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各位
                                                           2000年5月8日

                                             社団法人 日本ネットワーク
                                             インフォメーションセンター
                               (JPNIC)
                       ドメイン名の紛争解決ポリシー
                       に関するタスクフォース
                               (DRP-TF)


            タスクフォースレポート
    「JPドメイン名紛争処理方針」に関する第一次答申について


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目次

 1.はじめに
 2.答申文書の構成とそれぞれの位置づけ
 3.方針策定に当たっての DRP-TF の取り組み方
 4.ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の何を採用したのか
 5.ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の何をローカライズしたのか
 6.DRP-TF での継続的な議論のポイント
 7.現行の JPNIC 登録規則との整合性について
 8.紛争処理機関について
 9.既存 JPドメイン名登録者に対する本方針の適用について
 10.今後のスケジュール
 付録:参考文書
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1.はじめに
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 ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース(以下「DRP-TF」)は、
昨年12月15日の設置以来、JPドメイン名に係わる紛争処理に関する規約である
「JPドメイン名紛争処理方針」(以下「処理方針」)および、その処理手続につ
いて定めた「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(以下「手続規則」)
の策定に向けて検討を進めると同時に、これらを具体的に実現するための方法・
手段について、検討して参りました。

 DRP-TF では、これまで4回にわたる会合およびメーリングリストによる継続
的な議論を進めてきました。それらの議論の結果を、第一次答申案として4月26
日に JPNIC 運営委員会に提出し、承認されました。これを受けて、本第一次答
申を公開し、一般からのご意見を受け付ける運びとなりました。

 本レポートは、DRP-TF が何をスターティングポイントとして議論を開始し、
どの部分が重点的に議論されたのか、また、最終答申を提出するまでにどのよう
な課題・作業が残されているのかについて、まとめたものです。

 皆様におかれましては、処理方針および手続規則と合わせて本レポートをお読
み頂き、忌憚のないご意見を多数お寄せ頂ければ、幸いに存じます。

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2.答申文書の構成とそれぞれの位置づけ
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 今回公開する第一次答申は、二つの文書から成り、それぞれ次のような位置づ
けとなっております。

(1) JPドメイン名紛争処理方針

 処理方針は、JPNIC の「ドメイン名登録等に関する規則(以下「JPNIC 登録規
 則」)」において言及されることにより、同規則と一体になります。処理方針
 は、JPドメイン名の登録・使用から発生する、ドメイン名登録者と第三者(商
 標権者等)との間のドメイン名紛争の処理に関する規約を定めたものです。

(2) JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則

 手続規則は、上記処理方針の第4条で定める「JPドメイン名紛争処理手続」を
 行う際の規則を定めたものです。JPNIC が認定する紛争処理機関は、この手続
 規則に則って紛争処理を行います。

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3.方針策定に当たっての DRP-TF の取り組み方
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 ここ数年、.COM を中心にサイバースクワッティング(ドメイン名の不正な登
録・使用)の問題が取り上げられており、米国ではすでに多くの裁判例が見られ
ます。日本では商標などに抵触するドメイン名の存在が、一部で指摘されており
ますが、裁判によってその解決を求めるという動きは少ないというのが現状です。

 日本でドメイン名紛争が少ないのは、「一組織一ドメイン名」「ドメイン名の
移転禁止」などの JPNIC が持つ原則によるところが大きいと考えられています
が、JPNIC では、これらの原則を撤廃すべきであるとするユーザーからの要望を
踏まえ、今後これらを廃止する方向で検討を進めております。しかしながら、こ
れら原則の廃止の前提としては、サイバースクワッティングに対する対策を講ず
ることが必要であり、よって、この点の問題解決が急務となってきております。

 gTLD(.COM、.NET、.ORG)の世界においては、昨年4月の WIPO(世界知的所有
権機関)の勧告を受け、ICANN が同10月に「統一ドメイン名紛争処理方針(以下
「ICANN 処理方針)」および「統一ドメイン名紛争処理方針のための手続規則
(以下「ICANN 手続規則)」を承認し、その後、同12月1日から ICANN認定レジ
ストラによる同方針の採用が始まるとともに、ICANN 手続規則に基づいて紛争処
理を行う紛争処理機関のサービスも開始され、現在、順調に推移しております。
(5月2日現在、申し立てられたドメイン名の数は約900件にも及び、このうち362
件について裁定が出されております。)

