid社は<IDN>.<IDN>、VeriSign GRS社は<IDN>.gTLD、複数の国別レジストリは<IDN>.ccTLDの登録サービスを提供しています。またJPNICは、日本語・ラテン文字列混合での登録サービスも提供しているということです。

3.あなたはラテン文字によるドメイン名登録サービスも行なっていますか?それとも IDNのみ扱っていますか?

Walid社はIDN登録サービスのみですが、その他多くの回答者は、IDN・ラテン文字両方のドメイン名登録サービスを行なっています。

4.あなたが登録サービスを行なっているIDNは「実用可能」ですか?つまり、エンドユーザ側のアプリケーションで名前解決が可能ですか?もしくは、単にIDNの事前登録サービスを提供しているだけですか?

Walid社のレジストリによって登録されたIDNは、Walid WorldConnect クライアントソフトウェアで利用可能です。TWNICのユーザは、登録したIDNをウェブや電子メールアプリケーションで名前解決することができます。JPNICのIDNは、エンドユーザのアプリケーションで名前解決が可能です。VeriSign GRS社のテストベッドでは、IDNは未だ第3レベルドメインとして指定されていますが、エンドユーザのアプリケーションで名前解決が可能です。

5.まだ実用可能でない場合は、いつ頃実用化されると思いますか?

複数の回答者が、IETFが標準を採用した時点で実用化されるだろうと答えています。

6.IDNを実現するシステムとして、どのような技術を採用していますか?もしくは、採用する予定ですか?

VeriSign GRS社とTWNICは、IDNをASCII Compatible Encoding(ACE)に変換するためのNamePrepという規則を採用しています。TWNICはまた、(内部表現の)8ビットデータ(ローカルエンコーディング)やUTF-8エンコーディングをそのまま扱えるようにするためのBINDを試験使用しています。Walid社は、ACE変換のためにWorldConnect、WorldTools、そしてWorldApp技術を採用しています。Neteka社は、ハイブリッド型のアプローチでNeDNSとNeR2Rを提供しています。

7.ご存知の通り、IETFでは未だIDNに関する標準が採用されていません。もし採用された場合、その時点でIETFの標準に従う予定ですか?技術標準についてのポリシーをお聞かせ下さい。

ほとんどの回答者が、IETFの標準が採用された時点でそれに従うと答えています。

8.現在までの登録受付件数は何件ですか?あなたが取り扱っている文字種毎にお答え下さい。

回答者の多くは、この情報を自社専有のものとして扱っています。Walid社からの回答によると、VeriSign GRS社は運用後最初の5ヶ月間で92万件のIDN登録をしています(調査B質問1へのWalid社からの回答より)。JPNICは5月中旬の時点で、5万件の日本語ドメイン名申請と、35万件のラテン文字によるドメイン名申請を受付けています。

10.他の文字種と比べ、取り扱いがより複雑で困難な文字種はありますか?どういった点が複雑ですか?

何人かの回答者は、他よりも取り扱いが複雑な文字種はないと答えています。Neteka社は、そのような複雑な文字種があると答えており、母語のドメイン名を実装するために、地域コミュニティを巻き込んで、受け入れ可能なルールセットを作ることが重要であると言っています。TWNICは、簡体中国語と繁体中国語の間で正規化を行なうことによって、困難な問題が発生すると指摘しています。JPNICは、日本語の多くは複数の表現形式、すなわち、カタカナ、ひらがな、漢字を持っていると答えています。さらに、異なる日本語でも同じ発音をするものがあるため、ASCII文字では同じように表現されてしまうと言っています。また、日本語の文字の中には、もはや廃れて使用されなくなっているものもあるとのことです。

11.あなたの提供するサービスでIDNを登録した人のうち、すでにラテン文字によるドメイン名を登録済みの人は何割いますか?

ほとんどの回答者はこのようなデータを持っていませんが、Walid社の推定によると、IDN登録者の80%が既にラテン文字による登録をしているということです。他に、その割合はもっと高く、100%に極めて近いという意見もありました。

12.IDNの登録受付を開始する前に、IDNサービスの需要を調べるための市場調査を行ないましたか?もし行なったとすれば、その調査結果はどうでしたか?

何人かの回答者が市場調査を行なっており、特に既存の顧客の間でIDNに対する関心が強いことが判明したということです。VeriSign GRS社は、2003年までには全インターネットユーザの3分の2が英語を母国語としない人々になるだろうと言っています。

13.IDNサービスをどの程度まで防衛手段として(すなわち、他社が同様のサービスを提供しているという理由で)提供していますか?登録者はIDNをどの程度まで防衛手段として(すなわち、サイバースクワッティングを防止するために)登録していますか?

回答によると、彼らがIDNサービスを提供しているのは、その需要が極めて大きいことを認識しているからだということです。同時に、VeriSign GRS社は、同社のテストベッドを企画・展開した理由として、一つには「単一DNSルートの原則に反する可能性があり、また、IETFのIDNワーキンググループによる標準化作業に準拠しない可能性がある代替的なIDNアプローチに対する防衛手段」ということがあると言っています。

顧客がIDNを登録する動機についての回答では、登録者がIDN登録をするのは、IDNに“興味があり価値がある”からだと答えていますが、中にはサイバースクワッティング防止のためとする答えもありました。

14.サイバースクワッティング防止のために、どのようなステップを取り入れていますか?「サンライズ」の仕組みを導入していますか?もし導入している場合は、それがどのように機能しているか教えて下さい。ICANN UDRP に同意していますか?もし同意していない場合は、ICANN UDRPもしくは同種のポリシーへの同意を前向きに検討するつもりはありますか?

