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ドメイン名紛争とドメイン名紛争処理方針

2003年11月28日

背景

インターネットの急速な普及とサイバースペースにおける電子商取引の広がりに伴い、 ドメイン名は、インターネットに接続されたコンピュータにつけられる識別子としての機能だけでなく、 消費者を特定のウェブサイトに引き寄せる上で重要な機能を果たすようになりました。 一方で、ドメイン名と商標との衝突・紛争が発生し、 国際的に問題となってきました。 原則としてドメイン名は先着順に登録できることから、 他人の商標等と同一又は類似のドメイン名を登録し、 商標権者に不当に高い額で転売を図ったり、 商標権者等の信用を傷つけるウェブサイトのドメイン名として使用する等の不正な行為(これらの行為をサイバースクワッティングと呼びます)が頻繁に発生するようになりました。

このようなドメイン名紛争の解決手段としては、これまでも、 裁判や仲裁といった紛争処理手続きがありました。 しかし、裁判は時間と費用が膨大にかかり、また、 仲裁は仲裁判断に拘束力がある(仲裁判断に不服であっても裁判所へ上訴できない)ため、 仲裁を行うことについて両当事者の合意がとりにくいなど、 既存の紛争処理手続きは、ドメイン名紛争解決の手段としては、 決して使い勝手が良いものではありませんでした。

世界の動き

このような状況の中で、 ドメイン名を巡る問題の解決に向けて国際的な議論が行われるようになりました。 1998年6月に米国政府が出したホワイトペーパーでは、 WIPO(世界知的所有権機関)に対するドメイン名と商標の衝突の解決に関する勧告案作成の要請が盛り込まれており、 要請を受けたWIPOは、同年7月よりドメイン名を巡る紛争処理手続、 ドメイン名における周知著名商標の保護等の課題についての検討を開始しました(WIPOドメイン名プロセス。 以下「WIPOプロセス」)。 WIPOプロセスにおいては、 世界に対して3回のパブリックコメント要請や東京を含めた世界の17ヶ国・地域における公聴会等が開催されました。 WIPOは、 WIPOプロセスにおいて表明されたインターネット・商標関係者等の意見を集約して、 1999年4月に「ドメイン名プロセスに関するWIPO最終報告書」(以下「WIPOレポート」)を作成し、 ICANN理事会に提出しました。

WIPOレポートを受け、ICANNでは、DNSO(Domain Name Supporting Organization)に設置されたワーキンググループを中心として、 ドメイン名と商標の問題解決に向けた議論が行われました。 議論の結果は、 報告書にまとめられ、 ICANN理事会に提出されました。 ICANN理事会は、こうした報告書をもとに、 検討の経緯等を示したスタッフレポートおよび Uniform Domain Name Resolution Policy(統一ドメイン名紛争処理方針、略称 UDRP)・Rules for Uniform Domain Name Resolution Policy(統一ドメイン名紛争処理方針のための手続規則、略称 UDRP Rules)のドラフトを作成・公表し、 同時にそのウェブサイトでパブリックコメントを求めました。 このパブリックコメントを受けて、1999年10月、ICANN理事会は、 セカンドスタッフレポートを作成・公表するとともに、 UDRP およびUDRP Rules を採択しました。 更に、同年12月よりWIPOが第1号のICANN認定紛争処理機関として紛争処理業務を開始しました。

ICANN UDRPの策定により、裁判等に比べ、低費用(20万円弱)、 短期間(最大55日)、 簡易(書類で処理)な手続きでドメイン名紛争処理が可能となりました。 また、UDRPでは、被申立人(登録者)が裁定に不服の場合(ドメイン名の取消・移転という裁定に不服の場合)は裁判所に提訴することも可能となっています。

更に、このようなICANNの動きと併行して、 米国においてはドメイン名紛争処理に関する立法作業の動きが見られ、 1999年11月には「反サイバースクワッティング消費者保護法」が制定されました。 この法律は著名性を判断基準の一つとしている点などUDRPと異なっている部分もありますが、 不正の目的(bad faith)によるドメイン名の登録・使用を排除することを意図しているという点において、 UDRPと同じ視点に立っていると言えます。

日本での動き

一方、日本では「一組織一ドメイン名」「ドメイン名の移転禁止」などの原則により、 この種の紛争はそれほど顕在化していませんでした。 しかし、これらの原則も日本社会におけるインターネットの急速な拡大とともに、 その緩和・撤廃を求める声が出てきました。 そこで、JPNICでは、 こうしたインターネットコミュニティの声に応えるべく、 一組織が複数のドメイン名を登録できるための仕組み等につき検討を開始しました。 しかしながら、これらの原則は、これまで、 不正の目的によるドメイン名の登録・使用を抑制する効果をもっていたため、 その緩和・撤廃に当たっては、 ドメイン名紛争に対応するための何らかの手当が必要でした。

そこで、JPNIC では、 1999年12月に「ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース」(以下「DRP-TF」)を設置し、 JPドメイン名に係わる紛争処理に関する規約である「JPドメイン名紛争処理方針」(JP-DRP)、 およびその処理手続について定めた「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(JP-DRP手続規則)の策定に向けて検討を開始しました。

DRP-TFは、 2000年4月に検討結果を第一次答申案としてとりまとめ、 JPNIC運営委員会に提出、 5月に一般公開するとともにパブリックコメントを募集しました。 DRP-TFでは、一般から寄せられた意見等を受けて、 更なる議論を行い、 7月に最終答申案をとりまとめ、 JPNIC運営委員会に提出しました。 同最終答申案は、JPNIC理事会での審議を経て承認され、同月、 JP-DRPおよびJP-DRP手続規則として公開されました(実施は、10月19日)。

JP-DRPは、ICANN UDRPに準じた内容で策定されており、 一部の手続きなどについては、 日本の法制度を考慮した形でローカライズが行われました。 そして、認定紛争処理機関として、 2000年10月より工業所有権仲裁センター(現 日本知的財産仲裁センター)が紛争処理業務を開始しました。

このようにドメイン名紛争に関する裁判外紛争処理手続きとしてJP-DRPの運用が開始された一方、 2001年12月にはドメイン名紛争に関する規定の追加を内容とする不正競争防止法の改正が行われました。 改正前の法律は、 判断基準や救済方法等においてJP-DRPと相違している部分があり、 当事者が裁定結果に不服で裁判所へ出訴した場合、 裁定結果と判決が異なってしまうおそれがありました。 このようなJP-DRPと法律との間の不整合を見直す必要性から法律改正が行われ、結果として、 判断基準においてはJP-DRPと法律との間の整合性がとれるようになりました。

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