 ICANN 処理方針の大きな特徴は、ミニマル・アプローチ(最小限のアプローチ)
という点にあります。これは、正当な権利者間の紛争は対象とせず、ドメイン名
の不正な登録・使用のみを対象とするものです。また、これを実現するための紛
争処理手続は、従来の裁判でも仲裁でもない新しい紛争処理手段の模索であった、
と言えます。

 DRP-TF は、これら ICANN 処理方針の基本的な特徴は、JPドメイン名における
紛争処理においても極めて有効なものであるとの判断から、ICANN 処理方針およ
び ICANN 手続規則のローカライズというアプローチをとることにいたしました。

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4.ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の何を採用したのか
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 以下にあげる事項は、ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の中に盛り込まれて
いるものであり、この第一次答申にも採用した主な事項です。

(1) 裁判でも仲裁でもない独自の紛争処理手段の規定と利用

 裁判による紛争解決では時間と費用がかかり、また、仲裁による紛争処理では、
 仲裁判断に拘束力(原則として仲裁判断に拘束され、裁判所に上訴できない)
 があるため、仲裁の開始について当事者双方の合意がとりにくいなどの障害が
 ある上、ドメイン名の紛争処理については、さらに、迅速性および簡易性が不
 可避的に要求されます(これらの点については後出 (4) を参照)。このよう
 に、従来存在する紛争処理手段をそのまま利用することが出来ないいくつかの
 要因が認められました。そこで、これらの障害を取り除いて、独自の紛争処理
 手段として「JPドメイン名紛争処理手続」を規定しました(処理方針第4条)。

(2) ドメイン名の不正な登録・使用のみを対象

 ドメイン名の登録・使用から発生するドメイン名登録者と第三者との間におけ
 る紛争のうち、「JPドメイン名紛争処理手続」の対象となるのは、ドメイン名
 の不正な登録・使用のみであり、正当な権利者間の紛争は従来の裁判・仲裁等
 で扱ってもらうという位置づけにしました(処理方針第4条a項、同第5条)。

(3) ドメイン名の不正な登録・使用に該当する行為類型を例示

 当該ドメイン名が、不正な目的のための登録・使用であることの証明について
 の例示規定を設けました(処理方針第4条b項)。これらは「例示」ですから、
 他の場合を排除するものではありません。

  - 実費金額を越える対価で転売することを目的に、登録しているとき
  - 商標権者によるドメイン名の使用を妨害するために登録し、そのような妨
   害行為が複数回行われているとき
  - ライバル会社の事業を混乱させることを目的に、登録しているとき
  - ユーザーの誤認混同をねらって、第三者の商標をドメイン名として登録・
   使用しているとき

 同時に、当該ドメイン名が不正な目的のために登録・使用されているものでは
 なく、登録者が権利を有していることの証明についての例示規定も設けました
 (処理方針第4条c項)。これらは「例示」ですから、他の場合を排除するも
 のではありません。

  - 紛争についての通知を受ける以前から、不正な目的を有することなく、当
   該ドメイン名またはそれに対応する名称を使用しているとき
  - 商標登録をしているか否かにかかわらず、当該ドメイン名の名称で一般に
   認識されているとき
  - 当該ドメイン名の使用が、ユーザーの誤認に乗じて利得を得る目的でなさ
   れていないとき、または申立人の商標の価値を毀損せしめるような目的で
   はない非商業的または公正な使用であるとき

 これらの論点が、「JPドメイン名紛争処理手続」においては、第三者からの申
 立書およびドメイン名登録者からの答弁書という形で紛争処理機関において審
 理されることになります。その結果、ドメイン名の不正な登録・使用のみが排
 除されることになります。