VeriSign GRS社はICANN UDRPを採用しています。また、テストベッド期間中、NSIレジストラは、登録日より45日以内にその登録に関する正式な異議申し立て文書を受領した場合には、登録を解除する権利を持っています。Walid社は登録者に対し、UDRPに類似した契約に同意するよう求めています。TWNICはICANN UDRPを採用しており、サンライズ期間中は、不正登録を防止するために特定の言葉を予約しています。

トンガのレジストリは、厳密に先着順に基づいて運営されています。登録者への信頼を重視するというポリシーのため、ICANN UDRPに同意する見込みはないようです。JPNICでは、IDN登録受付けを開始した際、1ヶ月間のサンライズ期間を設けました。現在は、UDRPをローカライズしたものを使用しています。

15.WHOISデータベースを提供していますか?もし提供している場合は、どのような目的のためですか?もし提供していない場合は、近い将来提供する予定はありますか?

Walid社、VeriSign GRS社、NSIレジストラ、TWNICはすべてIDN WHOISデータベースを何らかの形で提供しています。JPNICでは、技術的問題の解決、登録の透明性、紛争解決目的のための情報提供、そして学術研究における分析のためにWHOISデータベースを提供しています。

16.あなたの提供しているIDNサービスのマーケティングについて教えて下さい。顧客に対し、現在のIDN標準やテストベッドが試験段階であることを、どの程度まで知らせていますか?

NSIレジストラは、国内でのマーケティングを行なっています。Walid社は、主としてccTLD、gTLDレジストリ、地域パートナーとの協力関係を築くことによって、サービスを売り出しています。登録者へは、IDNの標準がまだ採用されていないということを伝えてある、との回答結果が得られました。

17.その他何かありましたらお知らせ下さい。

TWNICは、IDNシステムの開発に当たっては、技術的問題の解決のみならず、ローカルユーザの文化や習慣についても考慮しなければならないということを強調しています。TWNICは、IETFが早急にIDNの標準を採用することを強く要求しており、また、地域コンソーシアムによるローカル・テストベッドの展開を支持しています。Neteka社によると、技術コミュニティには「多言語によるリクエストが回線上に送信されることで、従来の古いサーバが機能不全に陥ってしまう恐れがある」のではないかという懸念があるとのことです。「種々の実装が、この懸念が極めて過大に考えられていることを示している。」

Stefan Probst氏は、VeriSign GRS社とRegister.com社がそれぞれのウェブサイト上で宣伝していたサービス内容と、当時実際に利用できたサービス内容との間に食い違いがあったと指摘しています。

III.次のステップ

A.実態調査

今回の調査で回答者から寄せられた情報は、IDN WGにとって非常に有益なものとなりました。一つ一つの回答は、残された作業課題の範囲をさらに明確にする助けをしてくれました。当ワーキンググループは、さらに情報を集めることが必要だと考え、実態調査継続のために以下のステップを計画しています。

  1. 今回の調査は回答期間が限られていたこと、また、当ワーキンググループとしてはインターネットコミュニティのあらゆる意見を聞きたいと希望していることから、4月30日公開の調査票への追加回答を募集しています。当ワーキンググループは特に、技術者と一般ユーザからの回答を期待しています。回答は2001年7月31日までにお寄せ下さい。

  2. 当ワーキンググループは、この現状報告書に対するコメントも募集しています。この現状報告書に対するコメントも、2001年7月31日までにお寄せ下さい。

  3. 当ワーキンググループは、6月下旬までに追加質問を発表する予定です。もし、質問について提案がある場合は、早急にワーキンググループまでお送り下さい。また、追加質問への回答も2001年7月31日までにお寄せ下さい。

当ワーキンググループとしては、回答期限をこのように短く設定したことについてお詫びしますが、9月にウルグアイで開催されるICANN会議までに、第2次報告を理事会に提出することになっており、その報告書作成のために皆様からの情報が早急に必要となります。

B.IDNワーキンググループ

複数の回答者が、ICANNはIDNワーキンググループを長期的に設置しておくべきだと指摘しています。ICANNは無論、IDNの技術標準の決定についてはIETF IDN WGに従うつもりです。同時に、IETF IDN WGと並行して、ICANN支持組織内のワーキンググループでも、その他のIDNのポリシー問題について検討がなされることもあると思います。ICANN理事会内部の当ワーキンググループは、これらの各ワーキンググループの組織構造や使命に関して、ICANNとインターネットコミュニティの皆様からご意見を募集しています。

また、ICANN理事会内部ワーキンググループのメンバーは、当ワーキンググループがIDNの展開を継続して監視し、ICANN理事会とその他のIDNワーキンググループ、そしてIDNコミュニティ全体との連携役を務めていくべきだと考えています。

ワーキンググループ メンバー

加藤幹之
Karl Aurbach
Ivan Moura Campos
Vinton Cerf

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