(4) 迅速・簡易・廉価・非拘束を特徴とする紛争処理パネル

 「JPドメイン名紛争処理手続」は、一名または三名のパネリストで構成される
 紛争処理パネルによって行われます。

 処理手続の特徴は、簡易(例外的な場合を除いて審問はなく、審理は提出書類
 のみに基づいて行われる。手続規則第3条、同第5条、同第13条。)、廉価
 (申立人のインセンティブをそがない安価な料金および登録者にも過度の負担
 とならない手続の採用。料金は紛争処理機関の補則で規定される。)、迅速
 (ドメイン名の不正な登録・使用に該当するものであるかどうかのみを判断し、
 審理は14日以内で尽くされる。手続規則第15条(b)。)、および非拘束(裁定
 は契約関係に基づく一種の中間判断であり、それに対して不服がある場合には
 裁判所への提訴が可能。処理方針第4条k項。)と言う点にあります。

(5) パネリストの公平な選出

 紛争処理パネルを構成するパネリストの人数は、一名または三名で、その数は
 両当事者によって決定されます。具体的には、両当事者がともに一名構成のパ
 ネルを希望した場合には一名構成のパネルとなり、いずれかの当事者が三名構
 成のパネルを希望した場合には三名構成のパネルとなります。

 パネリストが一名の場合は、紛争処理機関自らが維持管理しているパネリスト
 候補者名簿から一名を選出します(手続規則第6条(b))。

 パネリストが三名の場合は、申立人と登録者の双方が、パネリスト三名のうち
 の各一名を指名するための候補者三名を選出し(手続規則第3条(c)(vii)、同
 第6条(d)、同第5条(b)(v))、紛争処理機関が両当事者の選出した候補者リ
 ストの中から各一名のパネリストを指名します。さらに、残り三番目のパネリ
 ストについては、紛争処理機関が両当事者に対して候補者五名を提示し、両当
 事者の意向を踏まえて一名を指名する(手続規則第6条(e))という形になっ
 ています。

(6) 紛争処理手続の料金は原則として申立人側が負担

 「JPドメイン名紛争処理手続」の料金は、原則として申立人側が全額を負担し
 ます。ただし、申立人側が一名構成のパネルを希望し、登録者側が三名構成の
 パネルを希望した場合に限り、料金は両当事者が折半して均等に負担する形と
 なります(処理方針第4条g項、手続規則第6条(b)、同第19条)。

(7) 裁定の公表

 裁定は、パネルが例外的な事件として部分的に変更修正して公表されなければ
 ならないと決定をした場合を除き、その全文がインターネットで公表されるこ
 とになります(処理方針第4条j項)。

(8) 申立人に対する救済措置は当該ドメイン名の取消または移転のみ

 「JPドメイン名紛争処理手続」により申立人に与えられる救済措置は、当該ド
 メイン名の取消または移転に限られます。金銭的な損害賠償等についてはこの
 紛争処理手続の対象外としております(処理方針第4条i項)。これは、損害
 賠償等の規定を設けることになれば、その立証に多くの時間と手間をかけるこ
 とになり、迅速・簡易・廉価を旨とするこの紛争処理手続の趣旨に沿わなくな
 るからです。

(9) 紛争処理手続への JPNIC(登録機関)の非関与

 ドメイン名登録機関としての JPNIC は、「JPドメイン名紛争処理手続」の管
 理・実施には一切関与しません。また、いかなる裁定結果にも責任を負いませ
 ん(処理方針第4条h項)。

(10) 裁定に拘束力はなく、裁判所への提訴が可能

 紛争処理手続の開始前、継続中、終結後のいずれの段階であっても、いずれか
 の当事者が裁判所へ提訴することは何ら妨げられません。

 取消または移転の裁定が下されたときには、JPNIC はその裁定内容の実行を10
 日間保留します。この間に、登録者が合意管轄裁判所に提訴したときには、そ
 の裁定内容の実行が見送られます(処理方針第4条k項)。

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5.ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の何をローカライズしたのか
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 以下にあげる事項は、ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針の規定をそのまま
採用しないで、日本の状況を考慮に入れてローカライズを試みた事項です。

(1) 日本法、日本で利用できる紛争処理手段、および JPドメイン名の情報登録
  体制を考慮した全体的な見直し

 今回の方針策定作業は、ICANN 処理方針および ICANN 手続規則をベースに行
 いましたが、その過程で、日本法(商標法、不正競争防止法等)、日本で利
 用できる紛争処理手段(裁判・仲裁等)、JPドメイン名の情報登録体制(ド
 メイン情報として登録されている各担当者の役割、whoisデータベースの機能
 等)等に基づき、全体的な見直しを図りました。以下にあげる (2) 以降の事
 項は、ICANN 処理方針および ICANN 手続規則と大きく異なっている部分です
 が、ローカライズは、このように大きく異なる部分だけではなく、細部を含
 め全体に及んでおります。

(2) 合意裁判管轄の一つを東京地方裁判所に固定

 ICANN 手続規則では、「レジストラの主たる事務所の所在地」となっていた部
 分を「東京地方裁判所」としました(手続規則第1条(f))。これは、JPドメ
 イン名紛争処理方針を採用する登録機関は JPNIC のみであり、JPNIC の主た
 る事務所の所在地が東京となっているためです。

(3) 申立書・答弁書の送付方法を日本の裁判・仲裁等で採用されている一般的な
  方式に変更

 ICANN 手続規則では、申立書の送付は紛争処理機関から登録者に対して行われ
 るとともに、申立人から登録者に対して事前に直接行われるように規定されて
 います。また、登録者の答弁書の送付についても、登録者から申立人に対して
 直接行われることになっております。日本の裁判・仲裁等においては、当事者
 間で直接書類をやりとりすることはなく、通常は紛争処理機関が必ず間に入る
 形となっているため、「JPドメイン名紛争処理手続」においては、当事者間の
 書類送付は直接やらないこととし、紛争処理機関が間に入る形で規定しました
 (手続規則第3条(a)、同第2条(a)、同第5条(a)、同第5条(e))。

 また、ICANN 手続規則においては、その紛争処理手続が正式に開始される以前
 に、申立書が登録者に渡ってしまうことにより、登録者が紛争を回避するため
 に、あるいは手続を故意に遅延させるために当該ドメイン名を登録しているレ
 ジストラを変更したり、当該ドメイン名を他者に移転するなどという行為(サ
 イバーフライトあるいはサイバーホッピングと呼ばれています。)が起きる危
 険性をはらんでいます。(レジストリ・レジストラ制度をとっていない現在の
 JPNIC においては、「レジストラの変更」という事態は発生しませんが、他者
 への移転は「ドメイン名の移転禁止」原則を廃止した時点で発生し得る事態と
 なります。)当事者間での直接送付をなくすることにより、この危険性を回避
 することができるものと考えております。

(4) 申立書を登録者に送付する際の宛先を JPドメイン名の情報登録体制に基づ
    き変更

 gTLD の登録においては、その申請書に記載されている連絡先が正確でない場
 合が多いことから、申立書の送付があらゆるすべての関係者(登録担当者、技
 術連絡担当者、経理担当者、Webサイトに掲載されている E-mailアドレスおよ
 びメールリンクなど)になされるように規定されておりますが、「JPドメイン
 名紛争処理手続」では、登録組織の代表者および登録担当者を基本とすること
 にしました(手続規則第2条(a)(i))。

 これは、技術連絡担当者、経理担当者には、そもそもこの種の紛争処理手続に
 関わり合いを持つような役割が期待されていないこと、また多くの場合、ドメ
 イン名登録者が利用しているインターネットサービスプロバイダの担当者がこ
 れらの役割を担っていることが多いという現状を考慮したものです。また、
 Webサイトに掲載されている E-mailアドレスおよびメールリンクなどは、関係
 者からさらに離れた存在となる確率が高いと考え、これも送付先からはずすこ
 とにしました。

(5) 手続言語は日本語

 ICANN 手続規則では、その手続言語は原則として登録合意書(JPNIC 登録規則
 に相当)の言語と規定されています。JPドメイン名の世界では、登録規則はす
 べて日本語で書かれていることから、手続言語は原則として日本語と規定しま
 した。

(6) 準拠法は日本法

 準拠法を明示することにより、紛争当事者がその事情に応じて外国法適用の主
 張をしても取り上げる必要がなく、より簡易・迅速な紛争処理手続を実現する
 ことになるものと考えております。

(7) 「in bad faith」を「不正な目的」と表現

 ICANN 処理方針では、「registration and use of a domain name in bad
 faith」が紛争処理の対象とされております。「in bad faith」は、日本語で
 は「悪意」と訳すこともできますが、JPドメイン名紛争処理方針では「悪意」
 という表現をとらず、「不正な目的」という表現をとりました。

 日本法における「悪意」の意味は、事実認識の有無にすぎませんが、社会一般
 的には「他人に害をなす意図ある行動」を意味することもあり、「悪意」と直
 訳しても特に問題はないものと思われます。しかしながら、ICANN 処理方針が
 意図している「in bad faith」を積極的・網羅的に明示する表現として、法律
 用語としての主観的な態様そのものである「悪意」のみではなく、ドメイン名
 登録者が行った行為から客観的にある程度認定可能な「他人に害をなす意図あ
 る行動」をもカバーできるように、「不正な目的」という用語を採択しました。
 なお、不正競争防止法第11条第1項2号や商標法第4条第1項19号においても、
 「不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正
 の目的をいう。)」という表現が使用されております。

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6.DRP-TF での継続的な議論のポイント
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 DRP-TF において、現在も引き続き議論の対象となっている主な事項は以下の
通りです。

(1) 申立の根拠は「商標」のみで良いか

 この第一次答申では、申立の根拠を「商標」のみとしています。ここでの「商
 標」は、登録商標・未登録商標(商標法、不正競争防止法等により保護される
 範囲)を問わないものであり、さらに日本・外国をも問わないものと解釈して
 おります。

 未登録商標に含まれるものには、商標出願中のものもあり、例えば、急速な普
 及が見込まれる新製品や新サービスの名称、およびそのような新製品・新サー
 ビスを持って市場に参入しようとする新会社の社名などが考えられます。さら
 には、有名な大手企業同士の合併後の新社名なども、これに該当する場合があ
 りうるものと考えられます。これらはいずれもサイバースクワッティングの格
 好の対象となるものであり、処理方針における明確な手当が必要と考えており
 ます。

 未登録商標をどの範囲まで認めるのか、長年にわたり使用されていない登録商
 標も保護されるのか、あるいは外国商標の保護の在り方等について、今後さら
 に DRP-TF 内で議論し、まとめていきたいと考えております。

 DRP-TF 内では、申立の根拠はとりあえず「商標」のみに限定すべきであると
 いう一応の合意を得ていますが、議論の過程では、不正競争防止法の対象とな
 っている「営業表示・営業標識」(商標とはみなされない社名・屋号など)を
 も含めるべきであるとか、米国の反サイバースクワッティング消費者保護法で
 検討されている「人名」(政治家、スポーツ選手、歌手等の氏名など)につい
 ても考慮されるべきであるという意見も出されております。

(2) 不正な目的のための登録・使用についての判断基準は法的に妥当か

 DRP-TF では、処理方針第4条b項にある不正な目的のための登録・使用につ
 いての判断基準は法的に妥当かということが議論されました。

 ここでの大きな問題は、現在の日本法では、サイバースクワッティングの行為
 自体が、商標権侵害を構成するとか、不正競争防止法で規定されている不正競
 争行為に該当するものであると即断するには、いささかの無理があるといわれ
 ている点です。しかしながら、逆にサイバースクワッティングの行為を正当化
 する法的根拠は皆無に等しいだろうというのも事実と思われます。そこで「不
 正目的の行為」は排除されるべき対象であるという原理原則に依拠して、この
 処理方針を策定するに至っております。

 以上の点を確かなものにするには、判例または関係法律の整備を待たなければ
 なりませんが、急速なインターネットの普及進展に追いつくには、当事者間の
 合意による自主ルールで当面処理していくことが、急務であり最善の方策であ
 ると考えております。

 上記の論点と合わせて、DRP-TF では、裁定が出た後に、いずれかの当事者が
 裁判所に提訴した場合、実体法上の手当がない現在、何を根拠として裁判が行
 われるのかということに関しても議論がなされました。

 日本においては、米国の反サイバースクワッティング消費者保護法(連邦商標
 法の一部改正)のような制定法が存在しないため、裁判所においてサイバース
 クワッティングの行為の違法性が争われた場合には、処理方針第4条b項に該
 当するような行為のそれぞれの中から、現行商標法における違法な商標の「使
 用」の類型にあたるような事情を抜き出して商標権侵害を論ずるか、あるいは
 従来から論じられている何らかの不正競争行為の類型にあてはまるような事情
 (例えば、不正競争防止法第2条第1項1号の周知表示混同惹起行為や同条同
 項2号の著名表示冒用行為)を前提として、不正競争行為を考えるしかないも
 のと思われます。サイバースクワッティング行為そのものを取り締まる法律の
 整備が待たれるところでもあります。

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7.現行の JPNIC 登録規則との整合性について
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 今回第一次答申として出された処理方針・手続規則は、最終的には JPNIC 登
録規則と一体化されなければなりません。処理方針・手続規則の採用に伴って、
現行の JPNIC 登録規則は次の点で改訂が必要になると思われます。これら の点
につきましては、別途、JPドメイン名検討部会(DOM-WG)にて検討作業を進める
予定です。

(1) JPドメイン名紛争処理方針および同手続規則への言及。
(2) 「JPドメイン名紛争処理手続」の裁定による取消・移転を可能とすること。
(3) すでに他のドメイン名を保有している申立人への移転という裁定が出た場合
  の、「一組織一ドメイン名」原則の取り扱い。
(4) 国外の申立人への移転という裁定が出た場合の、「ローカルプレゼンス」原
  則(JPドメイン名登録者は日本に住所がなければならない)の取り扱い。

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8.紛争処理機関について
------------------------

 「JPドメイン名紛争処理手続」を行う紛争処理機関については、現在国内に存
在するこの分野を得意とする仲裁機関と協議を進めております。なお、ユーザー
の選択肢を広げるために、独立の紛争処理機関が複数存在することも容認されて
おります。

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9.既存 JPドメイン名登録者に対する本方針の適用について
-------------------------------------------------------

 上記7でも言及した通り、今回第一次答申として出された処理方針・手続規則
は、最終的には JPNIC 登録規則と一体化され、その一部を成す形になります。

 JPNIC 登録規則では、第43条(規則の変更)において「当センターは、理事会
の決議を経てこの規則を変更することができる。この規則の変更は、すべての登
録者に適用される。」と規定されております。したがって、JPドメイン名紛争処
理方針についても、それが発効し、かつ、それが JPNIC 登録規則の一部となる
旨の改訂が JPNIC 登録規則の方でなされ発効した場合には、すべての JPドメイ
ン名登録者に適用される形になります。

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10.今後のスケジュール
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今後のスケジュールは次の通りです。

 ・2000年5月8日  : 第一次答申に対する一般からのご意見の募集開始
 ・2000年5月16日 : JPドメイン名紛争処理方針に関する説明会
 ・2000年6月11日 : 第一次答申に対する一般からのご意見の募集締切
 ・2000年6月中旬 : DRP-TF による検討作業
 ・2000年6月下旬 : JPNIC 運営委員会に対して最終答申を提出
 ・2000年7月   : JPドメイン名紛争処理方針の公開
 ・2000年10月   : JPドメイン名紛争処理方針の発効・施行

--------------
付録:参考文書
--------------

 ・『ドメイン名の紛争解決ポリシーに関するタスクフォース』の設置について
              <http://www.nic.ad.jp/ja/topics/1999/19991215-01.html>

 ・「ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針」(日本語訳)
              <http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-policy-j.html>

 ・「ICANN 統一ドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(日本語訳)
              <http://www.nic.ad.jp/ja/translation/icann/icann-udrp-rules-j.html>

 ・「反サイバースクワッティング消費者保護法(米国)」(日本語訳)
              <http://www.nic.ad.jp/ja/translation/domain/acp-j.html>


 以上。

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